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千姫ルート 南京城攻略戦2
張居勝4(エロ度☆☆☆☆☆)
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籠城をするには絶対と言って良い条件がある。
それは、援軍があると分かっていること。
それが無ければ兵糧は減り続け、味方の士気は沈み、市民は軍に反感を持つ。
内憂外患となった城では到底戦うことなど出来なくなるのだ。
「・・・・・・では、援軍は?」
居勝が進安に尋ねたのは、それを危惧したからではない、歓迎したからだ。
「ない! 女真が瀋陽を越えたのだぞ! それどころかこちらの兵を向かわせろとの命令だ!」
北京の中枢は心底肝を冷やしているだろう。
上海で勝っていればその命を聞くことも出来たかも知れないが、今となってはそうもいかない。
南京を出る前に楽勝気分で出した手紙の返信がつい先日届いたのだから、こちらの敗戦の報が届き、援軍や処罰を考慮した返信があるのは1月以上も先。
その頃には疾うに南京も落ち、進安は首だけになっている。
居勝はまた女真の背後に倭がいることを感じ取りほくそ笑む。
「李将軍、急ぎ兵を集めねばなりません。しかし、今の南京の貯財では金子が足りませぬので、商人どもに一時的に借りてこようと思います。顔も聞きますので私にお命じを!」
進安からすれば居勝が失態分を取り戻そうと躍起になっている様に見えるのだろう。
侮蔑の目で睨み、フンッと鼻を鳴らす。
「せいぜい励むことだな」
どうせ殺すのだからその前に働かせようとでも言うのだろう。
もっとも、居勝の中では死ぬのは進安の方だが。
「ありがたく」
一礼をし、去ってゆこうとすると、
「逃げようとする者は皆あの城門の躯の様になるぞ」
去り際に念を押すようにそう言ってくる。
「心得ております」
表情を隠したままで居勝も答える。
しかし、民が逃げようとするのも当然のこと、下手に進安を刺激しないためにも思いとどまらせるように動かねばならない。
・・・・・・どうやらしばらくは仮眠を取る暇も惜しまなければならないようだ。
進安は兵や民が自分に従うのを当然と思っていた。
それは、進安が朝廷に認められた将軍であるからだ。
だが、当たり前のことだが、兵も一人ひとりが意志を持つ人間なのだ。
不満や恐怖で押さえつけられ続けていたものが、臨界点を越えて飛び出すのは既に時間の問題。
まして、居勝の兵達は自分の将のことを知っている。
城が、いや、いっそ国が傾いた今、どちらに従うかなど、考えるまでもない話だった。
運良く居勝が捕らえらずに済んだこともあり、その兵力は既に6000にまで及んでいる。
準備は万全、民も代表者一人ひとりを回り、説得を行って来た。
商人たちも季夏の父の協力が得られることとなった。
・・・・・・もっとも、
「ずいぶんと殴られてしまったな」
殴り慣れていない商人の拳など、曲がりなりにも軍を預かる居勝には大して効いていない。
だが、その想いが重すぎた。
抵抗も出来ずにしこたま殴られたことを思い出す。
「・・・・・・申し訳ございませんでした」
他に言えることなどなにもない。
でも、それだけはどうしても言いたいと思ったのだ。
「娘は生きているのだな?」
肩で息をしながら、拳から血を流した商人が問いただす。
「はい」
「そうか、そうか、生きとったか」
それだけで十分。
そう言いたげな商人の親としての表情にいたたまれなくなる。
「・・・・・・今は日本軍に身を寄せております」
「っ!? 日本軍? 倭軍のことか!?」
この時代における倭の捉え方は倭冠と言う海賊と同一視される。
残虐な行為を行うそれは南の蛮族として恐怖の対象となっているのだ。
「倭冠とは全く違います。むしろ、進安の率いた明軍は倭冠よりよほど酷かった。日本軍は我らの業を弔ってくれているほどです」
「・・・・・・上海で30万の将兵を焼き払ったと言うではないか!」
「はい。ですが、それは進安や私の責任でもある。それに、戦の中での策に過ぎません。明軍が行ったのは民に対してです」
「っ!? 本当、なのか?」
村は念入りに皆殺しにしてきた。
情報が伝わりにくいのも致し方ない。
