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89.仲間?
しおりを挟むヴァンケズは、じっと俺のことを見下ろしている。なぜか俺まで、彼から目を離せなくなるくらいだった。
「リューオは……俺のこと、どう思ってる?」
「…………え……」
どうって、もちろん、仲間だと思ってる。だけどそんなの、何回だって伝えてる。それなのに、なんでまたそんなことを聞くんだ。
「ど、どうって…………」
「…………仲間?」
「あ、ああ……そうだよ……だ、だめなのか?」
「……ダメじゃない。だけどそれって……フィエズートもスキュクイドも……そうなんだろ? むしろ、スキュクイドには飛びかかって、フィエズートとはいつだって笑って話してるのに……俺のことは振り払って……」
「へっ……!??」
確かにさっきは振り払ったけど、それは魔獣を追いかけるためだ。も、もしかして、なんか誤解されてるのか?
「……ヴァンケズ……お、俺は、その…………えっと……」
何を言おうか、頭の中でまとまらなくて、口籠る。
周りがしんとなる。
すると、コキヤジュがパンパンと手を叩いて言った。
「とりあえず……一旦ここから移動しましょう。魔獣や結界の件も、協力できるかもしれません。今日は眠って、作戦会議をしませんか?」
*
あーーーー!! 疲れた!!
俺は、コキヤジュが紹介してくれた宿のベッドにゴロンと転がった。
今日は色々あって疲れた。本当なら、すぐに眠ってしまいそうなくらいだ。
宿はギルドのすぐそばにあって、俺とフィエズートとスキュクイドで一部屋。隣はヴァンケズとフオライとバラルレイ。トマティーオは、店が心配だと言ってあの店に帰り、コキヤジュはギルドに報告すると言ってギルドに帰ったからいない。部屋割りを決めたのはヴァンケズで、バラルレイとフオライを見張るためだって言ってた。いつもなら、そういうものかと思って納得したと思うけど、あんなことがあった後じゃ、避けられたような気がする。
風呂も飯も最高だったのに、気が晴れない。ヴァンケズのことばかり考えてしまう。
ヴァンケズ……なんであんな顔してたんだ? 俺があの時振り払ったこと、そんなに怒ってるのか!??
「くっそーー…………なんなんだよぉーー……」
パジャマのまま、ベッドの上で布団をかぶって枕に顔を埋めてみる。考えれば考えるほど、頭が痛くなりそうだ。
部屋に来るなりそんなことばかりしている俺を心配したのか、小さな魔獣が俺の布団の中に入ってくる。そして小さな声で鳴きながら、俺の頬を舐めていた。元気付けてくれてんのか? なんていい奴なんだ……
俺が頬をくすぐってやると、魔獣は気持ちよさそうにしていた。
そうだ。こんなことしている場合じゃない。ヴァンケズが誤解してるみたいなら、誤解を解きに行けばいいんだ!!
起き上がって、布団から飛び出す。すると、隣のベッドに座っていたらしいスキュクイドが驚いて俺に振り向いた。
「おい……大丈夫か? リューオ」
「……勿論だ」
「……そうか……明日には、王国の精鋭の魔法使いたちと一戦交えるかもしれないんだ。緊張するのは当然だ……」
「俺、ヴァンケズの部屋、行ってくる」
「…………お前、なんか深刻な顔して悩んでいるかと思えば……結局ヴァンケズのことかよ……」
「ヴァンケズのこと以上に大事なことなんか、ねーんだよ!」
ヴァンケズは隣の部屋だ。俺がこっちの部屋で、ヴァンケズが隣の部屋に行く時、あいつ、何も言わなかった。俺、「また明日な」って言ったのに、聞こえてなかったんだ。その時は、もしかして返事したくなかったのかと思って落ち込んだけど、ヴァンケズがそんなことするはずがない。
きっと、何か俺の声が聞こえないくらいに考え込むことがあったんだ。
俺が部屋から出ようとすると、フィエズートも駆け寄ってくる。
「僕も行くっ……」
「お前も?」
「……連れて行かれた魔法使いっていうのが……気になるから……」
「……分かった……」
すると、スキュクイドもベッドから降りてきた。
「……待てよ。だったら俺も行く!」
「なんだよ。結局お前も来るんじゃねーか!」
「作戦だよ! 明日の作戦立てるんだ! このままだと、お前ぜっってーーヴァンケズと二人で突っ込んでくだろ! そんなあぶねー奴らと一緒に行けるか!」
「でも、来るんだろ?」
「勝てる作戦立てるためにな!」
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