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56.次々に

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 森の中を走るヴァンケズの背中に乗っていると、魔獣がいるという方から、強い光が飛んできた。魔法の光らしい。魔獣と何かが戦っているんだ。

 ヴァンケズが木々の間から飛び出す。その先では幾つも木が倒れて踏み潰されたように崩れていた。その向こうに、空に向かって吠える巨大な獣がいる。周りの木々の背をゆうに越すくらいの大きさで、吠える口には鋭い牙が並び、それが吠えるだけで、周りの木々が薙ぎ倒されていく。

 その魔獣の周りを数人が取り囲んでいた。あいつらが魔獣と戦っていたんだろう。
 フィエズートに「あいつらも冒険者か?」と聞くと、彼は「多分」と言って、頷いていた。

「僕も、ギルドに登録してる冒険者をみんな知ってるわけじゃないから……はっきりとは言えないけど……」
「そうか……だけどあれ、ヤバくないか?」

 冒険者たちは、魔獣に向かって次々魔法を放っているが、魔法は獣の吠え声ひとつで消えてしまう。

 すげえ力だ……あれが魔獣か。

 魔獣がさらに空に向かって吠えると、その声に吹き飛ばされるように、周りにいた男たちは倒れていく。

 ヴァンケズが叫んだ。

「みんなっ……! 俺の周りに集まってっ……!!」

 俺は彼の体にしがみついて、フィエズートもスキュクイドも、彼の尻尾に飛びつく。
 すると、優しい風のようなものが、俺たちの周りを包んだ。

 フィエズートやスキュクイドが、ヴァンケズの背中を登って、背中にいる俺に近づいてくる。

 フィエズートは、感心したように言った。

「結界? すごいね……魔獣の魔力も防ぐのか……」
「すげーことなのか?」

 俺が聞くと、フィエズートは怪訝な顔をして答える。

「リューオって、その……ちょっと色々知らなさすぎない? 魔獣のことも魔物のことも……それに、魔法とか冒険者のことだって……」
「あー……うん……ち、ちょっと……い、色々あってな……」
「…………魔獣の魔力は、僕らとは段違いだ。あの膨大な魔力を抑えるなんて、普通じゃできない……これなら、魔獣にも勝てるかも……」

 フィエズートが、魔獣がいる方に向き直る。

 吠え続ける魔獣の力なのか、それを取り囲んだ連中は動けないらしく、もがいても立てずに倒れてしまう。

「なあ!! あれっ……やべーんじゃねーのか!?」

 俺らはヴァンケズの結界に守られているが、あいつらの周りにはそれがない。しかも、この結界は、誰にでも作れるものではないというなら尚更だ。

 俺は、ヴァンケズの背から飛び降りようとしたけど、スキュクイドに止められた。

「待てよ! 馬鹿!! 周りに魔物が集まってるだろ! 勝手にいくな!!」

 言われて見下ろせば、彼の言うとおりで、魔獣の周りに泥のようなものが動いていた。魔物だ。しかも、そのうちの一つが俺たちに向かってきた。それはヴァンケズの結界に阻まれて消えていくけれど、魔物の方も次々に湧いてくる。

 ヴァンケズは「リューオはちゃんと俺のそばにいてね」と言って、魔法で魔物を吹き散らした。
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