極道の密にされる健気少年

安達

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遅咲きの花は大輪に成る

開き直るな!*

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「駿里。」

「やだ…。」

「こっち向けよ。」

「だめだってば!」



及川に犯されることは無くなったものの駿里は彼にある意味襲われていた。約束は必ず守る及川だ。抱かれる心配は無いもののキスは許してしまったために高頻度でキスを迫ってきてしまうようになってしまった。この顔面の及川にキスを迫られればほとんどの人は一瞬で恋に落ちてしまうだろう。だが駿里はそうはいかない。今までずっとそうして人を恋に落としてきたのだろうが駿里は違う。そう簡単にはいかないんだぞとずっと及川から駿里は逃げていた。



「キスならいいんだろ?」

「だめっ、頻度をかんがえっ、ぁ!」



逃げていた駿里だったが及川に捕まってしまった。そして今彼の腕の中に閉じ込められている。隙を見て逃げようとするも及川は離してくれるはずもなく駿里は及川の腕の中に留まるしかなかった。



「なぁ駿里。こっち向けって。」

「…ほんとに、だめなの。」

「どうしても?」

「だめなものはだめなの…。」



及川が駿里の顎に手を添えて自分の方を向かせようとしてきた。だが何せ今は距離が近い。まじかに及川がいる。だから駿里は及川の方を向くことが出来なかった。警戒心はなくなっても及川に対する多少の怖いという気持ちはまだあったから。



「俺の事まだ怖いか…ってそりゃ当然だよな。絶対もう手は出さないって誓うからこっち向いてくれ。」

「…やだ。」

「駿里。」

「やだ!」

「一瞬でいいから。そしたら離してやる。」



離してやるという及川の言葉に駿里は少し悩んだ。だがそれで解放されるならと駿里は及川の方をゆっくりと向いた。すると彼は昨日からは想像できないような顔をしていた。その顔は男の顔だった。まるで恋人に一生守ると誓う時の男の顔…。



「…ほんとに離してくれる?信じていいの?」

「そんな顔すんのかよお前。可愛い奴だ。そりゃ組長も惚れちまうよな。それとほんとに昨日は悪かった。こんな可愛いやつに俺は取り返しのつかないことをした。」

「それももういいってば…。」



及川はキスを迫ってくる度こうして昨日のことを謝ってくる。駿里に気付かされ現実を受け入れられたことで及川は気が楽になった。そしてそれと同時に駿里に対する罪悪感が膨れ上がる。だから高頻度でキスを迫りながら謝っているのだ。そんな及川にしつこいと駿里は及川の方を向いてそう言った。



「悪かった。絶対に償うから。」

「な、なら離して欲しいなぁなんて…。」



さっき及川の方を向いたら離すと言っていたのにいつまで経っても離してくれない。及川は絶対約束を守る男だが今はそれが嫌だった。腕の中にいる可愛い駿里を離したくなかった。だから…。



「そうだったな。さっき約束したもんな。ほら。」

「ありがと…って離してよ…!」



及川はたしかに離してくれた。だがあまりにも一瞬だった。だから駿里は逃げられず再び及川に捕まってしまったのだ。



「離しただろ。」

「一瞬じゃんか!」

「ずっと離すとは言ってねぇ。」

「子供みたいなこと言うな…っ!」

「ガキはどっちだよ。お前のその力が弱いところもほんとに愛おしい。」

「さいていっ、離せってば!」

「それは出来ねぇ。」



りくは2人の口喧嘩を黙って見ていた。きっとうるさいなぁぐらいにしか思っていないのだろう。そんなりくとは裏腹に駿里は本気で暴れていた。何故かって?それは勿論寛也が原因だ。この部屋にはたくさんのカメラがあって常に監視されているから。



「寛也にバレ…ぁ、そうだ。カメラ細工してるんだっけ?」

「いやもうしてねぇ。」

「え、嘘だよね…?」

「嘘じゃねぇ。」

「じゃあバレちゃうじゃんか!」



もし見られでもしていたら駿里はどうなるのか…。夜はもちろん朝まで眠れないかもしれない。それは嫌だ。避けたい。だから駿里は一刻も早く及川の腕の中から逃げ出そうとしたがその抵抗はなんの意味もなかった。



