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番外編
誰かここから出して かつての大切な人*
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「………っ……ぃ……。」
「ぁ…………ッ……………………。」
「…………ぇ…………。」
何やら声が聞こえる。誰かわからない。しいて分かるのは複数の人物がいるということだけ。話している人物が誰なのかそれを確かめようにも駿里は目を開けられなかった。頭がぼーっとして働かない。ここはどこだ。そもそも自分はなんでこんなところに寝ている。駿里は訳が分からず目をうっすらと開けた状態で周りを見渡した。
「……………し……?」
なんだか自分の名前が呼ばれた気がした。そして誰かが先程から頬っぺを軽く叩いてくる。
「………ゅ…?…………おーい、駿里?」
いくらか時間が経ち駿里は段々と目を開けるようになった。その目と同じように耳も開いてきた。そのおかげだろう。ぼんやりとしか聞こえなかった声がはっきりと聞こえた。そして駿里はその声を聞いてやっと意識が覚醒した。それと同時に駿里は涙が溢れ出す。なぜなら思い出してしまったから。自分がなんでここにいるのか。そしてなんで今眠っていたのかを。
「はは、まじ泣きじゃねぇか。」
意識を覚醒するやいなや泣き出してしまった駿里を見て島袋は笑い声を上げた。松下も駿里の頭を撫でたり髪を触ったりしながら島袋同様に笑っていた。2人ともさぞ楽しそうだった。そして2人は手を駿里の身体に持っていく。
「うぅ…っ、ぃ、はっ、…ぅ、んっ、うぅ…。」
駿里は起きて早々松下と島袋によって全身を撫でられ始めた。嫌で嫌で仕方ないのに先程何度も絶頂を迎えたこともあり身体を自由に動かすことが叶わなかった。その上2人に軽くではあるが拘束されている。だから駿里がどれだけ身をよじろうと無駄なのだ。そんな駿里を見て松下はククッと笑った。
「辛いよなぁ駿里。でもこれはお前が招いた結果だぞ。俺達に情けをかけるなんてこと出来るわけねぇだろ。」
松下は未だに駿里の発言を根に持っている。自分たちのものにならない。それがどうしても許せないのだろう。いくらなんでもここまで限界に追い込めば簡単に手に入ると思っていたのにそれが思い通りにいかないのだから怒りも湧いてくる。だがそれがいい。今までの奴らと違う。全く違う。どこも違う。それが松下をそそるのだ。自分を拒否すればするほど欲しくなる。松下は駿里の身体を撫でていた手を乳首に移動させて駿里が逃げようと身体を捩る姿を堪能し始める。松下がそんなことをしていると横で島袋が何かを思い出したのか声を上げた。
「そういやお前結局あの玩具使ってなくね?」
あの玩具というのは先程松下が出した振動付きのバイブのことであろう。言われてみればそうだった。駿里を抱くことに夢中になりすぎていた2人はその玩具をベットの隅に投げてしまっていた。島袋はそれがたまたま視界に入り松下にそういったのだ。
「そういえばそうだったな。」
せっかく出したのにもったいないことをしてしまったと松下は困り顔をする。だが駿里を見ているとそれが正解だったのかもしれないと思い始めた。今駿里は地獄の中にいる。天国から転生して地獄に一気に落ちた。この状況で使えばもっと追い込めのでは無いか…。そう思った松下は駿里を見ながら楽しそうに笑い始めた。
そしてーーー。
「駿里も起きた事だし振り出しに戻るか。」
