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42.なんで逃げるんだ!

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 ギルドを出た俺は、苛立ちながら、街の中を歩いていた。

「なんなんだよ! あいつら!」

 絶対に無理だなんて言われた俺らに任されたのは、依頼人との素材集め。危険な場所に行くのに、報酬はひどく安くて、引き受ける奴がいないらしい。
 「誰もやりたがらなかった仕事を押し付けられたんだよ」って、フィエズートは言っていたが、俺は結構嬉しい。だって初めての仕事を任されたんだから。
 しかし、さっきの受付の男の態度には腹が立つ!! しかも、絡んできた奴にまで逃げられて、ますますムカつく。なんなんだ、あいつら。

 悪態をつきながら歩く俺の隣で、フィエズートが困ったように言った。

「……リューオ……いきなり喧嘩しないで……魔法も武器もなく魔物と戦うなんて言ったら、誰だって無謀だと思うよ。しかも、木で倒した、なんて言うから、ますます嘘くさく思われたんだ……」
「だって、本当なんだぞ!!」
「そんなもので魔物に勝てるわけないよ……」
「あの時はそれでなんとかなったんだ!! 本当だぞ!!」
「……分かった分かった……」

 フィエズートは、適当に俺に返事をしながら歩いていく。こいつ……俺の話を聞いてないな……

 それどころかそいつは、歩きながら頭を抱えてしまう。

「こんなんで、魔物に勝てるはずがない……」
「なんだよ? お前、ずっと冒険者やってたんじゃないのか?」
「僕……武器が壊れてから、依頼、全部失敗してて……もう冒険者としてはやっていけないかなって思ってて……」
「なんだよ。だったら俺らと一緒に成功させよーぜ!」
「……リューオって……なんでそんなに能天気なの……? 勝算はあるの?」
「そうだ!! 弁当と菓子買って行こう!」
「さっきお金ないって話してたよね!? それなのに、なんで弁当とお菓子なの!??」
「飯は一番大事だろ! ちゃんと食べておかないと、魔物にも勝てない!」
「……食べても勝てる気がしない……」

 フィエズートは呆れたように言うけど、食事しなきゃ、戦うなんてできるはずがない。

 すると、ヴァンケズが微笑んで言った。

「調理道具は買ったし、食材はこれから行くところで調達すればいいよ」
「そうか?」
「あとこれ。リューオが食べたいって言ってた鯛焼き。向こうで売ってたから、買っておいた」
「すげーー!! こっちの世界にもあるんだな!」

 俺はすごく嬉しいのに、フィエズートは呆れたように言う。

「ヴァンケズ……お前まで何してるの…………」
「だって、リューオがお腹空かせてるみたいだし、フィエズートの分もあるよ」
「………………僕に? …………な、なんで……お前が僕に…………?」

 そういいながら、フィエズートは鯛焼きを受け取っている。

 しばらく行くと、依頼してきた男との待ち合わせ場所である酒場が見えてきた。その前に、一人の男が立っている。

「あれが……?」
「依頼人のスキュクイドさんだよ……多分」

 フィエズートがその男に声をかけると、男は俺らに振り向いて、ビクッと震えて逃げようとする。

「お、おいこらっ……!! 待てっ……!! なんで逃げんだよ!」

 叫んで走り出す俺だが、逃げる男は立ち止まるどころか、振り向きもせずに走っていく。

「おい!! 待てって言ってるだろ!!」
「リューオ! 待てって! 追いかけられたら怖いよ!!」

 そう叫んだフィエズートと、ヴァンケズも俺について来た。
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