極道の密にされる健気少年

安達

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冷血な極道

不慥か

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「これ変な薬とか入れられてへんよな…?」



急いで陣は駿里を抱きかかえて自身の部屋まで戻った。そしてソファの上に寒くないようブランケットを引きその上に駿里を寝かせた。その駿里の顔をまじまじと見ると心配になってくるぐらい顔色が悪い。これは何かの薬のせいなのではと心配になった陣は思わずそう声に出した。



「念の為確認しましょう。」



龍吾も同じことを考えていたらしい。やられすぎてこうなっているのならまだマシだ。だが薬を入れられてこうなっているのならかなり問題。検査して悪いことは無いからやろうと陣に言い検査キットを取りに行った。




「若、持ってきました。」

「ありがとうな。」




陣は龍吾からキットを貰った。そして一通り検査の準備が終わりあとは結果待ちという状態になった。その間に龍吾は暖かいお湯と布を用意していた。




「用意出来ましたよ若。」

「お前はほんまに手際がええな。」




そう言って陣は龍吾から布を受け取ると駿里の身体を優しく拭き始めた。本来なら中まで綺麗にしてあげたいが結果がまだた。身体を急に暖かいとお湯で温めてきまうと血流が良くなり薬がより全身に回ってしまう。だから結果が出るまでは駿里をお風呂に入れられなかったのだ。その結果が出るまで残り5分ほど。その間陣は心臓が持ちそうになかった。



「あーくそ。ほんまにこのキット遅いねん。」

「もう少し待ちましょう。」



これまでこんなにも時間が経つのが遅いと感じたことはあっただろうか。いやきっとない。それほど今の陣は心配でおかしくなりそうになっていた。早く陰性だとこの目で確かめて安心したい。その想いが強くなりだんだんとイラついてきた。




「怒った所で何も変わりませんよ若。」

「分かっとるわい。お前は黙っとけ。」

「はいはい…………ん?」



龍吾はキットを再び見た。するといつの間にか結果が出ていたのだ。その結果をみた龍吾はイライラする気持ちを抑えようと駿里を抱きしめている陣に微笑んだ。



「若、結果が出たようですよ。」

「なんやと。で、どうやったんか?」

「陰性です。良かったですね。」

「ほんまや。良かったわ。」



龍吾も陣も心から安心した様子でふぅーと体の力を抜いた。そして龍吾は陣に抱きしめられている駿里の頭を撫でた。




「こいつ、すげぇと思いませんか?」

「あ?なんや急に。」

「あんなにひでぇ事されても負けない力っていうか。メンタルが強いんですかね。そういえば俺たちに攫われた時も負けなかったですね。」

「あったりまえやろ。ずっとこいつは旭川の所で生活してきたんや。メンタルぐらい強くなるやろ。裏社会で生きるってのはそういうことや。」

「…そうですよね。」

「今はそんな話よりも駿里を風呂に入れな。早く綺麗にしてやらんと駿里も気持ち悪いやろ。」

「はい。風呂の準備してきます。」

「ありがとうな龍吾。頼むで。」



準備が出来たと龍吾から聞くと陣は駿里を抱きかかえて風呂場に向かった。その間に龍吾はご飯の準備をする。そして陣が駿里の頭を洗い体を洗い終えると駿里の様子を確認しながら中に入っている性液を出す為に後孔に指を挿れた。

だがその時ーーー。




「…ぅ゛、っ、…、」

「悪い駿里、起きたんか?」

「ぁ…、じんさん?」

「お、名前ちゃんと俺の覚えとったんか。偉いなぁ。」



陣は優しい声でそう言った。そして駿里の頭を撫でながら再び口を開いた。



「その偉い駿里やからもう少し頑張れるか?」



駿里は少し脅えてはいたが陣と目を合わせ小さく頷いた。その駿里を見て陣は「ええ子や。」と褒め、抜いていた指を後孔の中に戻した。



「う゛っ、…ぅ、」

「ごめんなぁ、早く終わらそうにも中が切れとってゆっくりしか出来へん。もう少しだけ辛抱してくれ。」




中に指を挿れられて痛みと圧迫感を感じた駿里は思わず涙を流しそうになる。先程のことがフラッシュバックしてパニックになりそうになるがそれを陣が止めた。駿里にひたすら声をかけ続け頭を撫で落ち着かせたのだ。そうしているうちに中の性液が全て出たらしく陣の指が中から抜けていった。




「終わったで。偉かったなぁ駿里。風呂上がったらご褒美をやらんとな。」



あんな酷いことをされたあとだからだろうか。駿里は陣に抱きしめられることに安心した。そしてそれと同時に思った。今の自分が生きていける唯一の場所はここなのだ、と。




「……ありがとう。」

「はは、お前の素直で敬語使えん所俺は好きやで。」




駿里にお礼を言われたことが嬉しかった陣は照れ隠しにそう言った。そして少し乱暴に駿里の頭を撫でると体をお湯で洗い流し風呂場を出た。その後も陣にされるがままになって駿里はただ座り込んでいた。身体をタオルで拭かれ髪を乾かされ服を着せられる。それが終わると陣は龍吾を呼び駿里を受け渡した。その間に陣は自分のことをしているようだ。その行動を見た駿里は涙を流してしまった。なぜなら寛也がそうだったから。



「…っ……ぅ、」

「駿里?」



駿里を抱きかかえながら移動していた龍吾は駿里の異変に気づくとそう問いかけた。どうしたものかと龍吾が顔をのぞき込むと駿里は静かに涙を流していた。龍吾はその駿里の涙を手で拭うと泣き止むまでずっと抱きしめた。駿里が落ち着くまで抱きしめずっと待っていた。




