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1.きっかけはいつでも横暴な姉上様

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「おぼえてるよね、アルト?あんたはこのアタシに、絶対に逆らえないってこと」
 それは遠い昔、我が無慈悲なる姉上様に宣告されたことだったけど。

 納得いかない、いったいオレが何をしたって言うんだ!?
 たしかに最近は、新しく見つけたダンジョン攻略がおもしろすぎて、実家に帰ってなかったけれど。

 でもまさか、帰るなり自分の姉にコブシで黙らせられ(物理)、意識のないうちに問答無用で王宮に連れていかれるとか、だれが想像するよ?
 これって立派な誘拐だからな?!
 事案だ、事案。

 そんなわけでただ今のオレ、簀巻きにされたまま放り出された王様の前。
 もちろん、うちの国の王様だよ!
 こんな状態じゃ、あたりまえだけど敬意を払うことすらできないだろうが!

「してシェイラよ、そやつがそなたの言う『心当たり』なのか?」
「はいっ、こちらが我が愚弟のリアルトでございます!基本的にダンジョンに引きこもりがちではありますが、だからこそ年齢のわりに現場経験は豊富でして、今回お求めの人材には最適かと」
 王様からの問いかけに、シェイラと呼ばれたうちの横暴姉貴がうやうやしくこたえている。

 なんの話だよ、これ?
 まったく見えてこないそれに、不安しか感じないんですけども。

「よかろうシェイラ、我が国随一と言われるそなたの宮廷魔導師としての腕と目を信じよう」
「ははっ、身に余る光栄にございます!」
 ……だから、なんの話なんだよ??
 当人をおいてけぼりにして進んでいく話に、嫌な予感が募っていった。

「リアルトよ、本日をもってそなたを王立勇者学校の臨時講師として採用する。心して任に就くように」
「はっ………?え、えぇっ!?」
 威厳たっぷりに宣言され、とっさに返事をしそうになってしまったけど、冗談じゃない。

 だって、王立勇者学校の臨時講師だろ?!
 そんな魔王討伐を夢見る子どもたちを集めた素人集団の面倒を見るだなんて、まっぴらごめんだ。
 オレは自由を愛する冒険者であって、そんな固定の職に就くとか面倒すぎるし、そもそもオレは子どもが苦手なんだよ!

「アルト!王様に失礼でしょう!こんな名誉なこと、謹んでお引き受けなさい!」
「だれが……~~っ!いえ、かしこまりました。その務め、必ずや果たしてみせましょう」
 だれがそんなもの引き受けるもんか、そう言いたかったはずなのに、気がつけば口は勝手に動いてそんな調子のいいことをほざいていた。

「最初からそう言えばいいのよ、アルト。まさか忘れたわけじゃないわよね?あんたはこのアタシに、絶対に逆らえないってこと」
 ニヤリ、と音がしそうなほど悪辣な顔をした暴君姉貴は、いまだ縛られたまま床に転がるオレに向かってそう言い放って来たのだった。

 これはそんな、姉に虐げられているオレの話だ────。
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