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遅咲きの花は大輪に成る
帰りが遅いわけ
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「………ん……。」
なんだか全身が痛い。足も腰も首すらも痛い。これじゃあゆっくり寝たいのに寝れないじゃないか。眠たくて仕方が無いのにいやでも目が覚めてしまう。
「もう起きよう…。」
1度目が覚めてしまえばなかなか寝つくことが出来ないもので駿里は起きることにした。だがここで問題が起こる。起きれない…。しかも隣には誰も居ない。ここは寝室でリビングに行くには歩かなくては行けない。それなのに今の駿里にはそんな体力を持ち合わせていたなかった。どうするべきか悩んでいると目に携帯が映りこんだ。
「電話しよ。」
歩けないのは寛也のせいだ。だから駿里は寛也を寝室にこさせて運んでもらおうとした。だってリビングにいるはずだから。先程から話し声がする。そのため電話さえすればすぐに来てくれるはずだ。そう思い携帯を手に取り寛也に電話をしようとしたがあることに気がついた。
「…ん?寛也じゃないかも。」
リビングから聞こえてくる声はよく聞いたら寛也の声ではなかった。しかも複数いる気がする。気になった駿里は耳を済ませて内容を聞くことにした。だが駿里がいる場所はベットの上だ。あまりにもドアから遠くてまともに声が聞こえなかった。だから体にムチを打ちながら頑張って歩いてドアの前まで来た。すると会話がしっかりと聞こえてき出した。その会話を駿里は盗み聞きすべくドアに耳を当てた。
「お前もそう思うだろ?康二。」
康二?ってことは松下だ。そしてこの声は志方だ。その2人の話している声のトーンを聞く限りこの家に寛也はいない。こんな姿の自分を残して家から出ていくなんてと寛也に腹が立ったが今は会話に集中することにした。
「思わねぇよ。駿里がすげぇんじゃねぇ。組長がちゃんと見てんだよ。」
「にしてもだろ。あいつの体力はすげぇよ。組長にいっつもあんだけやられてんのにちょっと時間たったら歩けんだから。」
「まぁそうだな。」
「だろ?」
「ああ。つか、俺は駿里の体力よりも精神面?なんて言えばいいのかわかんねぇけどあの優しさがすげぇと思うよ。ここにいたらいやでも心が黒く染っちまうのにあいつはあいつのままだ。なんか組長に刺青入れたいとか言ったらしいけどそれだけだろ?」
「そうだな。駿里の我が道を行く力は誰にも負けねぇ。」
「お前も見習ったらどうだ康二。」
「お前もな。」
そんな松下と志方の会話を聞いて自分のいない所で褒められていることが嬉しかったのと同時になんだか楽しかった。普段2人だけがいる時こんな会話してるんだなぁって思うとワクワクした。
「刺青どうすんだろうな、組長。」
「許さねぇだろ。」
志方の問いかけに松下は素っ気なくそう返した。その松下の返事を聞いて駿里はやっぱりそうかと肩を落とす。だが志方は違ったようだ。
「俺は別にいいと思うんだがな。」
「は?志方、お前本気で言ってんのか?」
「本気だ。駿里がやりたいというのならその意見を尊重してもいいと思う。自由に外出することも出来ない不自由な生活をしてる訳だしな。」
「お前それ組長に言ってみろよ…。殺されんぞ。」
「んな事分かってるよ。ただの俺の意見だ。」
「…ふーん。意見ねぇ。まぁでもたしかにそうだよな。つか駿里眠すぎじゃね?」
「俺も思ってた。盗み聞きでもしてんじゃねぇの?」
そう言うと志方は立ち上がり寝室へと歩き始めた。その後ろから松下も着いてきているようで足音が複数聞こえる。駿里はまさかの事態に急いでベットの上に戻ろうとするが何せ身体が痛い。普通に歩けるわけもなくその場に崩れ落ちるように転げてしまった。そしてそのタイミングで寝室のドアが開き松下と志方の姿が見えた。彼らはその場に崩れ落ちている駿里をみて慌てた様子で心配して駆け寄ってくれた。
「おい駿里、大丈夫かよ。」
