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53.食べるか?

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 それから、その男のことは、ヴァンケズが魔法で作り出した竜でギルドまで送ってくれた。

 やっと食事の時間だ。俺たちがとって来た食材に加えて、スキュクイドが持っていた米や肉もある。それをヴァンケズが調理して食事を作ってくれた。

「すっげーーーー!! おにぎりだ!! こっちの世界にもあるんだな!!」

 焚き火に網を使って焼いたおにぎりは、香ばしくて涙が出そうなくらい美味い。串を刺して焼いた魚と肉とスープもあって、今日の飯は豪華だ!

 スキュクイドも、俺の隣でおにぎりに夢中になっている。

「……こんなの……初めて食べた……美味しい……」
「こっちも食えよ! うまいぞ!」

 俺が差し出した魚の串を、スキュクイドは受け取って咥えると、ぼそっと言った。

「……うまい…………」
「だろー?」
「……お前が釣ったわけじゃねーだろ……」
「んなこと言ったって、俺が釣っても全く釣れなかったんだ。だから俺は、このスープに入れるキノコを集めていたんだよ!」

 俺が胸を張ると、俺の隣で食事をしていたフィエズートが、魚をかじりながら呆れたように言う。

「リューオに釣り竿渡したら、すぐに釣れないって言って騒ぎ出すから、うるさくて僕が取り上げたんだろ……」
「だって釣れねーんだから仕方ねーだろ!」
「リューオは短気すぎるよ。それじゃ釣れるはずがない」
「ぐっ……」

 確かにそれは認めるが……

 落ち込む俺に、フィエズートが微笑んだ。

「魚は……僕が釣る。あ、ありがとう……リューオ」
「あ? 何がだ?」
「僕の武器、だいぶ良くなったんだ。これがあれば、これまでよりは魔物と戦えそう」
「それならヴァンケズに言えよ。武器を直したのはあいつだろ?」
「リューオだって、ここまでついて来てくれたじゃないか。あ……ありがとう……」

 彼は俺を見上げて、本当に安心したような顔で笑う。なんだか可愛く見えてきた。

 そんな風に話していたら、ヴァンケズが俺らの間に入ってくる。ちょっと強引なくらいにそうしたヴァンケズは、俺に振り向いた。

「今……フィエズートに目を奪われてなかった?」
「はあ!?? な、何言ってんだよ!!」
「だって、フィエズートのこと、ずっと見てた」
「そ、それは、魚がうまそうだっただけだ!! 目を奪われたとか、そんなんじゃねーよ……」

 こいつ……何言ってるんだよ……

 確かにフィエズートは可愛らしいが、こいつは仲間だ。

 それに俺は……さっきからお前のこと気になって仕方ねーんだけど……

 そう言ったら、こいつはどうするんだろう……

 困るのか?

 だけどヴァンケズだって、俺に似たようなことをした。今朝、布団で襲われたこと、俺は忘れてないからな!

 ……あれは、どういう意味だったんだ……?
 俺はリューオのものって、ヴァンケズはしょっちゅう言ってるけど、あれはどういう意味なんだ? 俺に恩があるって思ってて、それでそんなことを言っているだけなのか?

 聞いてみたい……だけど……そんなの、なんて言って聞けばいいんだ!!

 ヴァンケズをじっと見つめていたら、彼が俺の視線に気づいてしまったらしく、俺に振り向いた。そいつと目があって、なんだか気まずい。

「あっ…………た、食べるか? スープ……」

 照れ隠しに差し出して、それは俺の食べかけだったことにすぐ気づいた。こんなの渡したら、間接キスじゃねーか!!

 慌てて差し出したばかりのものを全部飲んで、新しい器にそいつの分をよそった。

 熱いスープを一気に飲み干した俺に、ヴァンケズが心配そうに言う。

「リューオ……どうしたの? 熱くない……?」
「あ、熱くねーよ……こ、このくらい……………」

 むしろヴァンケズが近づいてきて、こいつのことしか考えらんねー……
 それでも強がる俺から、ヴァンケズはスープを受け取ってくれた。そして、小さな声でつぶやく。

「俺は……リューオの食べかけがよかったのに…………」

 だからそれはどう言う意味だっ……! なんでそういうこと言うの!? こいつっ……!
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