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45.勘違いしないで

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「なんでって言われても……ずっと魔物と戦ってたって、話しただろ?」

 俺が言っても、スキュクイドは驚いたような表情を浮かべるばかりだ。

「……そんなのっ……悪い冗談かと思ってた……ほ、本当だったのか……?」
「こんな嘘つかねーよ。それより、怪我はないか?」
「……別に…………ない……」

 ぶっきらぼうに言って、スキュクイドは立ち上がり、俺たちから離れて行く。
 そしてすぐに立ち止まると、振り向かずに小さな声で「……助かった」と言った。

 俺はすぐに、そいつに駆け寄った。

「待てよ!! また魔物が出るかもしれないだろ!?」
「…………出ても一人でなんとかする」
「それなら俺たちに依頼した意味がないだろーが!! 待てって!!」

 先に行ってしまおうとするスキュクイドに追いついて、俺はそいつの隣を歩き始めた。

「せっかくだから、一緒に行くぞ!」
「……しつこい奴だな……」
「お前、俺たちのことばっかり聞いてるけど、お前は? 魔物とは、戦い慣れてるのか?」
「……少しは……戦えないことはない……」

 そう言って、そいつは俯いている。その隙に、俺はそいつに飛びかかった。

「うわっ……何すんだ!!」

 そいつは驚いて、その場に倒れてしまう。「何すんだ!」と言って、俺を押しのけようとするけれど、その動きはさっきよりずっと鈍い。

「……お前、やっぱりどこか怪我してるのか?」
「るせえ!! これは、今やられた傷じゃねえよっ……!! 構うな!」
「今じゃなきゃいつだよ!! これから魔物に会いに行くんだっ……回復してから行くぞ!」
「必要ねえ!! お前らなんかに同情されたくねーよ!!」
「同情じゃねーよっっ!! お前、依頼人だろ!? だったら俺らの言うこと聞けよ!!」
「なんでそうなるんだよ!!」

 スキュクイドは怒鳴って暴れているが、体に力が入らないのか、簡単に取り押さえることができた。
 フィエズートが慌てて俺に駆け寄ってくる。

「り、リューオ! 何してるんだよ! 依頼人に乱暴しないで!」
「こいつが暴れなかったら何にもしねーよ! 回復してから出発するって言ってるだけだろ!」

 喚きあう俺たちの間に、ヴァンケズが入ってくる。

「リューオ。落ち着いて。彼の傷なら、回復の薬か魔法で治ると思う。そろそろお昼だし、その辺で昼食にしよう」
「飯か!! そうだな!! そうしよう!!」

 俺はすぐに賛成したけれど、スキュクイドはその隙に俺を振り払う。

「ふざけんなっ……魔物の素材が先だ!! 依頼人の俺が言ってるんだぞ!」

 けれど、ヴァンケズはすぐに首を横に振った。

「回復が先。言うことが聞けないなら、俺たちは降りる」
「はあ!? なんだよそれ!!」
「俺たちの方には、依頼人の命を守る義務がある。危険な状態のまま出発することはできない」
「…………それじゃ困るんだよ……俺は回復の魔法なんか使えないし、回復の薬の代金も払えない。そもそもこれは、今の魔物にやられたんじゃない。お前らに俺を回復させる義務なんかねーだろ! それでも回復が先か?」
「先だよ」

 間髪を入れずにヴァンケズが答えると、スキュクイドは目を丸くする。

「…………は? か、回復の薬を返すこともできないぞ!」
「最初からそんなものを請求するつもりなんてない。すぐに回復するよ」
「…………」

 答えないスキュクイドを置いて、ヴァンケズは俺たちの周りに結界を張る。そしてすぐに、スキュクイドに振り向いた。

「それと、リューオに心配してもらったからって、勘違いしないように。リューオは、誰のことも心配するんだから。お前だけが特別ってわけじゃないんだからね」
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