「カメラの細工を解除させたのはさっきだ。だから安心しろ。」

「できないっ、できるわけないっ、今寛也に見られたくないんだよ…!」

「しー。あんまり声出すと聞こえんぞ。」

「ぁ、どうしよう…。」



そういえばこの家には盗聴器もあった。それを忘れていた駿里は逃げたいがために叫んでしまった。だが運のいいことに盗聴器の傍にはテレビがある。だから寛也に聞かれている心配はないだろう。それをわかっていた及川は駿里を安心させるべく口を開いた。



「聞こえてはないだろうから安心しろ。んで、続きやっていいだろ?」

「だめっ!」

「駄目っつってもやるけどな。」



そう言って及川はニカッと笑うと駿里の顔を掴み頬とおでこにキスをしてきた。まずいまずい。このままでは喰われてしまう。ついに駿里に冷や汗がではじめた時ソファの上にくつろぐりくと目が合った。堪らず駿里はりくに助けを求める。



「寛也に、怒られるからっ、だめっ、りく助けて!」



駿里がそう必死でりくに言ったがりくは顔を上げてため息を着くと再び眠ってしまった。危険ではないと判断したのだろう。本当に賢い犬だ。だが駿里にとっては最悪な状況になってしまった。りくが助けてくれないとなれば及川が満足するのを待たなければならない。そんなの終わりが見えない。駿里が絶望に満ちていると及川はそんな駿里の耳を軽く噛んだ。



「ぅ、やめっ…!」

「お、いい反応。そういやお前耳弱かったな。でもまぁりくが助けてくれないんじゃあ仕方ねぇな。俺が満足したら解放してやるからそれまで付き合え。」

「や…っ、ぅ、んん゛!」



異論は認めないと及川は駿里の口に噛み付くようにキスをした。顔を固定しもう片方の手は駿里の後頭部に置かれている。そして相変わらず及川はキスが上手い。それは及川の経験値がどれだけ高いのかを物語っていた。及川のキスが上手い分弱いところを舐められてしまい駿里は足の力が抜ける。これならまだ犯されている方が良かったかもしれない。いや決してそんなことは無いがこれはこれで問題が色々起こる。もしかしたら寛也がばったり帰って来るかもしれない…。もし松下が帰ってきたら…。そう考えると背筋が凍る。だから今は耐えて及川に早く満足してもらうしか方法がなかった。



「ぅ……ふっ、はぁ…っ、ぃ、や!」

「まだ。」



及川のキスは松下のキスに似ていた。少し強引でなのに優しい。嫌なのにとろけてしまう。



「はぁっ…ぅ、ふっ、ぁ、んっ…、」



そして松下同様に及川は駿里を馬鹿力で押さえつけ中々解放してくれない。松下がもし及川と一緒に駿里の世話係になったら駿里は間違えなく抱かれるだろう。それはきっとイキ地獄だ。ねちっこく攻められ続けて泣くまでやめてもらえない。それを想像するだけで駿里はもう泣きそうになった。昨日の危険な及川がせっかく居なくなったのに今は違う意味で危険な人物が増えてしまった。だがいちばん怖いのは寛也だ。もし及川にこんな風に駿里が色々されているところを見られればタダでは済まない。



