極道の密にされる健気少年

安達

文字の大きさ
上 下
453 / 617
誘拐

カラクリ

しおりを挟む
「…どこに行くんですか?」



犯されすぎて歩くこともままならなくなってしまった駿里は真によって抱きかかえられ運ばれていた。そんな真に駿里はそう問うた。どこに行くのか全く分からなかったから。



「どこって決まってんだろ。旭川に会いにいくんだよ。」



まるで真が何を言ってるんだお前はというように駿里にそう言った。そのため駿里は徐々に信じてしまった。この残酷極まりないマフィア達を…。



「ここに、ほんとに寛也が…?」

「そうだ。だから何も言わずに待ってろ、な?」



まだ駿里は不安そうにそう言った。そんな駿里を騙し込むために凪は偽りの笑顔を作ってそう言った。



「…………はい。」

「そんな顔すんなって駿里。」

「真の言う通りだぞ。あ、ほら駿里。あそこ見てみろ。」



と、凪に言われて駿里が言われるがままに指のさされた方向を見てみるとそこには…。



「寛也…………っ!!!!!」



寛也いた。夢じゃない。現実だ。やっと駿里は寛也に会うことが出来たのだ。それだけじゃない。寛也に加えて松下、圷がいた。そしてもう1人は見覚えのある男の人がいた。確か寛也の知り合いの人。名前は…亮だ。そのみんなに会えたこと。それが嬉しくて嬉しくて駿里は溢れ出る涙を床に落とし続けた。



「おっと、危ねぇから暴れんな駿里。下ろしてやるから。」



寛也のところに行きたくて仕方がない駿里は真の腕の中で大暴れをした。そんな駿里に真はそう言いながらゆっくりと下ろしてやった。しかし…。



「…あ、の、」

「あ?なんだ?」



真は下ろしてくれたものの駿里のことを離そうとしなかった。だから駿里は真のことを離してと言うように見た。しかし真は相変わらず駿里を離そうとしない。そのため寛也は堪らず超えを荒らげた。



「…おい。どういうつもりだ。駿里を返せ。」

「ちかや…。」



寛也が助けに来てくれた。本当にそうなんだ。駿里は今の寛也の言葉にどれほど安心したか…。しかし真はまだ駿里を腕の中に閉じ込めたまま。怒り狂った寛也を見てもお気楽な顔をしていた。



「まぁまぁそう怒らないで下さいよ旭川さん。とりあえず話しましょうか。」



真と同様にお気楽そうな凪はそう言いながら笑っていた。この状況をまるで楽しむかのようにして…。そのため当然寛也は腹が立ち凪を睨みつける。だが相手はマフィアだ。下手に手を出すわけにはいかない。もしかしたら駿里に危害が出てしまうかもしれないから。



「お前らと話すことなんてねぇ。いいから駿里を返せ。」



寛也はとにかく駿里を暉紘らから遠ざけたかった。なんとしてでも駿里を自分の手の中に入れたかった。だからそう言ったが暉紘はそう簡単に駿里を渡してくれなかった。



「それは困りますね旭川さん。」

「困るのはこっちだ。駿里を攫っておいて今更話すこと?馬鹿言ってんじゃねぇ。」



暉紘に負けじと寛也はそう言い返した。少しでも隙を見せてしまえば負けてしまう相手だから。



「旭川さん。それはつまり俺らを敵に回すということでしょうか。」

「そうだ。」



暉紘の問いに寛也はそう答えた。その瞬間暉紘の顔つきがなぜか変わった。どこか楽しそうで哀れんだような顔になった。



「…へぇ。旭川さんは部下が死んでもいいんですね。」

「は?」



何を言ってるんだこいつはと言わんばかりに寛也は暉紘を見た。しかしその瞬間…!!



バン!!!!