松下はそう言って島袋にアイコンタクトをした。その意味が分かった島袋は手に持っていた振動付きのバイブのスイッチを入れる。それと同時に松下は駿里の足元の方に行った。そして駿里の腰を持つと後孔に自身の陰茎を当てる。また始まる。先程のことがフラッシュバックした駿里は首、そして腕や足を全力で振って抵抗した。そんな抵抗も今の松下と島袋にとっては何の攻撃にもならない。だから松下らは駿里が暴れている様子をただただ笑いながら見ていた。
だがそのせいで駿里はもっと地獄に落ちることになる。
「はは、いつまでジタバタしてんだ。」
「いや…っ、うぅ、ぅ、ゆっ、ぅ、たっ…ゆぅっ、たぁっ…!うぅ、はっ、ぁ、たっ、すけっ、ぇっ……あ゛か゛!」
「…は?」
あまりのショックに駿里は絶対に口にしてはならぬ言葉を出してしまった。出てきた涙が止まらず頭が働かなくなり注意力が鈍ってしまったのだろう。駿里はかつて同じ高校に通っていた時の親友の名を口にしてしまった。それを聞くと島袋と松下は案の定顔色が一瞬で変わる。楽しくて堪らなさそうに悪い笑みを浮かべていた2人だったが顔から笑みが消え、眉間にしわを寄せた。そして松下は駿里の顔を強く掴んだ。その衝撃で駿里は顔に痛みが走った。
「今なんか言ったか?」
そういった松下の顔を見て駿里はガタガタと震え出した。どうやら先程まで本気を出していなかったようだ。それもそうだ。あくまで松下と島袋の目的は駿里を堕とすこと。だから怒る必要も無いし、本気で痛めつけるようなことをする必要もなかった。松下は十分に度はすぎていたが、ただただ楽しんで駿里をいじめていただけだった。だが、あの名前を耳にすれば話は別になる。なぜなら駿里の親しい人物だから。それだけでは無い。裕太は駿里に好意を抱いている。駿里を拉致る上でそれは調べあげていた。そのため松下と島袋は余計に怒ったのだ。自分たちの前で認めたわけでもない男の名を駿里が口にしたのだから。
「なぁもう1回言ってくれよ駿里。よく聞こえなかったんだ。」
島袋もかなり怒っていた。駿里の腕を掴み強く握る。松下同様に駿里を酷く睨み顔から表情が消えた。駿里は2人がここまで怖いなんて思いもしなかった。ヤクザが怖いのは痛いほど知っていたはずなのに。最悪の事態を自分で作ってしまった。もはや手のつけようがない。駿里は震えて2人の問いかけに答えることすら出来なかった。それほど今の2人は怒りに満ち溢れていたのだ。
「答えらんねぇの?じゃあ聞き方を変えてやる。俺は優しいからな。もう一度だけチャンスを与えてやるよ。」
だが松下がそんな優しいわけが無い。今までの行動からそれは分かりきっている。今更慈悲なんて与えるわけがなかった。それをわかっていても駿里は身構えることしか出来なかった。そして案の定その松下によって駿里はより辛い目に遭わされることになる。
「さっきの男は生きてると思うか?」
松下にそう言われて駿里は思考停止した。まさか。そんなことがあるはずがない…と。狙いは自分だ。自分自身だ。なのに周りの人間にまで危害を加えるのか?何を考えているのか分からない。松下がこんなことを聞くということはもう答えは分かりきっているようなものじゃないか。駿里は現実を受け入れることが出来ず目を見開いた。そんな駿里の頬を撫でながら松下は再び口を開く。
「お前にとって必要のない人間だろ?だったら葬って当然だろうが。それともなんだ。文句でもあるのか?あいつはお前にとって大切でもなんでもない存在だよな、駿里。」
その言葉とは裏腹に松下は穏やかな顔でそう言った。それが逆に駿里は怖かった。人を葬っておきながらどうしてそんなにスラスラと話せるのか。それに内容も内容だった。必要ない…?そんなはずあるわけが無い。だって裕太は…っ。裕太は駿里にとってかけがえのない存在だったのだから。その裕太への思いが駿里の気持ちに変化を与えた。
「おい、黙ってないで何とか言えや。」
