極道の密にされる健気少年

安達

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遅咲きの花は大輪に成る

あちこちで起きる幸せの連鎖 *

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「寛也…。」

「あ?」

「ちょっと離して欲しいなぁなんて…。」

「無理だ。」

「なら教えろっ、さっきから何考え込んでんだ…!」



寛也は部屋に戻るや否や駿里を抱きしめたままソファに座った。それからかれこれ数十分。しかも会話もすることなく過ごしている。もちろん駿里はそれが嫌な訳では無い。嫌などころか心地いいほどだ。だが寛也の様子がいつもと違う。だから話をしたかった。なのに寛也は駿里の言うことに耳を貸さずずっと何かを考え込んでいる。だからたまらず駿里はそう声を荒らげたのだ。




「別に考え込んでねぇよ。ただちょっと悩みがあるだけだ。」

「悩みごと?」

「そうだ。」



寛也が悩み事をするなんて珍しい。そしてそれを駿里に言ってくることも珍しかった。そもそも寛也は悩み事は無いしあったとしてもそれは大抵駿里の事だから。だから駿里は珍しく考え込んでいる寛也に目を丸くした。だがそれと同時に少し悲しくなった。内容まで相談したら少しでも楽になるかもしれないのに寛也はそれをしようとしないから。



「それって俺にも相談できないようなことなの…?」

「今は出来ねぇな。」



本当は気になる。気になって仕方がないけど寛也が言わないのには必ず意味がある。だから駿里はそれ以上寛也に追求することはやめた。



「そっか。わかった。なら言いたくなったら教えてね。」

「ああ。」



月日が経つにつれ互いの性格を理解し最前の行動が取れるようになった2人。だからこうして会話をするだけで寛也は幸せを感じていた。駿里にしか心を許していない部分があるからこそこうやって受け入れてくれるのが嬉しいのだ。だが寛也はそんな駿里に1つ隠し事をしてしまっている。それはあの叔父のことだ。



「なぁ駿里。」

「ん?」

「これはあくまで仮の話だがお前の家族が今更尋ねてきたらどうする?勿論仮の話だからそんな事有り得ねぇけどな。」



決して叔父が尋ねてきたということは言わない。言うつもりもない。けれど駿里の反応によっては話すことにしようと寛也は遠回しにそう聞いた。



「…おれは会いたいかな。」

「それは本心か?お前自分が何をされたのか忘れたのか?」

「時間が経てば忘れることもあるんだよ。それに時間が経ったからこそ会いたいって言うのもある。」

「意味わかんねぇ。」



まさか駿里が会いたいなんて言うと思わなかった寛也は少しハブてている様子だ。可愛くて仕方がないからこそ手のひらの中に入れておきたいのだろう。その証拠に今も駿里を抱きしめて離そうとしないのだから。



「あんな事されても俺の家族には変わりないから。」

「お前はやっば馬鹿だな。お前が馬鹿だからあの花も咲かねぇんだよ。」

「花は関係ないだろっ!」



駿里が植えた花。寛也の言う通り一向に咲く気配がない。芽は出たものの花が咲かないのだ。それはもちろん駿里が1番気にしていた。だからその話題を出されて駿里は少し声を荒らげた。寛也はそんな駿里の顔をつかみ唇が当たるだけのキスをした。



「今日ほんとにどうしたの…?」



変なことを聞いてきたと思えば怒ってくる。そして今度はどこか不安そうにキスをしてきた。いつもの寛也では無い。それは確かだった。何かあったのだろうか?悩み事と関係しているかもしれない。さすがに心配になり駿里は寛也の目を見てそう言った。



「本当は言うつもりはなかったが言っとくか…。」

「何の話?」

「お前の叔父が尋ねてきた。お前に会わせろって。」

「…え?」



叔父というワードを聞くと駿里は顔を青く染めた。気分が悪くなってしまった。やはり言わない方が良かったと寛也は後悔したが言ってしまえばもう消せることは無い。だから駿里を安心させるために寛也は再び話し始めた。



「だが悪い駿里。お前がいくら会いたいと言っても俺はお前をあのおっさんに会わせたくない。だからお前はあいつに会えない。」

「…………。」

「俺の事を恨んでもいい。けど会わせられねぇんだ。ごめんな。」

「…………。」

「駿里?」

「…ご、ごめん。ぼーっとしちゃって。それにおれも会いたくなかったからちょうどいいや。」



そう言った駿里の唇はどこか震えていた。あの時のことを思い出したのかもしれない。幼少期に叩き込まれたあの恐怖は駿里の中で消えることは無い。死ぬまでずっと苦しめられ続ける。だけどその恐怖はもうない。それを緩和してくれたのが寛也だった。そして今も駿里は無意識なのか寛也により強く抱きつき出した。そんな駿里に応えるように寛也も抱きしめ返す。



