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志方と島袋に連れ去られる話
かかってきた電話
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「駿里。」
「なーに?」
外の風に吹かれて気持ちよく過ごしていると駿里は寛也に名を呼ばれた。そのため駿里はご機嫌そうにそう答えた。余程外にいるのが楽しいのだろう。だが次の寛也の発言によって駿里の高ぶった気持ちは急降下することになる。
「気持ちよさそうな顔してるとこ悪いがそろそろ帰るぞ。」
「…………。」
帰りたくない。せっかく外に出れたんだ。もう少し太陽の日を浴びていたい。風に吹かれていたい。その気持ちから駿里は黙り込んでしまった。そんな駿里の顔を寛也がのぞき込んできた。
「駿里?」
「やだ。」
「はぁ?嫌だと?」
「嫌なものは嫌だもん。まだ外にいたい。」
「たく、お前は…。」
困ったものだと言うように寛也はそう言った。だが強く言えなかった。それはいつも駿里に不自由な思いをさせてしまっているから。だから出来ることならもう少し外に出していてやりたい。だがそうもいかないのだ。何せここはヤクザの街。そんなところに駿里を長く居させたくない。そんな思いから寛也は駿里を家に帰らせたいのだ。それに加えて今は何故か嫌な予感がする。そのため寛也は困っているのだ。そんな寛也の代わりに今度は松下が駿里に話しかけた。
「しゅーんーり。」
「康二さんうるさい…。」
「まだなんも言ってねぇだろ。」
「何言われるかわかってるもん…。」
「だったら言うことを聞け、な?組長を困らせんな。それに生意気言ってると後々痛い目見るぞ?」
駿里も分かっている。自分のことを思って松下も寛也もそう言ってくれているんだって。だけど1つ願いが叶えば欲が出るもの。外にずっと出られなかった駿里からすれば今の状況はとても楽しいのだ。だからどうしても駿里はもう少しだけ外にいたいのだろう。そのためか駿里は言い訳を言い始めた。
「…だってまだ30分経ってないもん。」
「何言ってんだ馬鹿。お前時間確認するもん何も持ってねぇだろ。」
一か八かで駿里はそう言ってみたが松下にド正論を言われてしまった。そのため何も言い返せなくなってしまった駿里だがやけくそになって牙を剥き出しにし始めてしまった。
「なんとなくそう感じるんだもん…!」
「そりゃな、勘違いだ駿里。楽しい時は時間過ぎるの早く感じるだろ?」
今度は寛也にそう言われた駿里。寛也は松下とは違って優しい口調だった。だからこそ駿里は感じた。寛也は自分のことを本当に思ってくれてそう言ってくれているんだって。けれどそれでも駿里は…。
「そうかもだけど…もう少しだけいたい。だめ…?」
「駄目だ。」
あまり言いすぎると寛也を怒らせてしまうので駿里はこれを最後のお願いにしようとした。だがそのお願いすらも寛也に却下されてしまった。そのため駿里はいじけてしまった。
「…寛也のけち。」
「あ?もう1回言ってみろ。」
聞こえるか聞こえないかの声の大きさでボソッと駿里が嘆いた言葉なのに寛也には聞こえてしまったようで駿里は寛也に引き寄せられた。そして服越しに乳首を触られ始めてしまう。それには堪らず駿里は大慌てで弁解をする。
「な、なんも言ってない…っ!」
「嘘つけ。俺はしっかり聞いたぞ駿里。」
「奇遇だな。俺もだぞ康二。」
松下にもどうやら聞かれていたようだ。それならば駿里に逃げ道はない。今も寛也に捕まってしまっているのだからどの道駿里は逃げることが出来ない。
「ほんとですか組長。そりゃこいつにお仕置きしねぇといけないですね。」
なんだって…!?お仕置き!?そんなのたまったもんじゃない!どうにかして逃げなきゃ…。あ、そうだ…!あれを言えば逃げられるかも…!!