いつまで経っても何も言おうとしない駿里に対して島袋は脅すようにそう言った。だがその駿里の顔を見て島袋は驚いたように目を見開いていた。まるで先程の駿里と入れ替わったように。なぜ島袋がそうなっているのか。それは駿里が島袋のことを睨み返したからだ。そのため松下も驚いていた。そして駿里はその2人をしっかりと見て大きく口を開いた。
「…っ、ゆうたは、おれ、にとって、必要だっ…!」
駿里はハッキリとそう言いきった。もう負けない。ここを出て裕太にまた逢いに行くんだ。その思いが強くなり駿里はまた希望を取り戻したのだ。そんな駿里を見て松下と島袋は少しの間石のように固まっていた。
ほんの少しの間だけ…。
「はは、はははっ、何を言い出すと思えば。はは、ほんとにお前はおもしれぇ奴だ。」
『裕太は必要』と、駿里がそう言いきったのを見て島袋は大笑いをし始めた。駿里がこの状況で立ち直ったことに感心したと同時にワクワクが止まらなくなった。このまで自分を楽しませてくれる相手そうそういない…と。こんなにも感情が揺さぶられるのは島袋にとって本当に久しぶりだった。だが松下は違うようだ。楽しみに満ちている島袋とは逆に松下は怒りに満ち溢れていた。その怒りをぶつけるように先程後孔に当てていた陰茎を一気に奥まで挿れた。
「ーーーーー~~っ!!!!」
声を発することなく松下が挿れてきたことで駿里は体勢が取れなかった。全身を痙攣させて軽くメスイキをしてしまった。だが急いで息を整え松下を再び睨む。その駿里を松下は表情のない顔で見下ろしていた。そして駿里が嫌いな腰の動きをする。
「うぅっ、ぅ、い、ゃ…ッ!」
「これ以上俺を怒らせんな。」
そういった松下の声は聞いたことのないほど鋭い声だった。松下は引き返すことが出来ないほど怒ってきた。だが今の駿里は違う。頭の中に裕太がいる。だから怒っている松下に怯まなかった。
「はっ…とことん馬鹿なやつだ。」
松下に怯えることなく睨み続けている駿里に島袋はそう言った。面白い。実に面白い。興味がそそる。島袋は上がった口角がずっと戻らないままだった。そんな島袋を松下は1回黙れと言うように目で伝えた。
「おいおい。俺に当たんなよ。」
「…悪い。」
意外にも松下は島袋に素直に謝った。そんな松下を見て島袋はため息をつく。なんて不器用な男なんだ…と。
「お前が思ってることは分かるぜ。でもよ、それは駿里に直接聞こうぜ。」
「ああ。」
「駿里。あいつが必要なのはよーくわかった。でも別に好きでもなんでもないだろ?ただ利用するためだけに必要なんだよな?」
島袋は少しばかり駿里に情けをかけた。それほど今の松下はやばかったのだ。このまま行くと本当に取り返しがつかなくなってしまうかもしれない。島袋がそう冷静に判断するほど松下は怒っていた。だから島袋は駿里を誘導するようにそういったのだ。
しかしーーー。
「ちがうっ…!!」
「あ?」
「ゆうたっ、は、俺は、ゆうた、が……………。」
裕太がすき。そう言いたかった。だが言えなかった。急に口元に何かを置かれたために。
「この口…二度と使えなくしてやってもいいんだぜ。」
松下がそう言いながら駿里の口元に置いた手で唇をつまんだ。そしてそのまま駿里の口に猿轡を付けた。
「あと何回気を失ったらその威勢は無くなるんだろうな。楽しみだな、駿里。」
松下は駿里に機会すら与えることをやめた。自分が満足するまでやり続ける。例え駿里から望む言葉聞けたとしても。いや…今はそれすらも出来ない。なぜなら駿里は言葉を発する自由すら失っているのだから。松下に許しを乞うことすら出来なくなってしまった。だがこの絶望的な状況に立たされでも尚、駿里の目は死んでいなかった。それほど裕太が大きな存在だったのだろう。それが松下を余計に怒らせる。