「何してんだよ馬鹿。立てるか?」
「う、うん…。」
志方には背中をさすられながら心配され、松下には抱きかかえられるようにして起き上がらせてもらった。そしてそこから上手く駿里が起てそうにないなと思った松下は駿里を抱きかかえるとリビングへと歩き出した。
「たく、盗み聞きとかするからこうなるんだよ。」
「いてっ…!」
駿里は志方に呆れ顔で頭を軽くしばかれた。それは大して痛くもなかったが反射的に声に出てしまった。それもあってか志方にしばかれた頭を松下が撫でてきた。
「そんな痛かったか?力強すぎんだよお前。」
「悪い悪い。まだ痛むか?」
「大丈夫。」
そもそもしばかれた時痛くなかった駿里は過剰に心配してくる志方に罪悪感を抱いてしまった。そんな志方を安心させるために笑顔で大丈夫と言ったが志方は本当に気にしているようでその後もしばらく頭撫でてきた。そして駿里はふと思った。なぜ松下と志方がここにいるのだと。普通に話していた為になんの違和感もなかったが2人が一緒にここに来ることは珍しい。寛也が仕事の時はどちらか1人が来ることはあっても2人が来ることはほぼない。あるとしたらなにかの事件の後や危ない時だけ。しかし今は平穏な毎日を過ごしている。そんな時に2人が揃ってくるなんてどうしたのだろうと駿里はそれを聞くことにした。
「そういえばなんで2人ともここにいるの?」
「は?今更かよ。」
「おい康二。言い方考えろよ。」
駿里が起きてからだいぶ時間が経つというのになんで今更そんなことを聞いてくるのかと松下が呆れ顔で言った。そんな松下にすぐさま志方が噛み付いた。少し言い方がキツすぎる、と。
「おー悪い悪い。」
「絶対そう思ってないでしょ康二さん…。」
「お、バレたか。」
馬鹿正直にも程がある。少しぐらい嘘ついてもいいのに隠すつもりすらないらしく松下はわざとらしく謝りそれを見破った駿里に笑いながらそう言った。そんな松下にムキッとしたがそれよりも2人揃ってここにいることが気になったので答えてくれない松下の代わりに志方に聞くことにした。
「2人は仕事休みなの?」
「違う。組長に頼まれたんだ。2人で行けってな。」
「なんでだろ。」
駿里が聞くと志方は優しく答えてくれた。だがそこで駿里は再び疑問が生まれた。なんで寛也はそう言ったのだろうと。特に事件などがあったということでもなさそうなのに…。そう思い駿里がそう呟くと松下が口を開いた。
「知らねぇよ。こっちが聞きてぇわ。昨日お前なんかやらかしたんじゃねぇの?そうとしか考えれねぇだろ。」
「なっ…っ、違う!」
「そうなのか?だったら俺らも知らねぇな。そんなに組長が帰ってきたら直接聞けよ。」
「そうする。」
そう言ってまだ考え込んでいる駿里の頭に志方は手を置いた。そしてニカッと笑う。
「まぁ、せっかく3人で過ごせる貴重な時間だしよ。楽しもうぜ。」
「志方の言う通りだな。ゲームでもするか?」
「したい…!!」
そう元気よくいった駿里を見て志方も松下も嬉しそうにしていた。そこから3人でゲームを楽しんでいた。ゲームをしていれば時間が過ぎるのがとても早く気づけば日が落ちて夜になっていた。だがそれなのに寛也が帰ってくる気配がない。駿里は段々と寂しくなってきた。ずっと我慢していたが夜になってしまえば我慢できなくなる。寂しくて寂しくて仕方がない。そしてそんな調子だからゲームにも集中できなくなってしまった。
「駿里?」
急にゲームでミスを連発しだした駿里を見て心配そうに志方がそう言った。そんな志方とは裏腹に松下は駿里のことを悟ったように口を開いた。
「組長が帰ってこねぇから寂しくて死にそうなんだろ。」
「…うるさい。」
「安心しろって。すぐ帰ってくるから。」
そう言った松下を見て駿里は不信感が生まれた。いつもなら松下も心配して寛也に電話をしだす。なのに今日はそれをしなかった。まるで寛也の帰りが遅いわけを知っているかのように。そしてそれは志方も同じだった。だがそれは反対に言えば寛也は無事ということ。だったら寛也の帰りを待つだけだと駿里が思ったその時玄関から音がした。
