極道の密にされる健気少年

安達

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齟齬

98話 新居

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暫く走っていると駅が見えた。手元には7万円あったので、できるだけここから離れるために遠くの切符を買い、遠い見知らぬ土地まで来た。そこは草原が広がり自然豊かな土地だった。





「ここ何処だろう…」




裸足で飛び出してきたので、足も怪我しているし体力の限界だった駿里はその場に座り込んでしまった。




「君、大丈夫?」

「ん?どーした兄貴」




長い時間これからどうしよう、と考え込んでいると後ろから誰かに話しかけられた。振り向くと若い男の人が2人いた。




「おぉ、君凄い顔整ってるね。めちゃくちゃ可愛い」

「おい、今言うことじゃないだろ。こんなところに座り込んでどうしたの?家出でもした?…足も怪我してんじゃん。とりあえず手当してあげるから俺らの家までおいで」

「はい、ありがとうございます。」




行く宛もなかったし、これ以上ここに居座る訳にも行かなかったのでお言葉に甘えついて行くことにした。




「待って!君足怪我してるんだから、俺がおぶる」

「そんなことさせられません。歩きます」

「だめ」




遠慮する駿里を2人のうち背が高い男性がおぶって家まで連れていってくれた。




「ここが俺らの家だよ。」




連れていかれた場所には立派な一軒家がたっていた。2人に連れられて中に入った。





「お邪魔します」

「どうぞ、ここに座ってて」

「はい」



2人のうち1人が救急箱を取りに行ってくれた。もう1人は駿里の隣座っている。




「俺の名前は、勝本 海斗(かつもと かいと)。20歳だ!あっちが俺の兄貴の 勝本 直樹(かつもと なおき)!兄貴は24歳!君は?」

「漲 駿里、18歳です」

「駿里!よろしくな!」



弟の海斗はとても人なつっこい性格で明るく話しやすかった。短髪でスポーツをしているのか、肌が焼けている。




「持ってきたぞ。駿里って言うんだな!俺らのことは下の名前で呼んで!」

「はい」

「敬語使わなくていいよ。応急措置はしたけどこりゃお風呂しみるな」



兄の直樹はしっかり者で面倒見がいい。駿里の心の傷もすぐに見抜いた。弟の海斗とは真逆で爽やかでおしとやかな雰囲気。




「ただの家出じゃないようだね。話したくなるまで話さなくていいよ。俺らも訳ありで2人で暮らしてるからさ!行く所ないんだったらここに住みなよ!」

「兄貴いい事言うじゃん!駿里、遠慮なく困ったことあったら言えよ!」

「ありがとう…」





2人の優しさに流れ始めた涙が止まらなくなった。そんな駿里を2人は何も言わず泣き止むまで抱きしめてくれた。




「駿里、いつか話してね」


直樹が優しく言ってくれた。話すことで少しは楽になるかもしれないから、と。



「今話したい。聞いて欲しい」

「無理に話す必要は無い。話せる時でいいよ」



海斗も同じように優しく言ってくれた。でも駿里は無理なんてしていなかった。話したいから話そうとしていた。




「してないよ。2人に話したいんだ。………俺、恋人だった人と喧嘩してもう修復できなくなっちゃんたんだ。俺が悪いんだ全部…。俺のせいで傷つけて壊してしまった。でもそれでも酷いことされるのは嫌だった」

「そっか。」



駿里は全てを2人に打ち明けた。




「ならずっとここにいろよ。駿里が今戻っても酷いことされるだけだ」



駿里の事を気に入ったこともあって海斗はずっとここにいていいよ、と言ってくれた。




「駿里はどうしたい?仲直りしたくないの?今の様子見てると後悔してる様に見えるから」




駿里の気持ちを聞いてくれ、それを優先してくれようとする優しい直樹。




「……俺は、2人に迷惑だってわかってるけど、ここに居たい」

「俺も駿里にいて欲しい!兄貴と二人っきりの生活は飽きたからよ」

「おい海斗、なんだよそれーーー。駿里がそれでいいなら俺らも歓迎するよ!じゃあ、次は俺たちの話をしようか」

「うん。聞かせて欲しい」



駿里は海斗達が優しく聞いてくれた事が嬉しかったし、もっと2人のことが知りたくなった。




「俺らの母さん小学生の時に事故で死んじゃったんだ。それで父さんが直ぐに再婚した。最初は新しい母さん俺達のこと大切にしてくれてたんだけど、時間が経つにつれて俺らのこと邪魔って思ったみたいでさ。空気みたいな扱いを受けたんだ。父さんも見て見ぬふりしてほんとに辛かった。だから、家を飛び出したんだ。行方不明届けも出されない。あいつらも俺たちがいなくなって嬉しかったんだろうね」




直樹は笑顔で話していた。どれだけ辛いことか想像すればわかる。海斗はその様子を黙って見ていた。




「2人はすごく強くてかっこいい」



嘘偽りのない顔で駿里が言ってきたのに2人は驚いた顔をしたが、すぐに微笑んだ。



「ありがとう。初めてそんなこと言われた。こう言う環境で育ったってだけで、まともに育つ訳が無いって決め付けられてばかりだったから嬉しい。周りの奴ら皆俺らのことを馬鹿だって言うんだよ」



海斗も直樹と同じように笑顔で言った。2人は辛い時ほど笑ってしまうようだ。きっと甘え方を知らないから。駿里がそれを悟り黙り込んでいると



「駿里も辛い過去持ってるんだよね。顔を見ればわかる。出会えたのも運命かもしれないね。」




直樹が嬉しそうに言ってくれたので、駿里も嬉しくなった。




「そうだね!」




嬉しそうに笑う駿里の頬を海斗が撫でまくってきた。




「かっわいいな!」

「触りすぎだぞ海斗。あっそうだ、駿里って料理出来る?」

「できるよ!」

「料理も出来るのか!すごいな駿里」




海斗が頬においていた手を頭に移動させ髪をわしゃわしゃとしてくる。






「おいやめろって!ごめんな駿里、海斗こういう奴なんだよ。なら俺らが仕事から帰ってきたら、夕食頼める?」

「うん!もちろん!掃除も洗濯も洗い物もする!」

「ありがとう。明日からお願いね!」





こうして駿里は海斗、直樹と新しい生活がスタートした。










































その頃寛也は仕事から家に帰ってきていた。リビングに入ると駿里につけていたはずの足跡が鍵の外れた状態で置いてあった。近くに針金があったことからそれで外したのだとすぐにわかった。





「……駿里、俺から逃げられると思うなよ」




寛也はすぐに森廣に電話をかけた。





『もしもし。どうされましたか?』

  「駿里が逃げた」

 『…すぐに調べます』

「早急にな」

『はい』




電話をし終わった後、憤怒し目が充血した寛也は直ぐに事務所へと行き駿里の場所を探し始めた。
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