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91.悔しい

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 フィエズートは、ソファで難しい顔をして、「彼がどこにいるのか、検討はつきますか?」と聞いた。

 けれど、バラルレイは首を傾げてしまう。

「ディゲーアがか? そうだな……俺には分からないが……もしかしたら、あいつも草原の方に出ているかもな」
「な、なんでですか?」
「あいつはいつも、お節介だからな。陛下の横暴に悩む連中を放っておける奴じゃない」
「……」
「どうした?」
「国王は、随分反感を買っているようですが……大丈夫なんですか?」
「…………俺には、今の王国のことは分からない……俺が王国を出たのは、だいぶ前だからな」
「そう……ですか……」

 フィエズートは俯いていた。よほどディゲーアのことが心配らしい。俺がそいつの肩に手を置くと、そいつは俺に振り向いて首を傾げた。

「リューオ……?」
「向こうに行ったら、ディゲーアのことも探そうぜっ!」
「…………うん!!」

 そう言って笑うフィエズートに、俺と一緒にいた魔獣も可愛らしく鳴いていた。

 それを見て、バラルレイも驚いていたようだ。

「……お前たちは随分、あの二人と仲がいいな」
「仲いいに……決まってるだろ! 俺はヴァンケズの……仲間だからな!!」

 胸を張って答える。あいつと仲良いって言ってもらえたことが、嬉しかったんだ。嬉しいには嬉しいんだけど……なんだか、物足りないような気がする……

 やっぱり俺、あいつのこと……す、好き……なのかっ!??

 そもそもここに来たのも、あいつのことが気になりすぎたからだしっ……! やっぱり、そうなのか!!??

 そんなことばかり考えていたら、バラルレイの顔まで見れなくなってきた。そばにあったクッションに顔を埋めると、バラルレイに「どうした……?」と、心配そうに聞かれてしまう。

「べ、別にっ……! な、なんでもねえっ……!! あいつは……あいつは、仲間……だし…………」

 ヴァンケズは、仲間だ。俺の大切な。だけど、やっぱりそれだけじゃない。だってさっきから、ずっとあいつことばっかり考えてる。早く誤解を解きたい。あいつに避けられてるかもって思っただけで、いてもたってもいられなくなる。

 まだあいつは風呂か……

 待ってるのも、少し辛い。早く会いたい。

 すっかりクッションから顔を上げられなくなった俺の隣で、フィエズートがディゲーアにたずねた。

「ディゲーアとヴァンケズさんは……王国では、仲がよかったんですか? ヴァンケズさんのこと……とても心配してましたけど……」
「……ああ。強力な魔物と戦う時は、二人で行くことが多かったからな」
「なんで二人で? 大勢で行ったほうが有利じゃないんですか?」
「あの二人についていくのは俺でも難しい。むしろ、他の者など、足手まといになるだけだ」
「そんなに……?」
「そうだな。二人で行く時は、唯一無二の仲間といったような二人だった」
「…………そうですか……」

 それきり、難しい顔をして黙るフィエズート。

 俺もなんだか気になって、二人の話に聞き入っていた。

 あの二人、そんなにうまくやっていたのか?

 ますますもやもやする。あいつの隣にいるのは、今は俺のはずなのに。
 ディゲーアの方が、確かに魔法とかは使えるんだろうけど……唯一無二か……

 くっそ……なんだか悔しい。
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