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「国王陛下、バエティカに閉じ込められる。」
王都に届いたのは、待ち望んだ捷報ではなく、凶報でした。
「バルリオス将軍、お忙しいところ失礼します。」
私は、情報収集のため、バルリオス将軍を訪れました。
バルリオス将軍は、今回のドラード公の反乱において、王都防衛を任されています。
無論、前線とも連絡を取り合っていますので、情報は来ているはずです。
最初クルス王子から情報を仕入れようとしたのですが、ドラード公が迫る、という状況に取り乱していてそれどころではありません。
諦めて、お忙しいのを承知でバルリオス将軍の所を訪れたのです。
「まず、言っておく。陛下は無事だ。近衛部隊も健在で、陛下を護っている。身の安全に問題はない。」
誰もが1番に知りたい情報を教えてくれました。
「どうしてこうなったのでしょう?戦況は順調と聞いておりましたが。」
そう、ドラード公は、バエティカに兵を集め、街道を進撃する国王率いる鎮圧軍を迎え撃ちました。
しかし、脱走兵が続出、一門の中からも裏切ったり離脱する者が出て敗北。
わずかな兵を率いて、戦場を離脱し、バエティカ城に立て篭もった。
これが私がイルダ様から聞いた戦況でした。
「罠にかかった。どのような罠か知りたかろうから説明しよう。」
「ありがとうございます。でもよろしいのですか?」
「貴女に伝えれば、ヒメネス伯爵夫人にも情報がいくからな。」
そう言って、バルリオス将軍は、机に一枚の地図を広げました。
「これがドラードが立て篭もったバエティカ城だ。見ての通り盆地の中に築かれている。盆地を囲む山々にも防衛ラインが構築されていて、大軍を動員せねば確かに落とせない城だった。」
地図を見れば二本の支道で盆地と街道が繋がっています。
「その支道、盆地に入る山の所に堅固な門がそれぞれ築かれている。」
「聞いています。その門を守るのは、ドラード公の庶子だったそうですが。」
「二人とも離脱したがね。」
「門を抜けた時に勝利を確信した、と陛下の手紙にあったそうです。」
「ヒメネス伯爵夫人の情報か。その通り、軍上層部の誰もが、この時勝利を確信したと言っていい。そこに油断が生じた。」
バルリオス将軍の指が盆地を囲む東側の山々を指します。
山々の中には、湖が描かれています。
「東側の山は、西側と比べると高く急な斜面となっていて登りにくい。一応麓に警戒の兵は置いたが、登ってまで伏兵を捜索しようと誰も思わなかった。」
「ドラード公は、わずかな兵を率いて天守に篭った状況だったからですよね。」
「おいおい。」
「あっ。」
ドラード公は、鎮圧軍出陣の時に爵位を剥奪され、ただの平民になっています。
でも、つい公をつけてしまうんです。
「気をつけなさい。私は気にしないが、うるさい輩は多いぞ。」
「はい。」
王妃様とかクルス王子とかですね。
「数の暴力で、ドラードを物見の塔まで追い詰め、勝利は時間の問題と思われた。こうなると皆命が惜しい。」
「破壊の雷を恐れたんですね。」
「あぁ、陛下も、無駄に兵を損ねまいと、直々に降伏勧告を行った。」
「どうなったのです?」
「陛下の顔を見るやドラードは、大笑いして最上階に上がりのろしを上げた。それが合図だったのだろう。」
東側の湖を指差します。
「おそらくだが、このフルナス湖から流れ出るオクレサ川をせき止め、水を貯めていたのだ。それを一挙に流し、盆地全体を冠水させてしまった。」
「脱出できないのですか?」
「水深が深くて、徒歩での脱出は不可能だ。舟の代わりになるようなものはない。」
「ドラードこ…は?」
一応公をつけるのはやめます。
「例の流星の翼で逃亡した。今は軍を率いて王都を目指している。その数およそ10万。ほぼドラードが動員できる全軍だ。」
「脱走とか、離脱とか、裏切りしたんじゃなかったんですね。」
「そうだろう。最初から、こうするつもりだったんだ。脱走させたふりなどで、兵を隠して劣勢を装い、罠であるバエティカ城に引きずり込んだんだ。」
挑発、偽装、ありとあらゆる手段を講じていたんですね。
罠を張ったバエティカ城に引きずり込むために。
「それにしても、陛下の無事をどうやって知ったのですか?」
「泳ぎの達者な兵が、夜泳いで脱出し報じてきた。」
「夜泳ぐのは危険だったのでは。」
「囲む山々に兵が配置されています。昼に泳げば、弓の的です。」
泳ぐ以上、鎧はつけられません。
夜の闇に紛れるしかないのですね。
「わかりました。話は変わりますが、援軍を送らないのですか?」
「難しい状況だ。」
「そんな。」
「我が国の政情を見て、他国は牙を研いでいます。国境に配した部隊は動かせない。侵攻される恐れがあります。」
「ダメなんですか?少し減らすくらい。」
「その少し減らしてをやり、さらに四公爵から兵を出してもらって鎮圧軍を編成しました。これ以上は無理です。」
