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番外編
〜オメガバース〜 温もり
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しばらくの間何も言わずに駿里のことを抱きしめていると志方のスマホに着信音がなった。ポケットに入れていたスマホを取り出し画面を見ると島袋からのメールが着ていた。
『そんなに大事な案件じゃなかったから俺もそっちに帰る。組長も明日の朝には帰れるだろうよ。』
志方はこのメールを無言で松下に見せた。その行動の意味が松下にも伝わり彼が頷いたのを見て志方は島袋にメールを送信した。『駿里が吉村に襲われからあいつを半殺しにしとけ。でも絶対殺すなよ。多分事務所にいるからこっそり帰れ。お前が帰るってこと知ったら多分吉村は逃げちまうと思うからな。』と。島袋の事なので駿里がそんな目に遭ったと知れば怒り狂って殺す心配がある。だから志方は島袋に半殺しに留めておけ、と強く忠告した。
「駿里、顔見せてくれるか?」
志方がメールをし終わりスマホを再びポケットにしまった後で駿里にそう言った。嗚咽が聞こえなくなり先程に比べて大分落ち着いたからだ。駿里は志方に優しくそう言われたこともあってかゆっくりと顔を上げ彼に自分の顔を見せた。
「あー目腫れてんじゃん。保冷剤取ってくるから待ってろ。」
志方は駿里の頬を撫でて目の下をなぞる様に指を動かした。明日も腫れが続かないように冷凍庫の中にある保冷剤を取りに行こうとベットから降りようとした時、志方は松下に腕を掴まれた。
「志方ちょっと待て。駿里、少しでいいから何か食べよう。軽く食べれるもん作ってやるから、な?」
「うん。」
かなり泣いたこともあり脱水症状になる恐れがあった。それだけではない。駿里はヒートが終わったばかりということもあってまともに食事もしていない。だから無理にでも食べさせなければならない。たが、駿里がそう返事をしたことで2人は安堵した。無理に食べさせるより駿里が食べたいと思って胃に何かを入れる方が体的にもいいからだ。
「よしいい子だ。一緒に行こう。」
松下は当たり前のように駿里を抱きかかえてベットから降りた。
「飯の前に傷の手当だな。」
「染みるだろうがちょっとだけ我慢だ。」
志方が救急箱を持ってきて松下にガーゼなどといった道具を渡した。左半身は松下、右半身は志方が消毒をして効率よく早く終わらせようとした。少しでも痛みを伴う時間を少なくする為に。
「っ…!」
「痛いよな、すぐに終わらせるから。」
2人が消毒液を傷口に垂らした瞬間とんでもない激痛がそこに走った。痛い。それでも駿里は声を押し殺して我慢した。唇を噛み締めようとすると志方が唇を合わせてきた。傷口が増えちまだろうが、と言わんばかり唇を強く吸われる。
「よく頑張ったな。偉いぞ駿里。」
傷が深いところの処置が終わり松下が頬にキスをしてきた。他の場所は痣になっているところが多く傷ができていたとしても浅い。だからそこはゆっくりと処置をしていった。湿布を貼り絆創膏をつける。
「鎮痛の効果もあるから暫くすれば痛みも時期に治まってくる。それまでの辛抱だ。」
志方は全ての処置が終わると唇をそっと離した。駿里が何度も唇を噛もうとするから志方はその度に唇を吸って辞めさせていたのだ。おかげで駿里の唇は腫れてしまっている。
「志方、お前はここにいろ。俺はなんか作ってくるから駿里を頼む。」
「ああ、任せとけ。」
志方は駿里をソファの上に横に寝かせてその横に自分も寝た。志方は駿里の顔が見たいので横向きに寝かせお互いの顔が向き合うようにした。
「こら、目を逸らすな。」
「恥ずかしい…っ。」