「それも、その指示は朝廷に属する者からでした。自らの懐を温めるためには民の犠牲などどうとも思わない。ゆえに私は反旗を掲げ、日本軍に付くことを決めたのです」
「・・・・・・それで、季夏を、娘を人質にしたと?」
再び商人が拳を握る。
「いいえ。あちらの方がよほど安全なので預けて参りました。敵の総大将に私は惚れ込んでおりますので」
「・・・・・・女子、と聞いたぞ?」
「はい。大変に器の大きなお方です。あの方のためなら喜んで死ねましょう」
居勝が感情のままにそんなことを言うのは初めてのことだ。
生き生きとした表情に商人も驚いてしまう。
「しかし、皇后、なのだろう? 皇帝がどのような人物か分からぬではないか!」
「仰る通りです。しかし、皇后陛下が信ずるお方なら・・・・・・。こればかりは会ってからでないと何も言えませぬが」
こればかりは明言できない。
明がそうであるように皇帝など酒色に耽る者と言う考えが残る。
「賭け、か。既に北は女真族による侵略を受けている。同時にモンゴルの南下も始まったようだ。山越とて黙ってはおらぬだろう」
「日本は女真や越と繋がっていましょう。兵力や装備、将、そのどれもが揃っているのは日本しかございませぬ」
既にこの南京を拠点とする者は日本に付く以外にあり得ない。
そう、商人も悟ってはいるのだろう。
「・・・・・・しかし、な。日本にも内乱の気配があるとのことだ」
「っ!? これだから商人の情報網は侮れませぬ。それは私も知らぬことでした」
貿易を扱う商人の情報力は時に国のそれをも上回ることがある。
「大丈夫なのか?」
「少なくとも明に付くと言うのは既に死路。内乱は・・・・・・皇帝の采配次第。果たしてどうなるか、ですな。・・・・・・ところで」
此処まではあくまで志を同じくする者としての話、此処からは・・・・・・。
「なんだ?」
「季夏を嫁にいただきたく!」
居勝が土下座をする。
が、思い切り蹴り飛ばされ、店から叩き出されてしまった。
「・・・・・・あれは効いた」
思い出しても顔が痛い。
それからも他の場所への訪問が終わると、商人のところへ行き叩き出されると言う日々。
「必ず認めていただく」
そして今日も商人の家の扉を叩く。
進安などよりよほど手ごわい味方を説得しに。
それは、援軍があると分かっていること。
それが無ければ兵糧は減り続け、味方の士気は沈み、市民は軍に反感を持つ。
内憂外患となった城では到底戦うことなど出来なくなるのだ。
「・・・・・・では、援軍は?」
居勝が進安に尋ねたのは、それを危惧したからではない、歓迎したからだ。
「ない! 女真が瀋陽を越えたのだぞ! それどころかこちらの兵を向かわせろとの命令だ!」
北京の中枢は心底肝を冷やしているだろう。
上海で勝っていればその命を聞くことも出来たかも知れないが、今となってはそうもいかない。
南京を出る前に楽勝気分で出した手紙の返信がつい先日届いたのだから、こちらの敗戦の報が届き、援軍や処罰を考慮した返信があるのは1月以上も先。
その頃には疾うに南京も落ち、進安は首だけになっている。
居勝はまた女真の背後に倭がいることを感じ取りほくそ笑む。
「李将軍、急ぎ兵を集めねばなりません。しかし、今の南京の貯財では金子が足りませぬので、商人どもに一時的に借りてこようと思います。顔も聞きますので私にお命じを!」
進安からすれば居勝が失態分を取り戻そうと躍起になっている様に見えるのだろう。
侮蔑の目で睨み、フンッと鼻を鳴らす。
「せいぜい励むことだな」
どうせ殺すのだからその前に働かせようとでも言うのだろう。
もっとも、居勝の中では死ぬのは進安の方だが。
「ありがたく」
一礼をし、去ってゆこうとすると、
「逃げようとする者は皆あの城門の躯の様になるぞ」
去り際に念を押すようにそう言ってくる。
「心得ております」
表情を隠したままで居勝も答える。
しかし、民が逃げようとするのも当然のこと、下手に進安を刺激しないためにも思いとどまらせるように動かねばならない。
・・・・・・どうやらしばらくは仮眠を取る暇も惜しまなければならないようだ。
進安は兵や民が自分に従うのを当然と思っていた。
それは、進安が朝廷に認められた将軍であるからだ。
だが、当たり前のことだが、兵も一人ひとりが意志を持つ人間なのだ。
