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97.もちろん分かってる!

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 襲って来た男をバラルレイたちに任せて、俺は、スキュクイドとフィエズートと一緒に、草原を進んだ。国王の部隊が結界を張っている辺りとやらは、すでにバラルレイたちから聞いている。だけどこの草原、本当に広い。行けども行けども、目的地が見えない。途中でヴァンケズが大きな狼の姿になって、俺たちを背中に乗せてくれた。

 しばらくいくと、ヴァンケズの背中に乗っていても俺たちの姿が隠れるくらい、背の高い木々が並ぶ辺りまで来た。

 フィエズートが、ヴァンケズの背中の上からあたりを見渡している。

「この辺……森なんてあったっけ?」

 すると、スキュクイドが首を傾げる。

「いや……この辺りは草原だったはずだ。周りの木も……変な形してるものが多い。この辺りでやってることを隠すために、魔法で作らせた森じゃねーのか?」
「……こんなものまで作らせるなんて……どういうつもりなんだろう………………あと、リューオは何してるの?」

 フィエズートに言われて、俺はヴァンケズの背中の上でそいつに振り向いた。
 何って、ヴァンケズの背中の上でうつ伏せに寝ていただけだ。

 やっぱりこいつのもふもふ、気持ちいいーー……

「昨日寝れなかった分を取り返してるーー」
「今? これから、王国の精鋭たちと戦うって分かってる?」
「もちろん分かってる!」
「……寝ながらそんなこと言われても、ますます不安になるんだけど……」
「分かってるからこうして寝てるんだろ? 昨日眠れなかったから、よく寝ておかないとな!! いざって時に戦えねーだろっ!!」
「だからって、今寝ないでよ……」

 そう言われても、眠いものは眠い。

 ヴァンケズの背中で横になっていると、体の上に布団が降って来た。

 俺を乗せたヴァンケズが優しい声で言う。

「リューオ、そんなところで寝てると、風邪ひくよ? 朝は冷えるし、布団、かぶってて」
「ヴァンケズーー」

 こいつが魔法で出してくれたのか……すっげー気持ちいい。お礼を言って布団に入ると、早々に眠ってしまいそうだ。

 フィエズートが呆れたように言う。

「ヴァンケズまで…………」
「フィエズートも寝ろよー。すっげー気持ちいいぞーー」
「……僕はいいよ……それより、装備は大丈夫? ちゃんと回復の薬は持っていかないと……」
「リュックに入れてある! それに、トマティーオの知り合いの店の店主が、弁当作ってくれたんだ! そこで回復の薬もいっぱい譲ってもらって……昨日の報酬で、ジュースとお菓子も買えたぞ!」
「……リューオ……戦いに行くんだって分かってる?」
「もちろんだ!! 向こうに着いたら、弁当食べよう!!」
「……分かってないよね? 絶対……」

 呆れたように言うフィエズートに、スキュクイドも少し困ったように言った。

「…………それより、向こうに着いたらどうするんだ? たった四人で、正面から向かって行っても勝てないぞ。どうするんだよ」

 すると、ヴァンケズが俺たちを背中に乗せたまま言った。

「俺たちの目的は、あいつらをここから追い出すことだ。とりあえず、結界を張っているところを魔法で記録して、戦力を削いで、結界を張るために設置している道具でも持って帰ろうか」

 あっさり言ったヴァンケズに、スキュクイドが焦った様子で言う。

「か、簡単に言うな!! そんなこと!!」
「何とかなるよ。スキュクイドもフィエズートも、俺から離れないでね」

 ヴァンケズが言うと、スキュクイドはまだ困ったように「うん」って答えて、フィエズートは力強く「分かった」って答えてた。

「あ、あのっ……ヴァンケズ!」

 フィエズートが、いつもより力を込めて彼を呼ぶと、ヴァンケズも彼に振り向く。

「……なに?」
「ディゲーアのこと、ちゃんと探し出そうねっ……!」
「………………まだ、ディゲーアが向こうにいると決まった訳じゃないけど……」
「で、でもっ……!」
「……分かった。向こうに行ったら、あいつのことも探そう。下手に人質にでも取られたら面倒だし」

 冷たく言っているように聞こえるけど、こんな風に言う時のヴァンケズは、だいたい自分の気持ちを隠している。内心では、ディゲーアのことを心配してるんだろう。

 俺はそいつの体にぎゅっとしがみついて言った。

「なあ……ヴァンケズ!」
「リューオ? どうしたの?」
「……ディゲーアのことも探そうな! 俺らで!」
「……うん」

 ……ちょっと、あいつとはどういう関係だって聞きたくなったが、それは後でいいか。
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