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183:無自覚なれど破壊力は満点です?!
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リオン殿下とセブンによってもみくちゃにされているこの状況、別に不快ということもなく、むしろしあわせすら感じる状況ではあるんだけど。
でも教室内からふりそそぐ視線が痛くなってきたし、いいかげんやめてもらいたいなぁ、なんて思うんだけどな。
特に最初から俺をにらみつけていた女子生徒からの視線のするどさたるや、そこから放たれる殺気がビリビリと皮膚につきささってきて、もはや物理的な殺傷能力すら持ちそうなんだけど。
……つーか、怖っ!!
今だって目が合った瞬間に、盛大に舌打ちされたんだが?!
えっ、ご令嬢のすることか、それ?!
俺をにらみつけていた彼女はメガネをかけていて、生マジメそうな空気をまとっている、いわゆる委員長キャラっぽそうではあるものの、これと言って特徴的な容姿をしているわけではなかった。
失礼ながら顔は十人並みというか、やっぱりゲーム内で名前のあるキャラクターとはちがい、特別さはまったくない。
髪色にしたって、この世界ではよくある深緑色だし、おなじく瞳の色も同系色だ。
小柄なのもあいまって、そういう意味では、よくあるテンプレ地味系モブキャラのハズだったのに───なのに、やけに気になった。
「……………あまり気にするな」
なんて思っていたら、またもやさりげなく立ち位置を変えたセブンが殺気のこもった視線からかばってくれる。
「うん……セブン、ありがとな?」
お礼を言えば、かすかにくちびるに笑みを刷き、うなずいてくれた。
「っ!?」
なんだこの男前な表情は!
クソッ、カメラ!
カメラをくださいっ!!
だってうちの子のこんなスチル、フルコンプしたハズの『俺』ですら見たことないぞ?!
あーもう、天井知らずにセブンがどんどん男前になっていくんだけどー!!
ふいうちだったそれに、ジワリとほっぺたが熱くなる。
うぅっ、気まずい。
だって相手は攻略対象キャラクターのひとりとはいえ、『我が子』同然の存在なのに、めちゃくちゃときめきそうになったなんて。
なんというか、よけいに気まずかった。
セブンが敵意を持った相手の視線からかばってくれているとはいえ、さすがにそれ以外にも好嫌入りまじる周囲の目もあるわけで。
そういう意味でも、この状況はどうにも落ちつかなかった。
「……あの、ふたりともそろそろ離してもらえませんかね?その、はずかしいので……」
そもそも俺はただのモブ、人の視線にさらされるのになれてないんだってば。
おかげでもう、本当に顔が熱い。
「「んん〝っ!」」
ちらりとふたりの顔色をうかがえば、なぜかそろって急にせきばらいをされた。
心なしか、そのほっぺたが赤く見えるのは気のせいだろうか?
「まったく、これで自覚がないんだから困るな……」
「あきらめてください、リオン殿下。テイラーはこういうヤツなんで……」
心底困り果てたような顔でリオン殿下があたまをかかえるのに、横でもっともらしくセブンがうなずいている。
んんっ?
どういうことなんだよ、それ!?
俺の前でいきなり通じあっているふたりに、むしろこちらのほうがあたまをかかえたい気分というか。
「兄上も、これは心配だろうな……」
「えぇ、なので紫殿下がおられないときは、オレができるかぎりそばにいて守るという約束をしています」
「なるほど、それなら俺も協力しよう」
「ありがとうございます、それは大変心強いです」
あれぇ、またもやふたりだけで通じあってるんですが??
もう、本当に仲よくなったものだよなぁ、セブンとリオン殿下ってば。
まぁ話題にされてのは、俺のことなんだろうなってのは、さすがにわかるけど。
でもこれが、原作でふたりが心にかかえていたという孤独をやわらげることに少しでもつながっていたのなら、俺がふたりに心配をかけまくるポンコツ人間だったことにも、多少は意味があったのかな……?