「そ、そうやってすぐお仕置きにもってくのきらい!」
「嫌い?」
あ。やばい。やってしまった、と駿里は顔を青ざめる。あの時思ったのだ。なぜか嫌いと言えばやめて貰えるんじゃないかって。嫌いって言えば悪い嘘だって言ってくれるんじゃないかって思ったのだ。けれど現実はちがった。
「き、嫌いはうそ…っ!」
「嘘?お前嘘までついたのか?」
「やめっ、変なとこ触んないでっ、怒んないでよ寛也…っ、」
寛也を怒らせてしまった。それがどうやら相当悲しかったようで駿里は本気でしょぼくれてしまった。そんな姿を見せられてはさすがの寛也も怒れない。そしてそれは松下も同じだ。
「はは、冗談だ。だがちょっとやりすぎたな。悪い悪い。」
寛也がそう笑いながら言うと駿里が不安そうに寛也の顔を見上げてきた。そして寛也が本当に怒っていない。それを確認すると分かりやすく駿里は安心していた。
「…ほんとに怒ったかと思った。」
「すまない駿里。お前を揶揄うのはどうも面白くてな。」
「あーその気持ちわかります組長。」
「だろ?」
「はい。」
からかわれている当の本人の駿里は何も面白くない。不安で仕方がない。そのためお気楽そうにそう言ってきた2人を駿里は睨んでやった。
「もう2人とも知らないから…。」
「おいおいそう言うなって駿里。ほら、帰るぞ。」
「…………。」
俺は怒っている。そういうように駿里はそう言ってきた寛也を無視した。そして顔をそっぽ向けた。そんな駿里すらも寛也は可愛く思えた。だけどずっといじけられていては困るので駿里が喜び、そして自ら帰ると言わせるために寛也は話し始めた。
「駿里。明日も一緒に外に出よう。それでいいか?」
「…明日もいいの?」
「ああ。お前が明日も出たけりゃ連れて行ってやる。そんで俺がもし都合つかなくなってもそん時は康二に頼むから。」
「ありがとう寛也。」
「いいよ。」
寛也はそう言って駿里の頭を撫でた。すると駿里は嬉しそうに笑った。その駿里の様子を見て大丈夫。そう思った寛也は再び駿里に問いかけた。
「どうする駿里。戻るか?」
「うん。家に帰る。」
「お、いい子じゃねぇか。」
「うるさい康二さん。」
寛也にはデレデレだった駿里だが松下には素っ気なくそう返した。そのため寛也は思わず笑ってしまった。
「あ?んだよお前。組長にはデレデレのくせに。」
「康二さんが意地悪するからだもん。」
「はぁ?」
「その辺にしとけお前ら。つかほんとにちょっと話しただけで喧嘩すんのやめろ。」
「すんません組長。」
「たく…。ほら帰るぞお前ら。」
寛也がそう言って駿里の腕を引き歩き出そうとしたその時…。
「ん?」
「どうしたの寛也。」
突然立ち止まった寛也に駿里はどうしたものかとそう聞いた。すると寛也は…。
「すまん駿里。先に行っててくれ。仕事の電話だ。」
「うん。わかった。先に戻ってるね。」
「ああ。康二、俺が戻るまで駿里を頼む。」
「承知しました。」
「なーに?」
外の風に吹かれて気持ちよく過ごしていると駿里は寛也に名を呼ばれた。そのため駿里はご機嫌そうにそう答えた。余程外にいるのが楽しいのだろう。だが次の寛也の発言によって駿里の高ぶった気持ちは急降下することになる。
「気持ちよさそうな顔してるとこ悪いがそろそろ帰るぞ。」
「…………。」
帰りたくない。せっかく外に出れたんだ。もう少し太陽の日を浴びていたい。風に吹かれていたい。その気持ちから駿里は黙り込んでしまった。そんな駿里の顔を寛也がのぞき込んできた。
「駿里?」
「やだ。」
「はぁ?嫌だと?」
「嫌なものは嫌だもん。まだ外にいたい。」
「たく、お前は…。」
困ったものだと言うように寛也はそう言った。だが強く言えなかった。それはいつも駿里に不自由な思いをさせてしまっているから。だから出来ることならもう少し外に出していてやりたい。だがそうもいかないのだ。何せここはヤクザの街。そんなところに駿里を長く居させたくない。そんな思いから寛也は駿里を家に帰らせたいのだ。それに加えて今は何故か嫌な予感がする。そのため寛也は困っているのだ。そんな寛也の代わりに今度は松下が駿里に話しかけた。
「しゅーんーり。」
「康二さんうるさい…。」
「まだなんも言ってねぇだろ。」
「何言われるかわかってるもん…。」
「だったら言うことを聞け、な?組長を困らせんな。それに生意気言ってると後々痛い目見るぞ?」
駿里も分かっている。自分のことを思って松下も寛也もそう言ってくれているんだって。だけど1つ願いが叶えば欲が出るもの。外にずっと出られなかった駿里からすれば今の状況はとても楽しいのだ。だからどうしても駿里はもう少しだけ外にいたいのだろう。そのためか駿里は言い訳を言い始めた。
