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創始
155話 確信
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ーーー数時間前
事務所にいた松下が慌てて圷に話しかけていた。
「おい、圷。」
「なんだよ。」
「やっぱり様子がおかしい。駿里のバイト先まで行ってくる。」
松下はパソコンを閉じて上着を手に持ち、外に行く準備をし始めた。そんな松下を圷は呆れ顔で見る。
「相変わらず心配症だなお前は。また駿里に文句言われんぞ。」
「これを見ろ。」
そう言われて圷がパソコンを見ると焦った様子で店長とバイトの子が話していた。いつものように度が過ぎた松下の心配かと思ったが違うようだ。声は聞こえないが店長らの顔を見れば分かった。ただ事では無いと。
「俺も行く。」
「いや、お前は待機してろ。状況を聞き次第すぐに連絡するから組長と森廣さんに報告を頼む。そろそろ志方と一緒に組長が帰ってくるはずだからな。」
「分かった。任せたぞ。」
松下は急いで駿里のバイト先である居酒屋まで向かっていた。それほど遠い距離ではなかった為直ぐに到着した。
「あ、駿里の…。」
店長は松下の姿を視界に捉えると目を見開いた。
「そう。俺は駿里の身内もんだ。何かあったのか?」
「私が駿里に買い物を頼んだんです。それで多分一度スーパーからここに帰ってきてるみたいなんです。ここに買い袋があるから。でもこれがあるのに駿里の姿が無くて。探しに行った慎吾も帰ってこなくて何があったのか分からなくて。本当にすみません。私のせいです。」
「今は2人を探すのが先だ。心当たりは?」
「あります。」
ずっと黙っていたバイトの子が口を開いた。希夜だ。
「そんなに言いきれるほどにか?もし間違ってたら仕切り直しだぞ。」
「間違えありません。」
「そうか。なら話してもらおう。」
松下はそこまで言うなら仮に間違っていたとしても、もしかしたらなにか手がかりになるかもしれないと思った。少しでも情報を集めたかったのだ。
「今極秘で捜査されている事件があるんです。その被害者全てが少年です。駿里はその条件に当てはまっている。慎吾もきっと巻き込まれたんです。それにこんな真昼間から大胆に犯行する奴らなんてそいつらしかありえません。」
「それなら話は早い。」
「…え?どういう事ですか?」
相手は人を何人も殺している極悪な犯罪者というのに表情も変えずに焦ることなく誰かと連絡を取っている松下を見て希夜は不思議に思った。
「駿里に害がありそうな事件は全て調べてんだ。そいつらのアジトも分かっている。後は任せろ。2人も巻き込まれないように家に帰っとけ。」
「あの!駿里はもちろん、慎吾の事も願いします。私にとって彼は息子のような存在なんです。」
「ああ、任せろ。」
松下は説明しなくていいように圷と電話を繋いでいた。全てのことが圷に伝わっていることが確認できると電話を切り、店を出て松下は事務所に戻ろうとした。
「すみません。少しお話いいですか?」
「チッ、今忙しいんだよ……ん?お前。」
「はい。ここでバイトとして働いている者です。」
「どういう事だ。」
先程、店の店長はいなくなったと言っていた。なのに松下が店から出た瞬間を狙って話しかけてきた慎吾に疑惑の目を向けた。
「駿里がいる場所を教えます。」
「は?そんな事言われても信じれる訳ねぇだろ。つか、お前もグルなのか?」
「違います。グルではありません。ただ、駿里を助けたい。だから俺が身代わりになります。」
松下はじっくりと慎吾の表情を見ていた。もし表情筋の一部がピクっと動いたり、鼻を触ったりする動作をすれば嘘を言っている。しかし、慎吾にそれは見られなかった。松下は慎吾が本当のことを言っていると分かり、こいつは信用できると安心したがそれと同時に怒りも湧いた。
