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159:まるで呪文のようなヲタ語り
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そっか……そんなに『星華の刻』のこと、好きでいてくれてるんだ……。
本来ならクレセントはテイラーにとって、敵のひとりにちがいはないハズなのに、それでもこうして作品を好きだと言われると、なんだか無性にうれしくなってくる。
クリエイターにとっての作品に寄せられる感想は、どんな薬よりも効くんだよ!
しかもそれが、心から楽しんでくれているのがわかるなら、なおさらだ。
思わずこちらも、つられて笑顔がこぼれる。
「ありがとな?」
クレセントがこの世界に来てヤラカシたことは、個人的には容認したくないことではあったけれど、それでもこのゲームを『少しでも多くの人に楽しんでもらいたい』と心の底から願って作りあげた側の立場からすれば、こうして『星華の刻』が大好きだというファンの声を直接聞けるのは、やっぱりうれしかった。
「ちょっ……!テイラーの笑顔とか、マジでレアすぎない?!つーか今度は笑ったら清楚系のはにかみ笑顔とか、もはやあざとすぎるし、解釈ちがいここに極まれりでしょ!やっぱ総受け確定、ブチ犯案件だわ」
そんな俺にたいして、クレセントは目を大きく見開くと、大げさに声をあげた。
「えっ?!なにそれ、怖すぎるんですけどもっ!?てかクレセントは、パレルモ様総受け希望じゃなかったのか?なら、そもそも俺なんて眼中にないハズだろ!」
恐怖により一瞬にして鳥肌が立ったところで、必死に俺は関係なかろうと主張する。
でも。
「いやぁ、たしかにパレくん超かわいいし、小柄だからだれと組み合わせても体格差萌えになるのとか超イイじゃん!それにモブオジにエッチなことされちゃうピュアショタ受けから、『ひざまずいて足をなめろ』的な強気な女王受けまで、なんでもできるポテンシャルがあるんだから!!なによりペロさんの描くパレくん総受けは、シチュから関係性からすべてがドチャシコだから、大好物なんだけどさ」
かなりの早口で話すクレセントは、好きなものを語っているのがすぐにわかるくらいには、楽しげな表情をしている。
「でも元々僕は、ヒロインの総攻めハーレム展開が主食なんだよね。ペニバン女子攻めでもいいけど、どうせなら男体化させて、しかも女子みたいにかわいい顔に似合わない立派な凶悪なブツでガン掘りして、皆を完堕ちさせたいっていうのかな……つーか『星華の刻』の攻略キャラたちって、皆が皆かわいすぎて、基本的に受けにしたいくらいヒロイン力高くない?」
「えーと……???」
───どうしよう、なにを言っているのか、半分くらいしか理解できなかったんだが……?
いや、早口すぎて聞き取れなかったのもあるんだけど、それ以上に中身が特殊すぎる気が……。
「『なに言ってるかわからない』って顔してるね。自分の好みと合わないからって、僕の『好き』を否定するつもりなら、そのケンカ即金で買うけど?」
「いや……そんなつもりはないけどさ……」
鼻息も荒くコブシをにぎりしめるクレセントのいきおいに呑まれ、ポカンとしてしまう。
世のなかにはいろんな性癖の人がいて、それ自体は別になにも問題はない。
それに二次創作をしたくなるほど、だれかの心の琴線をかき鳴らすことができたというのも、スタッフのひとりとしては、よろこばしい以外のなにものでもないと思う。
そもそもクリエイターとしては、自らの作りあげた作品にたいして、反応をもらえることがすでにありがたく感じられることなのだから。
───まぁ、なかには大切に育てた我が子たちが、ただのエロ目的で適当に利用されているとしか思えなくて、悲しくなるものもあるけれど。
「~~~だからっ、その顔!!」
「ん?顔??」
俺の顔が、相手をバカにしてるみたいに見えたとか?
そんなつもりは断じてないから安心してほしい、なんて思ったのも一瞬のことだ。
「テイラーのクセに、庇護欲をかきたてるような困り顔とかしないでよ!!さっきから動きのひとつひとつにもムダに色気がふりまかれてるし、そんないかにも『抱かれましたけど?』みたいな匂いのする『メスお兄さん』なテイラーとか、致命的に解釈ちがいですぅ!!」
「えぇぇ??なんだよ、その『メスお兄さん』て!?」
なんだよそれ、マジでなにが言いたいのか、意味わかんねー!
「だいたい俺だって、こっちの世界に来てからは、いたってふつうにすごしてただけなんだぞ?なのにこんな展開になるとか、思ってもみなかったんだからな?!」
「カーッ!出た、『ボクなんかやっちゃいました?』系発言!!」
だけど説明されるどころか、よりいっそうわけがわからないことを言われる。
クレセントの言う『ボクなんかやっちゃいました?』というのは、いわゆるファンタジー系ラノベなんかでよく見られる無自覚にチート能力を発揮する主人公が、自分がいかにすごいことをしたのかと気づかないまま、あっけにとられる周囲にたいして言うセリフだ。
つまりは俺のこと、その世界での常識足らずの無自覚野郎って言いたいんだろ!
「言っとくけど、俺だってテイラーが各攻略キャラたちからモテるとか、解釈ちがいを起こしてるんだ!」
俺自身でもこの件に関しては、遺憾に思っているということだけは、しっかりと言わせてもらいたい。
「ふーん、でも口ではどうとでも言えるでしょ」
たいするクレセントは、先ほどまでとは一転して冷めた目でこちらを見つめてくる。
その態度には、まったくこちらに歩み寄る気配は見えなくて。
クソ、せっかくさっきまでは態度が軟化していたってのに!
