75 / 188
75:偽装の恋人にしては甘すぎる
しおりを挟む
あれ、ちょっと待てよ?
俺とブレイン殿下のアレコレがこの世界の理に反していないってことは、俺がブレイン殿下に気に入られたのにも、ちゃんと理由があったってことだよな……?
それで言うのなら『必然』となる部分だ。
前に俺は『美食に慣れた殿上人ゆえの、気まぐれの悪食』と評したあの晩のことだって、気の迷いなら、きっとそのときかぎりで終わっていたと思う。
なんなら口止めをして、なかったことにしたっていいはずなのに……。
だって俺たちの間には、それができるだけの厳然たる身分差があるんだから。
でもこうして、演技のためかもしれないけれど、国王夫妻もいらっしゃるような場にも連れてきてもらえたというのは、ひょっとしてわりと本気で気に入られてたりするんだろうか?
……なんて、都合のいいようにかんがえてしまいそうになる。
だって、そんなの、あり得ないだろ!?
ブレイン殿下が、俺のことを好きだなんて……!
そうだよ、隠し攻略キャラのブレイン殿下が、俺みたいなモブを好きになるなんてことこそ、あり得ないハズ……。
そう思うのに、なんだか急に気はずかしくなってくる。
うぅっ、ほっぺたが熱い。
ていうか、めちゃくちゃうれしいって感じてるクセに!
なかなかすなおになれない自分に、もどかしささえおぼえる。
「うん?どうしたんだいハニー、急に照れはじめて。そんな奥ゆかしいキミもかわいいよ」
「そ、そういうことをはずかしげもなくおっしゃるからです!」
手を取られて、指先に音を立ててキスされた。
あぁもう、やることがいちいちカッコよすぎる!!
毎回そんなことをされるたびに、俺のなかの乙女成分がキュンキュンと反応してしまうだろ!
「だって、照れるキミの反応がかわいいのだから、仕方ないだろう?」
「だからどうして、そういうことを平然と口になさるんですか?!言われるほうは、心臓がもたないんですってば!」
本当に勘弁してもらいたい。
もう、人前でというのでもはずかしいのに、よりによって国王夫妻に宰相に王太子殿下と、国内の偉い人たちが一堂に会しているこの場でそんなことされてみろ!
まちがいなく、はずかしさは臨界突破するから!!
前にも思ったけれど、美とは力だ。
ブレイン殿下みたいな美形がそこにいるだけで、周囲への影響力はとんでもないことになる。
万が一にも俺が『死因:ときめき死』とかになったら、ダサすぎんだろうが!!
「だいたい、ブレイン殿下はすぐに俺のこと『かわいい』とおっしゃいますけど、パレルモ様ならともかく、この外見のどこがかわいいんですか?!」
なかばヤケクソ気味にたずねれば、目の前の美しい顔は、さらに輝く笑みを浮かべた。
「そういうところだよ?私のひとことに、そんなに顔を真っ赤にして反応して……そういうところが愛おしくて、かわいらしいんじゃないか」
「~~~~~っ!!」
ダメだった、この人には一生敵いそうにない。
「んー、めずらしいものもあるもんだな。そんなにデロデロに甘いブレインの姿、はじめて見た気がするよ」
よりによって、ハバネロ殿下にまでそんなことを言われる。
「ウフフ、そうね。この場に恋人を連れてきたのもめずらしいけれど、なにより紫を身につけさせているのは、はじめてなんじゃないかしら?」
王妃様まで、口もとを手で隠しながら、奥ゆかしげにほほえむ。
「そんな、ますますおそれ多いんですが?!」
一応、俺とブレイン殿下のお付き合いは、あくまでも目的が一致したための偽装でしかないハズなのに……。
ここまでする必要なんて、本当にあるのかな?
