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21.ついに出される判決のとき
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出された結論を聞くのが怖い。
心臓は勝手にバクバクと激しく脈打ち、手のひらにはじっとりと汗がにじむ。
こうべを垂れて判決のときを待つ囚人のような気持ちで、学校責任者からの言葉を待つ。
「我々は、君を………引きつづき臨時講師として雇うことに決めたよ」
「はい、承知しまし……えっ?」
てっきり、『本日この場をもってクビにする』と言われるとばかり思っていた。
どういうことだ?!
「正直、前例のないことだけに、怖さというのもある。だが君が来てからというもの、あのクラスの生徒たちの成長には目をみはるものがあってだな……」
責任者いわく、どうやらあのクラスは優秀ではあるものの、問題児ばかりが集うクラスであったらしい。
筋はいいのに、人の話を聞かずに勝手に暴走しがちなガウディオをはじめ、向上心はあるものの、とこか大人をバカにしたようなナタリア。
そんなクセの強い生徒たちが、軒並みおとなしくなったのだという。
もちろん実力も増した上で、だ。
「さすがはシェイラの弟くん、というところだな」
「まぁ、それもふくめて、決め手はシェイラ殿からの説得だったのだが……」
うんうんとうなずく王様に、学校責任者までもが同調する。
「───せっかくのお言葉ですが、今代魔王のシエルは決してあなどってはならない実力の持ち主です!生徒たちを危険にさらすことになるのではっ!?」
学校に残れることをうれしいと思うより、その心配が先立った。
「それについてはね、あんたを下手にこの学校から放逐して、見えないところで魔王にさらわれた上に闇落ちなんてされても困るのよ!あんたが敵にまわったら、人類は滅びるしかないでしょうが!それに、今代魔王は思った以上に紳士なようだし?」
姉貴が主張するのは、昨日オレが考えていたことを見透かしたものだ。
もしここをクビになったら、冒険者としてダンジョンに引きこもろうというアレだ。
シエルから逃げるならたしかにダンジョンは有効ではあるものの、そうは言っても持ち込めるものにはかぎりがあるわけで、一生をそこですごすわけにはいかない。
ましてオレは、ソロ冒険者だ。
どこへ行くにも制約はなく、ついでに言えばどこでさらわれようが、目撃者すらいない状況にだってなりかねないわけだ。
姉貴の懸念はもっともだった。
でも『紳士なようだ』とは、なにを知っているんだろうか?
いや、そりゃオレが前からシエルの話を姉貴にしてたことはあったかもしれないけど、それだけで信用するとは思えないんだが……?
オレの疑問は、やはり顔に出ていたらしい。
こちらに向かってにっこりと笑いかけてきた姉貴に、瞬間的に背すじにゾッとしたものが走る。
おい、なんか嫌な予感しかしないんだけど?!
「だってそれは、明白じゃない?」
小首をかしげた姉貴がオレの向かいに立つなり、こちらの襟首をつかんできた。
まるでこちらに詰めより、つるし上げるようなポーズだと思った瞬間。
ビリィッ!!
「なっ!?」
遠慮のない力を込めて、思いっきりシャツを破かれた。
その衝撃にはじけ飛び、ほうぼうに散らばるボタンと、首もとをこする布地による痛みに顔をしかめる。
「これが答えよ!」
「だからなにが?!」
とたんに前が開き、昨日シエルによってつけられた紅い痕がいくつも視界に飛び込んできた。
「ほらこれ、あんたにこんだけいっぱいの痕をつけるほどに執着してる子が、『大いなる愛』なんていうエロ魔法かけたあとを考えたら、ふつうはこうしてシャツの1枚や2枚、破くもんでしょうが!!」
ドヤ顔で言ってのける姉貴に、かえす言葉も見つからなかった。
───いったいコイツは、なにが言いたいんだよ!?
心臓は勝手にバクバクと激しく脈打ち、手のひらにはじっとりと汗がにじむ。
こうべを垂れて判決のときを待つ囚人のような気持ちで、学校責任者からの言葉を待つ。
「我々は、君を………引きつづき臨時講師として雇うことに決めたよ」
「はい、承知しまし……えっ?」
てっきり、『本日この場をもってクビにする』と言われるとばかり思っていた。
どういうことだ?!
「正直、前例のないことだけに、怖さというのもある。だが君が来てからというもの、あのクラスの生徒たちの成長には目をみはるものがあってだな……」
責任者いわく、どうやらあのクラスは優秀ではあるものの、問題児ばかりが集うクラスであったらしい。
筋はいいのに、人の話を聞かずに勝手に暴走しがちなガウディオをはじめ、向上心はあるものの、とこか大人をバカにしたようなナタリア。
そんなクセの強い生徒たちが、軒並みおとなしくなったのだという。
もちろん実力も増した上で、だ。
「さすがはシェイラの弟くん、というところだな」
「まぁ、それもふくめて、決め手はシェイラ殿からの説得だったのだが……」
うんうんとうなずく王様に、学校責任者までもが同調する。
「───せっかくのお言葉ですが、今代魔王のシエルは決してあなどってはならない実力の持ち主です!生徒たちを危険にさらすことになるのではっ!?」
学校に残れることをうれしいと思うより、その心配が先立った。
「それについてはね、あんたを下手にこの学校から放逐して、見えないところで魔王にさらわれた上に闇落ちなんてされても困るのよ!あんたが敵にまわったら、人類は滅びるしかないでしょうが!それに、今代魔王は思った以上に紳士なようだし?」
姉貴が主張するのは、昨日オレが考えていたことを見透かしたものだ。
もしここをクビになったら、冒険者としてダンジョンに引きこもろうというアレだ。
シエルから逃げるならたしかにダンジョンは有効ではあるものの、そうは言っても持ち込めるものにはかぎりがあるわけで、一生をそこですごすわけにはいかない。
ましてオレは、ソロ冒険者だ。
どこへ行くにも制約はなく、ついでに言えばどこでさらわれようが、目撃者すらいない状況にだってなりかねないわけだ。
姉貴の懸念はもっともだった。
でも『紳士なようだ』とは、なにを知っているんだろうか?
いや、そりゃオレが前からシエルの話を姉貴にしてたことはあったかもしれないけど、それだけで信用するとは思えないんだが……?
オレの疑問は、やはり顔に出ていたらしい。
こちらに向かってにっこりと笑いかけてきた姉貴に、瞬間的に背すじにゾッとしたものが走る。
おい、なんか嫌な予感しかしないんだけど?!
「だってそれは、明白じゃない?」
小首をかしげた姉貴がオレの向かいに立つなり、こちらの襟首をつかんできた。
まるでこちらに詰めより、つるし上げるようなポーズだと思った瞬間。
ビリィッ!!
「なっ!?」
遠慮のない力を込めて、思いっきりシャツを破かれた。
その衝撃にはじけ飛び、ほうぼうに散らばるボタンと、首もとをこする布地による痛みに顔をしかめる。
「これが答えよ!」
「だからなにが?!」
とたんに前が開き、昨日シエルによってつけられた紅い痕がいくつも視界に飛び込んできた。
「ほらこれ、あんたにこんだけいっぱいの痕をつけるほどに執着してる子が、『大いなる愛』なんていうエロ魔法かけたあとを考えたら、ふつうはこうしてシャツの1枚や2枚、破くもんでしょうが!!」
ドヤ顔で言ってのける姉貴に、かえす言葉も見つからなかった。
───いったいコイツは、なにが言いたいんだよ!?
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