「それは本心か?お前が会いたいと言うなら少しは考えてやるぞ。さすがに対面という訳にはいかないが…。」

「会いたくない。あの人は家族じゃないもん。俺の思う家族はお母さんとお父さんだけだから。」

「そうか。なら良かった。」



まさかの駿里に家族認定されていなかったあの叔父に対して寛也は心の中で笑ってやった。それもそうだ。だってあの男は駿里に決して許されないようなことをしたのだから。だがそんな伯父でも駿里は少し気になるらしく…。



「…叔父さんはなんで尋ねてきたの?」

「言わねぇよ。言えばお前が傷つくからな。」

「知りたい。お願い寛也。」

「…お前で金儲けをしようとしてる。」

「はは…変わってないんだね。」



駿里は叔父が尋ねてきた理由を感ずいてただろうが実際口にしてその事実を突きつけられると辛いものだ。笑っているのに目はとても悲しそうにしている。寛也は駿里にそんな顔をさせるあの男が憎くてたまらない。



「だから俺はお前の叔父を利用するだけ利用して殺そうと思ってる。」

「…殺すのはだめだよ。寛也が悪くなっちゃうから。」

「まぁ殺しは置いといてあいつは今N会社の社長になってんだよ。」

「え…あの大っきい会社だよね?」

「そうだ。だからとりあえず金だけ取っていくつもりだ。駿里を泣かせた分だけあいつを苦しめて捨ててやる。」



寛也はそう言いながら微笑んだ。その寛也の笑顔を見た駿里はなんだか安心した。ここにいたら守ってくれる寛也がいる。自分のことを大切にしてくれる人がいる。それを思うだけで嬉しくてたまらなくなった。だがそれと同時に思ったことがあった。



「…俺も最低だ。」

「何言ってんだ馬鹿。」

「寛也にそんなこと言われて喜んでるんだもん…それに正直ざまぁないって思っちゃった。」

「それでいい。それでいいんだ。思った通りのことを言葉に表わせ。ここでは俺がお前を守ってやるから。好きなように過ごして好きな言葉を出せばいい。俺が全部受け止めてやる。」

「っ……。」



在り来りな言葉なのに寛也に言われると嬉しくてたまらない。その嬉しさが溢れた駿里は思わず涙を零してしまった。



「泣くなよ駿里。男だろ?」

「ちかやっ、が、泣かせたんだ…っ。」

「そんなに泣いたら食べちまいたくなる。」

「…さいてい。」



慰めてくれるのかと思いきや抱こうとしてきた寛也に思わず駿里は真顔でそう言った。だがそのおかげで涙が止まった。



「はは、冗談だ。だからもう泣くな。」



寛也はそう言い駿里を強く抱き締めてきた。頭を優しく撫で駿里に温もりを与えてくれる。その寛也の体温が心地よくて駿里はこのまま眠ってしまいそうになった。だがその眠気は段々と無くなってきてしまう。理由は言うまでもなく寛也のせいだ。駿里が心地よく眠りそうになっていた時寛也は駿里のおしりを怪しい手つきで撫で始めたのだ。だがそんなはずは無い。ただの勘違いだ。思い込みだ。ただの気のせいだと思いたかった。だから駿里は抵抗をしなかったがあまりにもおしりを触ってくるのでたまらず駿里は寛也の手を掴んだ。



「じょ、冗談って言った…!」

「気が変わった。」

「おれ今はやりたくない…っ。」

「俺はやりたい。お前が欲しい。」

「っ、でも疲れちゃったから…。」



駿里はそう言い寛也から離れようとするが勿論寛也は離さない。それどころかより強い力で掴まれてしまう。



「駿里。俺はお前の可愛い顔が見たいんだ。抱きしめるだけじゃ足りねぇ。俺は欲深い男だからな。お前もそれを知ってるだろ?」

「…ずるいよ。」

「はは、お前の負けだな駿里。」

「………っ。」



身体はもう限界で疲れているはずなのに寛也にキスをされると受け入れてしまう。流されてしまう。きっと数時間後にはまた駿里は寛也に恨めしい目を向けることになるだろう。だがそれはその時だ。今のこの幸せを受け入れたい。受け止めたい。だから駿里は寛也に身を委ねることにした。そんな駿里をみて寛也は嬉しそうに笑うと駿里の顔を掴んだ。



「駿里、こっちを向け。」

「ん…っ、んふっ、ぅ、」



今度は深いキスだ。唇に触れると直ぐに寛也は舌を入れてきた。駿里の口の中で暴れる寛也の舌に思わず駿里は声が漏れてしまう。とろけてしまう。その顔がたまらなく可愛くて寛也は縛り付けてしまいたくなった。



「その顔俺にしか見せるなよ。」

「俺が見せたくても寛也が見せないだろ…。」

「そうだな。お前のそんな顔を覗き見でもしようなら即刻殺してやる。俺だけの駿里だ。」



寛也の手つきが優しい。そのやさしい手でどんどん服が脱がされていく。何度やっても慣れない行為。裸にされるとやはり恥ずかしい。駿里はその恥ずかしさから大切なところを隠してしまう。そんな駿里の手を寛也は優しく除けた。そして再び顔を近づけてくる。



「駿里。愛してる。」

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