「お、組長が帰ってきたんじゃねぇの?」
なんだか全身が痛い。足も腰も首すらも痛い。これじゃあゆっくり寝たいのに寝れないじゃないか。眠たくて仕方が無いのにいやでも目が覚めてしまう。
「もう起きよう…。」
1度目が覚めてしまえばなかなか寝つくことが出来ないもので駿里は起きることにした。だがここで問題が起こる。起きれない…。しかも隣には誰も居ない。ここは寝室でリビングに行くには歩かなくては行けない。それなのに今の駿里にはそんな体力を持ち合わせていたなかった。どうするべきか悩んでいると目に携帯が映りこんだ。
「電話しよ。」
歩けないのは寛也のせいだ。だから駿里は寛也を寝室にこさせて運んでもらおうとした。だってリビングにいるはずだから。先程から話し声がする。そのため電話さえすればすぐに来てくれるはずだ。そう思い携帯を手に取り寛也に電話をしようとしたがあることに気がついた。
「…ん?寛也じゃないかも。」
リビングから聞こえてくる声はよく聞いたら寛也の声ではなかった。しかも複数いる気がする。気になった駿里は耳を済ませて内容を聞くことにした。だが駿里がいる場所はベットの上だ。あまりにもドアから遠くてまともに声が聞こえなかった。だから体にムチを打ちながら頑張って歩いてドアの前まで来た。すると会話がしっかりと聞こえてき出した。その会話を駿里は盗み聞きすべくドアに耳を当てた。
「お前もそう思うだろ?康二。」
康二?ってことは松下だ。そしてこの声は志方だ。その2人の話している声のトーンを聞く限りこの家に寛也はいない。こんな姿の自分を残して家から出ていくなんてと寛也に腹が立ったが今は会話に集中することにした。
「思わねぇよ。駿里がすげぇんじゃねぇ。組長がちゃんと見てんだよ。」
「にしてもだろ。あいつの体力はすげぇよ。組長にいっつもあんだけやられてんのにちょっと時間たったら歩けんだから。」
「まぁそうだな。」
「だろ?」
「ああ。つか、俺は駿里の体力よりも精神面?なんて言えばいいのかわかんねぇけどあの優しさがすげぇと思うよ。ここにいたらいやでも心が黒く染っちまうのにあいつはあいつのままだ。なんか組長に刺青入れたいとか言ったらしいけどそれだけだろ?」
「そうだな。駿里の我が道を行く力は誰にも負けねぇ。」
「お前も見習ったらどうだ康二。」
「お前もな。」
そんな松下と志方の会話を聞いて自分のいない所で褒められていることが嬉しかったのと同時になんだか楽しかった。普段2人だけがいる時こんな会話してるんだなぁって思うとワクワクした。
「刺青どうすんだろうな、組長。」
「許さねぇだろ。」
志方の問いかけに松下は素っ気なくそう返した。その松下の返事を聞いて駿里はやっぱりそうかと肩を落とす。だが志方は違ったようだ。
「俺は別にいいと思うんだがな。」
「は?志方、お前本気で言ってんのか?」
「本気だ。駿里がやりたいというのならその意見を尊重してもいいと思う。自由に外出することも出来ない不自由な生活をしてる訳だしな。」
「お前それ組長に言ってみろよ…。殺されんぞ。」
「んな事分かってるよ。ただの俺の意見だ。」
「…ふーん。意見ねぇ。まぁでもたしかにそうだよな。つか駿里眠すぎじゃね?」
「俺も思ってた。盗み聞きでもしてんじゃねぇの?」
そう言うと志方は立ち上がり寝室へと歩き始めた。その後ろから松下も着いてきているようで足音が複数聞こえる。駿里はまさかの事態に急いでベットの上に戻ろうとするが何せ身体が痛い。普通に歩けるわけもなくその場に崩れ落ちるように転げてしまった。そしてそのタイミングで寝室のドアが開き松下と志方の姿が見えた。彼らはその場に崩れ落ちている駿里をみて慌てた様子で心配して駆け寄ってくれた。
「おい駿里、大丈夫かよ。」
「何してんだよ馬鹿。立てるか?」
「う、うん…。」
志方には背中をさすられながら心配され、松下には抱きかかえられるようにして起き上がらせてもらった。そしてそこから上手く駿里が起てそうにないなと思った松下は駿里を抱きかかえるとリビングへと歩き出した。