そりゃ、国王夫妻に宰相に王太子殿下が証人になったなら、これがウソだとはだれも思わないかもしれないけれど。
逆に『魅了香』を広めた犯人をつかまえたあかつきには、これがウソでしたなんて言える雰囲気なんだろうか?!って心配になってしまう。
国の偉い人たちをだました罪とかで、むしろ俺がつかまらないかってほうが、不安になるけど。
……あぁ、でもゲーム本編ではメイン攻略キャラクターであるリオン殿下のルートだと、パレルモ様とともに俺も断罪エンドを迎えることになるんだっけか。
ならば最後に俺が断罪されるのは甘んじて受け入れるとしても、ダグラス家に仕えていたせいで巻き込まれる人がいるのは、かわいそうな気はするな……。
とっさに付き人や、今回部屋の改装でお世話になった職人さんたちの顔が浮かんだ。
───よし、そのときは、しっかりと彼らの助命だけはお願いしよう。
それまで俺は、その最期のお願いくらいは聞いてやってもいいと思われるくらいには、ブレイン殿下の偽装の恋人役として、役に立てるようにがんばらなくちゃな!
そう心に決めたところで、でもなぜか心は落ちつかなかった。
と、そのときだった。
それまでずっとうつむきがちに黙りこんでいたリオン殿下が、ゆっくりと顔を上げると、こちらを見てきた。
「その、すまなかったな、ダグラス……」
「とんでもない、リオン殿下にあやまっていただくなんて、おそれ多いです!」
気まずそうなリオン殿下からあやまられ、むしろこちらが恐縮してしまう。
「だが、その……思い出してみたら、パレルモのワガママの犠牲になっていたのは、いつも貴様だっただろう?」
「……慣れていますから、大丈夫です」
事実を口にされ、力なくほほえむ。
それこそ、この世界でテイラーが幼かったころ、ライムホルン公爵家に待望の男児が生まれたと知ったときから、将来的にはパレルモ様に仕えることが決まっていたから。
これはすでにもう俺にとっては、あたりまえのことになっていた。
両親からも、そしてライムホルン公爵家からも、そう言いふくめられて育ってきただけに、あの3つ年下のイトコのワガママを聞くのは当然になっていたわけだ。
それを今さら『理不尽だ』と言っても、しょうがない。
「っ、これからは、なにかあったら俺に言え。貴様の立場からでは、パレルモに言いにくい不満もあるだろう。あのクラスでヤツに言えるのは王子である俺だけだ!」
そう言ってくれるリオン殿下は、なぜだろうか、わずかにほっぺたが赤く見えた。
俺とブレイン殿下のアレコレがこの世界の理に反していないってことは、俺がブレイン殿下に気に入られたのにも、ちゃんと理由があったってことだよな……?
それで言うのなら『必然』となる部分だ。
前に俺は『美食に慣れた殿上人ゆえの、気まぐれの悪食』と評したあの晩のことだって、気の迷いなら、きっとそのときかぎりで終わっていたと思う。
なんなら口止めをして、なかったことにしたっていいはずなのに……。
だって俺たちの間には、それができるだけの厳然たる身分差があるんだから。
でもこうして、演技のためかもしれないけれど、国王夫妻もいらっしゃるような場にも連れてきてもらえたというのは、ひょっとしてわりと本気で気に入られてたりするんだろうか?
……なんて、都合のいいようにかんがえてしまいそうになる。
だって、そんなの、あり得ないだろ!?
ブレイン殿下が、俺のことを好きだなんて……!
そうだよ、隠し攻略キャラのブレイン殿下が、俺みたいなモブを好きになるなんてことこそ、あり得ないハズ……。
そう思うのに、なんだか急に気はずかしくなってくる。
うぅっ、ほっぺたが熱い。
ていうか、めちゃくちゃうれしいって感じてるクセに!
なかなかすなおになれない自分に、もどかしささえおぼえる。
「うん?どうしたんだいハニー、急に照れはじめて。そんな奥ゆかしいキミもかわいいよ」
「そ、そういうことをはずかしげもなくおっしゃるからです!」
手を取られて、指先に音を立ててキスされた。
あぁもう、やることがいちいちカッコよすぎる!!
毎回そんなことをされるたびに、俺のなかの乙女成分がキュンキュンと反応してしまうだろ!
「だって、照れるキミの反応がかわいいのだから、仕方ないだろう?」
「だからどうして、そういうことを平然と口になさるんですか?!言われるほうは、心臓がもたないんですってば!」
本当に勘弁してもらいたい。
もう、人前でというのでもはずかしいのに、よりによって国王夫妻に宰相に王太子殿下と、国内の偉い人たちが一堂に会しているこの場でそんなことされてみろ!
まちがいなく、はずかしさは臨界突破するから!!
前にも思ったけれど、美とは力だ。
ブレイン殿下みたいな美形がそこにいるだけで、周囲への影響力はとんでもないことになる。
万が一にも俺が『死因:ときめき死』とかになったら、ダサすぎんだろうが!!
「だいたい、ブレイン殿下はすぐに俺のこと『かわいい』とおっしゃいますけど、パレルモ様ならともかく、この外見のどこがかわいいんですか?!」
なかばヤケクソ気味にたずねれば、目の前の美しい顔は、さらに輝く笑みを浮かべた。
「そういうところだよ?私のひとことに、そんなに顔を真っ赤にして反応して……そういうところが愛おしくて、かわいらしいんじゃないか」
「~~~~~っ!!」
ダメだった、この人には一生敵いそうにない。
「んー、めずらしいものもあるもんだな。そんなにデロデロに甘いブレインの姿、はじめて見た気がするよ」
よりによって、ハバネロ殿下にまでそんなことを言われる。
「ウフフ、そうね。この場に恋人を連れてきたのもめずらしいけれど、なにより紫を身につけさせているのは、はじめてなんじゃないかしら?」
王妃様まで、口もとを手で隠しながら、奥ゆかしげにほほえむ。
「そんな、ますますおそれ多いんですが?!」
一応、俺とブレイン殿下のお付き合いは、あくまでも目的が一致したための偽装でしかないハズなのに……。
ここまでする必要なんて、本当にあるのかな?
そりゃ、国王夫妻に宰相に王太子殿下が証人になったなら、これがウソだとはだれも思わないかもしれないけれど。
逆に『魅了香』を広めた犯人をつかまえたあかつきには、これがウソでしたなんて言える雰囲気なんだろうか?!って心配になってしまう。
国の偉い人たちをだました罪とかで、むしろ俺がつかまらないかってほうが、不安になるけど。
……あぁ、でもゲーム本編ではメイン攻略キャラクターであるリオン殿下のルートだと、パレルモ様とともに俺も断罪エンドを迎えることになるんだっけか。
ならば最後に俺が断罪されるのは甘んじて受け入れるとしても、ダグラス家に仕えていたせいで巻き込まれる人がいるのは、かわいそうな気はするな……。
とっさに付き人や、今回部屋の改装でお世話になった職人さんたちの顔が浮かんだ。
───よし、そのときは、しっかりと彼らの助命だけはお願いしよう。
それまで俺は、その最期のお願いくらいは聞いてやってもいいと思われるくらいには、ブレイン殿下の偽装の恋人役として、役に立てるようにがんばらなくちゃな!
そう心に決めたところで、でもなぜか心は落ちつかなかった。
と、そのときだった。
それまでずっとうつむきがちに黙りこんでいたリオン殿下が、ゆっくりと顔を上げると、こちらを見てきた。
「その、すまなかったな、ダグラス……」
「とんでもない、リオン殿下にあやまっていただくなんて、おそれ多いです!」
気まずそうなリオン殿下からあやまられ、むしろこちらが恐縮してしまう。
「だが、その……思い出してみたら、パレルモのワガママの犠牲になっていたのは、いつも貴様だっただろう?」
「……慣れていますから、大丈夫です」
事実を口にされ、力なくほほえむ。
それこそ、この世界でテイラーが幼かったころ、ライムホルン公爵家に待望の男児が生まれたと知ったときから、将来的にはパレルモ様に仕えることが決まっていたから。
これはすでにもう俺にとっては、あたりまえのことになっていた。
両親からも、そしてライムホルン公爵家からも、そう言いふくめられて育ってきただけに、あの3つ年下のイトコのワガママを聞くのは当然になっていたわけだ。
それを今さら『理不尽だ』と言っても、しょうがない。
「っ、これからは、なにかあったら俺に言え。貴様の立場からでは、パレルモに言いにくい不満もあるだろう。あのクラスでヤツに言えるのは王子である俺だけだ!」
そう言ってくれるリオン殿下は、なぜだろうか、わずかにほっぺたが赤く見えた。
0
お気に入りに追加
396
あなたにおすすめの小説
潜入捜査でマフィアのドンの愛人になったのに、正体バレて溺愛監禁された話
あかさたな!
