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目を覚まさせて②
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「目を覚ましたですか?」
「おうよ、嬢ちゃん言ってくれたじゃねえか。幸福を追求しろってな。」
春吉は、嬉しそうだった。
「本当は、俺が言いたかった。かわいい孫だからな。」
「言えばよろしいではありませんか。」
小倉が割り込んできた。
「会長の言葉なら朗さんも。自分だって。」
「無理だ、お前をしつけたのと訳が違う。」
「そんなことはありません!」
「いや、お前は俺を憎んではいなかった。朗は憎んでいる。その違いがある。」
「しかし、話しをする機会があれば。」
「あったさ、留置所で話しはできた。」
「なら。」
「いや無理さ。朗に俺のそういう言葉は届かん。嬢ちゃんだからこそ届いたのさ。俺と違って因縁がねえからな。」
春吉は、永倉に視線を向けた。
「嬢ちゃん、悪いが、朗を頼む。」
「頼むと言われても。」
どーしろと。
「言っちゃなんだが、俺はヤクザだ。世の中をそれなりに見てきたつもりだ。」
「世の中、ですか?」
「まぁ、嬢ちゃんとは縁のねえ、前科もちとかそういう所よ。」
「壬生さんが犯罪者になると?」
それ言い過ぎじゃないですか?
「今までの朗には根っこがねえ。今日、宮川の野郎をぶん殴って目標が無くなった。それはいいんだが、ほっとくとそのまま根なし草になってるところよ。」
「根なし草って、具体的には?」
壬生さん、どうなるって言いたいんだろう。
「朗は見ての通り顔がいいからな。どこに行こうが、女作って転がり込める。」
「ヒモになるってことですか?」
「実際、あんたらのところにいるってことは、そういうことだろう。反論できるか、朗?」
「わかった、出ていくよ。」
壬生は反射的に言い返した。
そう言われていい気には、なれない。
「ちょちょっと、会長さん、余計なこと言わないで下さい。」
さすがに抗議する。
「いや、世話になっておけ。お前には親がいない。俺や宮川が助けたいが、お前は差し出された手をへし折るだろうだろう。」
「世話になっておけって、ヒモになりたくない。」
「ヒモとは違う。俺の見てきたヒモやる奴は、先への展望も何もないその日暮らしの奴ばっかだった。だが、今のお前は違う。」
「明確な展望は無い。」
「俺が見てきた奴らは、持とうともしない。だが、今のお前は持とうとしてるだろう。」
「会長さんの言う通りだよ、壬生さん、正社員になるって言ったじゃない。業種とかはこれから考えるけど。」
「そう、その考えるが大事よ。ヒモやってるような奴は遊び暮らすことしか考えねえからな。」
二人の畳みかけに壬生は、圧倒されるだけだった。
「遊び暮らす時期があってもいいが、それに溺れるのは良くねえ。」
「全くその通りだな。働くよ。幸い、最低限の生活は今までできていたんだ。部屋借りて車維持して。」
「ってこたあ、貯えなんかも大してあるめえ。」
春吉の指摘を、壬生は否定できなかった。
「今は部屋を引き払って、嬢ちゃんとこにいな。それから、どうするか決めりゃいい。」
「そうよ、朗ちゃん。うちに居候して、必要であれば働いてお金を貯めなさい。」
「居候とヒモとどういう違いがあるんだか。」
壬生は苦笑した。
「言ったろう、展望の有無、なくとも持とうとあがいている。」
「わかった、わかった。」
壬生は、苦笑しながら春吉にこたえる。
「永倉さんに、正社員目指して頑張るって言ったんだ。業種とか、具体的なことはこれから考えるけどね。」
「おうよ、嬢ちゃん言ってくれたじゃねえか。幸福を追求しろってな。」
春吉は、嬉しそうだった。
「本当は、俺が言いたかった。かわいい孫だからな。」
「言えばよろしいではありませんか。」
小倉が割り込んできた。
「会長の言葉なら朗さんも。自分だって。」
「無理だ、お前をしつけたのと訳が違う。」
「そんなことはありません!」
「いや、お前は俺を憎んではいなかった。朗は憎んでいる。その違いがある。」
「しかし、話しをする機会があれば。」
「あったさ、留置所で話しはできた。」
「なら。」
「いや無理さ。朗に俺のそういう言葉は届かん。嬢ちゃんだからこそ届いたのさ。俺と違って因縁がねえからな。」
春吉は、永倉に視線を向けた。
「嬢ちゃん、悪いが、朗を頼む。」
「頼むと言われても。」
どーしろと。
「言っちゃなんだが、俺はヤクザだ。世の中をそれなりに見てきたつもりだ。」
「世の中、ですか?」
「まぁ、嬢ちゃんとは縁のねえ、前科もちとかそういう所よ。」
「壬生さんが犯罪者になると?」
それ言い過ぎじゃないですか?
「今までの朗には根っこがねえ。今日、宮川の野郎をぶん殴って目標が無くなった。それはいいんだが、ほっとくとそのまま根なし草になってるところよ。」
「根なし草って、具体的には?」
壬生さん、どうなるって言いたいんだろう。
「朗は見ての通り顔がいいからな。どこに行こうが、女作って転がり込める。」
「ヒモになるってことですか?」
「実際、あんたらのところにいるってことは、そういうことだろう。反論できるか、朗?」
「わかった、出ていくよ。」
壬生は反射的に言い返した。
そう言われていい気には、なれない。
「ちょちょっと、会長さん、余計なこと言わないで下さい。」
さすがに抗議する。
「いや、世話になっておけ。お前には親がいない。俺や宮川が助けたいが、お前は差し出された手をへし折るだろうだろう。」
「世話になっておけって、ヒモになりたくない。」
「ヒモとは違う。俺の見てきたヒモやる奴は、先への展望も何もないその日暮らしの奴ばっかだった。だが、今のお前は違う。」
「明確な展望は無い。」
「俺が見てきた奴らは、持とうともしない。だが、今のお前は持とうとしてるだろう。」
「会長さんの言う通りだよ、壬生さん、正社員になるって言ったじゃない。業種とかはこれから考えるけど。」
「そう、その考えるが大事よ。ヒモやってるような奴は遊び暮らすことしか考えねえからな。」
二人の畳みかけに壬生は、圧倒されるだけだった。
「遊び暮らす時期があってもいいが、それに溺れるのは良くねえ。」
「全くその通りだな。働くよ。幸い、最低限の生活は今までできていたんだ。部屋借りて車維持して。」
「ってこたあ、貯えなんかも大してあるめえ。」
春吉の指摘を、壬生は否定できなかった。
「今は部屋を引き払って、嬢ちゃんとこにいな。それから、どうするか決めりゃいい。」
「そうよ、朗ちゃん。うちに居候して、必要であれば働いてお金を貯めなさい。」
「居候とヒモとどういう違いがあるんだか。」
壬生は苦笑した。
「言ったろう、展望の有無、なくとも持とうとあがいている。」
「わかった、わかった。」
壬生は、苦笑しながら春吉にこたえる。
「永倉さんに、正社員目指して頑張るって言ったんだ。業種とか、具体的なことはこれから考えるけどね。」
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