「…だってまだ30分経ってないもん。」
「何言ってんだ馬鹿。お前時間確認するもん何も持ってねぇだろ。」
一か八かで駿里はそう言ってみたが松下にド正論を言われてしまった。そのため何も言い返せなくなってしまった駿里だがやけくそになって牙を剥き出しにし始めてしまった。
「なんとなくそう感じるんだもん…!」
「そりゃな、勘違いだ駿里。楽しい時は時間過ぎるの早く感じるだろ?」
今度は寛也にそう言われた駿里。寛也は松下とは違って優しい口調だった。だからこそ駿里は感じた。寛也は自分のことを本当に思ってくれてそう言ってくれているんだって。けれどそれでも駿里は…。
「そうかもだけど…もう少しだけいたい。だめ…?」
「駄目だ。」
あまり言いすぎると寛也を怒らせてしまうので駿里はこれを最後のお願いにしようとした。だがそのお願いすらも寛也に却下されてしまった。そのため駿里はいじけてしまった。
「…寛也のけち。」
「あ?もう1回言ってみろ。」
聞こえるか聞こえないかの声の大きさでボソッと駿里が嘆いた言葉なのに寛也には聞こえてしまったようで駿里は寛也に引き寄せられた。そして服越しに乳首を触られ始めてしまう。それには堪らず駿里は大慌てで弁解をする。
「な、なんも言ってない…っ!」
「嘘つけ。俺はしっかり聞いたぞ駿里。」
「奇遇だな。俺もだぞ康二。」
松下にもどうやら聞かれていたようだ。それならば駿里に逃げ道はない。今も寛也に捕まってしまっているのだからどの道駿里は逃げることが出来ない。
「ほんとですか組長。そりゃこいつにお仕置きしねぇといけないですね。」
なんだって…!?お仕置き!?そんなのたまったもんじゃない!どうにかして逃げなきゃ…。あ、そうだ…!あれを言えば逃げられるかも…!!
「そ、そうやってすぐお仕置きにもってくのきらい!」
「嫌い?」
あ。やばい。やってしまった、と駿里は顔を青ざめる。あの時思ったのだ。なぜか嫌いと言えばやめて貰えるんじゃないかって。嫌いって言えば悪い嘘だって言ってくれるんじゃないかって思ったのだ。けれど現実はちがった。
「き、嫌いはうそ…っ!」
「嘘?お前嘘までついたのか?」
「やめっ、変なとこ触んないでっ、怒んないでよ寛也…っ、」
寛也を怒らせてしまった。それがどうやら相当悲しかったようで駿里は本気でしょぼくれてしまった。そんな姿を見せられてはさすがの寛也も怒れない。そしてそれは松下も同じだ。
「はは、冗談だ。だがちょっとやりすぎたな。悪い悪い。」
寛也がそう笑いながら言うと駿里が不安そうに寛也の顔を見上げてきた。そして寛也が本当に怒っていない。それを確認すると分かりやすく駿里は安心していた。
「…ほんとに怒ったかと思った。」
「すまない駿里。お前を揶揄うのはどうも面白くてな。」
「あーその気持ちわかります組長。」
「だろ?」
「はい。」
からかわれている当の本人の駿里は何も面白くない。不安で仕方がない。そのためお気楽そうにそう言ってきた2人を駿里は睨んでやった。
「もう2人とも知らないから…。」
「おいおいそう言うなって駿里。ほら、帰るぞ。」
「…………。」
俺は怒っている。そういうように駿里はそう言ってきた寛也を無視した。そして顔をそっぽ向けた。そんな駿里すらも寛也は可愛く思えた。だけどずっといじけられていては困るので駿里が喜び、そして自ら帰ると言わせるために寛也は話し始めた。
「駿里。明日も一緒に外に出よう。それでいいか?」
「…明日もいいの?」
「ああ。お前が明日も出たけりゃ連れて行ってやる。そんで俺がもし都合つかなくなってもそん時は康二に頼むから。」
「ありがとう寛也。」
「いいよ。」
寛也はそう言って駿里の頭を撫でた。すると駿里は嬉しそうに笑った。その駿里の様子を見て大丈夫。そう思った寛也は再び駿里に問いかけた。
「どうする駿里。戻るか?」
「うん。家に帰る。」
「お、いい子じゃねぇか。」
「うるさい康二さん。」
寛也にはデレデレだった駿里だが松下には素っ気なくそう返した。そのため寛也は思わず笑ってしまった。
「あ?んだよお前。組長にはデレデレのくせに。」
「康二さんが意地悪するからだもん。」
「はぁ?」
「その辺にしとけお前ら。つかほんとにちょっと話しただけで喧嘩すんのやめろ。」
「すんません組長。」
「たく…。ほら帰るぞお前ら。」
寛也がそう言って駿里の腕を引き歩き出そうとしたその時…。
「ん?」
「どうしたの寛也。」
突然立ち止まった寛也に駿里はどうしたものかとそう聞いた。すると寛也は…。
「すまん駿里。先に行っててくれ。仕事の電話だ。」
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