BL
潜入捜査官のユウジは
マフィアのボスの愛人まで潜入していた。
だがある日、それがボスにバレて、
執着監禁されちゃって、
幸せになっちゃう話
少し歪んだ愛だが、ルカという歳下に
メロメロに溺愛されちゃう。
そんなハッピー寄りなティーストです!
▶︎潜入捜査とかスパイとか設定がかなりゆるふわですが、
雰囲気だけ楽しんでいただけると幸いです!
_____
▶︎タイトルそのうち変えます
2022/05/16変更!
拘束(仮題名)→ 潜入捜査でマフィアのドンの愛人になったのに、正体バレて溺愛監禁された話
▶︎毎日18時更新頑張ります!一万字前後のお話に収める予定です
2022/05/24の更新は1日お休みします。すみません。
▶︎▶︎r18表現が含まれます※ ◀︎◀︎
_____
極道恋事情
一園木蓮
BL
極道、マフィアといった裏社会に生きる男たちが心底惚れ込んだ恋人を溺愛する恋模様。
香港マフィア頭領の次男坊(周焔白龍)×香港で生まれ育った天涯孤独の青年(雪吹冰)のカップリングと、腕の達つ始末屋として裏社会に生きる極道(鐘崎遼二)×道場経営者の長男(一之宮紫月)という2組のカップルたちの恋模様を綴っていきます。
本編(周焔編、鐘崎編)完結済み。
現在は本編完結後の続編や番外編などを更新中です。
※表紙イラスト:芳乃 カオル様
※裏社会 / 極道 / マフィア / 運命の恋 / 溺愛 / 一途
※裏社会といってもBL&MLファンタジーの世界観での話として妄想しています。すべてフィクションで、実在の地名、人物名、役職名とは全く関係がございません。腐妄想の中でのファンタジー(幻想)としてご覧くださいませ。
突然見知らぬイタリアの伊達男に拉致監禁され、脅されてHされた上に何故か結婚を迫られてしまいました。
篠崎笙
BL
母親を亡くしたばかりで呆然としていた稲葉宗司は、突然現れたイタリア紳士、ヴィットーリオに葬式などを仕切られ、気が付けばイタリアに拉致されてしまった。そこで、昔離ればなれになった幼馴染そっくりな少年を見かけ、話したいと願うが、彼の無事と引き換えに身体を自由にさせるよう、ヴィットーリオに脅されて……。
※ 以下「長身美形なイタリアマフィアになってた、美少女みたいに小さくて可愛かった幼馴染から売り専と間違われて監禁Hされた上に求婚されてしまいました。」を未読の方には関係ない話。
ここではないどこかで「美少女~」の誘拐監禁バージョンを見たいというリクがあったのですがそのままのキャラで書こうとしたらなかなか話が進まなかったのでこうなりました的なパラレルワールド。稲葉姓だったり設定が同じ部分があるのはその名残です。
当て馬系ヤンデレキャラから脱却を図ろうとしたら、スピンオフに突入していた件。
マツヲ。
BL
短編「当て馬系ヤンデレキャラになったら、思ったよりもツラかった件。」(https://www.alphapolis.co.jp/novel/239008972/62495221)の続編です。
前世で自分が開発に携わったBLゲーム本編のシナリオどおりのザマァをされた瞬間、なぜか自分がそのザマァされた側の当て馬系ヤンデレキャラである鷹矢凪冬也になっていたことに気がついた主人公。
ゲームのシナリオでは凋落の一途をたどることになっている冬也の行く末にあらがい、なんとか会社を立て直そうと努力しているうちに、冬也が主役のスピンオフに突入してしまっていたらしく……!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる