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松下康二と駿里のお話
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「ほ、本気で言ってんの…!?」
「ああ。本気だ。」
松下がいつ起きるかも分からない。それなのに本気でそう言っているなんて考えられない。けれど志方なら本当にそれをやりそうだ。これまでそんな事数え切れぬほどあったから。だから駿里はなんとしてでもそれを避けたかった。そのため駿里がどうしようか必死に考えているとその時志方が運んできたある物が目に入った。
「で、でもっ、俺朝ごはん食べなきゃだからっ、せっかく志方さんが持ってきてくれたのに冷めちゃうよ…っ。」
「ああ…そうだったな。忘れてた。」
目の前の駿里に余程夢中になっていたのだろう。志方は自分がご飯を持ってきたことすら忘れていた様子だった。しかし駿里がそれを思い出させた為に志方は駿里をこれ以上襲ってくることは無かった。だがそれはあくまで今の話だ。だから安心できない。そう駿里は思っていたが案の定志方は…。
「じゃあ食べた後でやろうな。その後なら文句ねぇだろ。」
「後もないっ、文句もあるし俺はやらないから…っ!」
後なんてあって溜まるかと駿里は声を荒らげた。だが志方はそれさえも許さなかった。志方にとっては駿里と二人きりで話せるこんな状況滅多にない。松下はいるが今は意識もない。だからこの状況を利用して志方は少しでも駿里と近くにいたかった。例え後で寛也に怒られたとしても。
「お前に拒否権はねぇ。」
「さいていっ、なら一生食べててやる。」
「は?また無理して食べるってことかよそれは。」
「ち、ちがうっ!」
志方は相変わらず頭の回転率が高かった。駿里が少し不利になる言葉を口走っただけで志方にとっていい方向になってしまう。そうなるように話してくる。だから下手に駿里は話すわけにはいかない。いかないのに志方に煽られるとどうしてもこうなってしまう。
「違う?ならどういう意味だよ。」
「志方さんが余計なことしなきゃいいって話…!」
「なんだよ余計な事って。」
「もうなんでもいいから俺から離れてて!」
志方が近くにいると駿里は興奮して変なことばかり話してしまう。そして志方が有利になる。そう思った駿里は志方を自分から遠ざけようとした。しかし志方がそんな理由もなく駿里から離れてくれるはずがない。
「無理だ。組長からお前の見張り頼まれてっからよ。悪ぃが離れらんねぇわ。俺組長に逆らいたくねぇからよ。」
「…こんな近くなくてもいいじゃんか。」
見張るなら遠くからでもできるはず。なのに志方はわざわざ駿里の隣に座り駿里の身体を触ってくる。だから駿里は下を向きながらそう言った。その時ちょっと恥ずかしくなって顔を赤く染めてしまったから。だからそれを隠そうとしたのだ。志方がそれに気づけば間違いなく揶揄ってくるから。なのに志方はそれに気づいたのだろう。駿里の顔を掴んで上げさせてきた。
「何焦ってんだよ。勝手に妄想して顔赤くしてんのお前だろ。」
「赤くしてない…っ!」
「はは、よく言うぜ。もう真っ赤だろ。こんな可愛い顔しちまって。」
志方は駿里の顔を鷲掴みにしたままそう言うと唇が当たるだけのキスをした。志方は顔が忙しい駿里がまた可愛いのだ。分かりやすく反応する所も全部が愛おしくてたまらない。
「や、やだっ、可愛くないから…っ!」
「そうか?まぁいいや。とりあえず食えよ。煩く言うが絶対無理すんなよ。」
「うん。それは分かってる。」
先程まで嫌がり拒み続けていた駿里なのに志方のその言葉だけには素直に頷いた。嬉しいことなのだが志方はそんな駿里を不思議に思った。あまりにも素直に頷いたから。
「何だお前。やけに素直だな。」
「志方さんに抱き潰されるのだけは嫌だから。」
「てめぇ…相変わらず生意気な奴。」
理由が理由だった為に今すぐ駿里を襲ってやりたかった志方だがご飯を食べさせることが今は最優先なのであと一歩のところで我慢をした。駿里を襲うのはその後でもできるから。そんなことを考えている志方に駿里はあることを聞くことにした。
「あ、あのさ志方さん…。」
「ん?どうした駿里。」
急に思い立ったようにそう言ってきた駿里に志方は少し嫌な予感がした。聞かれてはまずいことを駿里が言おうとしているかもしれないと察したから。そしてその志方の予感は当たってしまっていた。そう。駿里は松下をこんな目に遭わせた人を知りたくて仕方がなかったのだ。それを伺う機会をずっと待っていた。
「言わないってことは聞いちゃダメって分かってる…けど聞いてもいい…?寛也には怖くて聞けないから…。圷さんもきっと答えてくれない。司波さんも。だからお願い志方さん。教えて…。」
ここまで来ればもう逃げることはできない…と志方は真剣な顔になった。先程までとはまるで真逆だ。仕事の顔。志方がこの顔をするのはその時だけだ。その志方の顔を見て駿里は身構えた。
「そのお前が知りたい事ってのは康二の事だよな。」
「…うん。そう。誰が康二さんを撃ったの?」
寛也には言うなと言われてしまった志方。しかし駿里も仲間だ。知る権利はある。だがそれは果たしていいことなのか?駿里と天馬は仲が良かった。それも相当だ。しかしその天馬が松下を殺そうとしたと知れば駿里はどうなるだろうか。それも駿里が原因だと知れば駿里はどうなるだろうか…。志方は考えた。考えて考えて決断をすることにした。
