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燃える上海
ヌルハチとの密約(エロ度☆☆☆☆☆)
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「さて、進軍準備の方はいいか?」
「ははっ! 既に済州島周辺に軍団を結集しております。ご指示をいただければ1日で上海の港まで押し寄せることが出来ます」
今や遅しと出撃の下知を待つ清正が吼える。
此処から済州島までが1日だから狼煙で指示を出し、2日で戦闘中の上海に辿り着く計算だ。
「では、日本丸をいつでも出向できるようにしておけ」
「ははっ! ・・・・・・しかし、陛下も行かれるので?」
三成あたりからは文句を言われそうだが・・・・・・。
「ああ。それにしばらくは済州島に滞在する。で、早いうちに上海。上手くいけば南京に――」
「陛下! 先ずは上海の事のみをお考えください」
お麟と共に軍師班で学ぶ者の一人で、その優秀さから今回俺付きの参謀として連れて行く事になっている湊井頼(創作人物、大坂の陣に出陣した湊惣左衛門と浅井井頼から命名)。
まだ俺と同じ18歳だが、非常に頭が良くお麟と並ぶ俊英だ。
まぁ、お麟は非常に特殊なこともあり、本来なら彼が最も優秀な男だ。
ひょろっと線の細い美丈夫で軍略や戦術面に特化した軍師タイプの男。
「井頼、大した備えのない上海など直ぐに落とせるのではないか?」
「はっ! 仰る通りですが、明自体は非常に強大な国です。攻めを焦ってはなりません」
「しかし、上海だけを手に入れても四方から攻められて結局は足がかりを無くしてしまうのではないか?」
あくまで上海は足がかりの地として攻め、そこから南京、そして北京へと進軍するものだと思っていた。
「先ず、上海というのは明の商工業の中心地であったからだったはずです。ここを押さえることで明の経済は大きく後退します。それにここを効率よく守ることでさらに大きな被害を与えることが出来ます。せっかく手に入れても奪い返されては意味がありません」
「しかし、だからこそ内陸に攻めあがるのだろう?」
上海だけを手に入れても守る手立てがない。
特に高い城壁があるわけでもなければ天然の要害というわけでもない。
「いいえ。それでは消耗戦になるだけにございます。私が提案いたしますのは上海の要塞化にございます」
「何を言っている? そんなものは敵が攻めてくる状況で出来る事ではない」
「はい。ですから陽動をかけます」
「・・・・・・と、言うと?」
「上海の陸上部隊による制圧後、敵の首都である北京に近い天津港、それに明軍の海軍が集結している青島、これらの港に停泊する船を棒火矢を使い敵射程外から攻撃します。そして、特に大型の船を目標に沈めるのです」
確かに、現状でも射程距離で圧倒的優位を保てる棒火矢は大量に生産されている。
また、棒火矢の貫通力を高めるために先端を鉄製にしたり、火薬の量を調節して爆発力を高めたり、殺傷性を高めるために中に小さな鉛の弾を込めたり、延焼性を高めるために油を込めたり、大型化したりとその種類も多様になってきている。
この遠征に合わせて多くの艦船も造られているので、それも可能かもしれない。
ちなみに新しい刀槍類はほとんど作られなくなっているのも確かだ。
そんな現状を武士たちは悲しんでいるが、それも時代の移り変わりなのだから仕方ない。
「三成達とは既に協議済みか?」
「ははっ! 上海の要塞化の時を稼ぐにはやむなしと、結論付けましてございます」
「では、その後について教えよ」
「はっ! 上海を要塞とし、棒火矢や新式銃による圧倒的射程を頼りに数年間守ります。そして、かねてより進めている南部の越族に侵攻させ、明の西部を攻撃させます」
「・・・・・・うむ。現状の明の支配に不満は大きく、力さえ示せばのってくるという話だったな?」