「たく、盗み聞きとかするからこうなるんだよ。」
「いてっ…!」
駿里は志方に呆れ顔で頭を軽くしばかれた。それは大して痛くもなかったが反射的に声に出てしまった。それもあってか志方にしばかれた頭を松下が撫でてきた。
「そんな痛かったか?力強すぎんだよお前。」
「悪い悪い。まだ痛むか?」
「大丈夫。」
そもそもしばかれた時痛くなかった駿里は過剰に心配してくる志方に罪悪感を抱いてしまった。そんな志方を安心させるために笑顔で大丈夫と言ったが志方は本当に気にしているようでその後もしばらく頭撫でてきた。そして駿里はふと思った。なぜ松下と志方がここにいるのだと。普通に話していた為になんの違和感もなかったが2人が一緒にここに来ることは珍しい。寛也が仕事の時はどちらか1人が来ることはあっても2人が来ることはほぼない。あるとしたらなにかの事件の後や危ない時だけ。しかし今は平穏な毎日を過ごしている。そんな時に2人が揃ってくるなんてどうしたのだろうと駿里はそれを聞くことにした。
「そういえばなんで2人ともここにいるの?」
「は?今更かよ。」
「おい康二。言い方考えろよ。」
駿里が起きてからだいぶ時間が経つというのになんで今更そんなことを聞いてくるのかと松下が呆れ顔で言った。そんな松下にすぐさま志方が噛み付いた。少し言い方がキツすぎる、と。
「おー悪い悪い。」
「絶対そう思ってないでしょ康二さん…。」
「お、バレたか。」
馬鹿正直にも程がある。少しぐらい嘘ついてもいいのに隠すつもりすらないらしく松下はわざとらしく謝りそれを見破った駿里に笑いながらそう言った。そんな松下にムキッとしたがそれよりも2人揃ってここにいることが気になったので答えてくれない松下の代わりに志方に聞くことにした。
「2人は仕事休みなの?」
「違う。組長に頼まれたんだ。2人で行けってな。」
「なんでだろ。」
駿里が聞くと志方は優しく答えてくれた。だがそこで駿里は再び疑問が生まれた。なんで寛也はそう言ったのだろうと。特に事件などがあったということでもなさそうなのに…。そう思い駿里がそう呟くと松下が口を開いた。
「知らねぇよ。こっちが聞きてぇわ。昨日お前なんかやらかしたんじゃねぇの?そうとしか考えれねぇだろ。」
「なっ…っ、違う!」
「そうなのか?だったら俺らも知らねぇな。そんなに組長が帰ってきたら直接聞けよ。」
「そうする。」
そう言ってまだ考え込んでいる駿里の頭に志方は手を置いた。そしてニカッと笑う。
「まぁ、せっかく3人で過ごせる貴重な時間だしよ。楽しもうぜ。」
「志方の言う通りだな。ゲームでもするか?」
「したい…!!」
そう元気よくいった駿里を見て志方も松下も嬉しそうにしていた。そこから3人でゲームを楽しんでいた。ゲームをしていれば時間が過ぎるのがとても早く気づけば日が落ちて夜になっていた。だがそれなのに寛也が帰ってくる気配がない。駿里は段々と寂しくなってきた。ずっと我慢していたが夜になってしまえば我慢できなくなる。寂しくて寂しくて仕方がない。そしてそんな調子だからゲームにも集中できなくなってしまった。
「駿里?」
急にゲームでミスを連発しだした駿里を見て心配そうに志方がそう言った。そんな志方とは裏腹に松下は駿里のことを悟ったように口を開いた。
「組長が帰ってこねぇから寂しくて死にそうなんだろ。」
「…うるさい。」
「安心しろって。すぐ帰ってくるから。」
そう言った松下を見て駿里は不信感が生まれた。いつもなら松下も心配して寛也に電話をしだす。なのに今日はそれをしなかった。まるで寛也の帰りが遅いわけを知っているかのように。そしてそれは志方も同じだった。だがそれは反対に言えば寛也は無事ということ。だったら寛也の帰りを待つだけだと駿里が思ったその時玄関から音がした。
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