「んんっ、ん゛…っ、ぁ、だめっ、もぅ、おわり!」

「まだ駄目だ。」

「やっ…!」



逃げても逃げても追いかけてくる。少し唇が離れたと思ってもまたキスされる。そんな及川から負けじと逃げようとしたその時ーーー。



プルルルル…




着信音がなった。その瞬間及川は駿里を直ぐに解放する。大切な電話かもしれないからだ。だがどうやら違ったようで及川は直ぐに駿里を捕まえてまたキスをしようとしてきた。



「やめっ、ちょ、出ないでいいの…?」

「ああ。俺の携帯じゃないからな。」

「え…?」



俺の携帯じゃない…?それってつまり駿里の携帯がなっているということでは無いか。もっとまずいことになった。それは電話相手が…。



「だめっ、まって!」

「あ?電話なんて後でかけ直せばいいだろ。」

「だめなのっ、誰からか見て!」




あまりにも駿里が必死なので及川は駿里を抱きしめたまま携帯画面を見ることにした。



「たく…仕方ねぇな。ん?組長からじゃねぇか。まぁ後でかけ直せばいいだろ。」

「及川さんっ、ほんとにだめっ、出ないと殺される…!」

「…そんなにやべぇの?」

「やばいのっ、早く携帯かして!」

「分かったから待て。ほら。」



確かに寛也の駿里に対する束縛は激しい。本当にまずいことになるのだろうと思い及川は駿里に携帯を渡した。その瞬間駿里は大慌てで着信ボタンを押す。



「ち、寛也どうしたの?」

『何をそんなに慌ててんだ?それに出るのが遅せぇんだよ。ペナルティな。』

「ご、ごめっ、でも慌ててないよっ、それよりもどうしたの?」

『それはお前が分かってんじゃねぇの?なぁ及川。』

「っ、どうも組長。」



お仕置きは駿里だけにされるものだと思い余裕ぶっこいていた及川は自分の名前が呼ばれて思わず声が裏返ってしまった。



『一体どういうつもりだ。お前になんの権利があって駿里に手を出してんだ。お前は康二と違ってもっと頭の良い奴だと思ってたんだがな。』



及川がカメラの細工を解除したことで案の定寛也に全てを見られてしまったようだ。それでご立腹の寛也が駿里に電話をかけてきた。普通なら怯えるだろう。だが幹部まで上り詰めた男。松下同様強気で寛也に言い返し始めた。



「お言葉ですが組長。こうなることは容易に想像できたでしょう?なのに組長は俺に駿里の世話を頼みました。そりゃもう駿里に手を出してくださいって言ってるようなもんですよ。」

『…及川。』

「すみません。」

『帰ったら覚えてろよ。』

「…はい。」

『おい駿里。さっきから黙って聞いてるがお前もだからな。』



そう言うと寛也は一方的に電話を切った。電話が切れたことで一先ず安心した様子の及川だったが駿里は違う。今にも泣きそうになっている。そのせいだろう。りくが心配した様子で駿里の足元まで来た。



「泣くなって駿里。」

「及川さんのせいだ…っ!」

「悪かったって。」

「悪いと思ってんなら俺を守ってっ、じゃないと寛也に言うから昨日のこと!」

「証拠がねぇぞ?」



証拠ならある。駿里の身体だ。あれだけ跡が着いていたのだから一日足らずで消えるわけが無い。そう思った駿里は上着を上げ及川に見せようとしたが…。



「この身体の傷が…あれ、ない。」

「あったりめぇだろ。俺が薬塗って長引かないようにしたんだから。もう綺麗さっぱり身体の傷は残ってねぇよ。」

「………。」



打つ手を失ってしまった駿里は黙り込んでしまった。そんな駿里に元気出せよと言う意味で及川は駿里の頭を撫でた。



「仕方ねぇよ駿里。組長からの愛だ。」

「誰のせいだと…っ、そもそも昨日すっごく怖かったんだから!」

「それはほんとに悪かった。」

「な、なら助けて…っ!!」

「それは出来ねぇな。組長には逆らえねぇ。どうやら俺も組長にボコられるようだし。こうなったら潔く一緒に罰を受けようぜ。」

「…っ、嫌に決まってんだろ!」



及川が守ってくれない上に昨日されたことにも腹が立ってきた駿里は及川を押しのけようと彼を思いっきり押した。だがまぁ及川はこれでも一応幹部だ。ビクともしなかった。それどころかすました顔をされた。それにも余計に腹が立ってしまい駿里は及川のことをそっぽ向いてりくを撫でようとしたが及川はハブてた駿里をひょい抱きかかえた。



「そうハブてんなよ。俺にも構え。」

「いやってほど構ってやってるじゃんかっ、りくがいい!」

「おいおい煽ってんのか?いい度胸してんじゃねぇか。何も言えなくなるまでこの口塞いでやろうか。」



急に及川の声が低くなった。そして頬に手を当てられる。このままでは先程同様にキスをされる。その危険を察知した駿里は慌てて及川に謝ろうとする。



「ゃ、ごめん、冗談だって!」

「もう遅い。男に二言はねぇんだよ。」

「またそれっ、二言あるから…!」

「そうか。なら俺がその弱った根性叩き直してやる。」



さっき寛也から電話がかかってきたばかりなのに何を考えてるんだと駿里は及川の胸をポコポコと叩きながら猛抗議した。



「寛也におこられるっ、やめろ!」

「もう怒られることは決まってんだから楽しもうぜ。」

「おれは、全然楽しくない、離せっ…ゃ、うぶ!」
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