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「昼飯の時、オレんちとアズナールちが、家族ぐるみで付き合っていたと言ったすよね。」
「うん、その中でもアズナールとオラシオが同じ歳だったこともあって、特に仲良くしてたんだっけ。」
「えぇ、オラシオの兄、イグナスさんと3人でよく遊びました。」
「あら、アズナール君のお兄さんは?」
お母様が質問します。
「兄は、8歳で魔術師の素質が発露して以降、母から英才教育を施されていました。ですので、一緒に遊ぶことはあまりなかったですね。」
「そうなの。」
「家族ぐるみの付き合いと言いましたが、母は、ほとんど来ませんでした。兄が魔術師の素質を発露させて以降は皆無です。父とバルリオスのおじさんとの付き合いがメインですよ。」
「アズナールのおふくろさんがどうあれ、オレはアズナールが心配だったんで、一生懸命探したっす。思い切って貧民街に入って、アズナール見つけた時は嬉しかったっすね。」
オラシオ、いい奴だなぁ。
これで、ちょっとやらしいのをどうにかすればねえ。
食べながら、ちらっとウルファの方見てる。
正確には、胸を。
男ってば。
クルス王子と言い国王といい、まったく。
「で、帰るよう説得したんすけど。」
「あの頃、ぼくはジャネス親分とケンカしてました。逃げるわけにはいかないって、オラシオの説得を断ったんですよ。」
「なんでケンカしたの?」
「ぼくが転がり込んだ家の老人、ジャネス親分に借金があったんです。そのカタに家を取り上げる。ぼくに出て行けと。」
「それを断って?」
「それは、アズナール君が悪いわよ。死んだ人の財産を受け継ぐなら、借金だって受け継ぐのは、王国法が定めるところよ。」
「そうですが、当時のぼくは、そんな法律を知らない。それに生前の老人にもジャネス親分は、嫌がらせしてました。それもあって、僕は絶対にこの家を明け渡さない、と言ってケンカしたんです。」
「ケンカって……。」
エルゼが絶句してます。
「当時のぼくは、荒れてたからケンカ上等だったんだ。向こうの言葉に挑発的な返事を返したからね。」
「でもさ、アズナール。ジャネス親分っていうからには、子分がいるんでしょ。」
危ないんじゃないの?
それもあるから、エルゼも絶句したんだと思うよ。
「そうです。何人も子分をけしかけられました。」
「けしかけられたって軽く言うけど……。」
「アズナールは、強いっすよ。オヤジも、よく天賦の才があるってほめてましたから。」
「ひょっとして返り討ちにしたの?」
「まぁ、弱い者いじめしかできないような奴らでしたから。」
それでも一対多数なはずで。
それを返り討ちにするって、アズナール、かなり強いわね。
「ま、何度かやりあっているうちに、向こうも僕に賞金掛けたりしてきました。」
それでカリスト君のお父さん、アズナールにケンカ売ろうとしたんだ。
「ぼくも、やられるわけにはいかない。ジャネス親分の所に殴り込みでもかけてやろうか、と思っていた時にオラシオが現れたんです。」
「家に帰るよう説得したっす。でもこいつ、しっぽ巻いて逃げるわけにはいかないなんて言って。」
「いや、あの時のぼくは狂ってた。正直荒れた気持ちを引きずっていたからね。売られたケンカは絶対買った。ジャネス親分ともケンカ真っ最中の気持ちだった。」
「いや、やばかったっすね。こいつほっとけば死ぬなって思って。相手はヤクザっしょ。今は素手だけど、ナイフとか持ち出すのも時間の問題じゃね、って話聞いてる内に思って。」
「で、ぼくを叩きのめしてくれたんだよな。」
「いや、賭けしたんじゃねえか。お前が勝ったら一緒に殴り込む。オレが勝ったらここから出るって条件で。」
「ひょっとして殴り合いでもしたの?」
話し合いで解決しない時、男同士だとそうやって解決するお話多いもんね。
「そうっす。」
「で、ぼくが負けて、オラシオに担がれて貧民街を出ました。そして誘われて一緒に軍に入隊しました。」
