極道の密にされる健気少年

安達

文字の大きさ
上 下
62 / 600
相愛

61話 相思

しおりを挟む
駿里が目を覚ますと時刻は深夜2時になっていた。
重苦な痛みがあった部分も痛く無くなっており、体も綺麗なっていた。違和感を覚え左腕を見るとそこには針が刺さっており点滴されていた。

駿里が目を覚ました事に気がついて誰かが近づいてきた


「大丈夫か?今は鎮痛剤打ってるから痛みはないが無理はするな」

「……どなたですか?」

「声ガラガラじゃねぇか、俺は司波 彷徨(しば かなた)、旭川組専属の医者だ。組長に言われて駿里の手当てをしていた」

「ありがとうございます」

「お前はお人好しだな。こんな状況なのにお礼なんて言ってよ、組長のこと嫌になっただろ」  

「それセリフ前に誰かにも言われた気がします。それに嫌いじゃないです。そもそも俺が怒らせちゃったから」

「お前な」

「ほんとに俺が悪いんです。俺が嘘ついちゃったんです」

俺は起きあがろうと足を動かすと、ガチャと言う金属音がなった。足には足枷が付いていた。


「悪いな、組長の指示だ」

「いいえ、司波さんは何も悪くないです」

「起きるか?」

「はい」


司波に手を借りて起き上がった


「ご飯あるから食べれるだけ食べろ」

「ありがとうございます」


こんな目に遭っても駿里は寛也のことを嫌いと言わなかった。ちゃんと寛也と向き合おうとしていた。


「お前の体調を見るために毎日ここに来るから、なんかあったらすぐに言えよ。俺は相手が組長だろうが何だろうが言うことは言う。だから絶対なんかあったら相談しろ」

「はい、ありがとうございます」

「食べたらまだ寝てろ」


駿里は司波に言われた通りにねた。
その寝顔を見ながら寛也に電話をした


『なんだ』

「なんだじゃねぇんだよ」

『要件をいえ』

「さっき駿里が目を覚まして、少しご飯を食べて今は寝てる。お前のこと嫌いじゃないってよ、ちゃんとお前と向き合おうとしてた。だから、話し合ってやれ。どうせ、ろくに話を聞いてやってねぇだろ?お前の話を聞いてこの結果は当たり前だと思ってたが、駿里の様子を見てるとお前が思っている事とは違うようだぞ」

『……………』

 「黙ってないで何とか言え。それと力ずくで抑えんな。そんな事しなくてもきっと駿里はお前から離れない」

『……気持ちが落ち着いてから逢いに行く。』

 「いつだよそれ」

『明日行く』

 「はぁ!?お前それ駿里の誕生日の前日たぞ。仕事立て込んでるとか嘘ついて準備してたじゃねぇか。いいのかよ!!それにな、この俺にここに泊まれっていってんのか!!!」

『頼む。今日のお昼頃にちゃんと気持ちが落ち着いてから話し合って駿里を祝いたい』
 
「はぁ、分かったよ。今日だけだからな」


電話を切った司波は駿里の元へと自分もベッドの中に入った。


「お前はほんとにいい奴だな。別の形で出逢いたかったよ、にしてもこんな綺麗で性格もいい奴この世にいるんだな」


司波はあの寛也が駿里に執着する理由がわかった気がした。


「よくよく考えれば寛也、お前も嘘ついてるけどな。なぁ駿里。でも寛也がここまで拗らせるぐらい本気なんだよお前のこと。だからこれからもこんなことがあったとしても、寛也のことを許してくれ。ごめんな」

司波は眠る駿里にくぐもった声で言った。


点滴の針を抜き自分も駿里の隣で寝た。心の中で、いい誕生日になると良いなと呟きながら。
















駿里は朝の9時頃に目が覚めた。隣には気持ちよさそうに寝ている司波の姿があった。夜通し看病してくれたと思い、司波を起こさない様に駿里はリビングへ行くと、松下がいた。


「おはよう、体は大丈夫か?」


駿里の足を見ると数ヶ月前にとれていたはずの足枷があったが、そこには触れずに体のことを心配した


「大丈夫。寛也はどこにいるの?」

「事務所」

「…俺、愛想つかされたかも」


思いがけない発言に松下は思わず目を丸くして駿里見た


 「な、なに」

「いやなんでもない。昼頃に組長ここにくるってよ」

「俺は今すぐにでも会いたいのに」


松下は駿里の髪を優しく何度も撫でた


「そーいや、ヘボ医者がここに来なかったか?」

「もしかして司波さんのこと!?ヘボ医者じゃないし!」

「来たのは来たんだな。帰ったのか?」

「寝てるよ」

「はぁ!?」


急に松下が叫んだので駿里はびっくりして肩をびくつかせた


「急に叫ぶな!」

「お前ガラガラの声で声張り上げたら悪化すんぞ?」


誰のせいだよ、と睨んだが松下にスルーされてそのまま寝室へ直行した。その後を追う様に駿里もついていった。


「おい!!なに寝てんだよテメェ!」


松下は司波が絡まっていた毛布を勢いよく奪った


「…うるせぇな、つか何でお前がいんだよ。今何時だ?」

 「9時すぎてんぞ」

「なら起きるか、駿里大丈夫か?」

「お陰様で大丈夫です!」

「よかった」


3人は仲良く朝食を一緒に食べ寛也を待っていた。
だが、正午を過ぎても寛也は家に戻らなかった。不安そうにずっと待っている駿里の隣に松下は座った


「組長は来るって言ったんだから絶対に来る。組長は言った事は絶対にするって駿里が一番知ってるだろ?」

「大丈夫だ。絶対来るから。」


司波も続けて言った。その後に続いて玄関のドアが開く音が聞こえた。駿里は体に力が入った。
しおりを挟む
感想 200

あなたにおすすめの小説

ヤクザに囚われて

BL
友達の借金のカタに売られてなんやかんやされちゃうお話です

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

ヤクザと捨て子

幕間ささめ
BL
執着溺愛ヤクザ幹部×箱入り義理息子 ヤクザの事務所前に捨てられた子どもを自分好みに育てるヤクザ幹部とそんな保護者に育てられてる箱入り男子のお話。 ヤクザは頭の切れる爽やかな風貌の腹黒紳士。息子は細身の美男子の空回り全力少年。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話

みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。 数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品

処理中です...