「大分落ち着いたか?」

「…ごめんなさい。」

「謝るな。お前は悪くない。」



この光景も知ってる。駿里が泣いたとき松下がいつもこうしてくれていた。この2人は自分の大切な人達に似ている。駿里はそう思うと余計に涙が出てきた。そんな駿里の頭を優しく撫でていた龍吾が思い出したように口を開いた。





「あのな、駿里。お前に言っとかねぇといけねぇ事があるんだ。実は、若…」





そう龍吾が言いかけた時リビングのドアが開いた。陣が入ってきたのだ。それを見た龍吾は陣には聞こえないほどの小声で駿里に「また今度話す。」と言い駿里をソファに横に寝かせて陣の所まで行った。駿里はその龍吾を追いかけようと体を起こそうとしたが…。



「まだ動かへん方がええで。ゆっくり寝とき。」



そう言いながら陣が駿里に近づいてきた。そして陣はソファに横になっている駿里に目線を合わせるため座り込むと駿里の顔をのぞきこんだ。




「痛いとこないか?遠慮なく言いや。」

「…ない。」

「あー声ガラガラやん。さっきも風呂で同じこと思ったけどなんかもっと酷うなってもうとるやん。暖かい飲み物作るから待っとき。」

「ま、待って…!」



そう言って立ち上がろうとした陣の服を駿里は掴んだ。その急な駿里の行動に陣は目を丸くした。




「どうしたんか?」

「なんで、お前は俺に何もしないんだっ、目的はなんだよ…!」

「ん?駿里は俺になんかされたいんか?」

「そういう訳じゃないけどっ、ならなんで俺をここに留めるんですかっ、こんなことするなら家に帰せよ…!」




ずっと言いたかったことをいえて興奮気味になっている駿里は陣にそう噛み付いた。その様子をずっと黙って見ていた龍吾だったがさすがに度が過ぎると思いキッチンから駿里と陣の所まで行く。



「おい駿里。口の利き方がなってねぇぞ。」

「龍吾、お前はええから。仕事しとけ。」

「…はい。」



大人しく陣の言うことを聞きキッチンまで戻った龍吾を見ると陣は再び駿里に視線を戻した。




「なぁ駿里、お前ここから逃げたとしてどこに帰るんや。」

「どこって、寛也のとこに決まってんだろ…!」

「どうやってや。ここがどこかも分からんのに飛び出しても迷うだけやろ。それにお前あいつに監禁されとったんやろ?旭川が珍しく気に入った玩具を長い事飼うとるって俺らの間でも噂になっとんねん。あいつの所に戻った所でお前はまた酷い目に遭うだけやん。そんなさっきから寛也寛也言ってんのはあいつになんかされるのが怖いからやろ?これで帰ったらまた酷いことされるんとちゃうんか?」

「違う…っ、ふざけたこと言うなっ、俺は寛也を愛してんだよ…!」

「ほんまかいな…。まぁええわ。この話は元気になってからしような。そうせんと逃げられるもんも逃げられへんし、声もカッスカスになんで。」




そう言って陣は寝ている駿里にブランケットを被せた。そしてその後駿里が寝ているソファの空いているところに座り、駿里の頭を撫で始めた。陣という男はおかしな男だと駿里は改めて思った。自分のことを攫ってきだというのに何もしない。これまで駿里は何度か同じような目に遭ったがこんな事は初めてだった。何が狙いなのかも分からない。手を出すつもりがないのならなんでここに自分を留めるのかそれも分からなかった。




「どうして、俺に優しくするの…?」

「そんなの決まっとるやん。お前が好きやからや。」

「でも、ヤクザなんでしょ…?」

「極道でも俺は良心を忘れんように生きとんや。」

「…………。」



どうやら陣は本気で駿里が寛也によって酷い目に遭わされていると思っているらしい。寛也の所に戻せば駿里が酷い目に遭うと思っているのだろう。だからこそ陣は駿里に何もしてこないのかもしれない。まぁそれも無理は無い。寛也は冷酷非道で有名なのだから。その寛也から陣は駿里を守ってくれようとしているのかもしれない。優しくて男らしい人だと駿里は思った。だが駿里はそんな陣の優しさを利用することにした。ここにいれば安心だし体力も温存できる。寛也の所に戻るための作戦をここでねる計画を始動した。上手くいけばこの組の情報も寛也に教えられる。駿里がそんなことを考えていると陣にほっぺを軽くつままれた。




「そんな考え込まんでや。俺のことは信じんでもいい。でもこれだけは守ってくれ。ここにいる間は俺と龍吾のそばを絶対に離れたらあかんで。もう酷い目に遭わせたくないんや。」

「…わかった。」

「若、そろそろご飯食べますか?」

「そうやな。駿里、お前パスタは好きか?」




ああ、なんて偶然なんだろうか。この男は本当に寛也に似ている。パスタは駿里と寛也の大好物だ。誘拐するなら寛也を思い出させるようなことをしないで欲しい。駿里は思わずこぼれおちそうになった涙を目から垂らさないように上を向いた。





「なんや、パスタに思い出があるんか?」

「違う…そんなんじゃない。なんでもないよ。」

「そうか。じゃあまた今度聞かせてな。」




陣はそう言うと駿里の頭を撫で優しく抱きかかえると椅子に座らせた。そして陣自身も駿里の隣の椅子に座る。龍吾はそのタイミングでテーブルに料理を並べ、それが終わると駿里の頭を撫でた。その後駿里達と向かい側の椅子に座りご飯を食べ始めた。
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