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志方と島袋に連れ去られる話
協力する代わりのお礼
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「んーでもなぁ。そうは言っても簡単な話じゃねぇんだよな。あの組長が駿里をなんの理由も無く外に出すわけねぇもんな。」
「…それは俺もわかってるよ。」
「だよなぁ。」
寛也の駿里への独占欲…といってしまっていいのだろうか。いや独占欲というには優しすぎる。寛也の駿里への執着心は1番近くで見守っている松下ですら異常と感じているのだから。そのためこうして松下は頭を抱えているのだ。
「あの組長がお前を外に出すなんて事俺からしたら考えれねぇぐらいだしよ。」
「…うん。」
駿里も松下の言う通りだと思った。それもそのはずだ。寛也の執着を身をもって駿里は知っているのだから。毎日毎日気絶寸前まで抱かれる生活。そして隙さえあればキスをされる。そんな毎日なのだから駿里自身が1番外に出ることは厳しいと分かっているのだ。
「どうすっかな。」
そう言ってまた頭を抱えた松下。そんな松下を見て駿里はあることを思い出した。それは松下と一緒にいた翔真という人の事。その翔真という人を駿里が思い出したわけはその人を使えば外に出れるかもしれないから。不可能である可能性は高いけれどここに来てまもない翔真に寛也は強く言わないはず。駿里はそう思ったのだ。
「そういえばさ、康二さん。」
「ん?」
「翔真さんって人今どこにいるの?」
「は?教えるわけねぇじゃん。つかお前がそれを知ってどうすんだよ。」
駿里が翔真の話をしだすと松下は分かりやすく機嫌が悪くなった。きっと嫉妬しているのだろう。今駿里と一緒にいるのは松下。なのに駿里が違う男の話をしたから。そんな松下に駿里は不貞腐れた顔をする。
「…教えてくれてもいいじゃんか。康二さんのケチ。」
「何だよお前。そんなに翔真と仲良くなりてぇのか?」
「そりゃこれから長い付き合いになるから俺だって仲良くなりたいよ。」
「へぇ。仲良くなりたいねぇ。」
「…なに。」
やはり松下は機嫌が悪い。かなり悪い。駿里が翔真と仲良くなりたいと言ったのが余程嫌だったのだろう。松下自身の推薦で翔真をこの組に入れたとしても翔真と駿里が仲良くなるのは嫌だったらしい。なんとも面倒臭いことだ。
「いやけど駄目だ。翔真がお前に惚れたらどうすんだよ。」
「…そんなことあるわけないじゃん。」
駿里は松下に呆れ顔でそう言った。そんなことあるわけないと本気で思っているから。だって駿里は寛也のもの。寛也という存在が極道会でどれだけ恐れられているのか駿里は知っている。よく松下からその話を聞いているから。そんな自分に手を出す度胸は翔真には無いと駿里は思ったのだ。だからそう言ったが松下は…。
「そうだとしても駄目だ。お前は俺のもん。」
「…ん?それは違う。」
さりげなく松下はそう言ったが全然違う。駿里は寛也のものだ。だから駿里は直ぐに松下の言ったことに対して訂正した。そんな駿里を見て松下は笑い出した。
「はは、そうかよ。」
松下は笑っているけどどこか悔しそうだった。そのわけを駿里は悟った。松下も松下で寛也に負けないぐらい駿里に執着している。そしてそれを駿里が1番知っているから。だから駿里は翔真の話を終わらせる事にした。松下は強引だけど…それでも優しいから。だから駿里は松下の傷ついた顔が見たくない。そのため翔真の話を終わらせようとしたのだ。
「ていうか康二さん、話が逸れてるよ…。」
「確かにそうだな。悪い悪い。」
駿里が話を逸らして元々話していたことを松下に思い出させた。そのおかげもあってか松下は気持ちを切り替えることが出来たようだ。
「つかよぉ駿里。この際さ、もうストレートに言ってみれば?組長に。」
「え?寛也に…?」
「ああ。」
「外に出たいって…?」
「そうだ。」
「俺が、自分で…言うの?」
「そうだって言ってんだろ。なんだよ。無理そうか?」
松下にそう言われた駿里は考えた。無理そう…かどうかで言えば無理だと思う。けどやってみなくては分からない。だが駿里は想像はできた。寛也にそれを言ってどんな結末になるのかということを。
「…俺、言えるのは言えると思う。だけど寛也に丸め込まれて結局今日みたいな喧嘩になりそうな気がする。」
