72 / 114
72.あいつを探すことの方が
しおりを挟む俺は、トマティーオに振り向いた。
「やっと手がかかりが見つかった! お前のおかげだ!」
「別に……素材と交換だから教えてやっただけ。お前があまりにも馬鹿だから」
「馬鹿ってなんだ! 馬鹿って!」
「だって、丸腰で草原歩こうとしてただろ? あのヴァンケズって男はどうしたの? お前の周りをチョロチョロしてた、あの小さいのもいない。なに? もうパーティ解散しちゃった?」
「んなわけねーだろっっ!!!!」
怒鳴りつけると、そいつは少し驚いたようだ。だが、こんな奴に構っていられない。普段なら売られた喧嘩は買うが、ヴァンケズがいねーとそんな気にもなれねー。
「ちっ……覚えてろよ!」
「は? 地図描いてやっただろー? もう少し感謝したら?」
「それは感謝してるよ! るせーな……俺は急いでるんだよ!」
「……は? もう行くのか? ギルドでも草原でも、すぐ俺に突っかかってきたくせに、今度はずいぶん大人しいな。俺に馬鹿にされて悔しくないの? それとも、やっと実力の差が分かった?」
「絡んでるのはお前だろ。俺はヴァンケズを探さなきゃならねーんだ……お前のことは、ヴァンケズを見つけたら殴ってやる!!」
俺が言うと、コキヤジュがトマティーオに駆け寄っていく。
「あのっ……トマティーオさん! ちょうどよかった……」
彼が出したのは、俺が草原で拾った短剣。ギルドに行った時に、彼に預けていたものだ。
「これ、リューオさんが拾ってくれたんです。返しておきますね!」
「……そいつが……?」
そんな嫌そうな顔しなくてもいいだろ……
トマティーオは、コキヤジュから嫌そーーに短剣を受け取って、俺に振り向いた。
「お前さ……馬鹿なの?」
「だから誰が馬鹿だ!!」
「こんなの持ってるなら、はなからこれを交渉に使えばいいだろ? 結構大事なものだったし……これと引き換えって言われたら教えてあげてたのに……馬鹿?」
「それは拾ったものだ! 何でそれを交渉に使うんだよ! 元々お前のもんだろ!」
「……甘いこと言って……馬鹿みたい」
「お前……ヴァンケズ見つけたら覚えてろよ! つーか、大事なら落とすんじゃねえ!!」
怒鳴ったところで、ドアが開く音がする。振り向けば、俺よりずっと背が高く、背中に大きな剣を担いだ男が、店のドアを開けて立っていた。
「なんだー? 客か?」
キョトンとするそいつに、トマティーオが駆け寄っていく。
「おかえり……」
「どうしたんだ? 客か?」
「……それっぽいもの……」
うざそーな顔して、トマティーオが俺に振り向く。だが、俺はちゃんとした客だぞ!
「それっぽいってなんだ! それっぽいって!!」
51
お気に入りに追加
404
あなたにおすすめの小説
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
迷子の僕の異世界生活
クローナ
BL
高校を卒業と同時に長年暮らした養護施設を出て働き始めて半年。18歳の桜木冬夜は休日に買い物に出たはずなのに突然異世界へ迷い込んでしまった。
通りかかった子供に助けられついていった先は人手不足の宿屋で、衣食住を求め臨時で働く事になった。
その宿屋で出逢ったのは冒険者のクラウス。
冒険者を辞めて騎士に復帰すると言うクラウスに誘われ仕事を求め一緒に王都へ向かい今度は馴染み深い孤児院で働く事に。
神様からの啓示もなく、なぜ自分が迷い込んだのか理由もわからないまま周りの人に助けられながら異世界で幸せになるお話です。
2022,04,02 第二部を始めることに加え読みやすくなればと第一部に章を追加しました。
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる