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5.イケショタ魔王があらわれた!
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「ふぅん、ちょっと前まではダンジョンに引きこもって雲隠れしてたと思ったら、今度はこんな子どもたちの面倒を見ていたんだね?君に会いたいのに会えなかった、僕にたいする当てつけかな?」
スッと己のくちびるを指先でなぞりながら、あらわれた今代の魔王、シエルが言う。
「てめぇ、なにしに来たんだよ!?」
本来魔王というものは、めったに人前に姿をあらわさないものだ。
だからこそ、勇者一行なんてものを仕立てて、魔王の住む城まで討伐に出なきゃいけないくらいなんだし。
だけど、いくらここが森の奥深くとはいえ、こんなにも大勢の人の前に堂々と姿を見せるなんて、いったいどういう風の吹きまわしだろうか?
そこが読めなくて、目の前の魔王をじっと見つめる。
目の前にあらわれたシエルは、まだ10歳にも満たないくらいの幼い少年の姿をしていた。
それも『奇跡の美少年』と言っても過言ではないくらいにととのった顔立ちで、真っ白い肌と髪に、瞳の金色だけがやけに光って見える。
「好きなものに会いに来るのに、理由なんているのかい?」
そんな美少年の姿をした魔王は、スッと目の前に降り立つとオレの手を取り、その甲に音を立ててキスをする。
とたんに周囲から、ざわめきが聞こえてくる。
そりゃそうか、魔王があらわれたと思ったら、ガキの姿をしているし、あげくの果てにはオレなんかを口説いてやがる。
クソ、こいつのこういう仕草は、やけに紳士的なんだよな!
宮廷で見かけるような、貴族そのものというか。
だからといって、この事態が解決するわけでもなんでもないんだけど。
「ふざけんなっ!」
「おや、愛しの君はご機嫌ななめなのかな?」
無理やり手をふり払えば、シエルはかすかに首をかしげ、ほほえみを浮かべる。
その態度は、こっちが雑な対応をしているというのにあいもかわらず紳士的で、いっそ見た目の年齢なんて気にならなくなるくらい、カッコいいものではあった。
実際にシエルは、魔王なんていう呼び名から推測するより、はるかにおだやかで心が広い。
今日だって、本当にオレと遊び(という名の殺し合い)をしに来ただけかもしれないし、たんなる気まぐれの散歩かもしれない。
でも正直な話、楽観視はできなかった。
だって、今のオレたちの置かれている状況は、かなり致命的なものだ。
片や、オレと互角かそれ以上の力を持つ魔王。
片や、いまだに訓練中の、足手まといな子どもたちを大量に引き連れたオレ。
しかもよりによってその連れは、勇者学校の生徒───つまり魔王を倒すために必死に鍛えている最中の生徒たちだ。
シエルにしてみれば、今はまだなんの支障にもならない相手とはいえ、いずれはジャマな存在になるかもしれない勇者の候補生ってわけだ。
ふつうに考えたら、見逃せるはずがない。
そう考えたら、臨時とはいえ講師の立場にあるオレが、どうしたって守らなきゃいけないことになるのは明白だった。
ましてチラリとふりかえって見た彼らは、シエルの放つ魔力の濃さに、腰を抜かしかねないいきおいでおびえていたし。
「……無理を承知でお願いするが、こいつらを見逃しちゃくれないか?」
「うん?別にかまわないよ?羽虫が何匹いようと、消すなら一瞬でできるからね」
ダメもとで頼んでみれば、意外にもそれはあっさりと許可された。
「ただし、君が遊んでくれるなら……だけど!」
「っ!!」
バチンッ!!
嫌な予感に突き動かされるようにして、とっさに張った障壁に、重たい魔力の波がぶつかる音が響いた。
スッと己のくちびるを指先でなぞりながら、あらわれた今代の魔王、シエルが言う。
「てめぇ、なにしに来たんだよ!?」
本来魔王というものは、めったに人前に姿をあらわさないものだ。
だからこそ、勇者一行なんてものを仕立てて、魔王の住む城まで討伐に出なきゃいけないくらいなんだし。
だけど、いくらここが森の奥深くとはいえ、こんなにも大勢の人の前に堂々と姿を見せるなんて、いったいどういう風の吹きまわしだろうか?
そこが読めなくて、目の前の魔王をじっと見つめる。
目の前にあらわれたシエルは、まだ10歳にも満たないくらいの幼い少年の姿をしていた。
それも『奇跡の美少年』と言っても過言ではないくらいにととのった顔立ちで、真っ白い肌と髪に、瞳の金色だけがやけに光って見える。
「好きなものに会いに来るのに、理由なんているのかい?」
そんな美少年の姿をした魔王は、スッと目の前に降り立つとオレの手を取り、その甲に音を立ててキスをする。
とたんに周囲から、ざわめきが聞こえてくる。
そりゃそうか、魔王があらわれたと思ったら、ガキの姿をしているし、あげくの果てにはオレなんかを口説いてやがる。
クソ、こいつのこういう仕草は、やけに紳士的なんだよな!
宮廷で見かけるような、貴族そのものというか。
だからといって、この事態が解決するわけでもなんでもないんだけど。
「ふざけんなっ!」
「おや、愛しの君はご機嫌ななめなのかな?」
無理やり手をふり払えば、シエルはかすかに首をかしげ、ほほえみを浮かべる。
その態度は、こっちが雑な対応をしているというのにあいもかわらず紳士的で、いっそ見た目の年齢なんて気にならなくなるくらい、カッコいいものではあった。
実際にシエルは、魔王なんていう呼び名から推測するより、はるかにおだやかで心が広い。
今日だって、本当にオレと遊び(という名の殺し合い)をしに来ただけかもしれないし、たんなる気まぐれの散歩かもしれない。
でも正直な話、楽観視はできなかった。
だって、今のオレたちの置かれている状況は、かなり致命的なものだ。
片や、オレと互角かそれ以上の力を持つ魔王。
片や、いまだに訓練中の、足手まといな子どもたちを大量に引き連れたオレ。
しかもよりによってその連れは、勇者学校の生徒───つまり魔王を倒すために必死に鍛えている最中の生徒たちだ。
シエルにしてみれば、今はまだなんの支障にもならない相手とはいえ、いずれはジャマな存在になるかもしれない勇者の候補生ってわけだ。
ふつうに考えたら、見逃せるはずがない。
そう考えたら、臨時とはいえ講師の立場にあるオレが、どうしたって守らなきゃいけないことになるのは明白だった。
ましてチラリとふりかえって見た彼らは、シエルの放つ魔力の濃さに、腰を抜かしかねないいきおいでおびえていたし。
「……無理を承知でお願いするが、こいつらを見逃しちゃくれないか?」
「うん?別にかまわないよ?羽虫が何匹いようと、消すなら一瞬でできるからね」
ダメもとで頼んでみれば、意外にもそれはあっさりと許可された。
「ただし、君が遊んでくれるなら……だけど!」
「っ!!」
バチンッ!!
嫌な予感に突き動かされるようにして、とっさに張った障壁に、重たい魔力の波がぶつかる音が響いた。
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