極道の密にされる健気少年

安達

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挑戦

122話 豪華

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「みんな行ってきます!」



今日は幹部なしの寛也と駿里2人っきりの旅行だ。そ為不安な気持ちが少しある幹部たち全員が駐車場までお見送りに来ていた。



「おう!楽しんでこい。」



ニカッと笑い2人を見送る松下。



「なんかあった時はすぐに組長に言うんだぞ。分かったか?」



駿里の頭にポンッと手を置き、顔を近づけ心配そうにそう言う島袋。



「うん!」

「組長がいれば安心だろうがな。あと、花火の写真撮るの忘れんなよ、俺も見たいからよ。」



島袋の問いかけに笑顔で返す駿里を見て北風が頬をぷにっと摘んだ。



「任せといてよ!」

「思い出いっぱい作ってこい。」



圷は優しい笑顔で駿里に言った。その圷の隣には同じように微笑んだ海斗が居る。

幹部たちが駿里と話している間、森廣は寛也の所にいた。



「組長、嬉しいです。」

「お前がなんで嬉しんだよ。」



寛也が笑いながら言うと、森廣は穏やかな表情になった。



「駿里が来てから、大変なことが沢山ありました。ですが、それ以上に組長が幸せそうです。私はそれが何よりも嬉しいのです。だから今日から3日間楽しんできてください。」

「そうだな。それと、森廣。旅館や旅行先の計画作ってくれたこと感謝する。」

「いえ、これしきのことで礼なんて言わないでくださいよ。では、お気をつけていってらっしゃいませ。」

「ああ、行ってくる。おい駿里、そろそろ行くぞ。」



その声を聞き、松下らと戯れていた駿里が走ってきてそのまま寛也の腕の中にダイブした。寛也はそんな駿里の手を握って、助手席側のドアを開けた。



「ありがとう!」

「いいよ。」



寛也がドアを閉めたあと、自分も車に乗りこみエンジンをつけ、運転し始めた。車が動き出す直前、駿里は窓を下ろして外にいる皆の姿がゴマ粒ほどになるまで手を振った。



「こういうの良いなあ。すごく気持ちがいい。」

「ただの見送りじゃねぇかよ。」

「俺修学旅行とかも行ったことがなくてさ、みんなが先生たちに手を振られて出発していくのが羨ましかったんだ。だから今、凄く幸せ。」

「そうか。良かったな。」



寛也は駿里の頭を自分の方に引き寄せ髪をわしゃわしゃとした。



「あははっ、危ないよ。」

「俺の運転なめんなよ。ずっと道路の真ん中を綺麗に走ってんだろ?」



運転中はどれだけ駿里が見たくても危なくて見られないので目線は前を向いたまま寛也はドヤった。



「当たり前だけどね。」

「冗談に決まってんだろ。そろそろ空港に着くから降りる準備しとけよ。」

「うん!俺飛行機に乗るの人生で2回目だからすっごい楽しみ!」

「なら俺がお前の初めてと2回目を貰えるんだな、光栄だ。」

「揶揄わないでよ。」



駿里は満更でもなさそうな顔をしていた。愛する人からそんなふうに言って貰えることは幸せな他ない。

今すぐにでも駿里を抱きしめたい衝動に駆られたが我慢して寛也は車を立体駐車場に停めた。2人は車をおり、空港内に入っていった。



「お土産コーナーも初めてきたよ、っすっごい…」

「来たばっかなのに土産見るバカがいるかよ、まぁそんなとこが可愛んだけどな。行くぞ。」

「っうるさいな。」



旅行は始まったばかりというのに駿里は初めてのことだらけであがった口角が下がらない。いろんなところを見て回りたそうな駿里。寛也もその願いを叶えてやりたかったが飛行機が飛び立つ時間になってしまうので駿里の肩を抱いて乗り込み口まで歩いていった。












*********



飛行機に乗り込むと一人の男性が待っていた。彼は案内人だ。駿里達を座席まで案内してくれた。



「俺達の席これ…?」

「そうだ。」



駿里は開いた口が塞がらなかった。人生初の飛行機でファーストクラス上の ザ・レジデンス の席だったからだ。いや、席ではない。もはやホテルだ。ザ・レジデンスは、リビングルーム、ベッドルームそしてバスルームの3部屋構造。大きなテレビモニターに革張りのソファーがある。そのソファは足を伸ばしてもスペースが確保されている。Wi-Fiやノイズキャンセリング・ヘッドセットまでもある。



「寝ころべるよ寛也!」


そう言って駿里は大きなベッドに幸せそうに寝転んだ。



「あんまり可愛いことするなよ。俺が我慢できなくなるだろ。」



寛也も駿里が寝転んでいるベッドに上がった。



「旅館に着くまでお預けだよ。だけど、空中でやったらどうなるんだろう…。」

「酔いそうだな。」

「たしかに。」



2人同時に笑った。



「そういえばな、駿里。ここは食事が1番最高なんだよ。行きは無理だが、帰りの時ディナーを楽しみもうな。それと、困ったことがあったら、この部屋専用の執事がいるからなんでも言え。」

「執事さんもいるの、?…っ凄すぎる。」

「せっかくの旅行なんだ。最上級に楽しまねぇと意味が無いだろ?俺はお前を笑顔にしたい。俺や、アイツらとの色んな思い出をこの頭いっぱいに埋め込んでやりたい。」

「ありがとう。なんて言えばいいのかわかんないけど、凄く嬉しい。ほんとに嬉しすぎる。寛也も俺との思い出をパンパンになるまで埋め込んでね。」



駿里は寛也のおでこに自分の頭をコツンと当てた。



「当たり前だ。」



寛也が駿里に優しいキスをした時、ぐぅーっと駿里のお腹がなった。



「お腹すいちゃった。」

「朝飯食ってねぇもんな。さっき頼んだからそろそろ来るはずだ。あっちの部屋に行っとこう。」



2人が料理が運ばれて来る部屋に行くと超豪華な食事が用意されていた。



「このパン何もつけなくても美味しい。」

「そうだな。キャビアつけるともっとうめぇぞ。」

「うまっ!」



駿里が寛也の方を向いてニコッと笑っているのノックオンがした。



「こちらはテンダーロイン・ステーキになります。お好みの味付けでお楽しみください。」



執事が、追加の料理を持ってきたのだ。ステーキにつける味付けは5種類もあった。そのどれもがとてもいい香りがするものだった。



「用がおありでしたら、このスイッチを押してくださいね。すぐに駆けつけます。では、失礼致します。」



豪華な料理にこの部屋、凄く嬉しい駿里だったが慣れないこの感じに戸惑い始めていた。

このクラスはかなり高額のはずだ。自分のためにそこまでお金を使わせてしまって申し訳なくなってきたのだ。



「浮かない顔だな。金のことは気にすんな。タダだからよ。だから何も気にせず存分に楽しめ。」



駿里の心中を察した寛也が安心させるべくそう言った。これは嘘ではない。本当のことだ。



「え?」



寛也の発言に駿里は思わず目が点になってしまった。
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