上 下
58 / 89

58話 勧善懲悪! ザッコス盗賊団ざまぁ回 前編

しおりを挟む

「「「──すいやせんでしたぁあ!」」」

 俺様たちに魔法は効かねー! と豪語した盗賊団の男たちが、顔に痣とたんこぶをつくり、パンツいっちょで靴下のみの情け無い変態みたいな姿で私に土下座していた。

「い、いやぁ、まさかこちらにいらっしゃる方が【神託の勇者ユーナ・ステラレコード】様とその一行、【天使の聖剣】の方々だとはつゆ知らず……! あっしらの目が節穴でした!」

 手をスリスリとゴマをすりながらそう言うのは、盗賊団の親玉で名を【ザッコス・ギール】というモヒカン頭だった。

 別にこいつの名前などどうでもいいのだが、私は親玉モヒカンに語りかける。

「……ほう? かまわん、続けろケダモノ。話しくらいは聞いてやろう、あんま聞きたくないけど」

「いやぁ、ダンナも人がわるいや! まさか、魔王軍の頂点にして魔王のヨーケス・ブーゲンビリア様だったなんて! 言ってくれりゃあ、あっしらも剣を向けるなんてこたぁしなかったのによぉ」

「ほう? 私が魔王でなければぬっころす気だったと? とんでもない悪党だなケダモノども。よし、全員まとめてぬっころすか!」

 私は両手合わせ、ボキボキと鳴らす。すると焦りの表情でザッコスは懇願し始めた。

「ちょっ!? だ、ダンナ、あっしの話を聞いてくだせぇ! 聞くも涙、語るも涙の話を……あっしらは、王国や冒険者ギルドから締め出され、『追放』された不遇の元冒険者なんでさぁ!」

「あっそ。だからどうした、私には関係ない。よしそれでは裁きを執行……」

「ちょちょちょ、魔王のダンナ!? ま、まだ話の続きがありやして!」

「ほう? では私を納得させる命乞いをするなんだな……!」

 私は両手に魔力を込め、魔法を放つ仕草を盗賊たちに示す。

「あっしらだって、もし冒険者を『追放』されなきゃ、そこのお嬢ちゃんらが勇者とその一行だって知ってたんでさぁ! じゃなきゃこんな酷い仕打ちをするもんですか!」

「……さすがにその言い訳にはムリがあるな、ケダモノ。慈悲の感情がこれっぽっちも湧かん」

 私は無感情のまま、ザッコスに返す。

「というかだ。この魔王である私が心情的にキサマらを許すと思うのか? キサマらは私の大切な人を傷つけた……お前、このまま無事に済むと思うなよケダモノが!」

「そんなことを言わねぇでくだせぇダンナ! ほ、ほら、この通りでさぁ!」

 平伏し謝り散らす盗賊たち。

 しかし、私は女や子どもを手にかける外道は断固として許さない。

 それに、こいつらのせいで涙を流した者がきっといるのだろう。ユーナたちを襲ったのがいい証拠だ。

 許してなるものか。

 すると、そんな盗賊たちはさらに命乞いを続けてくる。

「ワシらもう二度と悪さはしねぇよぉ! これからは心を入れ替えてますからぁ!」 

「そ、そうさ! オレたちもう反省したし、絶対に人を襲わねーって誓うよ! ま、マジメに働くよ!」

「な、なぁダンナ! この通りだ、おいらたちを許してくれよ!」

「な、なぁ魔王のダンナ! こいつらもこう言ってる。た、頼むから命ばかりは助けてくれよぉ! あっしらにできることなら何でもする! だから──」

 バカバカしいほど、その場かぎりの苦しいウソや言い訳、御託を並べて生への執着を私にアピールする。

 しかし……そうか。こいつら何でもすると言ったな。

 マジメに働くと言ったな。

「……そうか。では、一つだけお前たちに生きるチャンスをやる」

 私はピンと閃いた提案を盗賊たちに告げることにした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

男女比崩壊世界で逆ハーレムを

クロウ
ファンタジー
いつからか女性が中々生まれなくなり、人口は徐々に減少する。 国は女児が生まれたら報告するようにと各地に知らせを出しているが、自身の配偶者にするためにと出生を報告しない事例も少なくない。 女性の誘拐、売買、監禁は厳しく取り締まられている。 地下に監禁されていた主人公を救ったのはフロムナード王国の最精鋭部隊と呼ばれる黒龍騎士団。 線の細い男、つまり細マッチョが好まれる世界で彼らのような日々身体を鍛えてムキムキな人はモテない。 しかし転生者たる主人公にはその好みには当てはまらないようで・・・・ 更新再開。頑張って更新します。

英雄になった夫が妻子と帰還するそうです

白野佑奈
恋愛
初夜もなく戦場へ向かった夫。それから5年。 愛する彼の為に必死に留守を守ってきたけれど、戦場で『英雄』になった彼には、すでに妻子がいて、王命により離婚することに。 好きだからこそ王命に従うしかない。大人しく離縁して、実家の領地で暮らすことになったのに。 今、目の前にいる人は誰なのだろう? ヤンデレ激愛系ヒーローと、周囲に翻弄される流され系ヒロインです。 珍しくもちょっとだけ切ない系を目指してみました(恥) ざまぁが少々キツイので、※がついています。苦手な方はご注意下さい。

私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!

りーさん
ファンタジー
 ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。 でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。 こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね! のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

女性の少ない異世界に生まれ変わったら

Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。 目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!? なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!! ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!! そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!? これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。

気付いたら異世界の娼館に売られていたけど、なんだかんだ美男子に救われる話。

sorato
恋愛
20歳女、東京出身。親も彼氏もおらずブラック企業で働く日和は、ある日突然異世界へと転移していた。それも、気を失っている内に。 気付いたときには既に娼館に売られた後。娼館の店主にお薦め客候補の姿絵を見せられるが、どの客も生理的に受け付けない男ばかり。そんな中、日和が目をつけたのは絶世の美男子であるヨルクという男で――……。 ※男は太っていて脂ぎっている方がより素晴らしいとされ、女は細く印象の薄い方がより美しいとされる美醜逆転的な概念の異世界でのお話です。 !直接的な行為の描写はありませんが、そういうことを匂わす言葉はたくさん出てきますのでR15指定しています。苦手な方はバックしてください。 ※小説家になろうさんでも投稿しています。

処理中です...