127 / 188
127:『世界の理』攻略の鍵は世界観の考察にあり
しおりを挟む
突如として差し込んできた光明のきざし、それが俺にとってどれほどの朗報をもたらすのか、確固たる証拠がないうちは、ぬかよろこびになる可能性も否定できないけれど。
それでもそこに、一縷の望みをかけたかった。
───あぁ、クソッ!
全然かんがえがまとまらない。
なにを基準に、原作からの改変が容認されているのか、その見極めがむずかしすぎる!
あたまをかきむしりたくなるのをグッとこらえ、くちびるを噛みしめる。
本来この世界は乙女ゲームの世界であって、推理ものでもなんでもないハズなのに……!!
でもここがゲームの世界だからこそ、なんらかの法則性があるにちがいない。
だって『俺』たちスタッフは、そういう緻密な計算をしたうえで、最初にこのゲームを作ったんだから。
ちゃんとかんがえろ、かんがえればきっとこたえにたどり着けるハズだ!
そう己を叱咤して、思考のうずへと没入していく。
───さっきも感じたけれど、『世界の理』が自ら整合性を取ろうとする意志のようなものは、なかなかに固いものだと思う。
そう思うからこそ、それに勝負を挑み、なおかつ攻略するためには、その整合性の許容範囲を正しく把握しないといけない。
だって、攻略対象キャラクターのひとりであるパレルモ様の取りまきにすぎない俺が、おなじく───こちらは隠し攻略対象キャラクターだけれども、ブレイン殿下とのハッピーエンドを目指そうとするなんて、『世界の理』に真っ向から勝負を挑むようなものだろ!
この世界の本懐は、女神の祝福を受けた『星華の乙女』たるヒロインが、攻略対象キャラクターと結ばれるのに尽きるのだから。
ならば、まず前提となるこの世界の話から整理していくのがいいだろうか?
もちろんここは、すべての『星華の刻』の大元となる世界───つまりは、さまざまなメディアミックスだの二次創作だのと展開を見せる作品の原点にある、乙女ゲームの世界ということになる。
その大まかなストーリーはといえば、ヒロインが攻略対象となるキャラクターからの好感度をあげ、一定値を越えたところからそれぞれの分岐ルートに入っていくという恋愛シミュレーションゲームお約束のヤツだ。
そのヒロインは、あまり裕福ではないパプリカ男爵家のご令嬢であり、領地換えを命じられた親の都合で王都近くへ越してきたことで、この学校に転入することになったところからはじまる。
もちろん田舎者ゆえの不調法なところはあれど、その純粋さや心の美しさにほだされ、各攻略対象キャラクターはベルに惚れていくわけで。
いくら前提となる父親の領地換えにともなってやってきたからといっても、あんなふうに人を陥れようとするヤツをヒロインとは認められるものか!
俺たちの前にあらわれて、やりたい放題ヤラカシて懲罰房へと入れられた少年は、断じてこの世界の『ベル・パプリカ』なんかじゃない!!
なにより俺が認めないというよりも先に、絶対に『世界の理』が、彼を主人公のベルとは認めないだろう。
……というか、ぶっちゃけヒロインの性別変更って、前に一度俺が『世界創造者』の権能で却下しているハズだよな……?
たしかそのときに、『期限までに修正案を出せ』って意味合いのアナウンスを聞いた気がする。
はたしてその修正が指定の期限内に間に合ったのかどうか、残念ながらそこはわからないんだけど……。
修正案の受理をしたってアナウンスは、聞いたおぼえがないし、仮に遠いところにいれば聞こえないみたいだから、なんとも言えない。
そうかんがえると、ここはまだ本編のゲームがはじまる前のカウントになるんだろうか?
本来の設定では、あの少年ベルが転校してきたタイミングが本編のスタートするタイミングではあるけれど……。
でも、たぶん大丈夫だ。
シナリオ上のイベントは、だいたい今の時期にあっておかしくないものばかりだし、わりと日常に溶け込む内容になっている。
とりわけ初期はシステム上、選択肢を変えることで出会う順番が異なるものの、必ずといっていいくらいの確率で全部の攻略対象キャラクターとの出会いイベントが発生するようにできているんだから、問題ないに決まってる。
仮に出会いイベ以降に曜日を指定したものがあったとしても、それが翌週にズレ込んでも問題ないくらいのバッファは取っているハズだし。
動かしようもない特定の日を指定したイベントになっているのなんて、ラスト近くの分岐後ルートだけだもんな?
