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72.あいつを探すことの方が

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 俺は、トマティーオに振り向いた。

「やっと手がかかりが見つかった! お前のおかげだ!」
「別に……素材と交換だから教えてやっただけ。お前があまりにも馬鹿だから」
「馬鹿ってなんだ! 馬鹿って!」
「だって、丸腰で草原歩こうとしてただろ? あのヴァンケズって男はどうしたの? お前の周りをチョロチョロしてた、あの小さいのもいない。なに? もうパーティ解散しちゃった?」
「んなわけねーだろっっ!!!!」

 怒鳴りつけると、そいつは少し驚いたようだ。だが、こんな奴に構っていられない。普段なら売られた喧嘩は買うが、ヴァンケズがいねーとそんな気にもなれねー。

「ちっ……覚えてろよ!」
「は? 地図描いてやっただろー? もう少し感謝したら?」
「それは感謝してるよ! るせーな……俺は急いでるんだよ!」
「……は? もう行くのか? ギルドでも草原でも、すぐ俺に突っかかってきたくせに、今度はずいぶん大人しいな。俺に馬鹿にされて悔しくないの? それとも、やっと実力の差が分かった?」
「絡んでるのはお前だろ。俺はヴァンケズを探さなきゃならねーんだ……お前のことは、ヴァンケズを見つけたら殴ってやる!!」

 俺が言うと、コキヤジュがトマティーオに駆け寄っていく。

「あのっ……トマティーオさん! ちょうどよかった……」

 彼が出したのは、俺が草原で拾った短剣。ギルドに行った時に、彼に預けていたものだ。

「これ、リューオさんが拾ってくれたんです。返しておきますね!」
「……そいつが……?」

 そんな嫌そうな顔しなくてもいいだろ……

 トマティーオは、コキヤジュから嫌そーーに短剣を受け取って、俺に振り向いた。

「お前さ……馬鹿なの?」
「だから誰が馬鹿だ!!」
「こんなの持ってるなら、はなからこれを交渉に使えばいいだろ? 結構大事なものだったし……これと引き換えって言われたら教えてあげてたのに……馬鹿?」
「それは拾ったものだ! 何でそれを交渉に使うんだよ! 元々お前のもんだろ!」
「……甘いこと言って……馬鹿みたい」
「お前……ヴァンケズ見つけたら覚えてろよ! つーか、大事なら落とすんじゃねえ!!」

 怒鳴ったところで、ドアが開く音がする。振り向けば、俺よりずっと背が高く、背中に大きな剣を担いだ男が、店のドアを開けて立っていた。

「なんだー? 客か?」

 キョトンとするそいつに、トマティーオが駆け寄っていく。

「おかえり……」
「どうしたんだ? 客か?」
「……それっぽいもの……」

 うざそーな顔して、トマティーオが俺に振り向く。だが、俺はちゃんとした客だぞ!

「それっぽいってなんだ! それっぽいって!!」
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