不満や恐怖で押さえつけられ続けていたものが、臨界点を越えて飛び出すのは既に時間の問題。
まして、居勝の兵達は自分の将のことを知っている。
城が、いや、いっそ国が傾いた今、どちらに従うかなど、考えるまでもない話だった。
運良く居勝が捕らえらずに済んだこともあり、その兵力は既に6000にまで及んでいる。
準備は万全、民も代表者一人ひとりを回り、説得を行って来た。
商人たちも季夏の父の協力が得られることとなった。
・・・・・・もっとも、
「ずいぶんと殴られてしまったな」
殴り慣れていない商人の拳など、曲がりなりにも軍を預かる居勝には大して効いていない。
だが、その想いが重すぎた。
抵抗も出来ずにしこたま殴られたことを思い出す。
「・・・・・・申し訳ございませんでした」
他に言えることなどなにもない。
でも、それだけはどうしても言いたいと思ったのだ。
「娘は生きているのだな?」
肩で息をしながら、拳から血を流した商人が問いただす。
「はい」
「そうか、そうか、生きとったか」
それだけで十分。
そう言いたげな商人の親としての表情にいたたまれなくなる。
「・・・・・・今は日本軍に身を寄せております」
「っ!? 日本軍? 倭軍のことか!?」
この時代における倭の捉え方は倭冠と言う海賊と同一視される。
残虐な行為を行うそれは南の蛮族として恐怖の対象となっているのだ。
「倭冠とは全く違います。むしろ、進安の率いた明軍は倭冠よりよほど酷かった。日本軍は我らの業を弔ってくれているほどです」
「・・・・・・上海で30万の将兵を焼き払ったと言うではないか!」
「はい。ですが、それは進安や私の責任でもある。それに、戦の中での策に過ぎません。明軍が行ったのは民に対してです」
「っ!? 本当、なのか?」
村は念入りに皆殺しにしてきた。
情報が伝わりにくいのも致し方ない。
「それも、その指示は朝廷に属する者からでした。自らの懐を温めるためには民の犠牲などどうとも思わない。ゆえに私は反旗を掲げ、日本軍に付くことを決めたのです」
「・・・・・・それで、季夏を、娘を人質にしたと?」
再び商人が拳を握る。
「いいえ。あちらの方がよほど安全なので預けて参りました。敵の総大将に私は惚れ込んでおりますので」
「・・・・・・女子、と聞いたぞ?」
「はい。大変に器の大きなお方です。あの方のためなら喜んで死ねましょう」
居勝が感情のままにそんなことを言うのは初めてのことだ。
生き生きとした表情に商人も驚いてしまう。
「しかし、皇后、なのだろう? 皇帝がどのような人物か分からぬではないか!」
「仰る通りです。しかし、皇后陛下が信ずるお方なら・・・・・・。こればかりは会ってからでないと何も言えませぬが」
こればかりは明言できない。
明がそうであるように皇帝など酒色に耽る者と言う考えが残る。
「賭け、か。既に北は女真族による侵略を受けている。同時にモンゴルの南下も始まったようだ。山越とて黙ってはおらぬだろう」
「日本は女真や越と繋がっていましょう。兵力や装備、将、そのどれもが揃っているのは日本しかございませぬ」
既にこの南京を拠点とする者は日本に付く以外にあり得ない。
そう、商人も悟ってはいるのだろう。
「・・・・・・しかし、な。日本にも内乱の気配があるとのことだ」
「っ!? これだから商人の情報網は侮れませぬ。それは私も知らぬことでした」
貿易を扱う商人の情報力は時に国のそれをも上回ることがある。
「大丈夫なのか?」
「少なくとも明に付くと言うのは既に死路。内乱は・・・・・・皇帝の采配次第。果たしてどうなるか、ですな。・・・・・・ところで」
此処まではあくまで志を同じくする者としての話、此処からは・・・・・・。
「なんだ?」
「季夏を嫁にいただきたく!」
居勝が土下座をする。
が、思い切り蹴り飛ばされ、店から叩き出されてしまった。
「・・・・・・あれは効いた」
思い出しても顔が痛い。
それからも他の場所への訪問が終わると、商人のところへ行き叩き出されると言う日々。
「必ず認めていただく」
そして今日も商人の家の扉を叩く。
進安などよりよほど手ごわい味方を説得しに。
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