───つまり、まだ間に合う。
そうかんがえたなら、やはりあのベル少年には、早めにお引き取り願わねばならない。
一刻も早く、物語を正常なルートへと引きもどさないと!
「───ラー!ねぇ、テイラーってば!」
「え?」
腕をつかんでゆさぶられ、ハッと気づいた。
かんがえこみすぎて、だいぶ時間が経っていたらしい。
「悪りぃ、トイレ行ってくるから、そのあいだにパレルモ様が出てきたら、フォローよろしくな!?」
「あぁ、わかった。行ってこいよジミー、もらすなよ?」
「おう!……って、もらさないよ、バカ!」
そんなやり取りをして、ジミーはあわてて廊下を走っていった。
「これは、いよいよもってこじらせたかな……」
じんわりと痛みを訴えてくるかかとと、ふりかえった先にある窓の外のまぶしさを感じる景色とで、時間経過を知る。
それでもまったく扉の向こうに反応がないということは、パレルモ様の落ち込みが相当なものということなのだろう。
「とりあえずジミーがもどってきたら、もう一度声をかけるか……」
軽くため息をついた、そのときだった。
「その薄紫のカーディガン、貴様がダグラスだな?」
ふいに横から声をかけられる。
「ふん、あのブレイン殿下が夢中だという話だから、どんな美少年なのかと思いきや……ハッ、たいした顔ではないではないか」
「あ?」
あからさまに売られたそのケンカに、俺の機嫌は一気に急降下した。
それでもそこに、一縷の望みをかけたかった。
───あぁ、クソッ!
全然かんがえがまとまらない。
なにを基準に、原作からの改変が容認されているのか、その見極めがむずかしすぎる!
あたまをかきむしりたくなるのをグッとこらえ、くちびるを噛みしめる。
本来この世界は乙女ゲームの世界であって、推理ものでもなんでもないハズなのに……!!
でもここがゲームの世界だからこそ、なんらかの法則性があるにちがいない。
だって『俺』たちスタッフは、そういう緻密な計算をしたうえで、最初にこのゲームを作ったんだから。
ちゃんとかんがえろ、かんがえればきっとこたえにたどり着けるハズだ!
そう己を叱咤して、思考のうずへと没入していく。
───さっきも感じたけれど、『世界の理』が自ら整合性を取ろうとする意志のようなものは、なかなかに固いものだと思う。
そう思うからこそ、それに勝負を挑み、なおかつ攻略するためには、その整合性の許容範囲を正しく把握しないといけない。
だって、攻略対象キャラクターのひとりであるパレルモ様の取りまきにすぎない俺が、おなじく───こちらは隠し攻略対象キャラクターだけれども、ブレイン殿下とのハッピーエンドを目指そうとするなんて、『世界の理』に真っ向から勝負を挑むようなものだろ!
この世界の本懐は、女神の祝福を受けた『星華の乙女』たるヒロインが、攻略対象キャラクターと結ばれるのに尽きるのだから。
ならば、まず前提となるこの世界の話から整理していくのがいいだろうか?
もちろんここは、すべての『星華の刻』の大元となる世界───つまりは、さまざまなメディアミックスだの二次創作だのと展開を見せる作品の原点にある、乙女ゲームの世界ということになる。
その大まかなストーリーはといえば、ヒロインが攻略対象となるキャラクターからの好感度をあげ、一定値を越えたところからそれぞれの分岐ルートに入っていくという恋愛シミュレーションゲームお約束のヤツだ。
そのヒロインは、あまり裕福ではないパプリカ男爵家のご令嬢であり、領地換えを命じられた親の都合で王都近くへ越してきたことで、この学校に転入することになったところからはじまる。
もちろん田舎者ゆえの不調法なところはあれど、その純粋さや心の美しさにほだされ、各攻略対象キャラクターはベルに惚れていくわけで。
いくら前提となる父親の領地換えにともなってやってきたからといっても、あんなふうに人を陥れようとするヤツをヒロインとは認められるものか!