「そんなにもがいても無駄だ。どうせ逃げられねぇよ。おい島袋。手空いてんならあの薬何個か用意しとけ。」
「おいおい康二。それはさすがに…」
「いいからやれ。」
「…分かったよ。」
「ぁ…………ッ……………………。」
「…………ぇ…………。」
何やら声が聞こえる。誰かわからない。しいて分かるのは複数の人物がいるということだけ。話している人物が誰なのかそれを確かめようにも駿里は目を開けられなかった。頭がぼーっとして働かない。ここはどこだ。そもそも自分はなんでこんなところに寝ている。駿里は訳が分からず目をうっすらと開けた状態で周りを見渡した。
「……………し……?」
なんだか自分の名前が呼ばれた気がした。そして誰かが先程から頬っぺを軽く叩いてくる。
「………ゅ…?…………おーい、駿里?」
いくらか時間が経ち駿里は段々と目を開けるようになった。その目と同じように耳も開いてきた。そのおかげだろう。ぼんやりとしか聞こえなかった声がはっきりと聞こえた。そして駿里はその声を聞いてやっと意識が覚醒した。それと同時に駿里は涙が溢れ出す。なぜなら思い出してしまったから。自分がなんでここにいるのか。そしてなんで今眠っていたのかを。
「はは、まじ泣きじゃねぇか。」
意識を覚醒するやいなや泣き出してしまった駿里を見て島袋は笑い声を上げた。松下も駿里の頭を撫でたり髪を触ったりしながら島袋同様に笑っていた。2人ともさぞ楽しそうだった。そして2人は手を駿里の身体に持っていく。
「うぅ…っ、ぃ、はっ、…ぅ、んっ、うぅ…。」
駿里は起きて早々松下と島袋によって全身を撫でられ始めた。嫌で嫌で仕方ないのに先程何度も絶頂を迎えたこともあり身体を自由に動かすことが叶わなかった。その上2人に軽くではあるが拘束されている。だから駿里がどれだけ身をよじろうと無駄なのだ。そんな駿里を見て松下はククッと笑った。
「辛いよなぁ駿里。でもこれはお前が招いた結果だぞ。俺達に情けをかけるなんてこと出来るわけねぇだろ。」
松下は未だに駿里の発言を根に持っている。自分たちのものにならない。それがどうしても許せないのだろう。いくらなんでもここまで限界に追い込めば簡単に手に入ると思っていたのにそれが思い通りにいかないのだから怒りも湧いてくる。だがそれがいい。今までの奴らと違う。全く違う。どこも違う。それが松下をそそるのだ。自分を拒否すればするほど欲しくなる。松下は駿里の身体を撫でていた手を乳首に移動させて駿里が逃げようと身体を捩る姿を堪能し始める。松下がそんなことをしていると横で島袋が何かを思い出したのか声を上げた。
「そういやお前結局あの玩具使ってなくね?」
あの玩具というのは先程松下が出した振動付きのバイブのことであろう。言われてみればそうだった。駿里を抱くことに夢中になりすぎていた2人はその玩具をベットの隅に投げてしまっていた。島袋はそれがたまたま視界に入り松下にそういったのだ。
「そういえばそうだったな。」
せっかく出したのにもったいないことをしてしまったと松下は困り顔をする。だが駿里を見ているとそれが正解だったのかもしれないと思い始めた。今駿里は地獄の中にいる。天国から転生して地獄に一気に落ちた。この状況で使えばもっと追い込めのでは無いか…。そう思った松下は駿里を見ながら楽しそうに笑い始めた。
そしてーーー。
「駿里も起きた事だし振り出しに戻るか。」
松下はそう言って島袋にアイコンタクトをした。その意味が分かった島袋は手に持っていた振動付きのバイブのスイッチを入れる。それと同時に松下は駿里の足元の方に行った。そして駿里の腰を持つと後孔に自身の陰茎を当てる。また始まる。先程のことがフラッシュバックした駿里は首、そして腕や足を全力で振って抵抗した。そんな抵抗も今の松下と島袋にとっては何の攻撃にもならない。だから松下らは駿里が暴れている様子をただただ笑いながら見ていた。
