関白の息子!

アイム

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動き出す世界

鉄砲革命(エロ度☆☆☆☆☆)

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 ちゃんと整理してみると、お麟の兵器に対する知識は決して完璧なものではなかった。
 それでも俺とは違い大まかな構造は知っているのだが、具体的にこう作ると言う知識までは当然のごとく知らなかったのだ。

 まぁ、そもそも知っている方がおかしいのだが。

 とにかく、お麟が語った今と明治期の銃の違いは以下の通り。

 ①ライフリング。銃身に数本の螺旋条を掘ることで、ジャイロ効果で弾丸の直進性が一気に増し、長距離狙撃が可能となる。

 ②管打式。火縄ではなく、雷管を用いた点火方式にすることで雨天での信頼性を高め、夜間に火縄の火で気付かれると言う愚を犯さないで良くなる。

 ③元込め。弾丸の供給が元込めとなり、連射性が飛躍的に向上する。

 ④弾丸。金属カートリッジで覆われ、今の弾薬と弾丸に別れる方式からすると、圧倒的に弾込めが容易になる。また、どんぐり型の弾丸には数本の溝とそこに油脂が塗られることで、銃身の清掃を不要とし、更に連射性を高めることが出来る。

 ⑤ボルトアクションによる装填。弾倉を開き、空薬莢を排し、弾丸を装填することで弾込めを必要とせずに連発可能。

 ⑥規格の統一。同じ弾薬を使用できることで運用性が大幅に増す。

 ⑦無煙火薬の採用。今の黒色火薬は弾幕を張った際に多量の煙が出、これにより視界が遮られて指揮が乱れると言う問題を解決したもの。

 ⑧鎧の廃止。銃自体の変化ではないが、弾丸の貫通性が増したことで鎧の意義が低くなり、廃止。これにより武装重量が圧倒的に軽くなる。

 なんでも、「軍で正式採用された村田銃と言う銃と戦国時代の火縄銃ってどう違うの?」と米内閣下に質問したことがあったらしい。
 
 ・・・・・・米内閣下は一体遊女に何を教えているんだ?

「ちなみにガトリング砲の基本的な構造も教えていただきました」
「そ、そう」

 聞けばなんでも教えるのかい!

「ですが、今の時代ではたしてどれだけの事が出来るか・・・・・・。せめて製鉄技術の進展や蒸気機関を始めとする燃焼機関の開発が進み、工業生産が可能になれば」
「ん、まぁ、目標を打ち立てておくだけでもだいぶ違うさ。欲張っても仕方がないし、先ずはライフリングと管打式への変更だな。射程距離の延長と火縄の弱点の解消は優先すべき課題だ」
「陛下、管打ち式への変更は時間をかければ可能でございましょう。他の国では火縄を使う方が珍しい程ですから。ですが、ライフリングに関しては一先ず量産を目指すのではなく、小隊を編成できる程度の量で良いので、出来るだけ性能の良い銃を造ることを心掛けた方が良いと思うのですが」
「何でだ?」
「どちらにしても今の技術ではかなりの職人仕事になります。作れる職人も限られるなら、いっそ精度の高い少数生産に絞り、敵将を狙撃するだけの狙撃隊を編成するべきでしょう」

 ふむ。それにこの時代では確実にO-パーツになる銃だ。
 本数を絞って信頼できるものにだけ武装させるのが正しい使い方か。

「さらに遠眼鏡を付けて! くぅ、なんか燃えて来た!」
「それと弾をどんぐり形状に変更しましょう。そしてどんぐりの底部に溝を掘り、木片を取りつけることで最大射程は9丁ほどにもなります。それと、大砲も同様にした方がよろしいでしょう」
「え!? 大砲も?」
「・・・・・・陛下、大砲は鉄砲とさして構造の変わるものではありません」
「ハハ、ま、そりゃそうだよね。しっかり鍛冶師と相談し、出来る限りの事はさせるから」

 俺の2連装銃の時も開発に携わり、国内でも有数の鉄砲鍛冶と言われ、先の功績でお抱え鍛冶師となった国友藤兵衛に開発・研究を任せることとなった。
 ちなみに、俺の2連装銃はライフリングの登場により儚くも消え去る運命となった。






「どうだ藤兵衛出来そうか?」

 お麟と共に蒸し暑い城に併設された鍛冶部屋を訪問すれば、早速藤兵衛が頭をひねっていた。
 まぁ、実物も無ければ作り方も分からない、まして聞いたことも無い物を絵だけ渡されて作れと言うのだから、出来ると答える者の方がどうかしている。
 ただ、銃はともかく、刀剣の鍛冶のレベルはこの時代では世界最高レベルを誇る日本。
 なんとかならないだろうか?

「・・・・・・仰られた弾丸と管打ちにつきましては目途がつきました。これはさほど難しくありません。ですが、この施条しじょう(ライフリングのこと)と言うものを付けることについてはほとほと困り果てております」
「やっぱりか」
「はい、この作図の指示によれば、同じ周期で同じ幅の溝を螺旋状に付けるということですが、木ならまだしもそれを鉄の銃身の、それも内側に付けると言うのは・・・・・・」
「まぁ、そうだよな。う~ん・・・・・・て、言うか、銃身ってどうやって作るの?」

 はっきり言えばそこから分からない。

「私も知りたいです!」

 お麟も当然そんな事は知らないので、興味津々と言った感じで覗いている。
 目をキラキラと輝かせるその姿を見て、米内閣下が遊女になぜこんな不要なことを教えたのかが何だか分かってしまった。

「こ、この姫様は?」
「ん? 姫じゃないな。まぁ、未来の俺の軍師候補だ。とんでもなく頭が良くてな、実は今回の指示もこのお麟の発案なんだ」
「・・・・・・は? こ、この赤子の、ですか?」

 そりゃ4歳児が武器に注文付けてきたと言われれば驚くだろう。
 とは言え、それはどれだけ言っても信じられないだろうから今は無視しよう。

「そんな事よりどうやって作るのか教えてよ」
「ははっ! 先ず、この瓦金(鉄板)を打ち鍛え、芯棒を入れて筒状にします」

 ちょうど後ろで弟子たちが作っていたのでそれを手に取って見せてくれる。

「この状態で、巻き板(幅の狭い鉄板)を巻いていき、銃身を補強していきます。通常は2回巻いたところで終わりにございます。そして、これに火皿を付け、銃身の完成と相成ります」
「す、凄いです!」

 キラキラと瞳を輝かせたままでお麟が感嘆の声を上げる。

「お麟、喜んでないで施条の付け方に何か方策は?」
「はっ!? す、すいません。・・・・・・えっと、その芯棒に初めに巻き板をつけることは可能ですか?」
「む? それは勿論できるが」
「では、巻き板をもっと幅を狭く薄くして、芯棒に6枚巻いてください。そしてその巻き板と巻き板の間に細い縄を挟み、同様にして作った後に取り払うと言う方法はいかがでしょう? もっとも接合を良くして頂くために瓦金は良く熱していただく必要がありますので、その時に縄は燃えてしまうかもしれませんが」
「・・・・・・陛下、この娘は一体?」
「だから、言っただろう?」

 とにかく、これで一つ目途がついたと言うものだ。
 藤兵衛の腕なら1週間もかからずに出来上がるかもしれない。

「これで戦の形が変わるな、お麟!」

 だが、横のお麟に声をかけると、そこにはいたはずのお麟の姿はない。
 早速とばかりに巻き板を薄く引き延ばす藤兵衛の傍で変わらずに目を輝かせながらその作業を見学している。

 ・・・・・・いや、良いけどさ。


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