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20.騒動の後始末がはじまる

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 それにしても、オレからはなんて報告したらいいんだろうか?
 一応シエルからは襲われかかったものの、辛くも逃げ出せたわけで、結果だけ見たら無事だったということになる。

 とはいえ、魔王が愛するものへとかけるという固有魔法『大いなる愛グランデアモーレ』なるものを、シエルからかけられたのは事実だ。
 それは身も心も魔王に捧げれば、所有印がからだに浮かびあがるものらしい。

 あのときのシエルはオレの心を先に欲していたからこそ、まずは精神支配の魔法をかけてきて、そして先にかけられていた姉貴の『絶対服従の呪い』のおかげでそれをはじけたわけだけど。
 でもそれは、その順番だったからこそヤられずに済んだだけで、『既成事実だけでも先に』なんて言って襲われていたら抵抗できていなかったかもしれない。

 だってあのときは、やたらとからだが熱くって軽く相手の指先が触れてくるだけでも、ゾクゾクと腰から背中に甘いシビレのようなものが走っていた。
 あれがまた再現されることになったなら、次は抵抗できるか不安になる。

 そう思うと今回のことは、シエルが紳士的なヤツだから、偶然オレは助かったと言えなくもないわけだ。
 強引にからだを暴くより、まずは心からっていう。
 そんなことをツラツラと考えていたら、横から姉貴が声をかけてきた。

「正直、あのエロ魔法を人が受けたって話は聞かないから、あんたにどれだけ影響がでるかはわからない。でも、アタシが先にかけてるヤツを解かないかぎりは、精神支配系の魔法も効かないから、それだけは安心なさい」
 たしかに姉貴ほどの腕前なら、魔王といえども代わりに呪いを解くこともできなさそうだし、最後のとりでにはなるのかもしれないけれど。

「所有印があらわれる条件は、『魔王にたいして身も心も捧げること』だから、仮にヤられたとしても心をしっかりと持ってれば、平気ってことよ!」
 ───なにそれ、全然なぐさめになってない!

「はぁ?!なんでオレがヤられる前提なんだよ!?」
「だって男は下半身で物を考えるイキモノなのよ?!快楽には弱いに決まってるでしょうが!」
「なんなんだよ、その偏見はっ!?」

 イタタタ……なんか、めちゃくちゃあたまが痛くなってきた。
 昔から突飛なことを言い出す姉貴だったけど、ここにきて、さらにおかしくなっている気がする。

「……というのは、冗談だとして。ひとまず今日はアタシたちも家に帰りましょ?王様もここの責任者の人も、それは許可してくれてるわ」
「あぁ、そうだな……」
 ため息とともに同意を示すと、ドッと疲れが増した気がした。


     * * *


 明けて翌日、オレは姉貴とともに王宮へと呼び出されていた。
 その場には王様とその側近、そして勇者学校の現場責任者だけが同席していた。
 まるで、最初に勇者学校の臨時講師を拝命したときみたいだ───あのときとはちがって、さすがにオレは簀巻きにはされていなかったけど。

「うむ、リアルトよ。まずは無事であったようで、なによりである」
「本当に、最初に生徒たちから報告を受けたときは、どうしたものかと真っ青になりましたよ」
「ご心配をおかけしてしまい、申し訳ございません」
 王様と、学校の責任者から口々に話しかけられ、あたまを深くさげてその心配に謝罪を述べる。

「シェイラからは、今代魔王の執着をその身に向けられていると聞いておるが、それにまちがいはないか?」
「……はい、相違ございません」
 威厳たっぷりな声で問いかけられれば、それがどれだけ羞恥を感じることといえど、肯定するしかなかった。

「我々はシェイラ殿から昨晩報告を受け、君の処遇について話し合ったんだが、ようやく今朝方、その結論が出てね……」
 勇者学校の責任者が、そこでいったん言葉を切った。

 いよいよか、オレのクビが言い渡されるのも。
 わかってはいたことなのに、それを前にしたら、心臓は勝手に痛みを訴えてきやがる。
 せめて無様にふるえることがないようにしようと、オレはグッと奥歯を噛みしめた。
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