極道の密にされる健気少年

安達

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圷と海斗の話

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*海斗視点




「こ、康二さん飲みすぎ!ちょっとストップしましょうよ!」

「このぐらい大丈夫だって!海斗も飲めよ!ソフドリいっぱいあんだからよ!」



俺の言うことに聞く耳を持たず康二さんは飲み続けてる。話をするとか言ってたけどそれどころじゃなくなったよ!あんまり飲むと体にも悪いのに!



「悪いな海斗。康二はいつもこんな感じなんだ。しばらくすると寝るから放っておいていいぞ。」

「わ、分かりました。」



森廣さんはそう言ったけど俺は少し不安だった。康二さんのお酒の飲み方はそれぐらい心配になる。だけど森廣さんがそう言ってるってことは大丈夫…だよね。だから俺は森廣さんの言うことを信じて康二さんが寝るのを待った。そしたら森廣さんの言う通り康二さんは本当に寝たんだ。



「すまんな海斗。許してやってくれ。康二も悪気があるわけじゃねぇから。」



森廣さんが寝てる康二さんに毛布をかけながらそう言ってきた。だから俺は慌てて立ち上がった。だって謝られるようなことされてないから。



「な、なんで謝るんですか森廣さん!そもそも康二さんにも森廣さんにも付き合ってもらってるのに…!俺が…ここに来たから…。」

「お前はいい子だな。」



さっきまで森廣さんは俺の真正面に座ってたけど今度は俺の隣に座ってきた。森廣さんは寛也さん以上に落ち着きがある。二人がどんな関係なのか俺には分からないけど寛也さんと森廣さんは特別って感じがする。



「康二もな、昔のそんな感じだった。海斗みたいに。」

「そうなんですか…?」

「ああ。親に捨てられて愛情を知らずに育ったのにこいつは健気に親を信じてた。無駄なのにな。あーいうタイプの親は何をしても変わらない。親になる準備が出来てねぇからだ。だから康二も俺らのところに来るのを拒んだんだよ。初めはな。」



知らなかった…。だけど俺は少し康二さんに違和感を感じる時があったんだ。心から笑ってない時もあるし変に明るくしてる時がある。それにみんなが気づいてるかどうかは分からないけど人間観察を良くする俺はすぐに気づいた。



「森廣さん…。」

「どうした?」

「…俺、時々だけど思うんです。康二さんが寂しそうだなって。みんなのためにいつも動いてくれて澪司さんのこともいつも助けてくれる。だけど康二さんは何かを吹っ切れてない感じが…あるって。」

「ほぅ…。賢い子だな海斗は。その通りだ。お前もしかしたら圷より賢いんじゃねぇの?」

「そ、そんなこと…!」



あるわけが無い!澪司さんには勝てないよ。澪司さんは鋭いしすぐに気がつく。だから俺は澪司さんに嘘がつけないんだから。



「はは、海斗は謙虚でもあるのか。才能がありそうだ。いつか一緒に仕事が出来るといいな。まぁそれは圷が許さねぇだろうけど。」

「…そう、ですね。」



けど俺もいつまでも澪司さんに守られるだけじゃ…駄目だなって思ってた。だけどヤクザの仕事はやる気とかそういう話でもない。人を殺したりもするんだから。



「海斗。話を戻すが康二はな、海斗の言う通り寂しさが埋まってないんだ。元々俺らの仲間になることも拒んでたし。それを組長が無理矢理この組に入れた。ありもしない借金をでっちあげてな。」

「寛也さんはなんのためにそこまで…?」

「康二が売り飛ばされようとしてたからだ。あいつは今や強面の顔になったけど昔はかなり可愛い顔してたんだ。海斗や駿里にみたいによ。だからマフィアに売られようとしてた。そうなりゃエイズになって死ぬしかない。売られるってことはそういう事だ。臓器売買でも同じ。なのに康二はそれでも親から逃げなかった。それを知った組長は最終手段に出たんだ。この借金を返さなければ親を殺すって。」

「…康二さんはその後どうしたんですか?」

「組長の出した条件をのんだ。その条件ってのがここで働いて金を返すということ。だが借金の額は5億だ。だから一生をかけて働かなきゃいけねぇ。なのにあいつはそれをのんだ。馬鹿だろ?あの時あいつはまだガキだったのに。」

「康二さんの親は…その…。」



…聞いていいのか分からなくて俺は言葉に詰まった。寝ているとはいえ隣に康二さんが寝てる。森廣さんも康二さんの過去を知ってるからこそ言いたくないかもしれない。そんなことを思いだすと言えなくて…。

でも森廣さんは…。



「いいよ海斗。なんでも聞きな。」

「……康二さんの親はそれを知ってても何もしなかったんですか?」

「ああ。組長が康二を俺たちに売れって康二の親に言って金を渡したからな。そしたら康二の親はよろこんで康二を俺らに渡した。だから康二は親と死ぬまで会うことはない。会わせない。」

「……殺したんですか?」



そういう親って…多分それだけじゃ気が済まない。もっと欲しがってくると俺は思うんだ。だから会わせない…会えないってことはつまり…そういうことだよね。



「鋭いな。お前は才能がある。駿里はなんも考えねぇしあいつは脳内お花畑だけどお前は違うな海斗。」

「そんな事ないです…!ただ俺も澪司さんと過ごした時間が長いから…なんとなく。」

「それが大事なんだぞ海斗。いざって時に身を守れる。康二はそれが苦手なんだよ。まぁ分かっているのは分かっているんだろうけど口に出せない。」

「どういうことですか…?」

「康二はな、多分勘づいてる。俺と組長が康二の親を殺したってことにな。」

「…え。」



それを知ってて…康二さんは何も言わないのだろうか。揉めたり…しないの?



「だがそれを康二は言わない。聞いてこない。あいつもどこかで覚悟を決めないと分かってはいたんだろうな。だが親と離れるというのは難しい決断だったんだろう。何を言っても子にとって母という存在はたった1人なんだから。代わりなんて居ねぇんだよ。」

「そうですね…でも…。だから康二さんは強いんだ。人に優しくできるんでしょうね。」

「ああ。けどそれはお前もだろ海斗。」

「え?」

「自覚ねぇのか。まぁいいや。」



俺は…強くもない。守ってもらうばかりでダメダメなんだ。なのに森廣さんはそう言ってくれた。それが励ましの言葉でも俺は嬉しかった。



「あの、森廣さん…。」

「ん?」

「森廣さんからはもう…言わないんですか?康二さんの親のこと。」
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