「ふざけんな。そんな事しなくても俺らだけで助けられる。自分の命を大切にしろ。」
「俺は交渉をしたんです。だから命の危険はありません。」
その言葉を聞いて松下は再び圷に電話を繋いだ。
『何かあったのか?』
「ああ、そっちの状況は?」
『組長が帰ってきて今車で移動してる。お前は?』
「スピーカーにして組長にも聞こえるようにしてくれ。今からの話を聞けば何か分かることがあるかもしれない。」
『了解した。』
そして松下は圷がスピーカーにし、寛也にも電話の内容が聞こえるようになったことを確認すると口を開いた。
「……詳しく説明しろ。」
「駿里を攫ったのは6人の男達です。俺はその中のボスに昔、ペットとして飼われていました。だから心当たりがあって、あいつらのアジトに向かったんです。そしたら案の定攫われた駿里がいた。だから…」
「そのボスと交渉したんだな。どういう条件だ。」
慎吾は責任感が強すぎるために駿里の事をこの体を捧げても守りたかったのだろう。そんな慎吾の弱さに漬け込み、利用しようとしたアイツらに松下は怒りが込み上げてきた。
「一生洸のそばにいる。それだけです。」
「その洸ってやつがボスか。でもな、慎吾。店長はどうすんだよ。さっきお前のことを息子のような存在って言ってたぞ。それに簡単に人を殺すような奴のことを信じれんのか?」
「洸は言ったことを絶対に守ります。」
「お前…そいつのこと好きなのか?」
松下は洗脳されているのか、あるいは恋心を抱いているのかなんにせよ犯罪者のことを慎吾がなぜ信じるのか気になった。
「ぇ……いや、それは…。」
「それならばお前も解放する。約束する、信じろ。そんな奴のところになんかに行かなくていい。」
「そんな甘い考えではっ、」
「甘くねぇよ。俺ら旭川組を舐めんな。」
「俺の事も舐めてもらっちゃ困るねぇ。それにさ、慎吾は自分の口から言ったんだよ。俺のところに来るってな。」
物陰に隠れていた洸がでてきた。松下は先程から視線を感じており、いるのは分かってはいたが口には出さかった。変に挑発すれば駿里が危険な目にあう可能性があったから。
「……お前か。」
「そう。こいつが言ってた洸ってのが俺。」
「駿里はどこだ。」
「アジトにいるぜ。」
洸はこの状況を楽しんでいた。松下が怒れば怒るほどククク、と面白そうに笑う。
「嘘偽りないことを証明しろ。」
「これ見てみなよ。」
そこには駿里が5人ほどに囲まれレイプされている映像が映っていた。その瞬間松下の中でプツンと何かが切れた。
「おっと、ここで暴力は最善策じゃない。俺はあんたとやり合うつもりもないからな。」
「どういうつもりだてめぇ。」
「まさか慎吾に会えると思わかなかったからな。俺はこいつさえいればいい。だから駿里はどうでもいい。俺の仲間も好きにしていいぜ。なにかを手に入れるためには犠牲が必要だからな。俺は仲間を喜んで売ってやる。」
「慎吾をどうするつもりだ。」
「死ぬまで飼う。」
「そうか。」
松下は納得したようにそう言った。その様子を見て洸は満足そうに微笑んだ。
「それじゃあ、俺らはそろそろ行く。慎吾、帰ろう。」
「おい待てよ。」
「あ?……う゛ぁっ、!」
松下はこの場を去ろうとした洸の鳩尾を思いっきり殴った。
「はっ、悪い悪い。手が滑ったわ。」
「…てめぇ。」
松下が本気で殴ったため、洸は蹲り吐血した。
「動かない方がいいぜ。多分内臓損傷してっからよ。変に動くと大量失血してあっという間に地獄行きだ。慎吾、行くぞ。」
「どこに…?」
「とりあえず俺らの事務所に。」
松下は電話先で外の仕事から帰ってきた寛也にそう指示された。その指示通り松下は慎吾を自分の車に乗せた。その後洸の携帯で警察に電話をし、その数分後警察に連行された洸を見届けると寛也との集合場所に行こうとした。
「電話以外にも何かしてましたよね。何をしたんですか?」
「あいつの仲間に嘘のメッセージを送った。手伝って欲しいことがあるから来いってな。」
