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68 〝愛してる〟 ☆すけべ注意

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「ーーあ、ッ」
 ずしんと奥に穿たれ、思わず声が漏れる。こんな深い場所、前回でも届かなかった。改めて――今更ながら、前回はあれでもウェリナなりに遠慮していたんだなと俺は思う。でも、今のウェリナはただ貪ることしか頭になくて、まるでこの身体の奥に、俺の心を開くためのスイッチがあるとでも言いたげに硬い屹立を押し込んでくる。
 やがて、俺の尻にウェリナの腰骨がぴったりと触れる。つまり……挿入ったのか。あれが? あのバカでかい砲身が、俺の、この痩せた腰に全部。……いやマジかよ。改めて考えると怖いというか。実際、内臓の圧迫感は凄まじく、腹腔の中で押しつぶされた胃袋が強い吐き気を訴えている。が、それ以上に今は、ウェリナを呑む内壁の突っ張るような違和感が勝っていた。とにかく……しばらくはこのままじっとしていて欲しい。下手に動かれると破れそうで、冗談ではなく怖い。
 ところが、そんな俺の願いも空しく、早くもウェリナは抜き差しを開始する。ず、と大きく抜かれ、身体が緊張を解いたところにまたしても深く押し込まれる。緊張と弛緩とを繰り返し強いられながら、次第に俺は、苦痛の中に明らかに痛みとは違う感覚を拾いはじめる。
「っ、ま、まって――ぁ、」
「もっと」
「……は?」
 見上げると、なおも忙しなく腰を前後させながらウェリナが笑む。
「もっと聞かせて。アルの可愛い声」
 薄いくちびるをちろりと舐める舌。明かりの乏しい部屋の中で、その鮮血じみた赤だけがやけにはっきりと見える。その間も俺とウェリナの結合部はぐちゅ、ぶちゅ、と続けざまに音を立てる。淫靡とか淫らとか、とにかく、そういう形容が似合う音。つーか……こいつわざと音が出るように動いてねぇ?
「や……やだよ、っ――あんっ!」
 またしても大きく奥を突かれ、思わず声が漏れる。くそっ、ウェリナの野郎、明らかに楽しんでいやがる。その証拠に……何だそのサディスト丸出しのイイ笑顔は。
 さらにウェリナは、小刻みに角度を変えながら俺の感じる場所を執拗に探る。そして――
「ひあ!?」
 ついにそれが暴かれる。そこは、意外にも比較的浅い場所で、それをウェリナは、抜き挿しのたびに亀頭の先で押しつぶし、広く張った鰓で撫でこする。そして……そのたびに俺は、なんかもう、頭が白く飛んで、わけがわからなくなるのだった。背中全体がじんじんと痺れて、柔らかなはずのシーツの摩擦さえたまらなくなる。
「う、うう、待って、待っ……あ、」
「だめ」
 俺の懇願を一刀に切り伏せると、ウェリナは上着を、次いでシャツを脱ぎ捨てながらさらに抜き差しを速めてゆく。衣服の下から現れたのは、例の見事にカットの入った筋肉。それが抜き差しのたびにきゅっ、きゅっと引き締まり、その圧倒的な〝雄〟にわけもなく俺は胸を高鳴らせる。……くっそ、同じ男としてどうしようもなく負けてんのに、敗北感が心地いいって何なんだよマゾか俺は。
 ようやく抽挿が止み、一息ついたのも束の間、今度は挿れたまま身体を裏返しにされる。内壁をぐるりと擦るウェリナの雄。その熱さ硬さにぐうと息を呑んだのも束の間、今度は後ろからずんと突き上げられる。
「や、っ、あ――」
 シーツに突っ伏したまま、声にならない悲鳴を俺は漏らす。揺さぶられるたび乳首だとか、あと俺の雄がシーツにこすれて余計に辛い。これなら仰向けの方がまだマシだった! そんな嘆きも、垂れ流した涙やら鼻水とともにシーツに吸われてゆく。四肢をばたつかせてどうにか逃げを打てば、今度はそれを阻むように腰を掴まれ、さらに激しく揺すられた。
「や、んっ、やめろ、って、っ」
「うそ。正直に言って」
「正直に――」
 がりっ。
 不意に首筋を襲う痛み。は? なに噛まれた? つーか、完全に獲物の扱いじゃねぇかこれ! 捕らわれて、貪られて――でも変なんだ。ここまで無茶苦茶されても、身体はちっとも冷めてくれない。叩かれるたび熱を持つ鉄みたいに、ひどくされて、貪られて、なのにどんどん熱くなる。
 戻れない。でも……もう戻れなくていい。
「……して」
 肩越しに振り返り、そう、懇願する。
「おれのこと、ぐちゃぐちゃに……何も、わかんなくなるぐらい、して」
 返事は、なかった。代わりにウェリナは背後から俺を抱きすくめると、俺をベッドに押しつけながら激しく腰を使う。と同時に俺の顎を手のひらで掬うと、肩越しに無理やりくちびるを重ねてきた。その強引な口づけに、俺も身を捩りながら必死に応じる。ウェリナの体重に圧迫され、充分なガス交換をなせない肺。苦しい。なのに俺は、奴との口づけを止められない。舌を絡め、唾液を啜りながら、ウェリナの欲望にただひたすら身を委ねる。
「アル……アル、っ……」
「……ん」
「愛してる」
 その言葉に。
 応えるように、きゅう、と締まる内壁。その唐突な収縮に促されてか、ウェリナの熱が俺の最奥でどくりと弾ける。つられるように俺も弾け、なのにウェリナは止まらないから、俺は、イッたままそれを受け止める羽目になる。
「ま……っ、て、ウェリ……」
「だめ……アル、愛してる……愛してるから……」
「あ……あいしてる、は、免罪符、じゃねぇ――う、あっ」
 またしても裏返しにされ、今度は向き合って交合。イカされたままの身体に一方的に注がれる喜悦はもはや痛みに近く、でも俺は、全部まるごと痩せた腰に受け止める。だって……こいつがアルと呼んでくれるから。愛してると囁いてくれるから。……ああ、もうこの際、免罪符でも何でもいい。だから何度でも囁いてほしい。俺がぶっ壊れるまで求めて欲しい。
 背中を掻き抱かれ、俺も同じだけの強さで奴の首を抱き寄せる。重ねたくちびるは、もはや意味ある言葉など口にできない。
 それでも伝わる〝愛してる〟を、俺は全身で聴く。
 俺もまた全身で〝愛してる〟を伝えながら。
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