なるほど。
でも一つ疑問が。
「オラシオを大男っていうけど、アズナールも身長低い方じゃないでしょ。なんでオラシオを大男って言ったんだろう。」
「多分、その時のぼくが、それほど背が高くなかったからだと思います。それに対してオラシオの身長は、今とさほど変わりませんから。」
「軍に入ってから、身体が育ったんだよな。」
「ちゃんとした食事と運動の成果じゃな。それと成長期が重なったのかもしれん。その辺は個人差が大きいからの。」
イシドラが医師としての見解を示しました。
「でも、アズナール君、よく貧民街に戻らず、オラシオ君と軍に入ったわね。」
「叩きのめされて目が覚めたんです。あの頃の僕は、誰かに止めてもらいたかったんだと思う。自分の荒れる気持ちを押さえられなかったから。でも母は兄と一緒にぼくを無視して、父は殴り合いに弱くて、家族は誰も止められなかった。」
「ヤクザも弱かったのね。」
「そうですね。あの頃のぼくを負かせた、というより受け止め切ったのはオラシオだけだったんです。」
「なんだ、そりゃ。初めて聞くぞ。」
「そうだな、今まで話さなかったからな。」
アズナールは、すっきりした顔になってオラシオの方を見ます。
「オラシオと殴り合って、僕の中の荒れた気持ちは全て吐き出せた。だから負けを素直に認めて貧民街を出れたんだ。」
「オレに担がれてな。オレだってお前と殴り合ってボロボロだったのによ。あん時はきつかったぞ。」
「すまん、でも足腰立たなくなるまで殴り合えなかったら、ぼくは、すっきりできなかったと思う。お前には感謝しているよ。」
「いいさ、お前とオレの仲じゃん。」
オラシオは、邪気の無い笑みで答えます。
「いいわねえ、男の子同士の友情って。ケンカもするけど、仲良しって。」
お母様も嬉しそうです。
「ざっと話しましたが、これがぼくの過去です。こんなぼくですが……。」
「うん、仕えて頂戴、アズナール。」
かぶせ気味に言いました。
「ただし、長話で料理が冷めちゃったから、皆に謝って。そして乾杯の音頭をとること、いいわね。」
「かしこまりました。」
アズナールは、グラスを手に立ち上がりました。
「みんな、長話してごめん。こんなぼくだけど、これからもよろしくお願いします。」
「うむ、強いことはわかった。オラシオ同様頼りにするぞ。」
「了解。」
「オラシオと違ってエッチくないから、大歓迎ぃ。」
「ウルファ、それ言わなくていいんじゃね。」
「オラシオ、エッチなの事実だもん。」
「うぅ……。」
オラシオ、戦いは厳しそうだね。
「エルゼ達も、いいって言ってくれたわよ。これからよろしくね、アズナール。」
そこを突っ込んでもしょうがないので、アズナールに振ります。
「はい。では、これからのロザリンドお嬢様の安全と栄華を願って、乾杯!」
「「「「「「かんぱーいっ!」」」」」」
皆、フォークやスプーンを手に目の前の料理を食べ始めます。
「いやぁ、美味しいっすね。ほんと軍営のメシと比べもんにならないっす。」
「本当?オラシオ君。」
「いや、マジ、軍営のメシなんか、これに比べたら豚のエサっす。」
「あはは、いっぱい食べてね。おかわりもあるから。」
もりもり食べるオラシオに、母は上機嫌です。
「アズナール君も、遠慮しないでよ。」
「えぇ、遠慮なくいただいております。」
よく見ると、アズナールは、食べ方はキレイだけど、ペースが結構早い。
オラシオと比べても、 お皿から料理が消えるスピード、大差ないんじゃないかな。
「うんうん、男の子はたくさん食べなきゃね。」
「ですから、男の子という歳でもないのですが。」
「わたしみたいなオバサンから見れば男の子よ。」
「え~オバサンはないっすよ、若く見えるんすから。」
「あら、オラシオ君ってばお上手ね。」
大いに盛り上がる中、私は軽い気持ちで質問してしまいました。
「ね、アズナール、あのお店だけどさ。」
「あのお店?ジャネスの店のことですか?」
「そう。あのお店、美味しいの?」
何気ない疑問。
