極道の密にされる健気少年

安達

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番外編

〜オメガバース〜 騒がしい幹部

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「あんまり生意気言ってると没収日数を3日に増やすぞ。」

「あはは、絶対図星だ。」



痛いところをつかれた寛也は駿里の首に顔を埋めキスマークをつけた。



「うわっ、ごめんって!」



首元に顔を埋められるのがくすぐったい為、駿里は少し苦手だった。寛也を押し返そうとするが腕でがっちりホールドされているため叶わない。ほんとにくすぐったい。絶対わざとだ。駿里はこのままやられたままでいられるか、と反撃をした。



「痛てぇ。」

「お返しだ。」



駿里に首を噛まれて顔を一瞬だけ顰めたが、ドヤ顔で自分のことを見てくる駿里の顔が面白かった寛也は鼻で笑った。



「笑ったな!」

「ドヤ顔しすぎだろ。」

「うるさいなぁ。」



寛也がキスマークをつけることを辞めさせることに成功した駿里はたしかに自分のことを誇り過ぎていたかもしれない。駿里は数秒前の自分を思い出して恥ずかしくなった。顔が赤くなっているのが自分でもわかる。穴があったら入りたい…っと、寛也から顔を隠しているとまた着信が鳴った。今日はよく電話がかかってくる日だ。



「誰から?」

「お前が知る必要は無い。」

「なんだそれ。俺のスマホなのに。」



寛也が不貞腐れている姿を見る限り、電話をかけてきた相手は碓氷だろうと察しが着いた。



「そんなことより明日事務所に行くんだろ?ならさっさと寝よう。」

「あー話逸らした。」

「あはは、ははっ、ダメだってっ、ごめん寛也!」



2度も駿里が自分のことを揶揄ってきたので寛也は駿里の服の中に手を忍ばせ軽く脇腹をくすぐった。駿里が逃げようと暴れても30秒間程くすぐり続けた。



「いくらなんでも長いよ…っ!」

「可愛い。」



笑いすぎたせいか涙目になっている駿里はまるで絶頂を迎えた後の顔のようだった。しかし、流石に今から気持ちを抑えられずに病み上がりの駿里を抱き潰すのは流石に出来ない。だから寛也は駿里の唇に1度キスをして気持ちを抑えた。



「よし寝ようか。」

「うん。おやすみ。」

「ああ、おやすみ。」



寛也は駿里が寝るまでずっと頭を撫でていた。気持ちよさそうに寝ながら寝息をたたて寝る駿里を抱き寄せ自分も目をつぶった。












*********


「おはようございます組長…ってなんでお前いんだよ。」



寛也だけだと思ったら後ろに駿里もいたことに松下は驚いたようだ。なんで事務所に来たのか理由はさておき駿里に会えたことが純粋に嬉しかった松下は満面の笑みになる。



「ん?誰のこと言ってんだ?」



松下が言った『お前』というのが気になった圷は事務所のドアの方を向いた。



「駿里じゃねぇか!」

「おはよう圷さん。」

「おはよう。どうしたんだ急にこんな所に来て。」



駿里にとっては慣れたものかもしれないが、世間的に言えばヤクザの事務所は物騒な場所だ。あまりいい場所では無いという事もあって圷はなんで駿里がここに来たのか気になったのだ。



「久しぶりに天馬さんに会いに来たんだ。」

「は?なんであいつなんだよ。俺じゃねぇの?」



相変わらず悪態をついてくる。松下の駿里に対する独占欲は寛也並だ。その事に呆れた圷は、ため息をつきながら駿里を見た。



「あんなやつ無視していいぞ駿里。天馬のとこ行くか。」

「おい。ふざけんなよ圷。」

「たく、お前がうるさいからだろ。」



近くにいた北風が松下にそう言った。それに納得するように志方は頷いている。



「その通りだ。」

「おい志方、てめぇにだけは言われたくねぇわ。つかさ、昨日俺がお前のミスをご丁寧にカバーしてやったの忘れたのか?」



確かにそんなこともあった。昨日してもらったことはとてもありがたく感謝している。しかし…。



「昨日は昨日、今日は今日だ。」

「何神様みたいなセリフ言ってんだよ気持ち悪ぃな。」

「なんだと。」



お前にだけは気持ち悪いとか言われたくねぇわ、と志方がガチギレをしそうになった時さすがに止めるかと寛也が2人の近くまで来た。



「おい喧嘩する元気があるなら仕事しろ。」

「こいつが噛み付いてくるんですよ。」

「ならほっとけ。」



喧嘩するほど仲がいいとは言うが流石に喧嘩しすぎだろと寛也は呆れた。



「組長、俺が悪いみたいな言い方しないでくださいよ。」

「事実だろ。お前が静かに仕事してりゃ志方も大人しくしてただろうが。」

「…すみません。」



事実と言えば事実かもしれない。だが、騒がずにはいられなかったのだ。松下は駿里のことになると我慢できなくなってしまうのだから。



「もういいから仕事しろ。お前もだぞ志方。」

「「はい。」」



寛也には逆らうことは絶対に出来ないので2人は不本意ではあったが大人しくそう返事をした。



「てめぇのせいで組長に怒られちまったじゃねぇかよ。」

「まだやってんのか。いい加減にしろ。子供じゃねぇんだから。」



戻ってきた圷が呆れ顔して2人にそう言った。



「「お前にだけは言われたくねぇ!」」

「あはは、すごい綺麗に声ハモってる。」



愛しの駿里の声が聞こえて松下達が声のした方を見た。するとそこには先程天馬のところに圷と一緒に行ったはずの駿里がいた。何かを手に持っている事から駿里は何を届けに来たのだろう。



「駿里こっち来い。」

「うん分かった。」

「おい駿里、やめとけ。行かなくていい。またこいつにちょっかい掛けられるぞ。」



圷は松下の所に言われた通り行こうとした駿里の腕を掴んだ。行けば松下に抱きしめられ長い時間駿里が解放されなくなるのがわかったからだ。



「確かにそうだね。」

「圷…てめぇ。」



せっかく駿里を独占できるチャンスだったのにそれを潰された松下は圷を恨んだ。



「そう怒んなって。寿命縮まんぞ。代わりに俺が行ってやるから。」

「来んな。邪魔だ。」



ギャーギャー言っている松下を見て駿里は大笑いした。面白すぎる…って違う違う。笑ってる場合じゃなかった。天馬さんに頼まれたものがあったんだ。島袋さん探さないと。



「誰か探してんの?」



駿里が何かを探すように周りを見渡している素振りしているのを見て志方が声をかけてきた。



「うん。島袋さんどこにいる?」

「あーあいつさっき外出てったんだよな。どうした?」



ちょうどすれ違っちまったな、と志方は笑い駿里を自分の元に引き寄せてそう問うた。



「天馬さんにこれ渡しといてって言われたんだ。でも外にいるなら後で渡しとく。」

「いや、俺が渡しといてやる。お前はゆっくり寛いどけ。」

「ありがとう。」



駿里は頼まれたものを志方に託して再び天馬のところに戻って行った。その帰り道少しだけ寄り道をして…。
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