「はい。強大な明を攻めるにはやはり内部から崩壊させるのが一番でございます。幸いにも我が国は陛下の元に一枚に結束しておりますので、数年は散発的な襲撃で敵の経済を揺さぶるというのがよろしいかと思います。後は天災が起こればそれで一揆や内乱が起こりだすことでしょう」
「まぁ、な。下手に内陸にまで侵攻してしまえば騎馬の脅威にさらされる。極端な人海戦術を行われても脅威だ」
「はい、仰る通りです。ご承認いただけますか?」
「・・・・・・良いだろう。ただ、それを先の軍議でそれを言わなかったのは、先日届いたヌルハチの援軍要請が原因か?」
「ははっ!」
つい三日前に届いた書状では明軍が40万を号した軍で進軍してきているので助けが欲しいとのことだった。
明への密偵の連絡では実際に金軍への進軍は9万程度。
3万ずつで3軍に分かれ、北・西・南からそれぞれ進軍する予定とのことだ。
正史では東南から朝鮮軍を帯同した軍もあったが、当然朝鮮は日本が占領しているのでそのルートは潰されている。
「援軍には朝鮮から1万を派遣しようと思う」
「・・・・・・そうですな。金軍にも潰れてもらっては困ります。しかし、こちらが被害を受けるのも許容できません。狙撃隊を一隊派遣することにいたしましょう」
「ん? 金軍に狙撃隊を見せても良いのか?」
「我らは援軍です。明軍の一隊の背後を突くように動けば金軍に見られることもないでしょう」
・・・・・・そうか?
でも、監視の一人くらい付けられるんじゃないのか?
「良いか? ヌルハチとは密約がある。それが生きている限りヌルハチを殺させるわけにはいかないし、その密約を露見させるわけにはいかない」
「・・・・・・密約?」
井頼はその内容をまだ知らない。
知っているのはせいぜい三成と清正くらい。
「それについてはまだ言えない」
「ただの同盟とは別の、ということですね?」
「ま、ただの口約束的なものだがな。直接会ったことも無いのに口約束もおかしな話だけど」
中華を本当の意味で制圧するための密約。
お互いに漢人でないからこそ必要なことがある。
いや、そうすれば楽なことがある。
「ははっ! 既に済州島周辺に軍団を結集しております。ご指示をいただければ1日で上海の港まで押し寄せることが出来ます」
今や遅しと出撃の下知を待つ清正が吼える。
此処から済州島までが1日だから狼煙で指示を出し、2日で戦闘中の上海に辿り着く計算だ。
「では、日本丸をいつでも出向できるようにしておけ」
「ははっ! ・・・・・・しかし、陛下も行かれるので?」
三成あたりからは文句を言われそうだが・・・・・・。
「ああ。それにしばらくは済州島に滞在する。で、早いうちに上海。上手くいけば南京に――」
「陛下! 先ずは上海の事のみをお考えください」
お麟と共に軍師班で学ぶ者の一人で、その優秀さから今回俺付きの参謀として連れて行く事になっている湊井頼(創作人物、大坂の陣に出陣した湊惣左衛門と浅井井頼から命名)。
まだ俺と同じ18歳だが、非常に頭が良くお麟と並ぶ俊英だ。
まぁ、お麟は非常に特殊なこともあり、本来なら彼が最も優秀な男だ。
ひょろっと線の細い美丈夫で軍略や戦術面に特化した軍師タイプの男。
「井頼、大した備えのない上海など直ぐに落とせるのではないか?」
「はっ! 仰る通りですが、明自体は非常に強大な国です。攻めを焦ってはなりません」
「しかし、上海だけを手に入れても四方から攻められて結局は足がかりを無くしてしまうのではないか?」
あくまで上海は足がかりの地として攻め、そこから南京、そして北京へと進軍するものだと思っていた。
「先ず、上海というのは明の商工業の中心地であったからだったはずです。ここを押さえることで明の経済は大きく後退します。それにここを効率よく守ることでさらに大きな被害を与えることが出来ます。せっかく手に入れても奪い返されては意味がありません」
「しかし、だからこそ内陸に攻めあがるのだろう?」
上海だけを手に入れても守る手立てがない。