「どうして?」
普段の慎吾ならその理由がわかっていただろう。しかし錯乱状態の今、頭が回らなくなっているのだ。
「俺らはアジトを特定したが、場所が変わっているかもしれない。だから表に出てきて貰ってアジトまで案内してもらうって訳だ。もちろんバレねぇように後をつけてな。ボスの指示には必ず従うだろうからあいつの仲間が出てくるのを待つ。ただ、その場所からアジトまでの距離はかなり遠いと思う。その間駿里が何をされるか……考えたくもねぇ。見つけ次第ぜってぇあいつらを殺してやる。」
「でもそれだと…。」
松下はヤクザであってそれだけでも十分なほど怖いのに、その上かなりキレていて怖い顔をしている。というのにそれに怖気ずくことなく自分にそう聞いてきた慎吾には驚いた。肝が据わってるな、と。
「そうだな。あのボスの姿がねぇから不審がるだろうな。だが、そのタイミングでまた連絡をすればいい話だ。やっぱり大丈夫だ。アジトに戻れ、ってな。」
「凄い。」
慎吾はこんな状況なのに冷静に対応し、このまでする松下を尊敬した。
「……っ。」
「慎吾?どうした。」
「俺、洸に薬飲まされてて…」
「何で早く言わねぇんだよ!何の薬だ。」
「…分かりません。でももういいんです。楽になりたい。」
「そんなこと言ってんじゃねぇよ!病院までぶっ飛ばすから耐えろ。圷!聞こえてるか?」
慎吾が急に顔を真っ青にして苦しそうに胸を抑え始めたのを見て松下は圷の名を呼んだ。予定変更をする事を寛也に直接伝えようとしたのだ。
『ああ、聞こえてる。組長に変わるから少し待て。』
「分かった。」
『俺だ。会話は全部聞いている。そいつの容態は?』
「慎吾の容態はかなり深刻です。命の危険があるのであの病院まで車を飛ばして来ます。こいつは駿里の恩人なので助けさせて下さい。その後すぐに合流するのでまた連絡をします。」
『分かった。俺らは先に行っているからな。着いたら即刻知らせろ。』
「了解です。」
松下は寛也との電話を切った後急いで旭川組が管理している病院まで向かって行った。
事務所にいた松下が慌てて圷に話しかけていた。
「おい、圷。」
「なんだよ。」
「やっぱり様子がおかしい。駿里のバイト先まで行ってくる。」
松下はパソコンを閉じて上着を手に持ち、外に行く準備をし始めた。そんな松下を圷は呆れ顔で見る。
「相変わらず心配症だなお前は。また駿里に文句言われんぞ。」
「これを見ろ。」
そう言われて圷がパソコンを見ると焦った様子で店長とバイトの子が話していた。いつものように度が過ぎた松下の心配かと思ったが違うようだ。声は聞こえないが店長らの顔を見れば分かった。ただ事では無いと。
「俺も行く。」
「いや、お前は待機してろ。状況を聞き次第すぐに連絡するから組長と森廣さんに報告を頼む。そろそろ志方と一緒に組長が帰ってくるはずだからな。」
「分かった。任せたぞ。」
松下は急いで駿里のバイト先である居酒屋まで向かっていた。それほど遠い距離ではなかった為直ぐに到着した。
「あ、駿里の…。」
店長は松下の姿を視界に捉えると目を見開いた。
「そう。俺は駿里の身内もんだ。何かあったのか?」
「私が駿里に買い物を頼んだんです。それで多分一度スーパーからここに帰ってきてるみたいなんです。ここに買い袋があるから。でもこれがあるのに駿里の姿が無くて。探しに行った慎吾も帰ってこなくて何があったのか分からなくて。本当にすみません。私のせいです。」
「今は2人を探すのが先だ。心当たりは?」
「あります。」
ずっと黙っていたバイトの子が口を開いた。希夜だ。
「そんなに言いきれるほどにか?もし間違ってたら仕切り直しだぞ。」
「間違えありません。」
「そうか。なら話してもらおう。」
松下はそこまで言うなら仮に間違っていたとしても、もしかしたらなにか手がかりになるかもしれないと思った。少しでも情報を集めたかったのだ。