と、言う爆音と共に誰かの苦しむ声が聞こえた。その声のした方を寛也が見てみるとそこには…。



「…康二!!」



なんと松下が何者かによって撃たれてしまっていた。運のいいことに急所ではなく撃たれたのは腕だった。しかしだからこそ寛也は焦っていた。これは脅し。次は急所を狙うぞという暉紘らの脅しだと気づいたから。



「すんませ、ん組長…避けきれませんでした…。」



松下は自分が撃たれてしまったことにより寛也にもダメージを与えてしまったことに謝罪した。銃口を避けることなんて出来もしないのに寛也のために松下はそう言った。俺のことは気にせず駿里を救ってくださいと言うように…。



「…いや康二、お前が謝る必要はねぇだろ。悪い、俺のせいだ。立てるか?」

「はい、もちろんで、す…。」



松下はそういったもののかなり痛そうだった。それもそのはずだ。銃で打たれてしまったのだから。しかし松下はそんな痛みどうでもよかった。それよりも駿里が心配だった。駿里に見られてしまったから。撃たれた姿を…。



「あーあ。旭川さんのせいですよ。俺達の言うこと聞かないから。」

「…てめぇら。」



暉紘の言葉についに寛也は本気でキレた。だって目の前には駿里がいる。その駿里の目の前で撃ったのだ暉紘らは。しかも松下を…。そんな松下を見て駿里は案の定固まってしまっている。状況が把握出来ず混乱しているのだろう。だから寛也が怒らないはずがなかった。



「…どういうつもりだ。」

「どういうつもり?これはこっちのセリフですよ旭川さん。話も聞かずに駿里を返せだなんて言われても困ります。だから話をしますよね旭川さん。」

「…話が違う!!」



暉紘が笑いながら寛也にそう言い終わった時駿里が突然声を荒らげた。大切な大切な松下を傷つけられてしまったから。



「あ?どうしたよ駿里。」



話が違うと騒ぎ立てた駿里に凪は悪い笑みを浮かべながらそう言った。



「さっき、俺を、寛也に返すって…。」

「えー俺そんな事言ったっけ?」



駿里はやっとここで気づいた。暉紘らに騙されたということを。いやそれだけじゃない。寛也まで傷つけられる羽目になった。あの時ちゃんと疑っていればこうはならなかったのに。そのため駿里は罪悪感でいっぱいになってしまった。自分が傷つけられるのはまだいいが寛也らまで傷つけられるのは嫌だから。



「多分言ってねぇと思うんだけどなぁ。ボスが言いました?」

「いや、言ってないな。」



凪に続くように暉紘もそう言った。そんな暉紘らを駿里は絶望した目で見ることしか出来なかった。なんでわざわざこんなことまでするのか…。ここまで追い込む必要なんてないじゃないか…。



「…なん、で。」

「俺らを信じたお前が悪い。」



真は駿里の事を見ながらそう言った。その言葉を聞いた駿里は自分を責めたてた。信じたのが悪い…。そうだ…。悔しいけどこの人たちの言う通りだから。



「ほら旭川さん早く。今度はそっちの部下撃ちますよ?」

「…やめて!」



凪が圷のことを指さしながらそう言った。そのため駿里はそれを全力で止めようと声を荒らげた。そんな駿里を見て圷は目に涙を溜める。今は無力すぎて駿里を助けてやることなんてできない。なのに駿里は一生懸命自分のことを助けてくれようとしていたから。だから圷は悔しかった。



「こーら。駿里は黙ってろ。旭川さんが困るだろ?」



凪は容赦なく寛也を追い込んでいった。しかし寛也は負けなかった。それは当たり前に駿里を助けるためだ。仮に自分が死ぬことになったとしても寛也は駿里をこの地獄から救いあげる。その覚悟だったのだ。だから寛也は冷静にことを進めようとした。しかし松下が…。



「おい!やめろ!駿里に触れんじゃねぇ!」



と、言って声を荒らげてしまった。我慢出来なかったのだろう。駿里に触れられていることに…。



「やめろ康二…、今は黙ってろ。」



冷静さにかけてしまえば確実に暉紘らに負けてしまう。それだけじゃない。それは駿里を苦しめることになってしまう。そのため寛也は松下にそう言った。



「…っ、組長、でも、」

「いいから言うことを聞け康二。今は俺の言うことを聞いてくれ、頼む。」

「………はい。」



松下は駿里を助けたいがあまりに怒り狂うことしか出来なかった。多分撃たれてしまったことで相手はとんでもない人。それを松下は身をもって知ったからだろう。だがだからこそ冷静にならなければならない。そのため松下は寛也の言うことを聞いた。そんなふうに大人しくなった松下を見て寛也は口を開いた。



