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29.なぜこうなったのかというと全部僕が馬鹿だったからです
しおりを挟む沢山のお茶とお菓子を出してもらった僕は、それからしばらくして、ベッドに横になっていた。
なんでこうなったのかというと、僕が馬鹿だったからだ。
テーブルに並んだお茶とお菓子はどれも美味しくて、僕は食べまくった。
そしたら、パーロルットさんが、「魔物退治に行くのなら、ちょうどいいものがあるんです」と言って、魔法の武器と道具を持ってきてくれるって言い出した。
でも、そんなの悪いし、いいですって言おうとして、慌てて立ち上がったら、椅子の脚に足を取られて転んで、ちょうど、魔法の武器や薬が入った箱を持ってきてくれた人とぶつかってしまった。せっかくそれを持ってきてくれた人も転倒して、僕は頭に箱に入っていたものが当たり、隣の部屋にあるベッドまで運ばれた。
自分のしでかしてしまったことを、事細かに思い出す。
そして思った。
もう、今すぐ消えたいいいい……
僕、一体何をしているんだ……
ブラットルにあれだけ偉そうに啖呵切っておいて、自分は馬鹿なことやってみんなに迷惑をかけて……
もう、恥ずかしすぎる。
布団を頭からかぶる。
僕の頭にぶつかったのは、魔物と戦うための魔法の道具で、魔物を一瞬足止めするための、力の弱いものだった。僕も一瞬、気を失っただけ。すぐに僕は、ロティンウィース様に抱きかかえられて目を覚ました。だから、体はなんともない。僕は大丈夫って言ったけど、ロティンウィース様は心配して、パーロルットさんが、「それなら隣の部屋にベッドがあります」と言ってくれて、僕らをここに案内してくれた。
うわああああああ……もう、どうしたらいいんだ……
布団をかぶっていると、こんこんと、ドアを叩く音がした。
うわっ……だ、誰!? 僕、今は誰にも会いたくないい!!
つい、布団をかぶって、いないふりをしてしまう。
すると、ドアの向こうの人は、ドアを開けて、中に入ってきた。
「トルフィレ……起きたのか?」
「……殿下っ……!?」
びっくりして、僕は布団から飛び出した。すぐに立ち上がろうとするけど、焦ったせいでまた転びそうになって、すぐにロティンウィース様に抱き留められる。殿下の腕に包まれるようで、ひどく鼓動が高鳴った。
「……す、すみません…………」
「……謝ることじゃない。俺はトルフィレを抱きかかえられて、幸運だった」
「はい!!??」
ますます真っ赤になる僕を、殿下はベッドに座らせてくれた。
「もうしばらく寝ていた方がいい」
「そ、そんな…………もう大丈夫です……す、すみません……」
「……そんなことを言っていると、押し倒すぞ」
「はい!?」
つい、変な声を出して、身をひいてしまう。
なんて言った今!? 押し倒すって……え!?? な、なんで!?
驚く僕を、殿下はニヤニヤ微笑みながら眺めている。
本気……? まさか。本気じゃないよな!!?? あれか! 冗談ってやつか!! きっとそうだ!!
だけど、殿下はそっと僕に手を伸ばしてくる。
「……せっかくのチャンスだ。既成事実を作っておくか?」
「きっっっっ……!!????」
既成事実って何!?? 僕と!!?? なんで!? そもそも何するの!??
突然のことに混乱して、動くこともできない。布団をぎゅうっと握りしめて体を隠して震える僕を、殿下はじっと見つめている。
「あっ……ぁのっ……えっと…………ぼ、ぼく…………あのっ……っ!!」
震えてたせいで、舌噛んだ…………既成事実って、押し倒すって……!? そんなのしたことないっ……
どうしていいのか分からない僕に、殿下が手を伸ばしてくる。そして頬にそっと触れてくれた。
「冗談だ……何もしない…………」
「え…………」
「だから、怯えるな! 悪かったな! 怖がらせて!!」
そう言って、殿下は僕の頭を撫でてくれた。
だけど僕……ロティンウィース様が怖かったわけじゃない。怯えていたわけでもないと思う……震えてはいたけど、それは全部始めてで、突然そんなことをするのは怖かっただけだ。ロティンウィース様のことは、全然怖くない。むしろ、こうして今そばにいられることが嬉しいのに。頭に触れてもらえることも、声をかけてくれることも。
「あ、あの…………ロティンウィースさま……」
「ダメですよ。殿下。いきなりそんな、不埒な真似をしようなどと」
そばで声がして振り向けば、いつのまにかベッドのそばに立っていたフーウォトッグ様が、僕らを見下ろしている。
今度こそ本当に、心臓が壊れそうなくらいびっくりして、僕は飛び退いた。
さっきまでいなかったのに……
不思議に思っていると、微かに風が吹いて、さっきまで閉まっていたはずの窓が開いていることに気づく。あそこから入ってきたらしい。
殿下はフーウォトッグ様を睨んで言った。
「フーウォトッグ……魔物の調査に行ったのではなかったのか?」
「行きました。そして終わったので、帰ってきました。間に合ってよかった……」
「間に合う?」
「私は心配していたのです。ぐっすりと気持ちよさそうに眠るトルフィレ殿の魅力に負けて、殿下がとんでもないことをしでかすのではないかと」
彼に鋭い目で睨まれて、殿下は「俺はトルフィレにひどいことなどしない」と言って、睨み返す。
ど、どうしよう…………
慌てていると、ドアがこんこんとノックされた。だけど、二人とも睨み合いに夢中で気付いてない。
「あ、あの……ドア、開けますね……」
恐る恐る二人に言って、ドアに駆け寄ろうとしたら、殿下に毛布でくるんと包まれてしまう。そして、抱き寄せられた。
「行かなくていい。俺が開ける。トルフィレは寝ていろ」
「そ、そんなっ……! も、もう大丈夫でっ……ひゃっ!!」
いっぱい眠ったし、ドアを開けるくらいできるのに、殿下は、僕の体を抱きしめたまま、離してくれない。なんだか、こうして強く抱き寄せられることも、気持ち良くなってきた。
そんなことをしていると、全く返事がないことを心配したのか、ノックをした人が部屋の中に入ってきた。
「トルフィレ様……あの…………いらっしゃいますか?」
この声、パーロルットさんだ。彼は、ラグウーフさんとキャドッデさんを連れて部屋に入ろうとして、ロティンウィース様に強く抱きしめられた僕に気づいたみたいだ。
「……申し訳ございません……もうしばらくしてからまた来ます」
「え!?? あ、き、気にしないでください!! 入ってきてください!!」
そう僕が言うと、パーロルットさんは持っていた箱からいくつかの瓶を取り出して見せてきた。
「ちょうどいい媚薬などもありますが……」
「いりません!!」
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