「今極秘で捜査されている事件があるんです。その被害者全てが少年です。駿里はその条件に当てはまっている。慎吾もきっと巻き込まれたんです。それにこんな真昼間から大胆に犯行する奴らなんてそいつらしかありえません。」
「それなら話は早い。」
「…え?どういう事ですか?」
相手は人を何人も殺している極悪な犯罪者というのに表情も変えずに焦ることなく誰かと連絡を取っている松下を見て希夜は不思議に思った。
「駿里に害がありそうな事件は全て調べてんだ。そいつらのアジトも分かっている。後は任せろ。2人も巻き込まれないように家に帰っとけ。」
「あの!駿里はもちろん、慎吾の事も願いします。私にとって彼は息子のような存在なんです。」
「ああ、任せろ。」
松下は説明しなくていいように圷と電話を繋いでいた。全てのことが圷に伝わっていることが確認できると電話を切り、店を出て松下は事務所に戻ろうとした。
「すみません。少しお話いいですか?」
「チッ、今忙しいんだよ……ん?お前。」
「はい。ここでバイトとして働いている者です。」
「どういう事だ。」
先程、店の店長はいなくなったと言っていた。なのに松下が店から出た瞬間を狙って話しかけてきた慎吾に疑惑の目を向けた。
「駿里がいる場所を教えます。」
「は?そんな事言われても信じれる訳ねぇだろ。つか、お前もグルなのか?」
「違います。グルではありません。ただ、駿里を助けたい。だから俺が身代わりになります。」
松下はじっくりと慎吾の表情を見ていた。もし表情筋の一部がピクっと動いたり、鼻を触ったりする動作をすれば嘘を言っている。しかし、慎吾にそれは見られなかった。松下は慎吾が本当のことを言っていると分かり、こいつは信用できると安心したがそれと同時に怒りも湧いた。
「ふざけんな。そんな事しなくても俺らだけで助けられる。自分の命を大切にしろ。」
「俺は交渉をしたんです。だから命の危険はありません。」
その言葉を聞いて松下は再び圷に電話を繋いだ。
『何かあったのか?』
「ああ、そっちの状況は?」
『組長が帰ってきて今車で移動してる。お前は?』
「スピーカーにして組長にも聞こえるようにしてくれ。今からの話を聞けば何か分かることがあるかもしれない。」
『了解した。』
そして松下は圷がスピーカーにし、寛也にも電話の内容が聞こえるようになったことを確認すると口を開いた。
「……詳しく説明しろ。」
「駿里を攫ったのは6人の男達です。俺はその中のボスに昔、ペットとして飼われていました。だから心当たりがあって、あいつらのアジトに向かったんです。そしたら案の定攫われた駿里がいた。だから…」
「そのボスと交渉したんだな。どういう条件だ。」
慎吾は責任感が強すぎるために駿里の事をこの体を捧げても守りたかったのだろう。そんな慎吾の弱さに漬け込み、利用しようとしたアイツらに松下は怒りが込み上げてきた。
「一生洸のそばにいる。それだけです。」
「その洸ってやつがボスか。でもな、慎吾。店長はどうすんだよ。さっきお前のことを息子のような存在って言ってたぞ。それに簡単に人を殺すような奴のことを信じれんのか?」
「洸は言ったことを絶対に守ります。」
「お前…そいつのこと好きなのか?」
松下は洗脳されているのか、あるいは恋心を抱いているのかなんにせよ犯罪者のことを慎吾がなぜ信じるのか気になった。
「ぇ……いや、それは…。」
「それならばお前も解放する。約束する、信じろ。そんな奴のところになんかに行かなくていい。」
「そんな甘い考えではっ、」
「甘くねぇよ。俺ら旭川組を舐めんな。」
「俺の事も舐めてもらっちゃ困るねぇ。それにさ、慎吾は自分の口から言ったんだよ。俺のところに来るってな。」
物陰に隠れていた洸がでてきた。松下は先程から視線を感じており、いるのは分かってはいたが口には出さかった。変に挑発すれば駿里が危険な目にあう可能性があったから。