「あのな…駿里。」
「ああ。本気だ。」
松下がいつ起きるかも分からない。それなのに本気でそう言っているなんて考えられない。けれど志方なら本当にそれをやりそうだ。これまでそんな事数え切れぬほどあったから。だから駿里はなんとしてでもそれを避けたかった。そのため駿里がどうしようか必死に考えているとその時志方が運んできたある物が目に入った。
「で、でもっ、俺朝ごはん食べなきゃだからっ、せっかく志方さんが持ってきてくれたのに冷めちゃうよ…っ。」
「ああ…そうだったな。忘れてた。」
目の前の駿里に余程夢中になっていたのだろう。志方は自分がご飯を持ってきたことすら忘れていた様子だった。しかし駿里がそれを思い出させた為に志方は駿里をこれ以上襲ってくることは無かった。だがそれはあくまで今の話だ。だから安心できない。そう駿里は思っていたが案の定志方は…。
「じゃあ食べた後でやろうな。その後なら文句ねぇだろ。」
「後もないっ、文句もあるし俺はやらないから…っ!」
後なんてあって溜まるかと駿里は声を荒らげた。だが志方はそれさえも許さなかった。志方にとっては駿里と二人きりで話せるこんな状況滅多にない。松下はいるが今は意識もない。だからこの状況を利用して志方は少しでも駿里と近くにいたかった。例え後で寛也に怒られたとしても。
「お前に拒否権はねぇ。」
「さいていっ、なら一生食べててやる。」
「は?また無理して食べるってことかよそれは。」
「ち、ちがうっ!」
志方は相変わらず頭の回転率が高かった。駿里が少し不利になる言葉を口走っただけで志方にとっていい方向になってしまう。そうなるように話してくる。だから下手に駿里は話すわけにはいかない。いかないのに志方に煽られるとどうしてもこうなってしまう。
「違う?ならどういう意味だよ。」
「志方さんが余計なことしなきゃいいって話…!」
「なんだよ余計な事って。」
「もうなんでもいいから俺から離れてて!」
志方が近くにいると駿里は興奮して変なことばかり話してしまう。そして志方が有利になる。そう思った駿里は志方を自分から遠ざけようとした。しかし志方がそんな理由もなく駿里から離れてくれるはずがない。
「無理だ。組長からお前の見張り頼まれてっからよ。悪ぃが離れらんねぇわ。俺組長に逆らいたくねぇからよ。」
「…こんな近くなくてもいいじゃんか。」
見張るなら遠くからでもできるはず。なのに志方はわざわざ駿里の隣に座り駿里の身体を触ってくる。だから駿里は下を向きながらそう言った。その時ちょっと恥ずかしくなって顔を赤く染めてしまったから。だからそれを隠そうとしたのだ。志方がそれに気づけば間違いなく揶揄ってくるから。なのに志方はそれに気づいたのだろう。駿里の顔を掴んで上げさせてきた。
「何焦ってんだよ。勝手に妄想して顔赤くしてんのお前だろ。」
「赤くしてない…っ!」
「はは、よく言うぜ。もう真っ赤だろ。こんな可愛い顔しちまって。」
志方は駿里の顔を鷲掴みにしたままそう言うと唇が当たるだけのキスをした。志方は顔が忙しい駿里がまた可愛いのだ。分かりやすく反応する所も全部が愛おしくてたまらない。
「や、やだっ、可愛くないから…っ!」
「そうか?まぁいいや。とりあえず食えよ。煩く言うが絶対無理すんなよ。」
「うん。それは分かってる。」
先程まで嫌がり拒み続けていた駿里なのに志方のその言葉だけには素直に頷いた。嬉しいことなのだが志方はそんな駿里を不思議に思った。あまりにも素直に頷いたから。
「何だお前。やけに素直だな。」
「志方さんに抱き潰されるのだけは嫌だから。」
「てめぇ…相変わらず生意気な奴。」
理由が理由だった為に今すぐ駿里を襲ってやりたかった志方だがご飯を食べさせることが今は最優先なのであと一歩のところで我慢をした。駿里を襲うのはその後でもできるから。そんなことを考えている志方に駿里はあることを聞くことにした。
「あ、あのさ志方さん…。」
「ん?どうした駿里。」
急に思い立ったようにそう言ってきた駿里に志方は少し嫌な予感がした。聞かれてはまずいことを駿里が言おうとしているかもしれないと察したから。そしてその志方の予感は当たってしまっていた。そう。駿里は松下をこんな目に遭わせた人を知りたくて仕方がなかったのだ。それを伺う機会をずっと待っていた。
「言わないってことは聞いちゃダメって分かってる…けど聞いてもいい…?寛也には怖くて聞けないから…。圷さんもきっと答えてくれない。司波さんも。だからお願い志方さん。教えて…。」
ここまで来ればもう逃げることはできない…と志方は真剣な顔になった。先程までとはまるで真逆だ。仕事の顔。志方がこの顔をするのはその時だけだ。その志方の顔を見て駿里は身構えた。
「そのお前が知りたい事ってのは康二の事だよな。」
「…うん。そう。誰が康二さんを撃ったの?」
寛也には言うなと言われてしまった志方。しかし駿里も仲間だ。知る権利はある。だがそれは果たしていいことなのか?駿里と天馬は仲が良かった。それも相当だ。しかしその天馬が松下を殺そうとしたと知れば駿里はどうなるだろうか。それも駿里が原因だと知れば駿里はどうなるだろうか…。志方は考えた。考えて考えて決断をすることにした。
「あのな…駿里。」
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