地図を改めて見直します。
「スエビの守備隊は?新しく得た領土を放棄することになりますが。」
ドラード公が獲得した領土だけど、この際はやむを得ないんじゃ。
「スエビは既に放棄し、部隊は鎮圧軍に編入してます。」
小娘が考える程度のことは、していますか。
「兵力は少数でいいのですが。」
バルリオス将軍は、地図の一点を指差します。
そこは、盆地を流れるオレクサ川が、盆地を囲む山々から出る地点。
「ここを何らかの手段で、塞き止めることで、盆地を冠水させている。それを破壊できれば。」
「水が引いて、徒歩で脱出できるのですね。」
「左様。」
「でも、それを防ぐために兵が配置されているでしょう。」
「私なら、その辺上手くやる自身はあります。」
バルリオス将軍、自信ありげです。
「伊達に『斬首将軍』の異名を誇っていない、か。」
「カミロ。」
「陣中見舞いを持ってきた。一杯どうだ。」
突然現れたカミロ導師は、ワインボトルを掲げます。
「頂こうか。」
棚からグラスを取り出し、注ぎます。
私は、ワインを傾ける二人をおいて、地図を眺めます。
どこか弱点か、兵を動かせれば……。
「あの、ヤストルフ帝国との守備隊は?内乱中の国だから、心配ないんじゃ。」
地図を見ればブルグント街道があるので、移動も早そうです。
「ヤストルフのギルベルト伯爵も、国境付近に部隊を展開してます。演習だそうですが、状況によっては侵攻するでしょう。」
「でも、他の勢力のことを考えれば、一番侵攻できない勢力です。交渉次第でどうにかなると思います。」
「交渉と言いましても。」
「父に頼んでギルベルト伯爵への紹介状を書いてもらいます。私ならクルス王子の婚約者だから、交渉相手と認めてもらえると思います。」
「その手があるか……。しかし、一時的な不可侵協定が成立するにしても時間がかかる恐れがある。」
そうですね、ギルベルト伯爵との交渉が長引けば、交渉中、守備隊は動かせ……!!
「将軍、こういうのはどうでしょう?」
私は、思いついたことをお二人に話しました。
「父が言ってました。人や物は、遊ばせることなく動かさねばならないって。」
「危険ではないか。リスクが大きすぎる。」
「だが、遊兵を作らないのも確かだ。」
バルリオス将軍は、乗り気です。
「イグナスさんも一緒に行かせて下さい。成功率は上がると思います。」
オラシオの兄の名を出しました。
「いいでしょう。協力は惜しみません。」
「いいのか、バルリオス?」
「賭けてみる価値はある。上手くいけば逆転可能だ。」
王都に届いたのは、待ち望んだ捷報ではなく、凶報でした。
「バルリオス将軍、お忙しいところ失礼します。」
私は、情報収集のため、バルリオス将軍を訪れました。
バルリオス将軍は、今回のドラード公の反乱において、王都防衛を任されています。
無論、前線とも連絡を取り合っていますので、情報は来ているはずです。
最初クルス王子から情報を仕入れようとしたのですが、ドラード公が迫る、という状況に取り乱していてそれどころではありません。
諦めて、お忙しいのを承知でバルリオス将軍の所を訪れたのです。
「まず、言っておく。陛下は無事だ。近衛部隊も健在で、陛下を護っている。身の安全に問題はない。」
誰もが1番に知りたい情報を教えてくれました。
「どうしてこうなったのでしょう?戦況は順調と聞いておりましたが。」
そう、ドラード公は、バエティカに兵を集め、街道を進撃する国王率いる鎮圧軍を迎え撃ちました。
しかし、脱走兵が続出、一門の中からも裏切ったり離脱する者が出て敗北。
わずかな兵を率いて、戦場を離脱し、バエティカ城に立て篭もった。
これが私がイルダ様から聞いた戦況でした。
「罠にかかった。どのような罠か知りたかろうから説明しよう。」
「ありがとうございます。でもよろしいのですか?」
「貴女に伝えれば、ヒメネス伯爵夫人にも情報がいくからな。」
そう言って、バルリオス将軍は、机に一枚の地図を広げました。
「これがドラードが立て篭もったバエティカ城だ。見ての通り盆地の中に築かれている。盆地を囲む山々にも防衛ラインが構築されていて、大軍を動員せねば確かに落とせない城だった。」
地図を見れば二本の支道で盆地と街道が繋がっています。
「その支道、盆地に入る山の所に堅固な門がそれぞれ築かれている。」
「聞いています。その門を守るのは、ドラード公の庶子だったそうですが。」
「二人とも離脱したがね。」
「門を抜けた時に勝利を確信した、と陛下の手紙にあったそうです。」
「ヒメネス伯爵夫人の情報か。その通り、軍上層部の誰もが、この時勝利を確信したと言っていい。そこに油断が生じた。」
バルリオス将軍の指が盆地を囲む東側の山々を指します。
山々の中には、湖が描かれています。
「東側の山は、西側と比べると高く急な斜面となっていて登りにくい。一応麓に警戒の兵は置いたが、登ってまで伏兵を捜索しようと誰も思わなかった。」
