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102.続きするのか!?
しおりを挟むなんだかもう恥ずかしくて、顔も上げられないでいると、今度はヴァンケズの方から俺の手を握ってきた。
「ヴァンケズ……? うわっ……!」
彼はそばにあった扉を開けて、俺を連れ込んでいく。そこにも乱雑に荷物が積まれていて、魔法使いたちがいた。彼らは突然入ってきた俺たちに向かって武器を構えるが、ヴァンケズの魔法ですぐに眠ってしまう。
バタバタ人が倒れていき、静かになった部屋で、ヴァンケズは俺に振り向いた。
「お、おいっ……ど、どうしたんだよ…………ヴァンケズ? な、なんで、こんなところに……」
「他人に聞かれたくないから」
「へっ……!??」
聞かれたくないってなんだよっ……! 俺だって……さっきの聞かれてちょっと恥ずかしかったけど……
だけど、追っ手の奴らにもヴァンケズが俺のって分かってもらえたなら、それでいい。
ヴァンケズは、俺に振り向いた。
何だか、いつもと雰囲気が違う……?
いつもヴァンケズは、俺にめちゃくちゃ優しい。
自分で言うのも何だが、俺のそばにいるのって、かなりめんどくさいと思う。最初の頃は、無謀にも毒の棘を集めて、ヴァンケズにめちゃくちゃ迷惑かけたりもした。
それでも、ヴァンケズはいつだって俺に優しかった。
それなのに、今はなんか怖い……俺を見下ろす目が、いつもと違う。食いつかれそうな気がして、息が詰まる。
怒ったのか? 俺が急に変なこと言ったから。だけど俺はどうしても、こいつに気持ちを伝えたかったんだ。
「ヴァンケズ……ど、どうした……?」
一人で混乱するばかりの俺を、ヴァンケズは急に引き寄せて抱きしめた。
「ヴァンケズ!!??」
俺を抱きしめる腕が力を増す。なんだか捕まったみたいで、痛いくらいだ。正面から俺を抱きしめたヴァンケズは、俺の肩に顔を伏せて、どこか苦しそうに囁いた。
「……俺だって…………リューオのこと、ずっと好きだった……」
「は!!??」
え!? 今、こいつ、何て?? 好き!? 俺をっっ!??
突然そんなこと言われて、今度こそ俺は、パニックに陥ってしまった。
好きって、俺をか!? こんなにめんどくさいのに!??
「え!? はあ!!?? えっ!?」
「そんなに驚くことないだろ?」
「だ、だって……お、お前が俺のこと、好きって……は!? え!? お、お前っ……俺のこと……好き……なのか?」
「好きだよ。これが終わったら二人きりになって、ゆっくりリューオのこと貰おうと思ってた」
「も、もらうって……」
何をだ? あ、告白の返事か。国王のことが終わったら、二人きりになって、ゆっくり告白するつもりだったってことか。
彼が俺を見下ろす。目が合うと、ヴァンケズはいつものヴァンケズで、すごく優しい目をしている。なんだかホッとするのに、今度は照れる。ヴァンケズ……俺のこと好きだったのか……
「あ……えっと、ごめん……こんなところで言って…………」
「なんで? 俺は嬉しかったのに。リューオに好きって言ってもらえて」
「ヴァンケズ…………」
なんだ……俺ら、両思いだったんだ……
ヴァンケズの声は穏やかで、俺を抱きしめる手からも、少し力が抜けて、いつもみたいに優しい手つきになる。そんなふうにされて、俺の緊張は解けていく。
ヴァンケズも、俺のことが好きだったんだ。すげー嬉しい……
気づいたら、俺の手も、ヴァンケズの背中に回っていた。
「俺も……すげー嬉しい…………お前、怒ってるのかと思ってたから……」
「え!? なんで?」
「だ、だってっ……き、昨日……部屋、別々だったし……髪の毛だって拭かせてくれなかったじゃねーか!! ひ、一人で魔物退治行くし……俺も連れて行け!!」
「……ごめん……心配かけちゃった……? リューオに負担をかけたくなかっただけなんだけど……」
「……そんなことより、俺から離れんな!」
「うん……ごめん……俺、リューオの周りに、俺以外の奴がたくさんいるから……妬いてたみたい」
「……な、何言ってんだよ……」
ここに来てから会った奴らだって、みんな仲間だし、みんな大事だ。だけど、こんなふうに好きなのは、ヴァンケズだけだ。
「俺が好きなのは……お前だけ、だよ…………他の奴らは仲間で、お前は……その……す、好きな奴、だ……」
「リューオ………………」
彼が俺を抱きしめる腕に、また力が入っていく。ぎゅっとされて、彼の力が強くて、なんだか熱くなってきた。
「……ヴァンケズ…………あ、あの……」
「リューオ……俺、嬉しい…………リューオの気持ち、知れて。正直、嫌われちゃったかと思ってたから……」
「はあ!?? そ、そんなわけねーだろっっ!! お、俺はっ……こ、こう見えて好きになったのなんて、お前が初めてだからな!! お前だけっ……こんなに好きなんだからなっ……!!」
「リューオーー…………」
「お、おいっ……!!」
こいつ、だんだん力、強くなってねえ? 背中にあった手も、だんだん下がってきて、腰のほうに回った手が、俺の体をしっかり捕まえてる。
ヴァンケズにそうされるのは嬉しいが……あ、あんまり触られるのは慣れてないって言うか…………な、何だかますますドキドキしてきた。
俺は焦るばかりなのに、ヴァンケズは、いつもの調子で優しく言う。
「……俺も、リューオのこと、すげー好き…………このままずっと離したくないくらい、大好き」
「ヴァンケズ……」
「俺、ずっとリューオと一緒にいたい……」
「そんなのっ……俺だって……」
「本当!?」
「あ、ああ……」
「嬉しいっ……!」
「ひゃっっ!!」
今、尻の辺りがくすぐったくなった。さっきまで俺の背中にあったヴァンケズの手が、尻に降りてきたらしい。つかむようにぎゅっと強く触れられて、びっくりした。
どこ触ってんだこいつ!! 力が入りすぎたのか?