なんとか相手を説得するための素地をととのえて、足がかりにしようとしていたってのにさ。
またもや一転して、ふたりの間に溝というか、氷の壁ができてしまった気分だった。
本来ならクレセントはテイラーにとって、敵のひとりにちがいはないハズなのに、それでもこうして作品を好きだと言われると、なんだか無性にうれしくなってくる。
クリエイターにとっての作品に寄せられる感想は、どんな薬よりも効くんだよ!
しかもそれが、心から楽しんでくれているのがわかるなら、なおさらだ。
思わずこちらも、つられて笑顔がこぼれる。
「ありがとな?」
クレセントがこの世界に来てヤラカシたことは、個人的には容認したくないことではあったけれど、それでもこのゲームを『少しでも多くの人に楽しんでもらいたい』と心の底から願って作りあげた側の立場からすれば、こうして『星華の刻』が大好きだというファンの声を直接聞けるのは、やっぱりうれしかった。
「ちょっ……!テイラーの笑顔とか、マジでレアすぎない?!つーか今度は笑ったら清楚系のはにかみ笑顔とか、もはやあざとすぎるし、解釈ちがいここに極まれりでしょ!やっぱ総受け確定、ブチ犯案件だわ」
そんな俺にたいして、クレセントは目を大きく見開くと、大げさに声をあげた。
「えっ?!なにそれ、怖すぎるんですけどもっ!?てかクレセントは、パレルモ様総受け希望じゃなかったのか?なら、そもそも俺なんて眼中にないハズだろ!」
恐怖により一瞬にして鳥肌が立ったところで、必死に俺は関係なかろうと主張する。
でも。
「いやぁ、たしかにパレくん超かわいいし、小柄だからだれと組み合わせても体格差萌えになるのとか超イイじゃん!それにモブオジにエッチなことされちゃうピュアショタ受けから、『ひざまずいて足をなめろ』的な強気な女王受けまで、なんでもできるポテンシャルがあるんだから!!なによりペロさんの描くパレくん総受けは、シチュから関係性からすべてがドチャシコだから、大好物なんだけどさ」
かなりの早口で話すクレセントは、好きなものを語っているのがすぐにわかるくらいには、楽しげな表情をしている。
「でも元々僕は、ヒロインの総攻めハーレム展開が主食なんだよね。ペニバン女子攻めでもいいけど、どうせなら男体化させて、しかも女子みたいにかわいい顔に似合わない立派な凶悪なブツでガン掘りして、皆を完堕ちさせたいっていうのかな……つーか『星華の刻』の攻略キャラたちって、皆が皆かわいすぎて、基本的に受けにしたいくらいヒロイン力高くない?」
「えーと……???」
───どうしよう、なにを言っているのか、半分くらいしか理解できなかったんだが……?
いや、早口すぎて聞き取れなかったのもあるんだけど、それ以上に中身が特殊すぎる気が……。
「『なに言ってるかわからない』って顔してるね。自分の好みと合わないからって、僕の『好き』を否定するつもりなら、そのケンカ即金で買うけど?」
「いや……そんなつもりはないけどさ……」
鼻息も荒くコブシをにぎりしめるクレセントのいきおいに呑まれ、ポカンとしてしまう。
世のなかにはいろんな性癖の人がいて、それ自体は別になにも問題はない。
それに二次創作をしたくなるほど、だれかの心の琴線をかき鳴らすことができたというのも、スタッフのひとりとしては、よろこばしい以外のなにものでもないと思う。
そもそもクリエイターとしては、自らの作りあげた作品にたいして、反応をもらえることがすでにありがたく感じられることなのだから。
───まぁ、なかには大切に育てた我が子たちが、ただのエロ目的で適当に利用されているとしか思えなくて、悲しくなるものもあるけれど。
「~~~だからっ、その顔!!」
「ん?顔??」
俺の顔が、相手をバカにしてるみたいに見えたとか?
そんなつもりは断じてないから安心してほしい、なんて思ったのも一瞬のことだ。
「テイラーのクセに、庇護欲をかきたてるような困り顔とかしないでよ!!さっきから動きのひとつひとつにもムダに色気がふりまかれてるし、そんないかにも『抱かれましたけど?』みたいな匂いのする『メスお兄さん』なテイラーとか、致命的に解釈ちがいですぅ!!」
「えぇぇ??なんだよ、その『メスお兄さん』て!?」
なんだよそれ、マジでなにが言いたいのか、意味わかんねー!
「だいたい俺だって、こっちの世界に来てからは、いたってふつうにすごしてただけなんだぞ?なのにこんな展開になるとか、思ってもみなかったんだからな?!」
「カーッ!出た、『ボクなんかやっちゃいました?』系発言!!」
だけど説明されるどころか、よりいっそうわけがわからないことを言われる。
クレセントの言う『ボクなんかやっちゃいました?』というのは、いわゆるファンタジー系ラノベなんかでよく見られる無自覚にチート能力を発揮する主人公が、自分がいかにすごいことをしたのかと気づかないまま、あっけにとられる周囲にたいして言うセリフだ。
つまりは俺のこと、その世界での常識足らずの無自覚野郎って言いたいんだろ!
「言っとくけど、俺だってテイラーが各攻略キャラたちからモテるとか、解釈ちがいを起こしてるんだ!」
俺自身でもこの件に関しては、遺憾に思っているということだけは、しっかりと言わせてもらいたい。
「ふーん、でも口ではどうとでも言えるでしょ」
たいするクレセントは、先ほどまでとは一転して冷めた目でこちらを見つめてくる。
その態度には、まったくこちらに歩み寄る気配は見えなくて。
クソ、せっかくさっきまでは態度が軟化していたってのに!
なんとか相手を説得するための素地をととのえて、足がかりにしようとしていたってのにさ。
またもや一転して、ふたりの間に溝というか、氷の壁ができてしまった気分だった。
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