それは、爆発魔法が仕込まれた落とし穴への入り口でした。
「うん、その中でもアズナールとオラシオが同じ歳だったこともあって、特に仲良くしてたんだっけ。」
「えぇ、オラシオの兄、イグナスさんと3人でよく遊びました。」
「あら、アズナール君のお兄さんは?」
お母様が質問します。
「兄は、8歳で魔術師の素質が発露して以降、母から英才教育を施されていました。ですので、一緒に遊ぶことはあまりなかったですね。」
「そうなの。」
「家族ぐるみの付き合いと言いましたが、母は、ほとんど来ませんでした。兄が魔術師の素質を発露させて以降は皆無です。父とバルリオスのおじさんとの付き合いがメインですよ。」
「アズナールのおふくろさんがどうあれ、オレはアズナールが心配だったんで、一生懸命探したっす。思い切って貧民街に入って、アズナール見つけた時は嬉しかったっすね。」
オラシオ、いい奴だなぁ。
これで、ちょっとやらしいのをどうにかすればねえ。
食べながら、ちらっとウルファの方見てる。
正確には、胸を。
男ってば。
クルス王子と言い国王といい、まったく。
「で、帰るよう説得したんすけど。」
「あの頃、ぼくはジャネス親分とケンカしてました。逃げるわけにはいかないって、オラシオの説得を断ったんですよ。」
「なんでケンカしたの?」
「ぼくが転がり込んだ家の老人、ジャネス親分に借金があったんです。そのカタに家を取り上げる。ぼくに出て行けと。」
「それを断って?」
「それは、アズナール君が悪いわよ。死んだ人の財産を受け継ぐなら、借金だって受け継ぐのは、王国法が定めるところよ。」
「そうですが、当時のぼくは、そんな法律を知らない。それに生前の老人にもジャネス親分は、嫌がらせしてました。それもあって、僕は絶対にこの家を明け渡さない、と言ってケンカしたんです。」
「ケンカって……。」
エルゼが絶句してます。
「当時のぼくは、荒れてたからケンカ上等だったんだ。向こうの言葉に挑発的な返事を返したからね。」
「でもさ、アズナール。ジャネス親分っていうからには、子分がいるんでしょ。」
危ないんじゃないの?
それもあるから、エルゼも絶句したんだと思うよ。
「そうです。何人も子分をけしかけられました。」
「けしかけられたって軽く言うけど……。」
「アズナールは、強いっすよ。オヤジも、よく天賦の才があるってほめてましたから。」
「ひょっとして返り討ちにしたの?」
「まぁ、弱い者いじめしかできないような奴らでしたから。」
それでも一対多数なはずで。
それを返り討ちにするって、アズナール、かなり強いわね。
「ま、何度かやりあっているうちに、向こうも僕に賞金掛けたりしてきました。」
それでカリスト君のお父さん、アズナールにケンカ売ろうとしたんだ。
「ぼくも、やられるわけにはいかない。ジャネス親分の所に殴り込みでもかけてやろうか、と思っていた時にオラシオが現れたんです。」
「家に帰るよう説得したっす。でもこいつ、しっぽ巻いて逃げるわけにはいかないなんて言って。」
「いや、あの時のぼくは狂ってた。正直荒れた気持ちを引きずっていたからね。売られたケンカは絶対買った。ジャネス親分ともケンカ真っ最中の気持ちだった。」
「いや、やばかったっすね。こいつほっとけば死ぬなって思って。相手はヤクザっしょ。今は素手だけど、ナイフとか持ち出すのも時間の問題じゃね、って話聞いてる内に思って。」
「で、ぼくを叩きのめしてくれたんだよな。」
「いや、賭けしたんじゃねえか。お前が勝ったら一緒に殴り込む。オレが勝ったらここから出るって条件で。」
「ひょっとして殴り合いでもしたの?」
話し合いで解決しない時、男同士だとそうやって解決するお話多いもんね。
「そうっす。」
「で、ぼくが負けて、オラシオに担がれて貧民街を出ました。そして誘われて一緒に軍に入隊しました。」
なるほど。
でも一つ疑問が。
「オラシオを大男っていうけど、アズナールも身長低い方じゃないでしょ。なんでオラシオを大男って言ったんだろう。」