「ドラード公は、わずかな兵を率いて天守に篭った状況だったからですよね。」
「おいおい。」
「あっ。」
ドラード公は、鎮圧軍出陣の時に爵位を剥奪され、ただの平民になっています。
でも、つい公をつけてしまうんです。
「気をつけなさい。私は気にしないが、うるさい輩は多いぞ。」
「はい。」
王妃様とかクルス王子とかですね。
「数の暴力で、ドラードを物見の塔まで追い詰め、勝利は時間の問題と思われた。こうなると皆命が惜しい。」
「破壊の雷を恐れたんですね。」
「あぁ、陛下も、無駄に兵を損ねまいと、直々に降伏勧告を行った。」
「どうなったのです?」
「陛下の顔を見るやドラードは、大笑いして最上階に上がりのろしを上げた。それが合図だったのだろう。」
東側の湖を指差します。
「おそらくだが、このフルナス湖から流れ出るオクレサ川をせき止め、水を貯めていたのだ。それを一挙に流し、盆地全体を冠水させてしまった。」
「脱出できないのですか?」
「水深が深くて、徒歩での脱出は不可能だ。舟の代わりになるようなものはない。」
「ドラードこ…は?」
一応公をつけるのはやめます。
「例の流星の翼で逃亡した。今は軍を率いて王都を目指している。その数およそ10万。ほぼドラードが動員できる全軍だ。」
「脱走とか、離脱とか、裏切りしたんじゃなかったんですね。」
「そうだろう。最初から、こうするつもりだったんだ。脱走させたふりなどで、兵を隠して劣勢を装い、罠であるバエティカ城に引きずり込んだんだ。」
挑発、偽装、ありとあらゆる手段を講じていたんですね。
罠を張ったバエティカ城に引きずり込むために。
「それにしても、陛下の無事をどうやって知ったのですか?」
「泳ぎの達者な兵が、夜泳いで脱出し報じてきた。」
「夜泳ぐのは危険だったのでは。」
「囲む山々に兵が配置されています。昼に泳げば、弓の的です。」
泳ぐ以上、鎧はつけられません。
夜の闇に紛れるしかないのですね。
「わかりました。話は変わりますが、援軍を送らないのですか?」
「難しい状況だ。」
「そんな。」
「我が国の政情を見て、他国は牙を研いでいます。国境に配した部隊は動かせない。侵攻される恐れがあります。」
「ダメなんですか?少し減らすくらい。」
「その少し減らしてをやり、さらに四公爵から兵を出してもらって鎮圧軍を編成しました。これ以上は無理です。」
地図を改めて見直します。
「スエビの守備隊は?新しく得た領土を放棄することになりますが。」
ドラード公が獲得した領土だけど、この際はやむを得ないんじゃ。
「スエビは既に放棄し、部隊は鎮圧軍に編入してます。」
小娘が考える程度のことは、していますか。
「兵力は少数でいいのですが。」
バルリオス将軍は、地図の一点を指差します。
そこは、盆地を流れるオレクサ川が、盆地を囲む山々から出る地点。
「ここを何らかの手段で、塞き止めることで、盆地を冠水させている。それを破壊できれば。」
「水が引いて、徒歩で脱出できるのですね。」
「左様。」
「でも、それを防ぐために兵が配置されているでしょう。」
「私なら、その辺上手くやる自身はあります。」
バルリオス将軍、自信ありげです。
「伊達に『斬首将軍』の異名を誇っていない、か。」
「カミロ。」
「陣中見舞いを持ってきた。一杯どうだ。」
突然現れたカミロ導師は、ワインボトルを掲げます。
「頂こうか。」
棚からグラスを取り出し、注ぎます。
私は、ワインを傾ける二人をおいて、地図を眺めます。
どこか弱点か、兵を動かせれば……。
「あの、ヤストルフ帝国との守備隊は?内乱中の国だから、心配ないんじゃ。」
地図を見ればブルグント街道があるので、移動も早そうです。
「ヤストルフのギルベルト伯爵も、国境付近に部隊を展開してます。演習だそうですが、状況によっては侵攻するでしょう。」
「でも、他の勢力のことを考えれば、一番侵攻できない勢力です。交渉次第でどうにかなると思います。」
「交渉と言いましても。」
「父に頼んでギルベルト伯爵への紹介状を書いてもらいます。私ならクルス王子の婚約者だから、交渉相手と認めてもらえると思います。」
「その手があるか……。しかし、一時的な不可侵協定が成立するにしても時間がかかる恐れがある。」
そうですね、ギルベルト伯爵との交渉が長引けば、交渉中、守備隊は動かせ……!!
「将軍、こういうのはどうでしょう?」
私は、思いついたことをお二人に話しました。
「父が言ってました。人や物は、遊ばせることなく動かさねばならないって。」
「危険ではないか。リスクが大きすぎる。」
「だが、遊兵を作らないのも確かだ。」
バルリオス将軍は、乗り気です。
「イグナスさんも一緒に行かせて下さい。成功率は上がると思います。」
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