特に高い城壁があるわけでもなければ天然の要害というわけでもない。
「いいえ。それでは消耗戦になるだけにございます。私が提案いたしますのは上海の要塞化にございます」
「何を言っている? そんなものは敵が攻めてくる状況で出来る事ではない」
「はい。ですから陽動をかけます」
「・・・・・・と、言うと?」
「上海の陸上部隊による制圧後、敵の首都である北京に近い天津港、それに明軍の海軍が集結している青島、これらの港に停泊する船を棒火矢を使い敵射程外から攻撃します。そして、特に大型の船を目標に沈めるのです」
確かに、現状でも射程距離で圧倒的優位を保てる棒火矢は大量に生産されている。
また、棒火矢の貫通力を高めるために先端を鉄製にしたり、火薬の量を調節して爆発力を高めたり、殺傷性を高めるために中に小さな鉛の弾を込めたり、延焼性を高めるために油を込めたり、大型化したりとその種類も多様になってきている。
この遠征に合わせて多くの艦船も造られているので、それも可能かもしれない。
ちなみに新しい刀槍類はほとんど作られなくなっているのも確かだ。
そんな現状を武士たちは悲しんでいるが、それも時代の移り変わりなのだから仕方ない。
「三成達とは既に協議済みか?」
「ははっ! 上海の要塞化の時を稼ぐにはやむなしと、結論付けましてございます」
「では、その後について教えよ」
「はっ! 上海を要塞とし、棒火矢や新式銃による圧倒的射程を頼りに数年間守ります。そして、かねてより進めている南部の越族に侵攻させ、明の西部を攻撃させます」
「・・・・・・うむ。現状の明の支配に不満は大きく、力さえ示せばのってくるという話だったな?」
「はい。強大な明を攻めるにはやはり内部から崩壊させるのが一番でございます。幸いにも我が国は陛下の元に一枚に結束しておりますので、数年は散発的な襲撃で敵の経済を揺さぶるというのがよろしいかと思います。後は天災が起こればそれで一揆や内乱が起こりだすことでしょう」
「まぁ、な。下手に内陸にまで侵攻してしまえば騎馬の脅威にさらされる。極端な人海戦術を行われても脅威だ」
「はい、仰る通りです。ご承認いただけますか?」
「・・・・・・良いだろう。ただ、それを先の軍議でそれを言わなかったのは、先日届いたヌルハチの援軍要請が原因か?」
「ははっ!」
つい三日前に届いた書状では明軍が40万を号した軍で進軍してきているので助けが欲しいとのことだった。
明への密偵の連絡では実際に金軍への進軍は9万程度。
3万ずつで3軍に分かれ、北・西・南からそれぞれ進軍する予定とのことだ。
正史では東南から朝鮮軍を帯同した軍もあったが、当然朝鮮は日本が占領しているのでそのルートは潰されている。
「援軍には朝鮮から1万を派遣しようと思う」
「・・・・・・そうですな。金軍にも潰れてもらっては困ります。しかし、こちらが被害を受けるのも許容できません。狙撃隊を一隊派遣することにいたしましょう」
「ん? 金軍に狙撃隊を見せても良いのか?」
「我らは援軍です。明軍の一隊の背後を突くように動けば金軍に見られることもないでしょう」
・・・・・・そうか?
でも、監視の一人くらい付けられるんじゃないのか?
「良いか? ヌルハチとは密約がある。それが生きている限りヌルハチを殺させるわけにはいかないし、その密約を露見させるわけにはいかない」
「・・・・・・密約?」
井頼はその内容をまだ知らない。
知っているのはせいぜい三成と清正くらい。
「それについてはまだ言えない」
「ただの同盟とは別の、ということですね?」
「ま、ただの口約束的なものだがな。直接会ったことも無いのに口約束もおかしな話だけど」
中華を本当の意味で制圧するための密約。
お互いに漢人でないからこそ必要なことがある。
いや、そうすれば楽なことがある。
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