古からの侵略者

久保 倫

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取り調べ③

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「よろしかったのですか、弁護士を断って。」
「構いません。あの人に助けられたくない。」

 断りをドアのところで待機していた刑事に依頼し、聴取は続く。

「おじいさんをあの人呼ばわりですか。それでごまかせると思わないで下さい。さぁ、おじいさんは、何を企んでいるのか教えて下さい。」
「知りません。士道会と僕は無関係です。」

 壬生は淡々と答えるだけだ。

「春風組の小倉と話をしてますな、おじいさんの腹心の。パトロールの警官が車を隣り合わせて話しているのを目撃しています。嘘ついて逃げられるなんて思わないで下さい。」

 あれ、見られていたのか。

 パトロールしてくれているのは、感謝したが、こういう形で返ってくるなんて。

 ヤクザと関わりなんて持つもんじゃない。

「そもそも、士道会は何を企んで、それに僕はどう関与しているとおっしゃりたいのですか?」
「まだ、とぼけますか。」
「全くわかりませんので。」

 実際何をわからないのだから仕方ない。

「そうか、なら言ってやろう。」

 後ろに控えていた山野が口を開いた。

「近年のヤクザには、不逞外国人からの防衛を大義名分に掲げる者がいる。実際、北九州市の方でもそれを掲げて、夜の街を巡視するなどの活動をやったがな。大して盛り上がっちゃいない。」
「警察がいるのに、夜回りやっても無意味ですからね。」
「ほう、よくわかっているじゃないか。だからこそ、君のおじいさんは一計を案じたのさ。」

 これからが本題か。

「アキムとか言ったか。一目で外国人とわかる連中を雇い、この福岡市で暴れさせる。窃盗やら空手家襲撃やら。それを士道会が抑えることで、治安維持に一役買っているとアピールするのさ。」
「なるほど、コントロールできる敵を作ることで、自分を正義の味方と主張すると。」
「そうだよ。」
「で、その計画における僕の役割は?」
「被害者役だよ。」
「被害者?」
「ぜんざい広場で襲われましたって中洲幹部交番で言っているじゃないか。」

 確かにその通りだ。

「ただ、それを一人で言ってもしょうがない。やはり一般市民の証人が欲しかった。それで永倉さんを利用しようとした。」
「それは違います。」
「違いますか。でもね、貝塚駅前で蹴り倒した相手と翌日、中洲の商店街で出くわすなんてできすぎている。」
「そう、実際は示し合わせたんだろう。」
「違う!」

 壬生は、非常に危うい状況にあることを悟った。

「僕が、遊びに誘ったのは事実です。ですが、彼女には断ることもできた。」
「そう、そうしないようイサイでしたか。組んでいいところを見せて好感度を上げたうえで誘った。」
「なっ……。」

 もう、アキム達と組んでいることを前提に話をしている。

「そうでなくとも、ぜんざい広場に行こうと言ったのは当日です。それを彼女の考えで変更する可能性もある。それに僕も博多や天神にしましょうか、と提案しています。永倉さんに確認してもらってもいい。」
「そうしたところで、スマホ一つでいくらでも連絡できます。仮に天神に行っても店は、あなたが決めるのでは?」
「彼女が、自分の好みの店を言う可能性だってある。衝動的に『ここにする』と言い出すリスクだってあるでしょう。」

 言い負かされる訳にはいかない。

「そうかもしれませんが、それでもアキムとかいうリーダーに連絡することはできるでしょう。適当に理由をつけて。」
「できないとは言いませんが……。」
「まぁ、永倉さんはあなたの思う通りに動いた。そしてあなたは、アキム達に襲われる被害者となったわけです。しかも負傷しない。」
「空手家は負傷したのに、と言いたいのですか?」
「昨日、襲撃された方のお一人が脳挫傷で死亡しました。」
「……それは、ご愁傷さまです。」
「そう思うのなら、正直に話して頂けませんか。」
「何を話せと?そもそも、私が空手家襲撃に関与していると言われますが、最初に襲撃された藤堂先生の道場で学んでいただけの間柄にすぎません。」
「つまり、あなたが地元で知る空手家だ。だから、アキムとやらに空手家の名前を聞かれ、最初に教えたのではないですか?」
「そんなことしません!」

 さすがにかっとなった。
 机を叩き、怒鳴ってしまう。

「もう一つ、空手家襲撃に関し、おかしな証言が被害者より寄せられました。」
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