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一章 予兆編

十六話 魔人討伐~後編~

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「アスフェン、レグルスを守ってくれ!」

イザベラが叫ぶ。

「奴を殺して私が『選ばれる』」

ヨアンがレグルスを殺そうとする。

「ひぃー!」

レグルスが一目散にアスフェンの後ろに逃げ込む。

「どけ!」

ヨアンがアスフェンに斬りかかる。

「おらっ!」

アスフェンが攻撃を弾く。

「くそっ」

ヨアンが体勢を崩す。

『獣人から『矢』を奪わなければ!幸い獣人は『矢』の使い方を知らない……いや』

ヨアンがイザベラを見る。

『アイツは『矢』の使い方を知っている!アイツを先に殺すのが得策だろう。あの男の始末は……後回しだ』

イザベラがレグルスに叫ぶ。

「矢を突き刺せ!」

レグルスが驚く。

「えぇ!?自分に!?どこに……?」

イザベラがまた何かを叫ぼうとしたがヨアンが妨害する。

「これ以上は言わせんぞ!」

ヨアンの蹴りがイザベラの骨を砕く。

「ゴフッ」

イザベラが血を吐いてぶっ飛ぶ。

「レグルス、早くやるんだ!」

ケラスターゼとアリスがヨアンに斬りかかりながら言う。

「む、無理だよ……!」

レグルスが震えながら言う。

「早くしないとアイツら死ぬぞ」

「な、そんなこと言ったって……アスフェンがアイツを倒せば」

「お前は一生俺の助けを借りて生きていくのか?人生での重要な岐路に立たされたときに俺がその場にいると思うか?これからはお前達の時代だ、俺の時代じゃあない」

「レグルス、なにやってる!」

アリスが叫ぶ。

「勇気を出して、レグルス!」

ケラスターゼも叫ぶ。

「俺はお前が『矢』をぶっさすまでの時間しか稼がないからな」

アスフェンが走り出す。

「アスフェン!」

ケラスターゼの顔が綻ぶ。

「レグルスが矢を刺すまでこいつを抑えるぞ!」

「分かった!」

『まずい、奴に『矢』を使われる』

ヨアンが焦る。

「……っ」

レグルスが絶叫する。

「うあああああ!」

思いっきり自分の胸に矢を突き刺した。

『くそっ!』

ヨアンが無理やり突破してレグルスに斬りかかる。

「これが……『矢』の力」

レグルスがポツリと呟く。

ヨアンの剣が拳に止められている。

『この獣人、拳で剣を……!いや、この獣人の拳ではない!?』

ヨアンが青ざめる。

別の獣人が拳を突き出していた。

「やった、『矢』の力が発動した!」

アリスが喜ぶ。

『しまった、近付きすぎた……』

ヨアンが離れようとするが間に合わなかった。

「うがぁ!」

獣人の叫びがこだまする。

拳がヨアンの顔に叩き込まれる。

ヨアンの顔にヒビが入る。

「ぐふぅ!」

『なんてパワーの……』

「うおおおお!」

レグルスのラッシュがヨアンに叩き込まれる。

『まずい、このままでは死ぬ!魔核を本部に転送しておかなくては』

「うがうがうがうがうが、うがあああ!」

獣人がヨアンを殴る度に岩を砕くような、分厚い鉄をへこませるような音がなる。

アッパーがヨアンの顎にクリティカルヒットする。

『私は命の替えが利かない人間とは違う、また逢う時、その事を知るだろう』

ヨアンの顔が潰れる。

「さよなら、永遠に」

レグルスがポツリと呟く。

「ふっ、終わったな」

アスフェンがレグルスの背中をバシバシ叩く。

『本当に怖かったろうにな、こいつは凄い奴だ』

アスフェンが微かに微笑む。

「ゲホッ、死ぬ……」

アリスが倒れる。

「アルティメットヒール……」

アリスの身体が緑に輝き、傷が塞がっていく。

「よしっ、全快っ!」

「……最初からそれをやりまくってれば勝てたんじゃないか?」

「なに言ってるんですか師匠、アルティメットヒールは連発できないんですよ、他人への付与も出来ないし……」

「イザベラさんの治療を行いつつ、夜明けまで待ちましょう。もうすぐですし」

レグルスが言う。

「そういえば、レグルスの後ろにいたあの獣人だれ?」

ケラスターゼが尋ねる。

「うーん……何だろう」

レグルスが考え込む。

「獣人族に伝わる伝説の神、ジャガウォックで良いんじゃないか」

アスフェンがイザベラを引きずりながら言う。

「ジャガウォック……よろしくね」 

レグルスが拳を握りしめる。

空は明るみ始めていた。

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