だがそのせいで駿里はもっと地獄に落ちることになる。
「はは、いつまでジタバタしてんだ。」
「いや…っ、うぅ、ぅ、ゆっ、ぅ、たっ…ゆぅっ、たぁっ…!うぅ、はっ、ぁ、たっ、すけっ、ぇっ……あ゛か゛!」
「…は?」
あまりのショックに駿里は絶対に口にしてはならぬ言葉を出してしまった。出てきた涙が止まらず頭が働かなくなり注意力が鈍ってしまったのだろう。駿里はかつて同じ高校に通っていた時の親友の名を口にしてしまった。それを聞くと島袋と松下は案の定顔色が一瞬で変わる。楽しくて堪らなさそうに悪い笑みを浮かべていた2人だったが顔から笑みが消え、眉間にしわを寄せた。そして松下は駿里の顔を強く掴んだ。その衝撃で駿里は顔に痛みが走った。
「今なんか言ったか?」
そういった松下の顔を見て駿里はガタガタと震え出した。どうやら先程まで本気を出していなかったようだ。それもそうだ。あくまで松下と島袋の目的は駿里を堕とすこと。だから怒る必要も無いし、本気で痛めつけるようなことをする必要もなかった。松下は十分に度はすぎていたが、ただただ楽しんで駿里をいじめていただけだった。だが、あの名前を耳にすれば話は別になる。なぜなら駿里の親しい人物だから。それだけでは無い。裕太は駿里に好意を抱いている。駿里を拉致る上でそれは調べあげていた。そのため松下と島袋は余計に怒ったのだ。自分たちの前で認めたわけでもない男の名を駿里が口にしたのだから。
「なぁもう1回言ってくれよ駿里。よく聞こえなかったんだ。」
島袋もかなり怒っていた。駿里の腕を掴み強く握る。松下同様に駿里を酷く睨み顔から表情が消えた。駿里は2人がここまで怖いなんて思いもしなかった。ヤクザが怖いのは痛いほど知っていたはずなのに。最悪の事態を自分で作ってしまった。もはや手のつけようがない。駿里は震えて2人の問いかけに答えることすら出来なかった。それほど今の2人は怒りに満ち溢れていたのだ。
「答えらんねぇの?じゃあ聞き方を変えてやる。俺は優しいからな。もう一度だけチャンスを与えてやるよ。」
だが松下がそんな優しいわけが無い。今までの行動からそれは分かりきっている。今更慈悲なんて与えるわけがなかった。それをわかっていても駿里は身構えることしか出来なかった。そして案の定その松下によって駿里はより辛い目に遭わされることになる。
「さっきの男は生きてると思うか?」
松下にそう言われて駿里は思考停止した。まさか。そんなことがあるはずがない…と。狙いは自分だ。自分自身だ。なのに周りの人間にまで危害を加えるのか?何を考えているのか分からない。松下がこんなことを聞くということはもう答えは分かりきっているようなものじゃないか。駿里は現実を受け入れることが出来ず目を見開いた。そんな駿里の頬を撫でながら松下は再び口を開く。
「お前にとって必要のない人間だろ?だったら葬って当然だろうが。それともなんだ。文句でもあるのか?あいつはお前にとって大切でもなんでもない存在だよな、駿里。」
その言葉とは裏腹に松下は穏やかな顔でそう言った。それが逆に駿里は怖かった。人を葬っておきながらどうしてそんなにスラスラと話せるのか。それに内容も内容だった。必要ない…?そんなはずあるわけが無い。だって裕太は…っ。裕太は駿里にとってかけがえのない存在だったのだから。その裕太への思いが駿里の気持ちに変化を与えた。
「おい、黙ってないで何とか言えや。」
いつまで経っても何も言おうとしない駿里に対して島袋は脅すようにそう言った。だがその駿里の顔を見て島袋は驚いたように目を見開いていた。まるで先程の駿里と入れ替わったように。なぜ島袋がそうなっているのか。それは駿里が島袋のことを睨み返したからだ。そのため松下も驚いていた。そして駿里はその2人をしっかりと見て大きく口を開いた。
