上 下
6 / 45
一方そのころ

プロローグの裏側で1(side 玲の両親)

しおりを挟む
(母親side)

私は、専業主婦をしている。夫と、私と、息子の玲の三人家族。もちろん幸せなんだけど、玲は体が弱いから、病院から出たことがない。丈夫に生んであげられなくってごめんなさい、玲。

私の日課は、息子のいる病室に見舞いに行くことと、その道中にある神社で、息子が健康になることを祈ること。この二つは、息子が生まれてから欠かしたことがない私の日課なの。今は、お参りを終えて、神社から出たところ。

「ここからなら、歩きでも、30分かからないかしら。」

お医者様が、今日の朝、いつもより玲が元気だから、庭に出れるかもって言ってたから、いつもより、楽しみなんだ。だって、外で遊んでいる玲の笑顔ってホントにかわいいんだもの。

あれ、看護師さんからの電話だ。玲がなにか持ってきてほしいとでもいったのかしら。

「もしもし、看護師さんですか?何かありましたか。」

「玲君のお母さまですね。早く、早く玲君のもとに来てください。庭で遊んでた時に玲君が急に血を吐いて、意識が戻らないんです!!!」

「えっ……………わかりました。すぐに行きます。」

嘘だよね、玲はまだ死んだりなんてしないよね。

私は急いで玲の病室に走った。

そして、着いた時には、..........................って告げられた。

玲が3歳の時に初めて、いつ死んでもおかしくない状態だと言われてから、もうすぐ5年が経ち、いつかは健康な体になれるんじゃないかという淡い希望を抱き始めたばかりの日のことだった。




(父親side)

俺は、代々、政治家をしている白月家に生まれた。今は、議員を務めている。仕事で忙しいけれど、妻と息子と俺の三人家族で、幸せに暮らしていた。息子の玲は体が弱く、病院から出ることはできないけれど、休みの日には一緒に病室で遊んだり、体調のいい日には、病院の庭でだけれど、普通の親子のような遊びもできた。

玲はいつも、「自分みたいな体の弱い人とかも皆が笑顔で暮らせる国がいい」と言って、もし、大人になれたら、議員になりたいって言ってたんだ。憧れは、国のために生きた「ビスマルク」だとさ。少し前に、歴史漫画を持っていったらいつの間にか「ビスマルク」に憧れを抱いたらしい。俺としては、父さんが憧れだって言ってほしいところなんだけどな。


最近、玲の体調がいい日が続いていたので、余命宣告されていたけど、いつかは健康な体になれるんじゃないかって思っていたんだ。今日、妻からの電話が来るまでは。

普段、俺の仕事中に電話をかけてくることなんてない妻からだったから、違和感はあったんだ。

「.........ぐすっ……っ、玲が、死んだ。」

泣きながら、妻が言ったその言葉に、俺の時は止まったかのようだった。すぐに仕事を抜け出して、急いで、玲がいるはずの病室まで行った。

病室のドアを開けたら、妻が、まだ温かい、玲の手を握って号泣していた。
その姿を見て、玲の死が事実だとようやく俺も認識した。せざるを得なかった。
それから、俺が着いたことに気づいた妻と、ふたりで、泣き続けていた。

「玲、俺たちのところに生まれてきてくれて、ありがとう。でも、ちょっと逝くのが早すぎるよ…。」



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私のスローライフはどこに消えた??  神様に異世界に勝手に連れて来られてたけど途中攫われてからがめんどくさっ!

魔悠璃
ファンタジー
タイトル変更しました。 なんか旅のお供が増え・・・。 一人でゆっくりと若返った身体で楽しく暮らそうとしていたのに・・・。 どんどん違う方向へ行っている主人公ユキヤ。 R県R市のR大学病院の個室 ベットの年配の女性はたくさんの管に繋がれて酸素吸入もされている。 ピッピッとなるのは機械音とすすり泣く声 私:[苦しい・・・息が出来ない・・・] 息子A「おふくろ頑張れ・・・」 息子B「おばあちゃん・・・」 息子B嫁「おばあちゃん・・お義母さんっ・・・」 孫3人「いやだぁ~」「おばぁ☆☆☆彡っぐ・・・」「おばあちゃ~ん泣」 ピーーーーー 医師「午後14時23分ご臨終です。」 私:[これでやっと楽になれる・・・。] 私:桐原悠稀椰64歳の生涯が終わってゆっくりと永遠の眠りにつけるはず?だったのに・・・!! なぜか異世界の女神様に召喚されたのに、 なぜか攫われて・・・ 色々な面倒に巻き込まれたり、巻き込んだり 事の発端は・・・お前だ!駄女神めぇ~!!!! R15は保険です。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑

岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。 もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。 本編終了しました。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

転生調理令嬢は諦めることを知らない

eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。 それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。 子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。 最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。 八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。 それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。 また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。 オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。 同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。 それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。 弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。  主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。  追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。  2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

処理中です...