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第四章「得られた仕事」と「異国の地」

お父様とともに4

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ふう、書類整理がようやく終わった。
騎士団からの書類とか、字がミミズなんだもん。ホントに腹が立つよね。

「お父……ハインリッヒ宰相補佐官、先ほどの書類の確認が終わったのですが…。」

「ああ、そこに置いといてくれ。それと、何か問題があったら報告。」

「は、はい。誤字脱字は直して清書しておきました。それと、第二騎士団?の決算報告の書類が他と比べて大雑把すぎませんか…」

遠征費の申請で、合計金額だけ書いてあって内容が全く書かれてなかったというのがあったのだ。

「ああ、あそこか…。それだけ私が手元においておこう。この後の御前会議で、むこうの長に直接返しておく。問題があったのは、これだけかな。」

「はい。あの、いつもの事だったりするのですか…?」

「ああ。まあ、ね。もう毎回のことだし、あきらめたよ。さて、思いのほか時間がたってるね…。じゃあ、これの複製は他の子に頼むから、とりあえず、ケーレの説明を受けて。その後、議事録の書き方を読んで理解しておいて。これは先に渡しておくね。」

そういって、机から引っ張り出してきた、黒い表紙の分厚い冊子を渡された。
あ、複製は少ししてみたかったな・・・・。

「承知しました。」

指示に従い、父上の机を挟んだ向こうの机に向かう。

「おや、終わったのか。じゃあ、説明ね~~。」

ケーレ補佐官にそういわれ、複数の資料を手渡された。

「決算報告…?」

「そう。それを見て、何か気づくことはない?」

試すような視線を向けるケーレ補佐官に、僕は一生懸命手元を見る。

「……物価が微妙に上がっている…?それも、鉄や食料品の類……でもなんで…?」

この半年間で一気にとまではいかずとも、例年と比べ徐々に上昇していることが見て取れる。
まだ、民間が気付くほど大きな変化ではないだろうが…。

「おや、一発で気づくか……じゃあ、それはなんでかわかる?」

なんで…?ここ最近は、天災の類はなかったはず…。

「…申し訳ありません…わかりません。」

「まあ珍しいことだし、わからなくても仕方ないよ。レイ君、決して確定ではないってことを頭に置いておいてね。これから大陸規模の戦争が起きるかもしれない。」

え・・・?
僕は、思わずフリーズした。

…戦争?

「今は平和ですよね…?」

「実は先日、同盟国であるフリエイラ公国から、アンエイル帝国が海洋諸国連合と手を結び軍備を強化しているという情報が入ったんだ。まだ、国は本気にはしていない。というか、できない。だけど、一応ということで軍事力の強化が叫ばれてね。そのために、武器を作る鉄や戦時に用いる食料品の価格が上昇している。」

「そ、そんな…。あの、帝国と敵対するのですか…?」

帝国といえば戦争なんて言われた時代もあった程の軍事力を持つ国。それに対して、西側に属する国は、文化を大事にする風潮が強いせいか軍事力はとても低い…。

「まあ、わかるよ。その気持ち。だけど、まだ今なら戦争を起こさないことだってできるかもしれないんだ。」

「そ、そうなのですか…?でも、もう帝国は動き始めているのでしょう?」

「ふふ、君は今度、ユーリとともに、公国での会議に出るよね。」

「はい。それが…?」

「その会議は、この大陸で大国と呼ばれる5国に加え、海洋諸国連合が参加する。もちろん帝国も含まれている。そこが、今後のこの大陸の一つの分かれ道になるのではないかと我々上層部は踏んでいる。」

「そんなにも重要な会議だったのですか。」

「ああ、この後の御前会議ではこの話がメインになると思う。」

「…承知しました。………僕が何かできることはありませんか?」

「お前みたいな小僧が何を生意気な!!」

「っひ、申し訳ございません。」

怒られてしまった…。生意気だっただろうか…。でも、何もできないのが悔しい。

「って、本来なら言うところだろうけど。まあ、この後の陛下次第って感じかな?わからないね。」

「へ、怒っていらっしゃらない?」

「俺はそんなに短気じゃないし、新人つぶしをするほど腐ってないよ。まあ、他の長とかにはそういうのもいるから気をつけてね。」

「は、はい。」

肝が冷えました…。そうですね。文官として生きていくために、生意気さはいりませんね…。

「まあ、そういう若さもいいんじゃない?とは思ったりもする。これで、俺からの説明は終了かな。質問は。」

「ありません。」

「よろしい。じゃあ、ユーリの指示に従いなさい。」

「はい。」

ケーレ補佐官はよくわからない人だけど、いい人だってことだけは分ったかな。



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