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109.心配で
しおりを挟む「おいっ……!! フィエズート!!」
叫んで、フィエズートを追う。
すると、俺の声が聞こえてしまったのか、廊下に沿った扉から、人が出てきた。魔法使いだろう。その男は、侵入してきた俺たちを指して怒鳴った。
「き、貴様らっ……! 何をしてっ……!」
「お前らいると魔獣が迷惑なんだよ帰れっっ!!」
早口で言うが、男はこっちに向かって魔法の球を放つ。帰る気はないっていう意味だろう。だったら突破するのみだ。
俺は、向かってくる魔法の弾を避けると、拳を構えて男を殴り倒した。
「一体何人いるんだよ! この戦艦!」
すると、俺の前を走るヴァンケズが、振り向いて言った。
「……普段より、ずっと少ないよ」
そうなのか? さっきから、どんどん人が出てきている気がするんだが。
先頭を走っていたフィエズートが、廊下の先にある扉の方を指差して叫ぶ。
「見てっ……!! あれ!! あったよ!! き、木箱だ!!」
彼が指す方には、羽が生えた木箱が飛んでいる。廊下の奥にある扉に向かっているようだ。
ヴァンケズが冷静に言う。
「まずいね……あの向こう、操舵室だ。爆発したら帰ってもらえなくなる」
「はあ!? なんだよそれ!! じゃあ急ぐぞ!!」
俺はポケットから、さっきの羽の石を取り出した。さっき木箱に入っていたものを、一つポケットに入れておいたんだ。
それをかじると、俺とヴァンケズがあの城を飛び出した時みたいに羽が生える。なんだか懐かしいな!! この感覚!!
羽が生えた俺の体は、木箱めがけて吹っ飛んでいく。
ヴァンケズが、突然の事態に驚いて俺を呼んだ。
「リューオっ!!」
「お前は敵を倒してくれっっ!!」
廊下で騒ぐ音が聞こえたのか、木箱が向かっていた扉が開いて、魔法使いたちが飛び出してきた。侵入者の俺を見つけた彼らは、俺に向かって魔法を放つ。それは、全部ヴァンケズが防いでくれて、俺は木箱に飛びついた。
なんとか木箱は捕まえることができたけど、抱きしめた木箱は止まることなく開いた扉の中に飛び込んでいく。
「おいっ……! 止まれよっ……!!」
操舵室の中に突っ込みながら、木箱の羽を抑えつけると、飛ぶのを邪魔された木箱は、操舵室の中を何度か転がって止まった。
「よかったーーーー……ん?」
ホッとしたのも束の間、突然入って来た俺を「なんだお前はっ!!」と怒鳴りつけて兵士たちが取り囲み、魔法使いたちも離れたところから武器を向けている。
うっわー……やっべえ……突き刺されたら即死だ。
けれどその時、兵士たちをかき分けて、ディゲーアが駆け寄って来た。
「やめろ!! お前たち!! それはっ……敵ではない!」
そう言って、ディゲーアは木箱を抱きしめたままの俺に近づいてくる。
「リューオ……お前……なぜここに……」
「ここにいる奴らに帰ってもらいにきたんだよ! お前こそ、何してるんだ? お前もこれに乗ってたのか?」
「……いいや。俺は街でこの事態を知って……」
「心配でここまで来たのか?」
「あ、ああ……お前は? こんなところで、何を……」
ディゲーアが不思議そうにしていると、廊下からヴァンケズが走って来て叫ぶ。
「お前たち……リューオから離れろっっ!!」
ヴァンケズの姿を見て、その場にいた全員の顔色が変わる。よほど恐ろしいらしい。ヴァンケズは優しいのに。
「ヴァンケズ……俺は大丈夫だ! そうだ!! ディゲーアも見つけたぞ!!」
俺がそう言うと、操舵室に飛び込んできたフィエズートが、ディゲーアに抱きついていく。
「ディゲーア!!!!」
「ふ、フィエズート!? こ、こんなところで、何を……」
「だってっっ……!! ディゲーアがっ……! ここにいるっていうからっ……!!」
「……どうやら、心配をかけてしまったようだな。すまん……」
「……無事でよかった」
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