「そうか。なら耐えろ。」
「…え?」
耐える…?なにを…?と駿里は訳の分からない顔をしていた。そんな駿里に松下は真剣な顔して話し出した。
「そこでお前が耐えなきゃこれまでと何も変わんねぇよ。」
「…それは、分かってるけどっ、」
言えないんだ。駿里はこれまで寛也に何度も何度も酷いお仕置きをされてきたから。だから怖いというのもある。そのお仕置きがどれほど辛いか駿里はよく知っているから。そのため下を向いてしまった駿里。その駿里の顔を松下は無理やり上げさせた。
「あのな駿里。自分以外の人を変えるのは不可能だ。超能力者でもなければそれは無理な話だ。だからお前が変わるしかない。不満があるならそれを組長に全部ぶつけんだ。もしそれを却下されたとしてもな。負けずに伝えるんだ。」
「…………っ。」
「本当にお前が組長との関係をこれからも続けていきたいと思うなら腹を括れ。」
松下に駿里は現実を突きつけられた気がした。寛也にずっと不満に思っていたことが溜まってしまい今爆発してしまった。だからここで仲直りしてもきっとまたこの繰り返しになると思う。それがダメだと思いながらも駿里は行動しなかった。だからこうなった。松下の言う通り変えなければいけないなと思いながらも駿里はやはり怖かった。そんな駿里の心情を悟ったのか松下が…。
「駿里。それか俺が協力してやろうか?」
「…え、いいの?」
予想外の松下の言葉に駿里は目を輝かせた。だが…。
「もちろんタダじゃねぇけど。」
「………っ。」
いやそうだろう。考えてみればそうだ。松下が言うことなのだからタダなわけがない。松下はいつも見返りを求めてくる人なのだから。駿里はそれを痛いほど知っていたはずなのに忘れてしまっていた。
「なんだその顔は。そりゃそうだろ。なぁ駿里。世の中与えられるばっかりだと思うなよ。」
松下が駿里に求める見返りだ。相当なものだろう。だがここで松下に協力してもらわなければきっと駿里は何も出来ずに終わる。それだけは避けたかった。だから…。
「わかった…。康二さんの言うこと聞く。」
「話が早いじゃねぇか。いい子だぞ駿里。」
「…俺は康二さんに何をしたらいいの?」
「んなの決まってんだろ。」
松下はそう言うと駿里の腕をぐいっと引いた。そして駿里の唇にキスをするとニヤッと笑い…。
「抱かせろ。」
「…それは俺もわかってるよ。」
「だよなぁ。」
寛也の駿里への独占欲…といってしまっていいのだろうか。いや独占欲というには優しすぎる。寛也の駿里への執着心は1番近くで見守っている松下ですら異常と感じているのだから。そのためこうして松下は頭を抱えているのだ。
「あの組長がお前を外に出すなんて事俺からしたら考えれねぇぐらいだしよ。」
「…うん。」
駿里も松下の言う通りだと思った。それもそのはずだ。寛也の執着を身をもって駿里は知っているのだから。毎日毎日気絶寸前まで抱かれる生活。そして隙さえあればキスをされる。そんな毎日なのだから駿里自身が1番外に出ることは厳しいと分かっているのだ。
「どうすっかな。」
そう言ってまた頭を抱えた松下。そんな松下を見て駿里はあることを思い出した。それは松下と一緒にいた翔真という人の事。その翔真という人を駿里が思い出したわけはその人を使えば外に出れるかもしれないから。不可能である可能性は高いけれどここに来てまもない翔真に寛也は強く言わないはず。駿里はそう思ったのだ。
「そういえばさ、康二さん。」
「ん?」
「翔真さんって人今どこにいるの?」
「は?教えるわけねぇじゃん。つかお前がそれを知ってどうすんだよ。」
駿里が翔真の話をしだすと松下は分かりやすく機嫌が悪くなった。きっと嫉妬しているのだろう。今駿里と一緒にいるのは松下。なのに駿里が違う男の話をしたから。そんな松下に駿里は不貞腐れた顔をする。
「…教えてくれてもいいじゃんか。康二さんのケチ。」
「何だよお前。そんなに翔真と仲良くなりてぇのか?」
「そりゃこれから長い付き合いになるから俺だって仲良くなりたいよ。」
「へぇ。仲良くなりたいねぇ。」
「…なに。」
やはり松下は機嫌が悪い。かなり悪い。駿里が翔真と仲良くなりたいと言ったのが余程嫌だったのだろう。松下自身の推薦で翔真をこの組に入れたとしても翔真と駿里が仲良くなるのは嫌だったらしい。なんとも面倒臭いことだ。