俺たちの前にあらわれて、やりたい放題ヤラカシて懲罰房へと入れられた少年は、断じてこの世界の『ベル・パプリカ』なんかじゃない!!
なにより俺が認めないというよりも先に、絶対に『世界の理』が、彼を主人公のベルとは認めないだろう。
……というか、ぶっちゃけヒロインの性別変更って、前に一度俺が『世界創造者』の権能で却下しているハズだよな……?
たしかそのときに、『期限までに修正案を出せ』って意味合いのアナウンスを聞いた気がする。
はたしてその修正が指定の期限内に間に合ったのかどうか、残念ながらそこはわからないんだけど……。
修正案の受理をしたってアナウンスは、聞いたおぼえがないし、仮に遠いところにいれば聞こえないみたいだから、なんとも言えない。
そうかんがえると、ここはまだ本編のゲームがはじまる前のカウントになるんだろうか?
本来の設定では、あの少年ベルが転校してきたタイミングが本編のスタートするタイミングではあるけれど……。
でも、たぶん大丈夫だ。
シナリオ上のイベントは、だいたい今の時期にあっておかしくないものばかりだし、わりと日常に溶け込む内容になっている。
とりわけ初期はシステム上、選択肢を変えることで出会う順番が異なるものの、必ずといっていいくらいの確率で全部の攻略対象キャラクターとの出会いイベントが発生するようにできているんだから、問題ないに決まってる。
仮に出会いイベ以降に曜日を指定したものがあったとしても、それが翌週にズレ込んでも問題ないくらいのバッファは取っているハズだし。
動かしようもない特定の日を指定したイベントになっているのなんて、ラスト近くの分岐後ルートだけだもんな?
───つまり、まだ間に合う。
そうかんがえたなら、やはりあのベル少年には、早めにお引き取り願わねばならない。
一刻も早く、物語を正常なルートへと引きもどさないと!
「───ラー!ねぇ、テイラーってば!」
「え?」
腕をつかんでゆさぶられ、ハッと気づいた。
かんがえこみすぎて、だいぶ時間が経っていたらしい。
「悪りぃ、トイレ行ってくるから、そのあいだにパレルモ様が出てきたら、フォローよろしくな!?」
「あぁ、わかった。行ってこいよジミー、もらすなよ?」
「おう!……って、もらさないよ、バカ!」
そんなやり取りをして、ジミーはあわてて廊下を走っていった。
「これは、いよいよもってこじらせたかな……」
じんわりと痛みを訴えてくるかかとと、ふりかえった先にある窓の外のまぶしさを感じる景色とで、時間経過を知る。
それでもまったく扉の向こうに反応がないということは、パレルモ様の落ち込みが相当なものということなのだろう。
「とりあえずジミーがもどってきたら、もう一度声をかけるか……」
軽くため息をついた、そのときだった。
「その薄紫のカーディガン、貴様がダグラスだな?」
ふいに横から声をかけられる。
「ふん、あのブレイン殿下が夢中だという話だから、どんな美少年なのかと思いきや……ハッ、たいした顔ではないではないか」
「あ?」
あからさまに売られたそのケンカに、俺の機嫌は一気に急降下した。
0
お気に入りに追加
401
あなたにおすすめの小説
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
王道学園なのに、王道じゃない!!
主食は、blです。
BL
今作品の主人公、レイは6歳の時に自身の前世が、陰キャの腐男子だったことを思い出す。
レイは、自身のいる世界が前世、ハマりにハマっていた『転校生は愛され優等生.ᐟ.ᐟ』の世界だと気付き、腐男子として、美形×転校生のBのLを見て楽しもうと思っていたが…
メインキャラ達の様子がおかしい件について
白鳩 唯斗
BL
前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。
サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。
どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。
ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。
世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。
どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!
主人公が老若男女問わず好かれる話です。
登場キャラは全員闇を抱えています。
精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。
BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。
恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
本編完結しました!
時々おまけのお話を更新しています。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる