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ともあれ、クルス王子の相手は決まりました。
私のお相手は……。
周囲を見回しても男性陣は、ささやきあって私と目を合わさぬようにしています。
……やっぱり平民ということで相手にしたものか迷われているようで。
仕方ありません、壁の花になりますか。
「ロザリンド嬢、私と踊っていただけませんか。」
そんなことを考えていると手を差し出されました。
差し出してきた方は、40代半ばと思しき方です。
軍服を着用しているので軍人なのでしょう。
「斬首将軍。」
周囲の声で私も目の前の方が誰か知りました。
私ですら名前を知る将軍です。
グラシアノ・バルリオス。下級騎士として初陣を飾り、軍功を積み重ねることで将軍の地位を得た名将です。
どれほど不利な戦況にあっても、必ず敵将の首を斬ることで知られています。
また、その首を見分に出す際、キレイにすることも。
「貴方の父上と変わらぬような年齢の者はおいやですか?」
「いえ、将軍にダンスを申し込んでいただけるとは思いませんでしたので、驚いただけです。未熟ですがお願いいたします。」
差し出された手を取ります。
ダンスは、この日までに一応特訓されています。
指導してくださった方に、「とりあえず大恥をかくことはないでしょう」と言われました。
今後も特訓は必要なようですが、とりあえずの恰好はつけられるようです。
「それにしても将軍に申し込まれるとは思いませんでした。」
「将来の王妃様に恥をかかせるわけには参りません。」
「やはり、私は貴族の方々に疎まれていますか?」
あのままでは誰も私を平民と侮って誰も申し込まなかった、ということでしょう。
「まぁ、それでも一応将来の王妃様ですから、いずれは申し込みがあると思います。ただ、誰も平民と踊る一番手になりたくないようで。」
前例が欲しいということでしょう。
ささやきあっていたのは、ひょっとしたら「お前いけ」と押し付けあっていただけなのかもしれません。
「よろしかったのですか、将軍?」
「先鋒は武人の誉れ。念の為、次の相手も用意しております。」
バルリオスの視線の先に、宮廷魔術師のローブを着用した男性がいます。
「私の友人、ファニート・カミロです。申し込む者がなくば、彼がお相手します。」
「そこまでして頂いて、申し訳ありません。でも何故にここまでして下さるのですか?」
「お父上に借りを作りましたので。」
「借りですか?」
父は、軍に物資や食料などを手配したことがあったはず。
その時恩を売るようなことがあったのでしょうか?
そんなことを考えながら踊っていると、背中に何か当たる感触がしました。
何か小さな物を当てられたような。
誰かが嫌がらせで私に投げつけてきたのでしょう。
踊りながら、足元を見るとボタンが転がっています。
このボタンを投げつけられた?
投げつけるにしても、ボタンをちぎってまで投げる方はいないでしょう。
氷や食べ残しの骨の類を想像していたのですが。
床に他に目立つものはありません。
このボタンが、と思った瞬間のことでした。
ビリリィッ!
今度は布の裂ける音。
「きゃあっ!!」
さすがに悲鳴の主の方を向きます。
見れば、クルス王子と踊っていたイルダという令嬢が胸元を手で抑えてしゃがみこんでいます。
胸元を手で隠しているようですが、隠しきれず肌が見えています。
それを見たクルス王子は、あっけにとられた表情から、にやけた表情に変わりました。
この!
一瞬憤りましたが、怒っても仕方ありません。
それより、あの令嬢をかばいませんと。
私はバルリオス将軍から手を離し、令嬢をかばうべくクルス王子との間に割り込みます。
邪魔するな、とにらんできますが、気にしてなどいられません。
逆ににらみ返してやります。
でもクルス王子の視線を遮るだけではダメ。
他の男性の視線も遮らないと。
さっと周囲を見回せば、国王までこちらを見てにやけています。
本当にクルス王子と親子なのがよくわかります。
「ロザリンド嬢、これを。」
バルリオス将軍が上着を脱いで投げてくれました。
「ありがとうございます。」
受け取った上着を令嬢にかけます。
「体調を崩されたようですね、私の控室に参りましょう。」
さすがに私のための控室は用意されており、そこに父がつけてくれた侍女達がいます。
ウルファがいますので、そこでドレスを繕ってくれるでしょう。
令嬢の肩を抱いて控室まで走ります。
控室に飛び込んだら、待機していた三人、エルゼ、ウルファ、イシドラが立ち上がります。
「ちょっとこの方のドレスが急に破れたの。見てあげて頂戴。」
「かしこまりました。」
ウルファがイルダ様に近寄ります。
ウルファは、褐色の肌をした、動くだけで胸が揺れる巨乳美女です。
「イルダ様、私の侍女にドレスを繕わせますのでとりあえず、ドレスを脱いでいただいてよろしいですか?」
イルダ様は、周囲を見回しました。
「きゃぁっ!!」
エルゼと目が合い、胸をさらにきつく抱いて縮こまります。
「イルダ様、あの者は私の護衛ですが女性です。」
「そ、そうなの?」
「エルゼ・シェーラーです。男装してますが、女性です。」
イルダ様は、エルゼの自己紹介を聴いてエルゼが女性であると判断し、肩にかけている上着に手をかけました。
その時です。
「おおい、ロザリンドよ、イルダ嬢は大丈夫か?」
クルス王子です。何しに来たのでしょう。
まさか……。
「入るぞ。」
ドアノブが動きます。
あのドスケベ!!
イルダ様の裸を見に来たな。
「エルゼ、お願い。」
エルゼはうなずいて、最低限だけドアを開けてさっと外に出ます。
長身のエルゼですので、クルス王子の視線を遮ったはずです。
「殿下、イルダ様は急病です。お静かに。」
「……きゅ、急病か。ならば見舞おうか。」
クルス王子がエルゼに気圧されているのがわかります。
長身で美人のエルゼの圧を受けると、たいていの人はタジタジになるんだよね。
「なりません、診察中です。」
「し、診察中だと……。いつ来たのだ。」
「侍女の一人イシドラが医師です。ここはお任せ下さい。」
「イシドラ、確かあのチビか。」
「チビだとぅ!」
「イシドラ、診察中、診察中。」
身長のことを言われ激怒するイシドラを抑えます。
私より小柄なので、抑えるのは難しくありません。
「ぐぬぬ……あのスケベ王子、いつか痛い目みせてやる。」
そうしている間にも、部屋の外でエルゼがクルス王子を圧倒しています。
「殿下は本日の主役。会場にお戻りを。」
「う、うう、うぅむ、わかった。」
エルゼに圧倒されたクルス王子の足音が、会場の方に消えていきます。
そうしている間に、イルダ様はドレスを脱いでウルファに渡されました。
「ウルファ、どう?繕えそう?」
「どおでしょう。とりあえずの補修をしても、着用できないと思います。サイズが小さいんです。」
「どういうこと?」
ウルファののんびりしたしゃべりを聞きながらドレスに目を向けます。
「ウェストはいいのですが、胸元が明らかに小さいんですよぉ。正直、ものすごい無理をして着ていたとしか……。」
ウルファは、左手でドレスの中から布を引き出しました。
「サラシを巻いて着用されていたんですねぇ。そのサラシがちぎれたので、抑えていた胸が解放され、ドレスを破ったんでしょお。」
イルダ様、なんてボリュームなんですか。
「それにこのドレス、かなり古いですねぇ。布もかなり傷んでいます。」
「もういいわよっ!!」
イルダ様の叫びが部屋に響きました。
私のお相手は……。
周囲を見回しても男性陣は、ささやきあって私と目を合わさぬようにしています。
……やっぱり平民ということで相手にしたものか迷われているようで。
仕方ありません、壁の花になりますか。
「ロザリンド嬢、私と踊っていただけませんか。」
そんなことを考えていると手を差し出されました。
差し出してきた方は、40代半ばと思しき方です。
軍服を着用しているので軍人なのでしょう。
「斬首将軍。」
周囲の声で私も目の前の方が誰か知りました。
私ですら名前を知る将軍です。
グラシアノ・バルリオス。下級騎士として初陣を飾り、軍功を積み重ねることで将軍の地位を得た名将です。
どれほど不利な戦況にあっても、必ず敵将の首を斬ることで知られています。
また、その首を見分に出す際、キレイにすることも。
「貴方の父上と変わらぬような年齢の者はおいやですか?」
「いえ、将軍にダンスを申し込んでいただけるとは思いませんでしたので、驚いただけです。未熟ですがお願いいたします。」
差し出された手を取ります。
ダンスは、この日までに一応特訓されています。
指導してくださった方に、「とりあえず大恥をかくことはないでしょう」と言われました。
今後も特訓は必要なようですが、とりあえずの恰好はつけられるようです。
「それにしても将軍に申し込まれるとは思いませんでした。」
「将来の王妃様に恥をかかせるわけには参りません。」
「やはり、私は貴族の方々に疎まれていますか?」
あのままでは誰も私を平民と侮って誰も申し込まなかった、ということでしょう。
「まぁ、それでも一応将来の王妃様ですから、いずれは申し込みがあると思います。ただ、誰も平民と踊る一番手になりたくないようで。」
前例が欲しいということでしょう。
ささやきあっていたのは、ひょっとしたら「お前いけ」と押し付けあっていただけなのかもしれません。
「よろしかったのですか、将軍?」
「先鋒は武人の誉れ。念の為、次の相手も用意しております。」
バルリオスの視線の先に、宮廷魔術師のローブを着用した男性がいます。
「私の友人、ファニート・カミロです。申し込む者がなくば、彼がお相手します。」
「そこまでして頂いて、申し訳ありません。でも何故にここまでして下さるのですか?」
「お父上に借りを作りましたので。」
「借りですか?」
父は、軍に物資や食料などを手配したことがあったはず。
その時恩を売るようなことがあったのでしょうか?
そんなことを考えながら踊っていると、背中に何か当たる感触がしました。
何か小さな物を当てられたような。
誰かが嫌がらせで私に投げつけてきたのでしょう。
踊りながら、足元を見るとボタンが転がっています。
このボタンを投げつけられた?
投げつけるにしても、ボタンをちぎってまで投げる方はいないでしょう。
氷や食べ残しの骨の類を想像していたのですが。
床に他に目立つものはありません。
このボタンが、と思った瞬間のことでした。
ビリリィッ!
今度は布の裂ける音。
「きゃあっ!!」
さすがに悲鳴の主の方を向きます。
見れば、クルス王子と踊っていたイルダという令嬢が胸元を手で抑えてしゃがみこんでいます。
胸元を手で隠しているようですが、隠しきれず肌が見えています。
それを見たクルス王子は、あっけにとられた表情から、にやけた表情に変わりました。
この!
一瞬憤りましたが、怒っても仕方ありません。
それより、あの令嬢をかばいませんと。
私はバルリオス将軍から手を離し、令嬢をかばうべくクルス王子との間に割り込みます。
邪魔するな、とにらんできますが、気にしてなどいられません。
逆ににらみ返してやります。
でもクルス王子の視線を遮るだけではダメ。
他の男性の視線も遮らないと。
さっと周囲を見回せば、国王までこちらを見てにやけています。
本当にクルス王子と親子なのがよくわかります。
「ロザリンド嬢、これを。」
バルリオス将軍が上着を脱いで投げてくれました。
「ありがとうございます。」
受け取った上着を令嬢にかけます。
「体調を崩されたようですね、私の控室に参りましょう。」
さすがに私のための控室は用意されており、そこに父がつけてくれた侍女達がいます。
ウルファがいますので、そこでドレスを繕ってくれるでしょう。
令嬢の肩を抱いて控室まで走ります。
控室に飛び込んだら、待機していた三人、エルゼ、ウルファ、イシドラが立ち上がります。
「ちょっとこの方のドレスが急に破れたの。見てあげて頂戴。」
「かしこまりました。」
ウルファがイルダ様に近寄ります。
ウルファは、褐色の肌をした、動くだけで胸が揺れる巨乳美女です。
「イルダ様、私の侍女にドレスを繕わせますのでとりあえず、ドレスを脱いでいただいてよろしいですか?」
イルダ様は、周囲を見回しました。
「きゃぁっ!!」
エルゼと目が合い、胸をさらにきつく抱いて縮こまります。
「イルダ様、あの者は私の護衛ですが女性です。」
「そ、そうなの?」
「エルゼ・シェーラーです。男装してますが、女性です。」
イルダ様は、エルゼの自己紹介を聴いてエルゼが女性であると判断し、肩にかけている上着に手をかけました。
その時です。
「おおい、ロザリンドよ、イルダ嬢は大丈夫か?」
クルス王子です。何しに来たのでしょう。
まさか……。
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あのドスケベ!!
イルダ様の裸を見に来たな。
「エルゼ、お願い。」
エルゼはうなずいて、最低限だけドアを開けてさっと外に出ます。
長身のエルゼですので、クルス王子の視線を遮ったはずです。
「殿下、イルダ様は急病です。お静かに。」
「……きゅ、急病か。ならば見舞おうか。」
クルス王子がエルゼに気圧されているのがわかります。
長身で美人のエルゼの圧を受けると、たいていの人はタジタジになるんだよね。
「なりません、診察中です。」
「し、診察中だと……。いつ来たのだ。」
「侍女の一人イシドラが医師です。ここはお任せ下さい。」
「イシドラ、確かあのチビか。」
「チビだとぅ!」
「イシドラ、診察中、診察中。」
身長のことを言われ激怒するイシドラを抑えます。
私より小柄なので、抑えるのは難しくありません。
「ぐぬぬ……あのスケベ王子、いつか痛い目みせてやる。」
そうしている間にも、部屋の外でエルゼがクルス王子を圧倒しています。
「殿下は本日の主役。会場にお戻りを。」
「う、うう、うぅむ、わかった。」
エルゼに圧倒されたクルス王子の足音が、会場の方に消えていきます。
そうしている間に、イルダ様はドレスを脱いでウルファに渡されました。
「ウルファ、どう?繕えそう?」
「どおでしょう。とりあえずの補修をしても、着用できないと思います。サイズが小さいんです。」
「どういうこと?」
ウルファののんびりしたしゃべりを聞きながらドレスに目を向けます。
「ウェストはいいのですが、胸元が明らかに小さいんですよぉ。正直、ものすごい無理をして着ていたとしか……。」
ウルファは、左手でドレスの中から布を引き出しました。
「サラシを巻いて着用されていたんですねぇ。そのサラシがちぎれたので、抑えていた胸が解放され、ドレスを破ったんでしょお。」
イルダ様、なんてボリュームなんですか。
「それにこのドレス、かなり古いですねぇ。布もかなり傷んでいます。」
「もういいわよっ!!」
イルダ様の叫びが部屋に響きました。
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