そう言って駿里は志方の首元に顔を埋めた。だが、志方はそれを許さなかった。可愛い顔がそれでは見ることが出来ないからだ。志方は駿里の肩を押し、元の位置に戻して鼻先同士をくっつけた。
「可愛い。」
「もうやだっ、離せっ…!」
「は?嫌に決まってんだろ。」
志方は駿里が顔を背けてきたので腕を首に回した。そのおかげで駿里は志方とより近づいてしまう。少し動けば唇同士が当たってしまいそうな程に。
「近いっ、ょ。」
「近くしてんだよ。お前の顔が良く見えるからな。」
顔を真っ赤にして目をつぶっている駿里を見て志方は頬にキスをした。頬だけでは足りず額にも鼻先にも目元にもキスを落とす。寛也に見られたら殴られてしまうだろうが今はいないので志方は好き放題出来る。
「し、志方さんっ、もう終わりっ…!」
「駄目だ。」
「いい加減にしろ。」
「い゛っ、何すんだよ松下!」
料理を作り終えた松下が2人のところに来て志方の背中を思いっきりしばいた。
「これ食べれそうか?」
「うん、ありがとう康二さん。」
「いいよ。駿里が元気になるならなんでもしてやる。志方、さっさと退け。駿里が食えねぇだろうが。」
松下にそう言われ志方は渋々駿里の傍から離れた。志方から解放された駿里は起き上がろうと体を動かすと松下に抱き抱えられた。そして彼の膝の上に乗せられる。
「食わせてやる。食べれるだけ食べろ。」
「自分で食べれるからっ…!」
「はいはい。いいから食べろ。」
スプーンが口元まで運ばれてきて駿里は大人しく口を開くしかない。結局最後まで松下によって食べさせられてしまった。とてもありがたい事なのだがなんというかとても恥ずかしいのだ。お腹いっぱいになるともう少し寝とけと言われてソファに寝かされた。2人に頭や体を撫でられ駿里はいつの間にか眠っていた。
「寝たな。」
「ああ。そういや松下、このこと組長に報告したか?」
「してねぇよ。お前がしてんのかと思ってよ。」
「俺もしてねぇ。まぁ島袋がしてるかもしれねぇけど一応しとくか。」
駿里が起きてはいけないと思い志方は失礼承知で寛也にメールで報告をした。
「駿里にはこのことを伏せておこう。」
「そうだな。」
『そんなに大事な案件じゃなかったから俺もそっちに帰る。組長も明日の朝には帰れるだろうよ。』
志方はこのメールを無言で松下に見せた。その行動の意味が松下にも伝わり彼が頷いたのを見て志方は島袋にメールを送信した。『駿里が吉村に襲われからあいつを半殺しにしとけ。でも絶対殺すなよ。多分事務所にいるからこっそり帰れ。お前が帰るってこと知ったら多分吉村は逃げちまうと思うからな。』と。島袋の事なので駿里がそんな目に遭ったと知れば怒り狂って殺す心配がある。だから志方は島袋に半殺しに留めておけ、と強く忠告した。
「駿里、顔見せてくれるか?」
志方がメールをし終わりスマホを再びポケットにしまった後で駿里にそう言った。嗚咽が聞こえなくなり先程に比べて大分落ち着いたからだ。駿里は志方に優しくそう言われたこともあってかゆっくりと顔を上げ彼に自分の顔を見せた。
「あー目腫れてんじゃん。保冷剤取ってくるから待ってろ。」
志方は駿里の頬を撫でて目の下をなぞる様に指を動かした。明日も腫れが続かないように冷凍庫の中にある保冷剤を取りに行こうとベットから降りようとした時、志方は松下に腕を掴まれた。
「志方ちょっと待て。駿里、少しでいいから何か食べよう。軽く食べれるもん作ってやるから、な?」
「うん。」
かなり泣いたこともあり脱水症状になる恐れがあった。それだけではない。駿里はヒートが終わったばかりということもあってまともに食事もしていない。だから無理にでも食べさせなければならない。たが、駿里がそう返事をしたことで2人は安堵した。無理に食べさせるより駿里が食べたいと思って胃に何かを入れる方が体的にもいいからだ。
「よしいい子だ。一緒に行こう。」