「……お前か。」
「そう。こいつが言ってた洸ってのが俺。」
「駿里はどこだ。」
「アジトにいるぜ。」
洸はこの状況を楽しんでいた。松下が怒れば怒るほどククク、と面白そうに笑う。
「嘘偽りないことを証明しろ。」
「これ見てみなよ。」
そこには駿里が5人ほどに囲まれレイプされている映像が映っていた。その瞬間松下の中でプツンと何かが切れた。
「おっと、ここで暴力は最善策じゃない。俺はあんたとやり合うつもりもないからな。」
「どういうつもりだてめぇ。」
「まさか慎吾に会えると思わかなかったからな。俺はこいつさえいればいい。だから駿里はどうでもいい。俺の仲間も好きにしていいぜ。なにかを手に入れるためには犠牲が必要だからな。俺は仲間を喜んで売ってやる。」
「慎吾をどうするつもりだ。」
「死ぬまで飼う。」
「そうか。」
松下は納得したようにそう言った。その様子を見て洸は満足そうに微笑んだ。
「それじゃあ、俺らはそろそろ行く。慎吾、帰ろう。」
「おい待てよ。」
「あ?……う゛ぁっ、!」
松下はこの場を去ろうとした洸の鳩尾を思いっきり殴った。
「はっ、悪い悪い。手が滑ったわ。」
「…てめぇ。」
松下が本気で殴ったため、洸は蹲り吐血した。
「動かない方がいいぜ。多分内臓損傷してっからよ。変に動くと大量失血してあっという間に地獄行きだ。慎吾、行くぞ。」
「どこに…?」
「とりあえず俺らの事務所に。」
松下は電話先で外の仕事から帰ってきた寛也にそう指示された。その指示通り松下は慎吾を自分の車に乗せた。その後洸の携帯で警察に電話をし、その数分後警察に連行された洸を見届けると寛也との集合場所に行こうとした。
「電話以外にも何かしてましたよね。何をしたんですか?」
「あいつの仲間に嘘のメッセージを送った。手伝って欲しいことがあるから来いってな。」
「どうして?」
普段の慎吾ならその理由がわかっていただろう。しかし錯乱状態の今、頭が回らなくなっているのだ。
「俺らはアジトを特定したが、場所が変わっているかもしれない。だから表に出てきて貰ってアジトまで案内してもらうって訳だ。もちろんバレねぇように後をつけてな。ボスの指示には必ず従うだろうからあいつの仲間が出てくるのを待つ。ただ、その場所からアジトまでの距離はかなり遠いと思う。その間駿里が何をされるか……考えたくもねぇ。見つけ次第ぜってぇあいつらを殺してやる。」
「でもそれだと…。」
松下はヤクザであってそれだけでも十分なほど怖いのに、その上かなりキレていて怖い顔をしている。というのにそれに怖気ずくことなく自分にそう聞いてきた慎吾には驚いた。肝が据わってるな、と。
「そうだな。あのボスの姿がねぇから不審がるだろうな。だが、そのタイミングでまた連絡をすればいい話だ。やっぱり大丈夫だ。アジトに戻れ、ってな。」
「凄い。」
慎吾はこんな状況なのに冷静に対応し、このまでする松下を尊敬した。
「……っ。」
「慎吾?どうした。」
「俺、洸に薬飲まされてて…」
「何で早く言わねぇんだよ!何の薬だ。」
「…分かりません。でももういいんです。楽になりたい。」
「そんなこと言ってんじゃねぇよ!病院までぶっ飛ばすから耐えろ。圷!聞こえてるか?」
慎吾が急に顔を真っ青にして苦しそうに胸を抑え始めたのを見て松下は圷の名を呼んだ。予定変更をする事を寛也に直接伝えようとしたのだ。
『ああ、聞こえてる。組長に変わるから少し待て。』
「分かった。」
『俺だ。会話は全部聞いている。そいつの容態は?』
「慎吾の容態はかなり深刻です。命の危険があるのであの病院まで車を飛ばして来ます。こいつは駿里の恩人なので助けさせて下さい。その後すぐに合流するのでまた連絡をします。」
『分かった。俺らは先に行っているからな。着いたら即刻知らせろ。』
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