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3.不名誉なあだ名がつけられた
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「おはよー、ぼっちセンセ!」
「だれが『ぼっちセンセ』だ!」
「えー、だって本当のことじゃん。いっしょに冒険する仲間もいない、ぼっちなんだろ?」
そう言って笑う男子生徒に、一瞬本気の殺意が芽生えそうになったのは言うまでもない。
いいか、それはソロ冒険者というヤツであって、決してぼっちなんかじゃない!
オレの場合はひとりでなんでもこなせるから、あえてほかの役割のヤツがいらなかっただけなんだからな?!
……ただ、大変不本意なことに初日のあいさつ以降、この不名誉極まりないあだ名がクラス内で定着してしまっていた。
ちなみに今オレに声をかけてきたのは、ガウディオという剣士の少年だ。
このクラスのなかでは、比較的有能なほうではある。
性格は明るい、というか人懐っこくて、いかにも勇者学校の生徒にふさわしいタイプだった。
オレの見立てによれば、彼がこのクラスの中心人物であることはまちがいないだろう。
だからこそ、こうしてオレがバカにされているせいで、クラス中の生徒たちまでもがそれをまねするようになってしまっていたんだけども。
「で、ぼっちセンセ、今日はなにを教えてくれんの?」
「だから!ぼっちじゃねぇ!────まぁいい、とりあえず今日は属性付与の練習するぞ」
キラキラとした瞳でこちらを見てくるガウディオにひとつため息をつくと、無造作に片手を振って属性持ちのゴーレムを何体も作り出す。
ゴーレム自体は、非常に防御力の高い人工モンスターだ。
ただ武器で攻撃をしたところで、なかなか致命的なダメージをあたえることはできないけれど、その核となっている契印を傷つけることさえできれば、簡単に倒せるヤツでもあるわけで。
その対策に関しては、たとえばスピードをあげる魔法、攻撃力を底上げする魔法、それを受けた剣士や拳闘士がどうやって戦えばいいのか、その連携方法についてもすでに反復練習と実戦形式で学ばせていた。
だから今日の授業は、その技にバリエーションを増やすための属性付与の方法を学ばせるのが目的だ。
属性別の弱点については、すでに彼らは過去に別の講師から学んできているわけで、それを生かす方法を身につけろという趣旨だった。
「じゃ、死ぬなよー!行け、ゴーレムたち!!」
「「「ウソだろーっ?!!」」」
生徒たちの阿鼻叫喚を背景に、オレの作ったゴーレムたちが一斉に暴れだす。
その叫び声を聞きながら、オレは収納魔法から取り出したテーブルセットで優雅に紅茶をすすって様子を見守る。
あのゴーレムたちは、生徒たちがギリギリで死なないくらいに出力を調整してあるから、決して死ぬようなことにはならないはずだけど、危機感を持たせたほうがいいからと思い、そのことは黙っておく。
たぶん、うちの生徒たちは学生気分が抜けないまま『学校で死ぬようなことはないだろう』なんていう、まだ甘い考えを持っている。
だからそれをあらかじめつぶしてやるのも、臨時とはいえ講師の務めだろうと思う。
なにしろこの学校を出たら、モンスターは相手が百戦錬磨のベテランなのか、それとも学校を卒業したての新人なのかなんて、絶対に斟酌してくれないからな。
そこから先は、すべて自己責任の世界だ。
そういうオレなりのやさしさがつまった授業なわけであって、決してぼっちあつかいをされて怒ったわけじゃない。
オレの心は、そんなに狭くないからな?!
でもこの日をきっかけに『ぼっちセンセの授業はスパルタだ』だとか、『ぼっちセンセの正体は悪魔だ』なんて言われることになるのは、正直想定外だったけども。
クソ、やっぱり子どもなんて大っ嫌いだーー!!
「だれが『ぼっちセンセ』だ!」
「えー、だって本当のことじゃん。いっしょに冒険する仲間もいない、ぼっちなんだろ?」
そう言って笑う男子生徒に、一瞬本気の殺意が芽生えそうになったのは言うまでもない。
いいか、それはソロ冒険者というヤツであって、決してぼっちなんかじゃない!
オレの場合はひとりでなんでもこなせるから、あえてほかの役割のヤツがいらなかっただけなんだからな?!
……ただ、大変不本意なことに初日のあいさつ以降、この不名誉極まりないあだ名がクラス内で定着してしまっていた。
ちなみに今オレに声をかけてきたのは、ガウディオという剣士の少年だ。
このクラスのなかでは、比較的有能なほうではある。
性格は明るい、というか人懐っこくて、いかにも勇者学校の生徒にふさわしいタイプだった。
オレの見立てによれば、彼がこのクラスの中心人物であることはまちがいないだろう。
だからこそ、こうしてオレがバカにされているせいで、クラス中の生徒たちまでもがそれをまねするようになってしまっていたんだけども。
「で、ぼっちセンセ、今日はなにを教えてくれんの?」
「だから!ぼっちじゃねぇ!────まぁいい、とりあえず今日は属性付与の練習するぞ」
キラキラとした瞳でこちらを見てくるガウディオにひとつため息をつくと、無造作に片手を振って属性持ちのゴーレムを何体も作り出す。
ゴーレム自体は、非常に防御力の高い人工モンスターだ。
ただ武器で攻撃をしたところで、なかなか致命的なダメージをあたえることはできないけれど、その核となっている契印を傷つけることさえできれば、簡単に倒せるヤツでもあるわけで。
その対策に関しては、たとえばスピードをあげる魔法、攻撃力を底上げする魔法、それを受けた剣士や拳闘士がどうやって戦えばいいのか、その連携方法についてもすでに反復練習と実戦形式で学ばせていた。
だから今日の授業は、その技にバリエーションを増やすための属性付与の方法を学ばせるのが目的だ。
属性別の弱点については、すでに彼らは過去に別の講師から学んできているわけで、それを生かす方法を身につけろという趣旨だった。
「じゃ、死ぬなよー!行け、ゴーレムたち!!」
「「「ウソだろーっ?!!」」」
生徒たちの阿鼻叫喚を背景に、オレの作ったゴーレムたちが一斉に暴れだす。
その叫び声を聞きながら、オレは収納魔法から取り出したテーブルセットで優雅に紅茶をすすって様子を見守る。
あのゴーレムたちは、生徒たちがギリギリで死なないくらいに出力を調整してあるから、決して死ぬようなことにはならないはずだけど、危機感を持たせたほうがいいからと思い、そのことは黙っておく。
たぶん、うちの生徒たちは学生気分が抜けないまま『学校で死ぬようなことはないだろう』なんていう、まだ甘い考えを持っている。
だからそれをあらかじめつぶしてやるのも、臨時とはいえ講師の務めだろうと思う。
なにしろこの学校を出たら、モンスターは相手が百戦錬磨のベテランなのか、それとも学校を卒業したての新人なのかなんて、絶対に斟酌してくれないからな。
そこから先は、すべて自己責任の世界だ。
そういうオレなりのやさしさがつまった授業なわけであって、決してぼっちあつかいをされて怒ったわけじゃない。
オレの心は、そんなに狭くないからな?!
でもこの日をきっかけに『ぼっちセンセの授業はスパルタだ』だとか、『ぼっちセンセの正体は悪魔だ』なんて言われることになるのは、正直想定外だったけども。
クソ、やっぱり子どもなんて大っ嫌いだーー!!
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