「いやけど駄目だ。翔真がお前に惚れたらどうすんだよ。」
「…そんなことあるわけないじゃん。」
駿里は松下に呆れ顔でそう言った。そんなことあるわけないと本気で思っているから。だって駿里は寛也のもの。寛也という存在が極道会でどれだけ恐れられているのか駿里は知っている。よく松下からその話を聞いているから。そんな自分に手を出す度胸は翔真には無いと駿里は思ったのだ。だからそう言ったが松下は…。
「そうだとしても駄目だ。お前は俺のもん。」
「…ん?それは違う。」
さりげなく松下はそう言ったが全然違う。駿里は寛也のものだ。だから駿里は直ぐに松下の言ったことに対して訂正した。そんな駿里を見て松下は笑い出した。
「はは、そうかよ。」
松下は笑っているけどどこか悔しそうだった。そのわけを駿里は悟った。松下も松下で寛也に負けないぐらい駿里に執着している。そしてそれを駿里が1番知っているから。だから駿里は翔真の話を終わらせる事にした。松下は強引だけど…それでも優しいから。だから駿里は松下の傷ついた顔が見たくない。そのため翔真の話を終わらせようとしたのだ。
「ていうか康二さん、話が逸れてるよ…。」
「確かにそうだな。悪い悪い。」
駿里が話を逸らして元々話していたことを松下に思い出させた。そのおかげもあってか松下は気持ちを切り替えることが出来たようだ。
「つかよぉ駿里。この際さ、もうストレートに言ってみれば?組長に。」
「え?寛也に…?」
「ああ。」
「外に出たいって…?」
「そうだ。」
「俺が、自分で…言うの?」
「そうだって言ってんだろ。なんだよ。無理そうか?」
松下にそう言われた駿里は考えた。無理そう…かどうかで言えば無理だと思う。けどやってみなくては分からない。だが駿里は想像はできた。寛也にそれを言ってどんな結末になるのかということを。
「…俺、言えるのは言えると思う。だけど寛也に丸め込まれて結局今日みたいな喧嘩になりそうな気がする。」
「そうか。なら耐えろ。」
「…え?」
耐える…?なにを…?と駿里は訳の分からない顔をしていた。そんな駿里に松下は真剣な顔して話し出した。
「そこでお前が耐えなきゃこれまでと何も変わんねぇよ。」
「…それは、分かってるけどっ、」
言えないんだ。駿里はこれまで寛也に何度も何度も酷いお仕置きをされてきたから。だから怖いというのもある。そのお仕置きがどれほど辛いか駿里はよく知っているから。そのため下を向いてしまった駿里。その駿里の顔を松下は無理やり上げさせた。
「あのな駿里。自分以外の人を変えるのは不可能だ。超能力者でもなければそれは無理な話だ。だからお前が変わるしかない。不満があるならそれを組長に全部ぶつけんだ。もしそれを却下されたとしてもな。負けずに伝えるんだ。」
「…………っ。」
「本当にお前が組長との関係をこれからも続けていきたいと思うなら腹を括れ。」
松下に駿里は現実を突きつけられた気がした。寛也にずっと不満に思っていたことが溜まってしまい今爆発してしまった。だからここで仲直りしてもきっとまたこの繰り返しになると思う。それがダメだと思いながらも駿里は行動しなかった。だからこうなった。松下の言う通り変えなければいけないなと思いながらも駿里はやはり怖かった。そんな駿里の心情を悟ったのか松下が…。
「駿里。それか俺が協力してやろうか?」
「…え、いいの?」
予想外の松下の言葉に駿里は目を輝かせた。だが…。
「もちろんタダじゃねぇけど。」
「………っ。」
いやそうだろう。考えてみればそうだ。松下が言うことなのだからタダなわけがない。松下はいつも見返りを求めてくる人なのだから。駿里はそれを痛いほど知っていたはずなのに忘れてしまっていた。
「なんだその顔は。そりゃそうだろ。なぁ駿里。世の中与えられるばっかりだと思うなよ。」
松下が駿里に求める見返りだ。相当なものだろう。だがここで松下に協力してもらわなければきっと駿里は何も出来ずに終わる。それだけは避けたかった。だから…。
「わかった…。康二さんの言うこと聞く。」
「話が早いじゃねぇか。いい子だぞ駿里。」
「…俺は康二さんに何をしたらいいの?」
「んなの決まってんだろ。」
松下はそう言うと駿里の腕をぐいっと引いた。そして駿里の唇にキスをするとニヤッと笑い…。
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