「…話ってのは?」

「まぁまぁ旭川さん。いいから座ってくださいよ。いつまでそこに立ってるつもりですか?」



暉紘のその言葉に寛也は腹が立ったもののそれを隠して言う通りに座った。

しかし…。



「…は?」



椅子に座った寛也には確かに見えた。あるものが…。見えてしまったのだ…。



「どうしました旭川さん。」



全てをわかっている暉紘はさぞ楽しそうに寛也にそう言った。そんな暉紘に寛也は言い返すことも出来なかった。



「……………。」

「急に黙り込んじゃいましたね。でもやっと分かりましたよね。旭川さんの置かれている立場が。それならどうしたらいいか、旭川さんには分かりますよね。俺は信じてますよ。旭川さんの次の行動を。」

「………………。」



暉紘は黙り込んだ寛也にそう言った。だが寛也はまだ言い返さない。いや言い返せないのだ。そのため圷も松下も駿里もどうしたものかと寛也を見ていた。

ーーーしかし次の瞬間寛也がとんでもないことを口にした。



「帰るぞお前ら。」



寛也がそういった途端場が静まり返った。松下や圷に至っては目を見開いている。そして何より1番驚いているのは駿里だった。



「組長…?なにを、言ってるんですか…?」



松下は混乱しすぎて冷や汗が出ていた。駿里をなんとしてでも助ける。そのつもりでここまで来たのだからそれは当然だろう。しかしそんな松下に寛也は…。



「いいから言うことを聞け。お前ら早く帰るぞ。」

「…っ、なんで!?どうしてなの寛也!!!」



訳が分からない。どうして見捨てられたのか駿里にはまるで分からなかった。なんで?どうしてなの?というように駿里は泣きながら寛也に声を荒らげた。



「……………。」

「どうして無視するの!!寛也!!おれ、ずっと待ってたんだよ!寛也が来てくれるの信じて頑張って耐えてたんだよ!!」



その駿里の声を無視して寛也は立ち上がり歩き出した。そんな寛也に松下と圷は拳を握りしめながらついて行くしかなかった。寛也なしでは何も出来ず敗北する。それに寛也がなんの理由もなく駿里を見捨てるはずなんてないから。



「こらこら駿里。旭川さんを困らせちゃいけねぇだろ。早くお前の部屋に戻るぞ。」



凪は楽しそうに駿里を拘束しながらそう言った。その凪の拘束を頑張って振りほどこうとしながら駿里は声を荒らげ続けた。寛也が…あの寛也が駿里のことを見捨てるなんてそんなことあるはずないから。



「やだっ、やだやだっ!寛也っ、ねぇ寛也!!俺はここにいるよ!!なんで!ずっと一緒にいるって言ったじゃん!ばか!!なんでよ!!」

「ほら駿里。戻るぞ。おいで。」



凪は腕の中にいる駿里をギュッと抱きしめそう言う。しかしそんな凪の声は駿里には届かない。だって駿里の目から寛也の姿が見えなくなりそうだったから。



「なんでだよ寛也!!俺はここにいるじゃんか!!助けに来てくれたんじゃないの!!どうして!!俺のこと見捨てるの!!」

「凪。駿里を落ち着かせてこい。」



こうなるように仕向けたのは暉紘だがここまで駿里がパニックになるとは思わなかったようだ。そのため駿里を落ち着かせるように暉紘は凪にそう言った。



「はーい。承知ですボス。ほら駿里、行くぞー。」

「やだっ、はなしてっ!俺は寛也に話があるの!!」

「大丈夫だ駿里。あいつに捨てられても俺らがちゃんとお前を守ってやるから。」



真はそう言いながら駿里の頭を撫でた。だがそんなもの駿里にはいらなかった。寛也がいい。寛也じゃないと嫌。寛也が…。なのに寛也はどこかに行ってしまった。だから駿里は寛也を追いかけなきゃいけないんだ。



「いやだっ、なんで、なんでよ!!」

「落ち着けって。今はまだ混乱してるだろうけど時間が解決するからよ。」

しおりを挟む
感想 200

あなたにおすすめの小説

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

ヤクザに囚われて

BL
友達の借金のカタに売られてなんやかんやされちゃうお話です

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

処理中です...