「多分、その時のぼくが、それほど背が高くなかったからだと思います。それに対してオラシオの身長は、今とさほど変わりませんから。」
「軍に入ってから、身体が育ったんだよな。」
「ちゃんとした食事と運動の成果じゃな。それと成長期が重なったのかもしれん。その辺は個人差が大きいからの。」
イシドラが医師としての見解を示しました。
「でも、アズナール君、よく貧民街に戻らず、オラシオ君と軍に入ったわね。」
「叩きのめされて目が覚めたんです。あの頃の僕は、誰かに止めてもらいたかったんだと思う。自分の荒れる気持ちを押さえられなかったから。でも母は兄と一緒にぼくを無視して、父は殴り合いに弱くて、家族は誰も止められなかった。」
「ヤクザも弱かったのね。」
「そうですね。あの頃のぼくを負かせた、というより受け止め切ったのはオラシオだけだったんです。」
「なんだ、そりゃ。初めて聞くぞ。」
「そうだな、今まで話さなかったからな。」
アズナールは、すっきりした顔になってオラシオの方を見ます。
「オラシオと殴り合って、僕の中の荒れた気持ちは全て吐き出せた。だから負けを素直に認めて貧民街を出れたんだ。」
「オレに担がれてな。オレだってお前と殴り合ってボロボロだったのによ。あん時はきつかったぞ。」
「すまん、でも足腰立たなくなるまで殴り合えなかったら、ぼくは、すっきりできなかったと思う。お前には感謝しているよ。」
「いいさ、お前とオレの仲じゃん。」
オラシオは、邪気の無い笑みで答えます。
「いいわねえ、男の子同士の友情って。ケンカもするけど、仲良しって。」
お母様も嬉しそうです。
「ざっと話しましたが、これがぼくの過去です。こんなぼくですが……。」
「うん、仕えて頂戴、アズナール。」
かぶせ気味に言いました。
「ただし、長話で料理が冷めちゃったから、皆に謝って。そして乾杯の音頭をとること、いいわね。」
「かしこまりました。」
アズナールは、グラスを手に立ち上がりました。
「みんな、長話してごめん。こんなぼくだけど、これからもよろしくお願いします。」
「うむ、強いことはわかった。オラシオ同様頼りにするぞ。」
「了解。」
「オラシオと違ってエッチくないから、大歓迎ぃ。」
「ウルファ、それ言わなくていいんじゃね。」
「オラシオ、エッチなの事実だもん。」
「うぅ……。」
オラシオ、戦いは厳しそうだね。
「エルゼ達も、いいって言ってくれたわよ。これからよろしくね、アズナール。」
そこを突っ込んでもしょうがないので、アズナールに振ります。
「はい。では、これからのロザリンドお嬢様の安全と栄華を願って、乾杯!」
「「「「「「かんぱーいっ!」」」」」」
皆、フォークやスプーンを手に目の前の料理を食べ始めます。
「いやぁ、美味しいっすね。ほんと軍営のメシと比べもんにならないっす。」
「本当?オラシオ君。」
「いや、マジ、軍営のメシなんか、これに比べたら豚のエサっす。」
「あはは、いっぱい食べてね。おかわりもあるから。」
もりもり食べるオラシオに、母は上機嫌です。
「アズナール君も、遠慮しないでよ。」
「えぇ、遠慮なくいただいております。」
よく見ると、アズナールは、食べ方はキレイだけど、ペースが結構早い。
オラシオと比べても、 お皿から料理が消えるスピード、大差ないんじゃないかな。
「うんうん、男の子はたくさん食べなきゃね。」
「ですから、男の子という歳でもないのですが。」
「わたしみたいなオバサンから見れば男の子よ。」
「え~オバサンはないっすよ、若く見えるんすから。」
「あら、オラシオ君ってばお上手ね。」
大いに盛り上がる中、私は軽い気持ちで質問してしまいました。
「ね、アズナール、あのお店だけどさ。」
「あのお店?ジャネスの店のことですか?」
「そう。あのお店、美味しいの?」
何気ない疑問。
それは、爆発魔法が仕込まれた落とし穴への入り口でした。
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