「お、おい……ヴァンケズ? おいっ!! ひっ!! ど、どこ触ってんだよ!! ひゃっ……!」
今度はくすぐったい。ヴァンケズの手が、優しい手つきでそこを撫で回りしているんだ。そんなことをされるのは初めてなのに、味わうように強く擦られて、なんだかゾクゾクしてきた。
たまたま力が入りすぎて……なんかじゃない!! こいつ絶対わざとやってる! なんで尻触るの!??
「おっ……おいっ! ヴァンケズっ……!」
見上げたら、ヴァンケズはすごく楽しそうで、優しそうに笑っているのに、なんだか怖い……なんでそんなにニコニコしてんの!? 俺、すっげードキドキしてるのに!
「ヴァンケズっ……ちょっ……! 変なとこ触んな!!」
「やだ。ずっとリューオに触るの、我慢してたんだから」
「んなこと言われてもっ……ひっ……!」
こいつっ……尻どころか穴の辺りにまで指で触れてきた。服の上からそれを探るようにされて、咄嗟に逃げようとしても、そんな力で抱き寄せられてたら逃げられない。
焦る俺とは対照的に、ヴァンケズはとにかく楽しそう。
「リューオの声、可愛い…………」
「ば、馬鹿!! やめろって……人がいるだろっ……」
「いないよ?」
「いるだろ!! 寝てるだけで! 起きたらどーすんだよ!!」
「起きないよ。絶対。俺が魔法をとかない限り。リューオのそんな声、他の男に聞かせるわけないだろ?」
「は!!??」
じゃあ、聞かれたくないって、これのこと!!?? こいつ、最初っからこんないやらしいことする気だったのか!!??
無理だろっ……こんなの! 俺は告白も初めてだし、キスだってしたことねーんだぞ!!
「おいっ……ヴァンケズっ……待てっ……」
「やだ」
「ひっ……!」
尻をいじっていた手が、俺の内股を開くように入ってきて、俺は震え上がる。
だから、そういうとこ触んな! 今ちょっと股間に触れただろ!
なんだか体の奥まで熱くなってきた。いきなりこんなの無理だ!
「ヴァンケズっ……! た、頼むって……フィエズートたちが待ってるだろ!!!!」
俺たちを待っているあいつのことを口に出すと、ヴァンケズの力が少し緩んだ。
「そうだね…………」
「……だ、だろ? お、俺だって……お前のこと好きだけど……その……い、いきなりこんなの……すげ……照れるし…………急には……緊張しすぎて……」
声、震えてきた。心臓だってめちゃくちゃ早く鳴ってて、抱きしめられた熱で、どうにかなりそうだ。体が微かに震えて、ヴァンケズは、俺のことを離してくれた。
ヴァンケズが俺のことを離してしまうと、少し寂しい。離せって喚いたの、俺なのに。
だけど、まだ高鳴った体はそのままで、苦しいくらいだ。
「ヴァンケズ……」
「へ!?」
「……戻ろうか。フィエズートたちのところ」
「あ、ああ……そ、そうだったな……」
解放されたかと思えば、またぎゅっと抱きしめられる。そして俺の額に、濡れたものが、微かに触れた。
「へっ……!? は!? え!? 何すんだよ!」
今の絶対、キスされたんだっっ!!
真っ赤になる俺を、ヴァンケズは嬉しそうに見下ろしている。
「あと、少し。だめ?」
「だめ!! あ、あいつらのところに戻る!! ヴァンケズっ……!!」
「……仕方ないな……俺はリューオのだし……いうこと聞くけど……ここから出るまで我慢するか……」
出るまでってなに!?? ここから出たら続きすんのか!??
「ヴァ、ヴァンケズ…………」
「行こう。リューオ。早く終わらせよう」
「……」
なんだか……ヴァンケズがすげー笑顔だ……そんな顔見たら、俺だって嬉しい。ちょっと怖いけど……それでもやっぱり、すげー好きだ。
俺も、ヴァンケズの手をとって、その部屋を出た。
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