これはこれで、なんとも複雑な思いにかられる。
そのときだ、ふいに廊下がさわがしくなった。
まるでパレルモ様が登校してきたときみたいなそのざわめきに、忘れかけていた大切なものを思い出す。
そうだよ、パレルモ様だ!
そもそも俺の記憶に残る直前の彼は、友人のベルが査問会で有罪判決を受けたことにショックを受けて、登校を拒否していたハズ。
まもなく始業のベルが鳴り響くであろうこの時間にも教室内に姿を見せていないということは、今日もまた登校してくれるのかわからない不安はあった。
どうしよう、今からでも寮の部屋まで迎えに行くべきか?
でも俺が迎えに行ったところで、すなおに登校してくれるとも思えないし……。
なによりこの時間に、ひとりで寮に行くのは、なんとなく危険な気もする。
───というか、そうだよ!
俺がひとりで行くのは危険ってことは、パレルモ様にしたって、めちゃくちゃ危険ってことじゃねーか!!
だってこの改変された世界でのパレルモ様は、目を離すとしょっちゅう暗がりに引きずり込まれ、モブレの危機に瀕するようなキャラクターになってるんだぞ?!
廊下のさわがしさを感じてからわずかの間にそこまで思い至り、一瞬にして血の気が引いていく。
想像されるのは、最悪の事態だ。
「どうした、テイラー?やっぱり顔色が悪いようだが、なんなら保健室に行くか?」
「俺のことより、パレルモ様は……っ!」
「あぁ、それなら問題ない。今朝はちゃんと来るさ」
「え……?」
こちらのほっぺたに手を添えて顔をのぞきこんでくるセブンに、あわてて不安を訴えようとすれば、間を空けずして妙に自信をにじませたセリフがかえってくる。
それっていったいどういうことなんだ───??
そんな俺の疑問は、直後に解消された。
「おはようさん!皆のアイドル、パレっちの登場だぜ!!」
「皆、おはよー!」
教室の入り口にあらわれたのはカイエンと、そして彼にお姫様抱っこをされた状態のパレルモ様だった。
でも教室内からふりそそぐ視線が痛くなってきたし、いいかげんやめてもらいたいなぁ、なんて思うんだけどな。
特に最初から俺をにらみつけていた女子生徒からの視線のするどさたるや、そこから放たれる殺気がビリビリと皮膚につきささってきて、もはや物理的な殺傷能力すら持ちそうなんだけど。
……つーか、怖っ!!
今だって目が合った瞬間に、盛大に舌打ちされたんだが?!
えっ、ご令嬢のすることか、それ?!
俺をにらみつけていた彼女はメガネをかけていて、生マジメそうな空気をまとっている、いわゆる委員長キャラっぽそうではあるものの、これと言って特徴的な容姿をしているわけではなかった。
失礼ながら顔は十人並みというか、やっぱりゲーム内で名前のあるキャラクターとはちがい、特別さはまったくない。
髪色にしたって、この世界ではよくある深緑色だし、おなじく瞳の色も同系色だ。
小柄なのもあいまって、そういう意味では、よくあるテンプレ地味系モブキャラのハズだったのに───なのに、やけに気になった。
「……………あまり気にするな」
なんて思っていたら、またもやさりげなく立ち位置を変えたセブンが殺気のこもった視線からかばってくれる。
「うん……セブン、ありがとな?」
お礼を言えば、かすかにくちびるに笑みを刷き、うなずいてくれた。
「っ!?」
なんだこの男前な表情は!
クソッ、カメラ!
カメラをくださいっ!!
だってうちの子のこんなスチル、フルコンプしたハズの『俺』ですら見たことないぞ?!
あーもう、天井知らずにセブンがどんどん男前になっていくんだけどー!!