松下は当たり前のように駿里を抱きかかえてベットから降りた。
「飯の前に傷の手当だな。」
「染みるだろうがちょっとだけ我慢だ。」
志方が救急箱を持ってきて松下にガーゼなどといった道具を渡した。左半身は松下、右半身は志方が消毒をして効率よく早く終わらせようとした。少しでも痛みを伴う時間を少なくする為に。
「っ…!」
「痛いよな、すぐに終わらせるから。」
2人が消毒液を傷口に垂らした瞬間とんでもない激痛がそこに走った。痛い。それでも駿里は声を押し殺して我慢した。唇を噛み締めようとすると志方が唇を合わせてきた。傷口が増えちまだろうが、と言わんばかり唇を強く吸われる。
「よく頑張ったな。偉いぞ駿里。」
傷が深いところの処置が終わり松下が頬にキスをしてきた。他の場所は痣になっているところが多く傷ができていたとしても浅い。だからそこはゆっくりと処置をしていった。湿布を貼り絆創膏をつける。
「鎮痛の効果もあるから暫くすれば痛みも時期に治まってくる。それまでの辛抱だ。」
志方は全ての処置が終わると唇をそっと離した。駿里が何度も唇を噛もうとするから志方はその度に唇を吸って辞めさせていたのだ。おかげで駿里の唇は腫れてしまっている。
「志方、お前はここにいろ。俺はなんか作ってくるから駿里を頼む。」
「ああ、任せとけ。」
志方は駿里をソファの上に横に寝かせてその横に自分も寝た。志方は駿里の顔が見たいので横向きに寝かせお互いの顔が向き合うようにした。
「こら、目を逸らすな。」
「恥ずかしい…っ。」
そう言って駿里は志方の首元に顔を埋めた。だが、志方はそれを許さなかった。可愛い顔がそれでは見ることが出来ないからだ。志方は駿里の肩を押し、元の位置に戻して鼻先同士をくっつけた。
「可愛い。」
「もうやだっ、離せっ…!」
「は?嫌に決まってんだろ。」
志方は駿里が顔を背けてきたので腕を首に回した。そのおかげで駿里は志方とより近づいてしまう。少し動けば唇同士が当たってしまいそうな程に。
「近いっ、ょ。」
「近くしてんだよ。お前の顔が良く見えるからな。」
顔を真っ赤にして目をつぶっている駿里を見て志方は頬にキスをした。頬だけでは足りず額にも鼻先にも目元にもキスを落とす。寛也に見られたら殴られてしまうだろうが今はいないので志方は好き放題出来る。
「し、志方さんっ、もう終わりっ…!」
「駄目だ。」
「いい加減にしろ。」
「い゛っ、何すんだよ松下!」
料理を作り終えた松下が2人のところに来て志方の背中を思いっきりしばいた。
「これ食べれそうか?」
「うん、ありがとう康二さん。」
「いいよ。駿里が元気になるならなんでもしてやる。志方、さっさと退け。駿里が食えねぇだろうが。」
松下にそう言われ志方は渋々駿里の傍から離れた。志方から解放された駿里は起き上がろうと体を動かすと松下に抱き抱えられた。そして彼の膝の上に乗せられる。
「食わせてやる。食べれるだけ食べろ。」
「自分で食べれるからっ…!」
「はいはい。いいから食べろ。」
スプーンが口元まで運ばれてきて駿里は大人しく口を開くしかない。結局最後まで松下によって食べさせられてしまった。とてもありがたい事なのだがなんというかとても恥ずかしいのだ。お腹いっぱいになるともう少し寝とけと言われてソファに寝かされた。2人に頭や体を撫でられ駿里はいつの間にか眠っていた。
「寝たな。」
「ああ。そういや松下、このこと組長に報告したか?」
「してねぇよ。お前がしてんのかと思ってよ。」
「俺もしてねぇ。まぁ島袋がしてるかもしれねぇけど一応しとくか。」
駿里が起きてはいけないと思い志方は失礼承知で寛也にメールで報告をした。
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