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112.朝から
しおりを挟むそれから、ディゲーアは戦艦に魔法使いたちと兵士たち、国王を乗せて、国へ戻って行った。そこではすでに王子が次の国王になっていて、あのクソ国王は、幽閉されることになったらしい。
どれだけ見放されているんだ、あいつは。
ヴァンケズは、処刑を免れたのはディゲーアが尽力したからじゃないか、なんて言っていた。
そして、あの草原の街に戻ってきた俺たちは、また冒険者としての日々を過ごすことになった。
俺とヴァンケズが、魔獣の素材を集めてギルドに帰った話は、思ってた以上に広まってたみたいで、それからは、結構依頼を任せてもらえるようになった。
朝からギルドの受付に来た俺を、いつものようにコキヤジュが迎えてくれる。
「リューオ……おはよう!」
「あー……うん。はよー…………」
「どうしたの? なんだかすごく眠そう……」
「眠いよ……」
最近、俺は寝不足になることが多い。
俺とヴァンケズは、二人で一つの部屋を借りて暮らしているが、夜は別々のベッドで寝てる。それを希望したのは俺なのに、隣のベッドで寝ているヴァンケズが気になって気になって仕方がない。寝ているだけでヴァンケズの寝息なんかが聞こえてくるから、全く眠れないんだ。
しかも、昨日は俺がギルドで他の奴と長話していたことが気に入らなかったらしく、あいつが拗ねたりするもんだから、可愛くて。
「……あいつ…………なんであんなに可愛いーんだよ……」
「は?」
「な、なんでもない!! 今日はどんな依頼があるんだ!?」
「いろいろあるよ。リューオたちの噂は広まってるから。すごい冒険者がいるって」
「それはヴァンケズだろ? 俺は別に、すごくもなんともねーよ」
「自覚がないなー、リューオは。リューオに依頼したいって人も増えてるんだよ?」
「俺にか!? どんなのだ!?」
「いくつかあるけど……見てみる?」
彼がそうたずねたところで、いきなり後ろから押された。
「邪魔。いるなよ」
「てめえ……」
また出た。いまだに俺に何度も突っかかってくるトマティーオだ。こいつは、いつも朝から俺に喧嘩を売ってくる。ヴァンケズを探す時に協力してくれたことには心底感謝しているが、それとこれとは話が別だ!!
俺は、早速そいつに向き直った。
「てめえ!! 何しやがる!!!!」
「邪魔だから邪魔って言っただけ。受付でぼーっと立つのやめてー。丸腰冒険者」
「それやめろ!! 剣なら買った!!」
俺が腰の剣を見せてみても、トマティーオは「ろくに使えないくせ」に、なんて言って笑ってる。
こいつっ……! 馬鹿にしやがって!!
「使えるに決まってるだろ!! 昨日だって俺は魔物に勝ったんだぞ!!」
「ふーん。命辛々逃げて来たんじゃないのー?」
「なんだとてめえ……」
睨み合いになる俺たちに、ギルドに入ってきたフィエズートが、「朝から喧嘩しないでよ」と言って近づいてくる。彼も、まだ少し眠そうだ。
「……リューオは朝から元気だね……」
「元気じゃねーよ。朝から眠いのに、こいつに絡まれてたんだ!!」
苛立ちながらトマティーオの方を指すと、トマティーオも「お前が邪魔してなかったら絡まないよー」と言い出して、ますます睨み合いになってしまった。
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