「…っ、ゆうたは、おれ、にとって、必要だっ…!」
駿里はハッキリとそう言いきった。もう負けない。ここを出て裕太にまた逢いに行くんだ。その思いが強くなり駿里はまた希望を取り戻したのだ。そんな駿里を見て松下と島袋は少しの間石のように固まっていた。
ほんの少しの間だけ…。
「はは、はははっ、何を言い出すと思えば。はは、ほんとにお前はおもしれぇ奴だ。」
『裕太は必要』と、駿里がそう言いきったのを見て島袋は大笑いをし始めた。駿里がこの状況で立ち直ったことに感心したと同時にワクワクが止まらなくなった。このまで自分を楽しませてくれる相手そうそういない…と。こんなにも感情が揺さぶられるのは島袋にとって本当に久しぶりだった。だが松下は違うようだ。楽しみに満ちている島袋とは逆に松下は怒りに満ち溢れていた。その怒りをぶつけるように先程後孔に当てていた陰茎を一気に奥まで挿れた。
「ーーーーー~~っ!!!!」
声を発することなく松下が挿れてきたことで駿里は体勢が取れなかった。全身を痙攣させて軽くメスイキをしてしまった。だが急いで息を整え松下を再び睨む。その駿里を松下は表情のない顔で見下ろしていた。そして駿里が嫌いな腰の動きをする。
「うぅっ、ぅ、い、ゃ…ッ!」
「これ以上俺を怒らせんな。」
そういった松下の声は聞いたことのないほど鋭い声だった。松下は引き返すことが出来ないほど怒ってきた。だが今の駿里は違う。頭の中に裕太がいる。だから怒っている松下に怯まなかった。
「はっ…とことん馬鹿なやつだ。」
松下に怯えることなく睨み続けている駿里に島袋はそう言った。面白い。実に面白い。興味がそそる。島袋は上がった口角がずっと戻らないままだった。そんな島袋を松下は1回黙れと言うように目で伝えた。
「おいおい。俺に当たんなよ。」
「…悪い。」
意外にも松下は島袋に素直に謝った。そんな松下を見て島袋はため息をつく。なんて不器用な男なんだ…と。
「お前が思ってることは分かるぜ。でもよ、それは駿里に直接聞こうぜ。」
「ああ。」
「駿里。あいつが必要なのはよーくわかった。でも別に好きでもなんでもないだろ?ただ利用するためだけに必要なんだよな?」
島袋は少しばかり駿里に情けをかけた。それほど今の松下はやばかったのだ。このまま行くと本当に取り返しがつかなくなってしまうかもしれない。島袋がそう冷静に判断するほど松下は怒っていた。だから島袋は駿里を誘導するようにそういったのだ。
しかしーーー。
「ちがうっ…!!」
「あ?」
「ゆうたっ、は、俺は、ゆうた、が……………。」
裕太がすき。そう言いたかった。だが言えなかった。急に口元に何かを置かれたために。
「この口…二度と使えなくしてやってもいいんだぜ。」
松下がそう言いながら駿里の口元に置いた手で唇をつまんだ。そしてそのまま駿里の口に猿轡を付けた。
「あと何回気を失ったらその威勢は無くなるんだろうな。楽しみだな、駿里。」
松下は駿里に機会すら与えることをやめた。自分が満足するまでやり続ける。例え駿里から望む言葉聞けたとしても。いや…今はそれすらも出来ない。なぜなら駿里は言葉を発する自由すら失っているのだから。松下に許しを乞うことすら出来なくなってしまった。だがこの絶望的な状況に立たされでも尚、駿里の目は死んでいなかった。それほど裕太が大きな存在だったのだろう。それが松下を余計に怒らせる。
「そんなにもがいても無駄だ。どうせ逃げられねぇよ。おい島袋。手空いてんならあの薬何個か用意しとけ。」
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