ふいうちだったそれに、ジワリとほっぺたが熱くなる。
うぅっ、気まずい。
だって相手は攻略対象キャラクターのひとりとはいえ、『我が子』同然の存在なのに、めちゃくちゃときめきそうになったなんて。
なんというか、よけいに気まずかった。
セブンが敵意を持った相手の視線からかばってくれているとはいえ、さすがにそれ以外にも好嫌入りまじる周囲の目もあるわけで。
そういう意味でも、この状況はどうにも落ちつかなかった。
「……あの、ふたりともそろそろ離してもらえませんかね?その、はずかしいので……」
そもそも俺はただのモブ、人の視線にさらされるのになれてないんだってば。
おかげでもう、本当に顔が熱い。
「「んん〝っ!」」
ちらりとふたりの顔色をうかがえば、なぜかそろって急にせきばらいをされた。
心なしか、そのほっぺたが赤く見えるのは気のせいだろうか?
「まったく、これで自覚がないんだから困るな……」
「あきらめてください、リオン殿下。テイラーはこういうヤツなんで……」
心底困り果てたような顔でリオン殿下があたまをかかえるのに、横でもっともらしくセブンがうなずいている。
んんっ?
どういうことなんだよ、それ!?
俺の前でいきなり通じあっているふたりに、むしろこちらのほうがあたまをかかえたい気分というか。
「兄上も、これは心配だろうな……」
「えぇ、なので紫殿下がおられないときは、オレができるかぎりそばにいて守るという約束をしています」
「なるほど、それなら俺も協力しよう」
「ありがとうございます、それは大変心強いです」
あれぇ、またもやふたりだけで通じあってるんですが??
もう、本当に仲よくなったものだよなぁ、セブンとリオン殿下ってば。
まぁ話題にされてのは、俺のことなんだろうなってのは、さすがにわかるけど。
でもこれが、原作でふたりが心にかかえていたという孤独をやわらげることに少しでもつながっていたのなら、俺がふたりに心配をかけまくるポンコツ人間だったことにも、多少は意味があったのかな……?
これはこれで、なんとも複雑な思いにかられる。
そのときだ、ふいに廊下がさわがしくなった。
まるでパレルモ様が登校してきたときみたいなそのざわめきに、忘れかけていた大切なものを思い出す。
そうだよ、パレルモ様だ!
そもそも俺の記憶に残る直前の彼は、友人のベルが査問会で有罪判決を受けたことにショックを受けて、登校を拒否していたハズ。
まもなく始業のベルが鳴り響くであろうこの時間にも教室内に姿を見せていないということは、今日もまた登校してくれるのかわからない不安はあった。
どうしよう、今からでも寮の部屋まで迎えに行くべきか?
でも俺が迎えに行ったところで、すなおに登校してくれるとも思えないし……。
なによりこの時間に、ひとりで寮に行くのは、なんとなく危険な気もする。
───というか、そうだよ!
俺がひとりで行くのは危険ってことは、パレルモ様にしたって、めちゃくちゃ危険ってことじゃねーか!!
だってこの改変された世界でのパレルモ様は、目を離すとしょっちゅう暗がりに引きずり込まれ、モブレの危機に瀕するようなキャラクターになってるんだぞ?!
廊下のさわがしさを感じてからわずかの間にそこまで思い至り、一瞬にして血の気が引いていく。
想像されるのは、最悪の事態だ。
「どうした、テイラー?やっぱり顔色が悪いようだが、なんなら保健室に行くか?」
「俺のことより、パレルモ様は……っ!」
「あぁ、それなら問題ない。今朝はちゃんと来るさ」
「え……?」
こちらのほっぺたに手を添えて顔をのぞきこんでくるセブンに、あわてて不安を訴えようとすれば、間を空けずして妙に自信をにじませたセリフがかえってくる。
それっていったいどういうことなんだ───??
そんな俺の疑問は、直後に解消された。
「おはようさん!皆のアイドル、パレっちの登場だぜ!!」
「皆、おはよー!」
教室の入り口にあらわれたのはカイエンと、そして彼にお姫様抱っこをされた状態のパレルモ様だった。
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